低炭水化物ダイエット対低脂質ダイエット/ローカーボ対ローファットどっちが痩せるのか

太る原因はこれ

血糖値という言葉をご存知ですよね。定期健診などの血液検査をすると、その検査結果の中に血糖値という項目が含まれています。血糖値というのは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度のことです。

ブドウ糖は私たちの身体の中でエネルギー源となる重要な物質です。特に脳のエネルギー源はブドウ糖だけ。ブドウ糖は私たちにとってなくてはならないものなのです。だから血糖値は低すぎてはいけない。

しかし、逆に血糖値が高すぎるとブドウ糖はかえって悪さをします。だから、血糖値は高くてもいけない。それで血糖値が高くなると、私たちの身体は膵臓からインスリンというホルモンを分泌して、血糖値を抑えるようとします。インスリンはブドウ糖をグリコーゲン(一種のデンプン)という物質に転換にして、筋肉や肝臓内に押し込んでしまいます。

そして逆に血糖値が下がった時には、グリコーゲンが再びブドウ糖となって血液に流れ込みエネルギー源として活用されます。そうやって血糖値は一定の値になるように自然に調整されているわけです。

しかし、エネルギー源として使いきれないくらいブドウ糖が多くなり過ぎたらどうなるか。このときインスリンはグリコーゲンを中性脂肪に合成して、脂肪細胞内に貯蔵します。この脂肪も、またエネルギーが必要になったときに使われるわけですが、身体の運動が少なく、エネルギーが必要ないと、脂肪は使われずにどんどん貯まって行きます。つまり、これが肥満。

つまり、肥満のそもそもの原因は血液中のブドウ糖なのです。
肥満の原因となるブドウ糖の化学構造はこれ。

ブドウ糖の化学構造

炭素(C)5個と酸素(O)1個で六角形の輪になっていることが特徴的ですね。
普通は、六角形の中の炭素を省略して以下のように書きます。

ブドウ糖の化学構造(簡易版)

じゃあなぜブドウ糖は血液の中に入り込むのでしょうか。ブドウ糖が血液になければ肥満にもならないわけですから。
これが砂糖の化学構造式。

砂糖(スクロース)の化学構造

ごらんのとおり、砂糖はブドウ糖の構造式が含まれていますね。砂糖を食べると身体の中で分解されてブドウ糖になります。だから砂糖を食べすぎると太る。(砂糖の残りの半分は果糖といって、これもブドウ糖と同じように太る原因になります)

では砂糖だけが太る原因かというとそうじゃありません。ブドウ糖がたくさんくっつくとこんな感じになります。

デンプンの化学構造

これはお馴染みのデンプンとよばれるものです。つまり、デンプンはブドウ糖が鎖のように連なったもの。ごはんやパンにたくさん含まれています。このデンプンも食べると身体の中で分解されてブドウ糖になります。デンプンは甘くはないけど、身体の中で分解されてブドウ糖になるから、これも太る原因になります。

ブドウ糖や果糖などを糖類といいます。そして砂糖はブドウ糖と果糖が結合したもの。デンプンはブドウ糖などの糖類がいくつもくっついたもの。砂糖やデンプンはいずれも体の中で分解されてブドウ糖ができるので摂りすぎると太ります。

砂糖やデンプンおよびブドウ糖などの糖類をまとめて糖質といいます。言い換えれば、この糖質こそが肥満の原因なのです。

ちなみに、この化学式なんだかわかりますか。

セルロースの化学構造

でんぷんじゃないの?よく見てください。ちょっと違うでしょう。これはセルロース。
実はセルロースもブドウ糖がたくさんくっついてできているけど、デンプンとは少しつながり方がちがいます。ほんの小さな違いだけど、セルロースは体の中では分解されないからブドウ糖にはなりません。だからこいつは食べても太らない。

似たようなものとして、ヘミセルロースやリグニンという物質がありますが、これもセルロースと同じように分解されないので、太る原因にはならない。たべても消化吸収されない食物をまとめて食物繊維といいます。

この食物繊維とさっき話をした糖質とを合わせて炭水化物といいます。炭水化物はタンパク質、脂肪とともに三大栄養素のひとつです。この関係を図にするとこんな感じ。

炭水化物の分類

ロカボダイエット

従来、肥満の原因はカロリーの採りすぎといわれてきました。カロリーは運動によって消費されますが、採りすぎたカロリーよりも消費される方が小さければ、カロリーが脂肪として蓄えられ、太ると。

だから、肥満防止にはカロリーを抑えるか、運動をしなさいと言われます。特に脂肪分はカロリーが高いので、ダイエットのためにはあまり食べてはいけない。我慢しなさいと。

でも、前章で述べたように、血液中のブドウ糖が肥満の原因なら脂肪は関係ないことになります。つまり肥満の原因はカロリーの採りすぎではない。炭水化物や砂糖類のような糖質なのだということなのです。

だから、ダイエットのためには、ご飯やパンを減らしなさい。甘いケーキやお菓子はもっての外。一方、脂分ギトギトのステーキでも、てんぷらでもバターでもマーガリンでも全然平気ですよ。だって食べてもブドウ糖にはならないから太らないということになります。

このような炭水化物の摂取を減らすことを中心としたダイエット方法を低炭水化物ダイエット、英語ではローカーボダイエット(low-carbohydrate diet, low-carb diet)あるいはもっと省略してロカボダイエットと言ったりします。

本当にロカボダイエットは効果があるのか

このように炭水化物に含まれる糖質(でんぷんや糖類)は体の中で分解されてブドウ糖になり、このブドウ糖が脂肪に転換されて肥満の原因となる。このメカニズムが正しければ(実際正しいのですが)、ロカボダイエットは効果がある「はず」ですよね。

A to Z減量研究

実はそれを確認するための実験がスタンフォード大学のガードナー博士の指導によって、2003年2月から12か月行われました。

被験者は肥満傾向(BMI27〜40)にある非糖尿病の311人の閉経前女性。これらの被験者を無作為に4つに分け、それぞれ4種類のダイエット方法が試されました。この試験はA to Z減量研究(Weight Loss Study)と呼ばれています。

調査されたダイエット方法はつぎのとおりです。これらは多分、当時はかなり流行ったダイエット法なのではないでしょうか。

(1)アトキンス・ダイエット(The Atkins Diet)
いわゆるロカボダイエット。炭水化物の1日の摂取量を20g以内、その後は50g以内に抑える。カロリー、タンパク質、脂肪の摂取量は一切制限されず、食べたいだけ食べてよい

(2)ラーンダイエット(Learn Diet)
いわゆるローカロリーダイエット。全摂取エネルギーのうちの55~60%を炭水化物から摂る。脂肪の摂取割合は30%以下にし、飽和脂肪酸の摂取割合は10%以下とする。さらに定期的に運動をする

(3)オーニッシュダイエット(Ornish Diet)
いわゆるベジタリアンの食事法。全粒穀物、フルーツ、野菜(少量の糖質・動物性タンパク質・脂質を含む)を中心とし、脂肪の摂取割合は10%以下とする。ストレスの緩和のため、深呼吸、ヨガ、瞑想を行う

(4)ゾーンダイエット(Zone Diet)
主要栄養素を摂取する割合を一定のゾーンに入るように厳しく設定する。 摂取カロリーのうちの40%を炭水化物から、30%をタンパク質から、30%を脂肪から摂取する

その結果はつぎのとおり。
(1)アトキンスダイエット           平均体重変化 -4.7 kg(95%信頼区間、-6.3〜-3.1 kg)
(2)ラーンダイエット             平均体重変化 -2.6 kg(95%信頼区間、-3.8〜-1.3 kg)
(3)オーニッシュダイエット       平均体重変化 -2.2 kg(95%信頼区間、-3.6〜-0.8 kg)
(4)ゾーンダイエット                  平均体重変化 -1.6 kg(95%信頼区間、-2.8〜-0.4 kg)

体重の減少という点だけをみれば、やっぱりロカボダイエット(アトキンスダイエット)が一番効果があるように見えますが、ただし、そのほかのダイエット方法でも体重は減っています。ローカロリーダイエット(ラーンダイエット)もそこそこに効果があるようです。

食事療法介入(DIETFITS)試験

A to Z減量研究のあと、10年後に同じガードナー博士によって低炭水化物(ロ―カーボン)と低脂質(ローファット)に焦点を当てて、もっと大規模な実験が行われました。食事療法介入(DIETFITS)試験といいます。

対象となった被験者は糖尿病のない18〜50歳の成人609人で、(平均年齢40 [標準偏差7]歳、女性57%、平均BMI33 [標準偏差3])。試験期間は2013年から12か月間でした。

参加者には健康的な食事のとり方について指導が行われ、その後ランダムに二つのグループに分けられて、それぞれのグループに対して健康的低炭水化物食(HLC)か健康的低脂肪食(HLF)かが行われました。

たとえば、HLCグループでは穀物、米、でんぷん質の野菜、豆類を制限され、HLFグループでは食用油、脂肪肉、全脂肪乳製品、ナッツの摂取が制限されました。結果的にHLFとHLCは、それぞれ、12か月の平均主要栄養素分布は炭水化物で48%対30%、脂肪で29%対45%、タンパク質で21%対23%でした。

その結果、体重の変化は次の通り
HLC食で平均 -6.0 kg(95%CI、-6.6kgから-5.4kg)
HLF食で平均 -5.3 kg(95%CI、-5.9kgから-4.7kg)

HLC食すなわち低炭水化物食が、HLFすなわち低脂肪食よりも平均値で0.7 kg (95%CIで-0.2〜1.6 kg)体重減が大きい結果となりましたが、これは統計学的には差がない(ばらつきの範囲内)と判断されました。

つまり、低炭水化物食でも低脂肪食でもどちらも体重は低下しましたが、その差は小さく、どちらがダイエット効果が大きいかという判断はできないという結果となりました。

まとめ

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ロカボダイエットが本当に効果があるかどうか、 DIETFITSでは明確にはなりませんでした。どうしてでしょうか。

ひとつの考え方としてA to Z減量研究では、例えば炭水化物の摂取量を1日あたり20g以下に抑えるというような極端なロカボダイエットを行っているということ。それに対して、 DIETFITSでは、被験者に健康的な食事のとり方について指導を行い、その上で無理のない範囲で低炭化水素か低脂肪かを行わせたという違いがあるように思います。

 DIETFITSでは、被験者は食事のとり方についてインストラクションを受けて、被験者自身が自分で食事をコントロールしました。その結果、HLCでもHLFでもどちらも体重が減り、その差は小さいということになったようです。

 DIETFITSでは食事のとり方については次のようなインストラクションが行われました。

(1)できるだけ野菜の摂取量を多くすること
(2)添加された砂糖、精製小麦粉およびトランス脂肪酸の摂取を最小限に抑えること
(3)可能な限り食品の加工は最小限に抑え、栄養が豊富で、家庭で調理されたホールフードを摂取すること

このような食事に関する指導自体が体重の減少につながったのかもしれません。

ロカボダイエットの問題点

アトキンスダイエットのように、低炭水化物ダイエットを極端に行うと、やはり痩せる可能性があると思われます。しかし、その弊害もあるようです。

特に、炭水化物を減らした分を大量の脂肪で補うことは問題があるのではないでしょうか。特に、動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸やマーガリンに含まれるトランス脂肪酸は心臓疾患や血管系の疾病を誘発するといわれています。

また、ブドウ糖は脳へ対する唯一のエネルギー源ですから、これが不足するとイライラしたり不機嫌となったり、頭脳を使う仕事の効率も下がります。

ただ、砂糖は他の糖質とは異なって習慣性があり、つい食べすぎるということになりますから、できるだけ避けた方がいいようです。

結局、DIETFITSで被験者に対して指導されたように、砂糖や精製小麦粉、トランス脂肪酸を控え、かわりに野菜をたっぷり摂ること。外食やファーストフードではない家庭で調理された料理を食べ、食品はできるだけホールフード(食品の葉や皮などを捨てないで、まるごと使用する)を心がける。

ダイエットには、できるだけバランスの取れた食事を摂り、炭水化物でも脂肪でも食べすぎはよくないですよということのようです。

2021年1月3日

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