韓国の石油製品のほとんどは日本から輸入している?

ネット上では、韓国は石油製品が国内で作れなくて、ほとんど日本から輸入していると言う話が、まことしやかに流れています。

例えば、Yahoo知恵袋で「韓国、石油輸入」というキーワードで検索してみると、「韓国は日本に石油を頼っているというのは本当ですか?」とか、「韓国は自力で石油を作れないんですか?」とか、「日本が韓国に石油の輸出をヤメるだけで韓国は破綻するのではないのですか?」などという質問が多数みられます。

そしてその解答として、「韓国内には製油所がない」、「製油所があってもウォンに信用がないので原油を輸入することができない」、「韓国内でも石油製品は作っているが、品質が悪くて使い物にならない」など、まるで見てきたような答えをする人がいます。

慰安婦や徴用工の問題に絡めて、韓国に石油製品を輸出しなければよいなどの論調まであります。

しかし、これは私の抱いていている韓国の石油産業のイメージとは全然異なっています。いや私だけでなく、石油の貿易に少しでもかかわった人なら、とんでもない、まったく逆だという感想を聞けると思います。

1.結論

  • 韓国の石油製品のほとんどを日本から輸入しているというのはまったく根拠のないウソ
  • むしろ韓国は石油製品大輸出国である

2.韓国への石油製品輸出量

韓国が日本の石油をどれだけ輸入しているかについては、資源エネルギー庁が発表している石油製品の輸出入統計を見れば明らかです。

これによると、平成30年度の日本から韓国への石油製品の輸出は322万㎘です。一方、韓国の石油製品消費量は、16,376万KLですから、日本からの石油製品の輸入量は韓国の石油製品消費量のわずか2%に過ぎません。

ちなみに、平成30年度に逆に韓国から日本が輸入している石油製品の量は821万㎘あり、これは輸出量の2.5倍。つまり、日本は韓国へ輸出する量の2.5倍もの石油製品を韓国から輸入しているのです。

韓国が石油製品のほとんどを日本から輸入しているどころか、むしろ日本が韓国から輸入している方が多いというのが実態です。

3.間違いの理由

では、なぜそんなウソがまことしやかにながれているのでしょうか。

Zohnamさんのブログを引用させてもらうと、

「韓国の輸入軽油の95%ぐらいは、日本からのものである」という事実があり、これを誤解・誤認した人が2chにレスしたのが原因 ということのようです。

また、2015年02月03日付けの中央日報では、「韓国の軽油市場で輸入軽油が占める割合は2010年の2.6%から昨年は8.1%まで急増した。業界関係者は物流費など制約要件などを考慮すると韓国の輸入軽油の95~97%が日本産とみれば良い」と報道しています。

つまり、韓国で使われている軽油の8%程度が輸入されていて、この8%の輸入軽油のうちの95%くらいが日本からのものだということです。これが「韓国の石油製品のほとんどが日本から輸入されている」と誤解されて広まっていったのでしょう。

4.韓国は石油製品の大生産国

では、韓国の石油産業はどのようになっているのでしょうか。資源エネルギー庁の報告によると、韓国の製油所は以下の表のようになってます。

会社名製油所立地原油処理能力
SKSK Energy蔚山98万BSD
SKSK仁川石油化学仁川25.5万BSD
GS-Caltex麗川製油所麗川88万BSD
S-Oil温山製油所温山67万BSD
現代Oilbank大山製油所大山39万BSD

※BSDはバレル/日 1日あたり何バレルの原油を処理する能力があるかを示したもの。1バレル=159リットル

この表からわかるように、韓国は製油所の数が5か所しかありません。日本は22か所あります。しかし、1か所あたりの規模は非常に大きく、最低でも25.5万バレル/D、最大の製油所は98万バレル/Dもあります。これに対して、日本の製油所は最大でも32万バレル/D。平均で16万バレル/Dしかありません。

一般に製油所は30万バレル/Dあれば大きい方で、蔚山のように98万バレル/Dというのは世界的にみてもバカでかい。おそらく世界でも5本の指に入る製油所ではないでしょうか。

このように、韓国の製油所は5か所しかありませんが、石油精製能力は非常に大きく、国内必要量を大きく上回っています。そのため製品が余剰となり、2014年には生産量が16,376万㎘で、輸入が5,186万㎘、輸出が7,136万㎘であり、差し引き1,950万㎘の輸出超過というデータがあります。(JPECレポートより)

韓国石油製品の品質についてもいちいちデータをあげませんが、日本の石油製品とそん色はありません。例えばガソリンや軽油の硫黄分は公害対策としてできるだけ低い方が望ましいのですが、硫黄分をほぼゼロまで下げているのは、アジアでは日本と韓国だけしかありません。(アメリカもまだ達成していません)

5.悪意による誤解

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韓国は先進国です。自動車もスマホも半導体も自国で生産しており、その品質も生産能力も世界的に高いレベルにあります。そんな国に、石油精製能力がない、製品の質が悪く使い物にならない、だから日本から輸入しなけばならない、なんてことがあるでしょうか。

ちょっと考えればわかることなのですが、日本では何でも韓国のことを悪く考えようという風潮があるので、誤解を生んでしまうのではないでしょうか。

もちろん、韓国の方も何でも日本のことを悪く考える風潮があります。ちなみに、このブログを書いている日(2019年7月2日)には、日本政府が韓国向けの有機ELディスプレーに使われるフッ化ポリイミドなど3品目を厳格な輸出手続きに変更すると報道されました。

韓国との信頼関係が損なわれたことを理由に、管理強化に踏み切ったと説明されています。

今回の措置は両国の話がこじれ、こじれて、こうなった訳で、今後も新たな規制が強化され、貿易が縮小されていくことになるでしょう。

これはお互いの国にとって良いことではありません。韓国は日本のことを何でも悪く取る風潮があるようですが、日本でも悪意によって間違った知識を広めるべきではないでしょう。

 

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韓国の石油製品のほとんどは日本から輸入している?」への6件のフィードバック

  1. 匿名

    その精油前の原油はどこから輸入してるのやら。
    この著者は全てイランで賄っているとでも語るのだろうかwww

    返信
    1. takarabe 投稿作成者

      記事を読んでいただいてありがとうございます。
      韓国の原油輸入先ですが、2015年の統計によると、サウジアラビア32%、クウェート15%、UAE12%、カタール11%、イラク8%、イラン5%などとなっています。
      なぜ「この筆者は全てイランで賄っているとでも語るのだろうか」とおっしゃるのかわかりませんが、イランはこの当時で韓国輸入原油の5%しかありません。
      なお、2018年にアメリカとイランの関係悪化によって、アメリカから韓国に対してイラン原油の輸入をやめるよう要請(事実上の命令)があったため、現在はイランからの原油輸入はほとんどなくなっています。
      また、同時にアメリカの圧力によって韓国内銀行のイラン口座が凍結されたため、イランは原油代金の引き出しができなくなっており、イランは国際司法裁判所に対して口座凍結をやめるよう訴えを起こすと言う動きがあります。
      これをどういうわけか、韓国がイランの原油代金を踏み倒したとか、そのためイランが韓国への原油輸出をやめたとかいうウソ話がまことしやかにウェブ上に流れていますが、これを信じているわけではないですよね。

      返信
  2. とおりすがり

     文意には大筋で同意します。日本が350万B/Dくらいなので、日韓の石油精製能力はほぼ同等であり、もはや枯れた技術といえる石油精製において、韓国がある種の石油製品を自前で作れない、なんてことはあり得ません(両国の大きな相違であり、韓国の脆弱な点は石油備蓄能力の方でしょう)。
     ただ、細かい点で文中に誤りがありますので、つまらない突っ込みがあっては不本意だと思い、老婆心ながら指摘させていただきます。
     まず、統計資料から引用されている数字は、石油製品を「燃料油類・潤滑油・アスファルト・グリース・パラフィン・LNG・LPG」に分けた「燃料油類」のみの数字です。各製品は体積あたりの価格が全く違うので、輸出入を比較する上でkℓで比較しても無意味でしょう。石油製品全体の輸出入総額で比較すれば、2018年は輸出(日本→韓国)が2,694億円、輸入(韓国→日本)が1,559億円となります。”むしろ日本が韓国から輸入している方が多いというのが実態です”というのは、残念ながら誤りです。
     また、日韓とも原油の大半を中東から輸入しており、したがって国内で生産される各種石油製品の内訳もほぼ同じです。しかし、各製品の国内需要はかなり違うので、需要の小さい製品は国内で消費できず輸出に回すことになります。要するに、お互いに余った分を交換するような形です。引用されている資源エネルギー庁の資料を最後まで読めばわかるとおり、この輸出分は生産コストほぼそのままの価格で販売されており、ほとんど利益になっていません。韓国はアジア通貨危機以降、国内の石油消費量が伸び悩んでいることもあって、余剰生産力はかなり大きいですが、そもそも輸出目的で石油製品を製造している訳ではなく、「輸出大国」という表現には違和感があります(もちろん、これは日本も同じです)。
     以上、再度資料をチェックしていただければ幸いです。

    返信
    1. takarabe 投稿作成者

      とおりすがりさん。興味を持って読んでいただいてありがとうございます。
      燃料以外の石油製品も含めた金額で比較すれば、必ずしも日本が輸入している方が多いわけではないというご指摘ありがとうございます。気が付きませんでした。
      また、日韓間の石油製品の輸出入はそれほど多いわけではなく、互いの国の石油消費量から比べれば、わずかな量に過ぎません。これもおっしゃるとおりです。
      ただ、韓国の場合は、年間の石油精製量9,000万KLに対し、輸出(主に東南アジア向け)は4,570万KLと、生産量のほぼ半分を輸出しています(2015年)。日本の輸出量1,300万KL(年間生産量16,000万KLの8%)と比較すると、韓国が輸出大国とまでは言い過ぎかもしれませんが、輸出量が如何に大きいかがわかると思います。
      少なくとも韓国は石油製品のほとんどを日本から輸入しているなどという話が如何にとんでもない間違いかということが分かっていただきたく、この記事を書いた次第です。

      返信
  3. 匿名

    巷で理解がされていないのが、原油から石油製品を精製すると特定の製品ではなく様々な石油製品が同時に精製されるということです。
    ところが国により必要量に違いがあるので、足りない分は買い足し余分な分は売るということが国家間で行われているので、結果として日本で余剰な軽油を韓国に売り、その帰り荷が灯油だということになっています。

    もう一点は韓国の製油所ですが、設備されたのが新しいものなので精製品質は良いものです。
    問題は国内需要を無視して大規模なプラントを建設したことです。
    原油を他国より調達できるなら石油製品を有利な輸出品目にできるのでしょうが、そんな目途もなく周りに石油精製技術を持った国々があるのに、大規模プラントを立てまくったために逆に少量精製できなくて、儲けがなくても大量に処理しなければならない状態にあります。

    返信
    1. takarabe 投稿作成者

      匿名さん
      私の記事を読んでいただいて、大変ありがとうございます。
      韓国の現状につきましては、まったく同意見です。ちなみに、匿名さんのコメントとほぼ同じ内容の記事「日本はレジ袋の原料を韓国から大量に輸入している」をほんの数日前に投稿いたしました。是非読んでみて下さい。
      ただ、少し誤解されているかもしれません。石油を精製すると確かに同時に様々な製品が製造されますが、現在の技術では結構、自由に製品構成を変えることができます。もちろん、海外との貿易によって調整することも行われています。このあたりの話は「原油から作られる石油製品の割合は決まっている? 連産品という誤解」に書いていますので、ご興味がありましたら、読んでみて下さい。

      返信

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