地球温暖化懐疑論・否定論を支持する人たちへ ちょっと視点を変えてみましょう

地球温暖化に懐疑的・否定的な議論

地球温暖化に対して懐疑論や否定論を唱える人たちがいます。地球は温暖化していないとか、地球は温暖化しているけれど、それは人間のせいじゃないとか。あるいは地球温暖化はまだ科学的に証明されたわけではないとか、学者の中でも未解決の問題だとか。

しかし、懐疑論を主張する一般の人たちは、自分で懐疑論を確かめたわけではなく、懐疑論を主張する学者や研究者や評論家たちが言っていることをただそのまま信じているだけかもしれません。

かくいう筆者も懐疑論者ではありませんが、はっきりと確証を持って、じゃあ地球温暖化が事実だと論じるほどの知識を持っているのか、と問われれば、そういうわけでもありません。この点では多くの方々と同じでしょう。

もちろん、懐疑論の中には、これはまったく問題外の主張だろうという話もよく聞くことがあります。

例えば、恐竜時代の温室効果ガスの濃度は今の10倍以上あったから、現在の温暖化は自然現象であって、人間のせいじゃない!とか

地球温暖化を主張する人は海面上昇が起こると言っているが、北極の氷が溶けてもアルキメデスの原理によって海面は上がらない。そんなことも知らない人が地球温暖化を主張しているのだとか

この程度の懐疑論なら、私だって反論することができます。

恐竜時代の温暖化ガスの濃度は今の10倍以上あったという主張に対して…
今問題になっている地球温暖化は産業革命以来の、ここ100年ほどのことを対象としています。恐竜が生きていた1億年前(つまり100年を100万回繰り返さなければならないほど昔の話)のことを持ちだして、現在の問題を議論しても意味がありません。

北極の氷が溶けても海面は上がらないという主張に対して…
温暖化によって海面が上昇するのは主に海水の温度が上がって熱膨張によって起こる、あるいは、陸地の氷河などが融けることによって起こると考えられています。北極の氷が溶けるから海面上昇が起こると主張されているわけではありません。

しかしながら、この分野の専門家のもっと高度な議論となると、私の知識では、てんで歯が立ちません。
国立環境研究所の江守正多さんのブログからそんな例を挙げさせてもらうと
http://ieei.or.jp/2020/03/opinion200310/

例えば
「地球温暖化の予測シミュレーションに用いられる気候モデルが、人工衛星による観測データと比較して、過去の対流圏の気温上昇を大幅に過大評価している」とか

「人間活動を原因とする過去の気温上昇量について「1.5℃報告書」が2013-2014年に出版されたIPCC第5次評価報告書に比べて科学的な厳密性を損ねている」とか

このような温暖化懐疑論が正しいのか正しくないのか、門外漢の筆者にはとんと判断がつきません。この記事をお読みの方(懐疑論を支持する方も支持しない方も)も、おそらく、このような議論が正しいかどうかを自分で判断できる方は、ほとんどいらっしゃらないでしょう。

もちろん、ブログを引用させていただいた江守さんは、このような懐疑論についても的確に否定されています。ただし江守さんに言わせれば、このような専門家による懐疑論は、正しいか正しくないかではなく、世間一般の人に対して

「地球温暖化はなにやら論争状態にあるらしい」

と思わせることが目的だというのです。

つまり、地球温暖化は専門家の間でも意見が分かれているとか、まだ十分解明されていないとか、だれも判断を下せないとか、そういう認識を一般の人に植え付けることができれば懐疑論としては成功ということになるのです。

では、懐疑論が間違いとも正しいとも明確に判断する材料も知識も持ってない私たち専門外の人間は、この問題についてどのように考えたらいいのでしょうか。

ここは少し視点を変えてみたいと思います。
突然ですが、異星人が地球に攻めてきたらどうするか。という話にお付き合い願います。

異星人が襲来してきたら人類はどうするか

ある日、ある天文学者が流星群を観察していました。その天文学者はその流星群から弱い電波が出ているのに気がつきます。その電波を増幅して解析してみると、なんと流星群は流星ではなく異星人が乗る何百隻もの宇宙船であり、電波は彼らが互いに交信するのに使っているということが判明しました。

その天文学者の発見によって、世界中の天文学者がその流星群に望遠鏡を向けました。その結果、衝撃的なことが明らかになったのです。

実は、彼ら異星人の目的は地球を侵略することだった! のです。

電波望遠鏡

これが本当なら人類存亡の危機です。この問題は、当然ながら国連に持ち込まれました。
では、国連はどうするでしょうか。早速地球防衛軍を組織して、宇宙人との闘いの準備を行う?でしょうか。

いやいや、それも大切ですが、その前に国連はやることがあります。それは異星人による地球侵略が本当に正しいのかを確認することです。だって、流星群から来る電波はとても微弱ですし、異星人どうしの会話の翻訳はなかなかむつかしいのです。

さらに、もし異星人が地球を侵略しようとしているのなら、その異星人はいつごろ地球にやってきて、その軍事力はどのくらいあって、地球人類はどのくらいの被害を受けるのか などを検証しなければなりません。

異星人の弱点を探り、人類がその被害を避けるために、どのように対処することが必要となるのか、ということも調査することが必要となるでしょう。

では、国連大使や国連職員にそれができるでしょうか。
それはもちろん無理。かれらは外交官であり、役人に過ぎないからです。ではどうするか。

彼らは、各国に呼び掛けて天文学や宇宙物理学、言語学さらに軍事などに詳しいエキスパートを国連に派遣してもらい、調査チームを作って調査に当たらせることになるでしょう。そのように組織化して管理していくことこそ、外交官や役人の素晴らしい能力なわけですから。

こうやって組織化された調査チームは精力的に調査を続け、それまで明らかになった事実を収集し、それを冷静な目で評価し、分析し、今後人類は、どのような対策を取ればいいのかを報告書としてまとめ、報告することになりました。

さて、ではその報告はどんなものになったのでしょうか。

やはり流星群は単なる流星群であり、異星人が地球を侵略することはないという報告なら、世界の人々はホッと胸をなでおろすでしょう。よかったよかったと。

しかし、その報告はそうではありませんでした。
「やはり流星群は異星人の宇宙船であることに疑いの余地はなく、その異星人は地球を侵略しようとしていることにほぼ間違いない。そして、その侵略の結果、人類は甚大な被害を受けるだろう」
というものでした。

その報告を聞いた世界の人々は大騒ぎになりました。国連はその調査チームの報告をもとに世界の首脳に対して、地球防衛軍を組織し、来るべきスターウォーズに備えるよう、訴え始めたのです。

話をもどそう

この安っぽいSF小説のような話で筆者は何を言いたいのかとお怒りの方もいらっしゃるかもしれません。あるいは、察しのよい読者の方はもうお分かりかもしれません。ここで筆者が言いたいのは、異星人の侵略を地球温暖化に読みかえていただきたいということです。

40年ほど前、一部の学者たちが大気中に増えつつあるCO2が地球を温暖化する可能性があると言い始めました。この説は多くの学者たちに支持され、あるいは不支持され、論争となっていきました。

もし、地球温暖化が事実ならば、これによって人類は大きな脅威にさらされることになります。この論争は国連の場に持ち込まれましたが、もちろん外交官や国連職員にはどっちが正しいかわかりません。そこで、国連は各国から選ばれた学者や研究者などで編成された調査チームに委託して、地球温暖化が事実かどうかの調査を行わせたました。

ここまでの話は、異星人襲来と地球温暖化を入れ替えても、ほぼ同じです。国連は同じように行動するでしょう。

国連が調査を委託したチームは、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)略してIPCCといいます。IPCCは世界気象機関(WMO)と国連環境計画 (UNEP)により設立された組織で、国連の気候変動枠組条約の裏付けとなる科学的調査を行うという位置づけとなっています。

IPCCは1988 年から活動をはじめ、5~6年ごとに報告書を提出しており、その最新のものは2013年から2014年に提出された第5次報告書です。
では、その最新の報告にはどんなことが書かれているのか。主なものは以下のとおりです。

① 地球温暖化は疑う余地がない
② 人間活動が温暖化の支配的な要因であった可能性が極めて高い(可能性95%以上)
③ 今世紀末までの世界平均地上気温の変化予測は0.3~4.8℃である可能性が高い
④ 今世紀末までの世界平均海面水位の上昇予測は0.26~0.82mである可能性が高い

つまり、地球温暖化は起こっており、この温暖化は人類が大気中に放出したCO2をはじめとする温室効果ガスが原因であることにほぼ間違いないということです。

この報告を受けた国連は各国に地球温暖化を緩和するための行動を呼び掛けて、現在、多くに国々がこれに従って行動しているというのが現状です。
つまり、異星人が襲来するときと同じ手順に従って、国連や各国は動いているのです。

なぜ私はIPCCの報告を信頼するのか

もちろん、地球温暖化の懐疑派、否定派はIPCCの報告を信用していません。例えばアメリカのトランプ前大統領は、地球温暖化を完全に否定して世界第二の温室効果ガス排出国であるアメリカをパリ協定から離脱させ、地球温暖化対策にはほとんど関心を示しませんでした。

しかし、私はIPCCの報告を信頼します。その理由は次のとおりです。

① IPCCには責任がある
IPCCは調査結果を国連に報告するという義務があります。そして、その報告に基づいて世界が動きますから、今後の世界の動きを左右するという大きな責任があります。

一方、懐疑論者にはなんの義務もありません。たとえ彼らが間違った意見を広めて、その結果、人類が大きな災禍を被ったとしても、かれらには何の責任もないのです。

② IPCCは800人以上のエキスパートが集まっている
科学的な結論はもちろん多数決で決まるものではありません。しかし、多人数のエキスパートが集まって大量の情報を収集し、様々な角度から分析していけば、より間違いの少ない結論を出すことができます。

また、たとえIPCCのメンバーのうちの誰かが、金銭的な利益や、圧力を受けて、IPCCを事実と異なる方向へ導こうとしても、構成人数が多ければ勝手なことはできません。

一方、懐疑論者はだいたい個人で行動しますから、彼らの主張についての科学的な検証はIPCCに比べて極めて薄いものになります。さらに、ある特定の組織や団体から依頼されて(例えば研究費の提供とか)、その団体に有利なように主張している可能性もあるのです。

議論は継続してもいいが、行動に移すべき

専門家でない一般の人々が地球温暖化という極めて専門的な科学を完全に理解するのは不可能です。だから、一部の学者や専門家と称する人たちがもっともらしい懐疑論を述べると、それに賛同する人たちが出てきます。

温暖化はまだ科学者の間でも議論が分かれているとか、まだ科学的に解明されていないとかいう人もいますが、世界中から集められた800人を超すエキスパートで組織されたIPCCが世界中の科学者が執筆した膨大な文献やデータを詳細に分析した結果、地球温暖化は間違いないと結論づけられているわけですから、今さら学者の間でも議論が分かれているというのは実態に合っていないでしょう。

いやいやIPCCの言うこと自体が信頼できないという人もいます。では、どうすればいいのでしょう。また、国連が新たに調査チームを作って調査を行わせるのでしょうか。多分、同じ結果が出てくるでしょう。

実際問題としていつまでも調査や議論ばかりをやっているわけにはいきません。
もちろん、懐疑論者の言うことを無視していいというつもりはありません(まともな主張であればということですが)。それはそれで議論を続けることは結構ですし、そうすべきだと思います。
その結果、IPCCが間違っていたということが将来的にありうることは否定しません。

しかし、それとは別に国連が委託した調査の結果が出ているわけですから、国連はその結果に従って、次の段階、つまり地球温暖化の緩和へ進まなければならないのです。

先ほどの異星人襲来の例でいえば、もう異星人はそこまで迫っているのです。もうそろそろ地球防衛軍を組織しなければなりません。

今年、トランプ前大統領が退任して、アメリカはパリ協定に復帰しました。日本でも昨年末、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという方針を打ち出しました。ヨーロッパや中国ではすでに温暖化防止へ目標を立てて進んでいます。

懐疑論者・否定論者には気にくわないことかもしれませんが、世界はこういう流れになっているのです。

2021年2月14日

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