地球温暖化の原因は人間が熱を発生させているから
八「今年は、本当に暑いな」
熊「おう八よ、なんでこんなに暑くなってきたか知ってるか」
八「そりゃあ、地球温暖化ってやつだろう」
熊「その地球温暖化ってのが、どうして起こるか知ってるかって聞いているんだ」
八「う~ん」
熊「それはな、俺たち人間がよ、石油とか石炭やガスを燃やしているだろう。そのとき熱が出るわな。原子力発電所だってものすごい熱が出るんだぜ。その熱で地球が暑くなってるってわけよ」
八「俺、そんなに燃やしてないぜ。せいぜい煮炊きにガス使うくれえだ」
熊「だからお前は馬鹿だってんだ。俺たちが燃やす燃料なんてたかが知れている。そうじゃなくってな、工場や発電所ってところでじゃんじゃん燃料を焚いているんだぜ。こんなに熱を出しや、地球も暑くなるってもんだ」
八「エアコンだって、部屋の中は涼しくなるが、室外機は熱風を外に出しているしな」
熊「おうよ。そういうこったぜ」
地球はなぜ暖かいか
地球温暖化はなぜ起っているのでしょうか。人間は燃料を大量に燃やしていますので、この時に熱が出ます。熊さんがいうように、この熱で地球が温暖化していると考えれば分かりやすいですが、本当に人間が作り出した熱が地球温暖化の原因なのでしょうか。
それを説明する前に、地球の温度はどうやって決まるかを解説します。
まず、宇宙の温度は何℃か知っていますか。それは―270℃の極低温なのです。温度はいくらでに高くすることができるのですが、低い方はどんなに頑張っても―273℃以下には下がりません。宇宙の温度-270℃というのは温度の限界に近い、すさまじい寒さなのです。
その極低温の宇宙にぽっかり浮かんでいる地球は、やはり―270℃まで温度が下がってもおかしくありませんが、地球は実際にそんなに低温ではありません。それはどうしてでしょう。これは考えるまでもなく、太陽のお陰です。
太陽の光が地球に降り注ぎ、その光のエネルギーで地表は温められています。もし、地球が軌道から離れて宇宙を漂い出したら、地球はほんとうに極寒の世界になってしまうでしょう。
しかし、地球は太陽の光で温められる一方で、温まった地表の熱が赤外線となって宇宙に逃げて行くことによって冷えていきます。この地球を暖める太陽光のエネルギーと、宇宙に逃げて行く赤外線のエネルギーがバランスしているので、地球の温度は一定に保たれています。
ではその温度は何℃なのでしょうか。それは計算によって求めることができます。
地球が受ける太陽光エネルギーの量
地球に降り注ぐ太陽光のエネルギーは1m2あたり1,380W(ワット)です。これを太陽乗数といいます。1,380Wというのは結構大きなエネルギーで、1m2の部屋に100Wの電球14個ばかりで照らしているようなものです。
この太陽乗数に地球の断面積を掛ければ、地球が受ける太陽の光エネルギーの総量が分かります。なぜ断面積を掛ける?地球の裏側には太陽光は届かないから、地球が太陽から受けるエネルギーは太陽が当たっている面だけ考えればいいので断面積を掛けます。
地球の直径は12,742㎞ですから、地球の断面積は1.275×1014m2となります。これに太陽乗数1,380W/m2をかけてやると、地球が受ける太陽の光エネルギーの総量は1.760×1017Wとなります。
ただし、地球に降り注ぐ太陽光のうち、反射してしまう分を考えなければなりません。この反射は3割くらいありますから実際に地球が太陽から受け取るエネルギーはその7掛け。1.760×1017W×0.7=1.232×1017W くらいになります。
これが地球を暖めている太陽の光エネルギーです。
地球から逃げて行く赤外線の量
一方、地球から出ていく赤外線のエネルギーは絶対温度Tの4乗に比例することが知られています。(絶対温度というのは、摂氏温度に273を加えたもの。単位はK=ケルビン)つまり温度が上がれば上がるほど、赤外線になって逃げて行く熱エネルギーも大きくなるということです。
比例定数はステファンボルツマン定数と言われ、5.67×10-8 W/m2・K-4と測定されています。したがって、この定数に地球の表面積と地表の温度Tの4乗を掛ければ地球から放出される赤外線のエネルギー量を計算することができます。
なお、太陽から受けるエネルギーを計算するときは地球の断面積で計算しましたが、赤外線の放出を考えるときは、夜の部分からも放出されているので表面積を掛けることになります。
地球の表面積は5.101×1014m2、これにステファンボルツマン定数をかけると、2.892×107 W/ K-4となります。あとは、これに地表の温度Tの4乗を掛ければ赤外線となって逃げて行くエネルギーが計算できます。
この地表温度Tとして255Kを当てはめると、地球が太陽から受ける光エネルギーと地球から逃げて行く赤外線エネルギーが一致します。ということで、地球表面の温度は255Kという計算になりました。
地球は空気という着物を着ている
この255Kというのは摂氏温度に直すと、-18℃になります。おや、ずいぶん低い温度になりましたね。これでは地球は凍えてしまいます。生物は生きてはいけません。実際に地表温度はそんなに寒くはありません。ではこの差はどうしてできたのでしょうか。
これは地球が空気という着物を着ているからです。
太陽から降り注ぐ光エネルギーの一部が反射して地表に届かないのと同じように、赤外線もすべてが宇宙に逃げて行くわけではなく、一部が空気に吸収され、また赤外線となって地表に戻ってきているのです。この量もステファンボルツマンの法則によって計算することができ、これを考慮すると地表温度は288Kつまり+15℃程度となります。
例えていえば、-18℃というのは裸のときの体の表面温度、+15℃というのはシャツやズボンをはいた時の体の表面温度ということになるでしょう。
なぜ地球温暖化が起こるのか
このように、地球の表面温度は、
①太陽から来る光のエネルギー
②地表から放出される赤外線のエネルギー
③太陽からの光エネルギーのうち反射される割合
④地表から放出される赤外線については空気に吸収される割合
の4つの要素で決まることになります。
産業革命以降、地球の温度が上がっていることが示されています。これが地球温暖化ですが、これは、④の空気に吸収される赤外線の量が増えていることが一番の原因と考えられています。そしてなぜ、空気に吸収される赤外線が増えているのかについては、空気中のCO2を始めとする温室効果ガスが増えているからと説明されています。
人間が出した熱の影響
しかし、熊さんがいうように、人間が燃料をたくさん燃やしたため、あるいは原子力を使ったため、熱が発生して、温暖化したというのはどうでしょうか。これも地球を温暖化させる可能性が考えられます。つまり地球を暖めているのは太陽だけではなく、人間が作り出した熱もあるという可能性です。
では人間が作り出した熱はどのくらいあるのでしょうか。下の図は、世界で使用された一次エネルギー量の変化を示したものです。この一次エネルギーは最終的にはほとんど熱になってしまいますから、この熱が地球温暖化の原因となっている可能性は否定できません。
このグラフの中から、再生可能エネルギーと水力エネルギーを除くと、人間が作り出した熱は515EJ(エクサジュール=1018J)になります。これは年間の数値ですから、1秒あたりに直すと1.633×1013J。1秒あたり1Jが1Wですから、人間が作り出す熱は1.633×1013Wということになります。
思い出してください、地球が太陽から受ける光のエネルギーは1.76×1017Wでした。太陽エネルギーは1017単位、人間が作りだす熱エネルギーは1013単位ですから、人間が作り出す熱の量は太陽からやって来る熱エネルギーの1万分の1に過ぎないということです。つまり、地球温暖化に関しては人間が作り出した熱の影響についてはほぼ無視できるということになります。
まとめ
地球の表面温度は、基本的に太陽から受ける光エネルギーと地表から放出される赤外線のエネルギーのバランスによって決まります。さらに太陽から受ける光エネルギーの反射率や赤外線エネルギーが空気に吸収される量も関係してきます。
産業革命以来、地球の温度が上昇しており、地球温暖化といわれますが、これは空気中のCO2などの温室効果ガスの量が増え、その結果、赤外線を吸収しやすくなって地球を冷えにくくしているのが原因と考えられています。
人類は大量の燃料を燃やしたり、原子力発電所を稼働させたりして熱を作り出していますが、この人類が作り出した熱が地球を温暖化させる可能性がないとは言えないものの、いまのところ非常に影響は小さく、無視できるレベルといえます。
八「お天道様ってのあ、大したもんだな。人間がいくら物を燃やしても、原子力ってものを使いまくっても、出てくる熱はお天道様の1万分の1にしかならないってことか。といっても物を燃やせばCO2が出てくるからいくら燃やしてもいいってもんじゃないけどな。」
2023年8月6日