佐藤さん問題は統計学的におかしい 500年後に日本人が全員佐藤姓になることはあり得ない

3月22日、東北大の吉田浩教授(経済学)が結婚時に夫婦どちらかの姓を選ぶ現行制度を続けると、2531年には日本人の姓がみんな「佐藤」になる可能性があるという試算結果を公表して話題となっている。つまり、500年後に日本人はすべて佐藤姓になるという。これは佐藤さん問題として広まっているが、こんなことが本当にあり得るのだろうか。

500年後に日本人全員が佐藤姓になるという根拠だが、教授はつぎのように述べている。

民法第750条の規定により、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」とされている。このため、一般的確率からするとメジャーな苗字のグループ(以下では佐藤姓)と婚姻するケースが多くなり、これを繰り返していくと長い時間を経て佐藤姓に吸収され収斂(しゅうれん)する可能性がある。・ ・ ・
佐藤姓と他の姓の者との結婚により、他の姓が佐藤姓を名乗ることで佐藤姓が全人口に占める比率は増加することが考えられる。そこで、ある年の佐藤姓の全人口に占める比率(t)が1年間にどのように増えてきたかその伸びρ(ロー)を求め、その伸びが続くとして、将来の

x(t+1)=(1+ρ) x(t)

として複利計算の様に今後1000年分シミュレーションして計算し、佐藤姓が100%となる年を求めることとした。

この計算によって約500年後に日本人の名前は佐藤姓が100%となってしまうということになったわけである。しかしながらこの考え方には賛成できない。

確かに佐藤姓の比率が多いのなら佐藤姓の人が婚姻する数は多くなる。しかし、佐藤姓に収斂されるということはありえない。民法の規定により「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」としているのだから、確かに佐藤姓の人が婚姻する数は多いだろうが、婚姻の結果、佐藤を名乗るか、もう一方の姓を名乗るかの確率は1/2である。だから佐藤姓だけが増えるということはない。それを無視して佐藤姓の人の婚姻数が多いから佐藤姓が増えるということはあり得ない。

例えば、私個人の例で恐縮であるが、私の妻の旧姓はたまたま佐藤である。私と結婚したことによって、妻は佐藤ではなく財部姓となった。そして子供が二人できたがこの子供はどちらも今のところ(まだ結婚していないので)、財部姓である。

つまり佐藤姓が一人減って財部姓が三人増えた計算になる。これは一例に過ぎないが、必ず佐藤姓に収斂されるという話は、おかしいと気づかれるだろう。

この話は佐藤姓の人が多いので、婚姻の「数」が増えることと、佐藤姓が増える「確率」とをごっちゃにしてしまっている。例えば、サイコロを振って1の目が出る回数はサイコロを振った数が多いほど増えるが、2も3も4も5も6も同じ回数だけ出てくるから、1の目が出る確率で考えれば、何回サイコロを振っても1/6のままで1に収斂することはない。

佐藤姓の人の婚姻の数が多いからといっても、その婚姻によって佐藤姓を名乗る確率と、もう一方の姓を名乗る確率は同じであって、婚姻数がいくら多くても佐藤姓だけが増えることは統計学的にありえないということである。

ちなみに、吉田教授の計算は佐藤姓だけについて行われているが、同じ計算をほかの姓でも行うことが可能である。その結果、佐藤姓だけでなくほかの姓でもいずれは100%に達する姓が出てくることになる。つまり、佐藤だけでなく、いろいろな姓が日本人の姓の100%を占めるという全く矛盾した結果が出てくるのだ。このことから考えても佐藤さん問題は明らかな間違いと言わざるを得ない。

2024年4月1日

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