昔はもっと温暖だったんだから地球温暖化は人間のせいじゃない? 八つぁん、熊さんの気候変動談義

八つぁん「おい熊、知ってるか。俺たち石油とかガスとか化石燃料てぇもんを随分使っているだろう。そうするてぇとCO2というものが出てきてな、それが原因でどんどん気温が上がってしまうってんだ。」

熊さん「おう、知ってるぜ。温室効果って奴だろう。確かに子供ん時に比べれりゃ夏は暑くなっているし、冬も雪が少なくなっているように感じるな。」

八「だろう。俺ぁ、ただでさえ夏の暑さにはからっきし弱いってのに、これ以上暑くなったら、たまんねぇよな。」

熊「しかしな、そりゃ化石燃料ってやつのせいじゃないだぜ。大家さんから聞いた話だけどよ、地球はな、暑くなったり寒くなったりしてるんだ。恐竜が生きてた時代なんかよ、今よりずっと暑かったけどな、そのお陰で、おまえ木や草がすくすく育って、恐竜ってもんもでっかくなりやがった。縄文時代だって、今より何度も温度が高かったっていうじゃないか。」

八「そうか。恐竜や縄文人が化石燃料使ってたわけないしな。それでも気温が高かったってなら、こりゃあ化石燃料のせいじゃねえな。それでも人間は生きてきたんだし、ちょっと我慢すりぁ問題ないってことか。」

地球温暖化は自然現象なのか

化石燃料を使って温室効果ガスが増えたため、地球が温暖化しているといわれているが、恐竜が生きていた時代や縄文時代は気温も今よりずっと高かった。地球は氷河期だったり、温暖な気候だったりを繰り返しており、地球の気温は自然に変化するから、地球温暖化もその一環だ。人間が化石燃料を使ってCO2を出すことによって起こっているわけではない。

このような議論を聞くことがあります。確かに地球の気温は一定ではなく、寒冷だった時期と温暖だった時期があります。極端なことを言えば、46億年前に地球ができたとき、地球は1000℃以上の高温で、岩石は溶けてマグマの海になって火の玉のようになっていました。

一方、ある時代には、寒冷化が進んで地球全体が氷におおわれて、雪玉のようになったことも何度かあったといいます。つまり、地球は自然に温暖化したり寒冷化したりしているのであって、人間が化石燃料を燃やしたから気温が上がっているわけではないというのです。

しかし、このような話を聞いたときに、いつも感じるのは、昔は…と言うときに、それがどのくらい昔の話をしているのかということです。恐竜時代と縄文時代あるいは江戸時代では年代が全然違います。どの時代の話をして地球はもっと暑かったとか寒かったとか言っているのかをまずはっきりさせなければ議論になりません。

私たちが議論している地球温暖化問題というのは、今から100年ほど前から人類が化石燃料を大量に使用し始め、それによって大気中のCO2が増え、それが原因で地球が温暖化しているのではないかという話です。つまり、100年前に比べて気温が上がっているかどうかということなのです。

恐竜時代はもっと気温が高かった

恐竜が生きていたジュラ紀と白亜紀(1億4500万年前 ~ 6600年前)には、大気中のCO2濃度は現在の10倍から20倍くらいあり、気温も今より10℃程度高く、北極でも平均気温が15℃くらいあったと言われています。

だから今の地球温暖化は恐竜が生きていた時代に比べればどうってことはない。気温の変化なんて自然現象だと言う人がいます。しかしながら、恐竜の時代というのは今から1億年も昔の話なのです。

ひとことで1億年というと、そんなに昔の話ではないようにも思えます。でも1億年というのは、地球温暖化問題が対象としている100年間が、実に100万回も繰り返すほど昔の話なのです。そのころ人間は存在しなかったし、人類どころか、サルも、犬も、馬も、カバも、ライオンもまだまだ存在しなかった。そのくらい昔の話なのです。

地球は46億年前にできました。それから現在までを年表の形にして、恐竜の時代と人類が化石燃料を大量に使い始めた今から100年前を示したのが下の図です。

地球ができた46億年前と恐竜の時代の1億年前と100年前の関係を示そうとしましたが、100年前というのが余りにも短かすぎて1本の年表に表すことができません。それで、年表の最後の方だけを拡大して、さらに拡大して、もう1回拡大して、ようやく100年という時間を表示することができました。

地球の歴史、あるいは恐竜の時代の1億年前と比較して、今問題としている地球温暖化というのは、これくらい短い期間の話なのです。人類が存在しなかったような遠い遠い昔の話を持ち出して、昔はもっと暑かったから平気だといわれてもどうでしょう。

恐竜は6600万年前に絶滅し、そのあとようやく哺乳類が繁栄し始めました。そして地球は恐竜絶滅後も、気温が高いときや低いときを繰り返し、恐竜時代よりずっと気温が下がってきた時代に人類が生まれたのです。

その当時の気候が恐竜にはちょうど良かったかもしれませんが、あいにく人間はそんな温かい時代に適応して誕生したわけではありません。きっと恐竜時代の気候は人間にとって心地の良い環境ではないでしょう。

恐竜の時代には今よりずっと気温が高かったというのは事実ですが、それは人類が生まれるずっと、ずっと前の話。今問題としている、ここ100年間の気温の上昇とは全く関係のない話です。

ミランコビッチサイクル

地球の気温は最近、といってもここ100万年くらいのことですが、気温が低い氷期と比較的暖かい間氷期がほぼ10万年の周期で繰り返されていることがわかっています。この気候の繰り返しはミランコビッチサイクルが原因だといわれます。

ミランコビッチサイクルは地球の公転軌道の離心率、自転軸の傾き、自転軸の歳差運動という地球の動きが周期的に変化することによって発生する変動です。この3つの周期が重なって、10万年の周期で日照時間が変化する。これによって地球の気温が周期的に変化するというわけです。

恐竜時代の1億年前に比べれば10万年の周期というのは、地球温暖化を考える上で検討すべき事象だと思います。人類(ホモサピエンス)が出現したのが約20万年前ですから、人類はこのミランコビッチサイクルを2回ほど経験しているわけですから。

では、今問題にしている地球温暖化もミランコビッチサイクルの一環なのでしょうか。残念ながら、これも違うようです。ミランコビッチサイクルは1サイクルが10万年の長さで、この間に10℃ほどの気温の変化があります。

サイクルの気温の山と山の間が10万年ですから、5万年で最低温度から最高温度おまで10℃上がると考えれば平均すれば100年で0.02℃。これはこの100年間の地球温暖化問題で1℃以上上昇していることと比べると、非常にゆっくりとした変化に過ぎません。

なお、ミランコビッチサイクルによれば、もうそろそろ地球は氷期に入ってもおかしくないといいます。しかし、実際には地球は温暖化しているわけですから、このことからもミランコビッチサイクルは地球温暖化の原因ではないことが分かります。

ホッケースティック曲線

下の図は紀元1年から現在までの約2000年間の地球の温度変化を示したものです。温度は19世紀後半の平均気温との温度差を示しています。

この図を見ればわかるとおり、地球の平均気温にはかなりバラツキがありますが、その傾向をみると、紀元1年(弥生時代)から1000年までの間、地球の平均気温はだいたい19世紀後半に比べて0.3℃高く、ほぼ一定でした。そして、紀元1000年(平安時代)以降、やや下がり始めています。

しかし、下がったと言っても0.4℃ほどです。ところが、今から100年ほど前から、地球の平均気温は急激に上昇しはじめ、たった100年の間に、1.1℃上昇しています。この急上昇はバラツキの範囲を大きく超えて明らかに異常な上昇であることがわかるでしょう。

また、この図の左側に、過去10万年(つまりミランコビッチサイクル1回分)におけるもっとも気温が高かった数世紀の気温の範囲についても示されていますが、最近の100年間の気温の上昇は、それとほぼ同じくらいか、それ以上の急激な温度上昇が起こっていることを示しています。

この曲線はちょうどホッケー競技で使うスティックの形に似ているので、ホッケースティック曲線と言われます。

実は、このホッケースティック曲線はデータの根拠や処理方法に問題があると指摘され、様々な批判を浴びてきました。そのため、IPCCの第3次報告書には記載されていたのですがが、第4次と第5次の報告書では削除されていました。

このホッケースティック曲線に対して厳しい非難の目が向けられるのは、ひとつにはこのグラフを見れば地球が急激に温暖化していることが一目瞭然だからでしょう。これほど分かりやすい図はありません。だから温暖化懐疑論者にとっては認めづらく、そのためいろいろと批判されてきたのかもしれません。

しかしながら、このホッケースティック曲線については、第6次報告書には再び掲載されることになりました。多分、IPCC内でも議論があったものと思いますが、これはやはりデータの精度が上がり、この曲線が確実になってきたとIPCCが判断したのでしょう。

もちろん、今後もこの曲線の信ぴょう性について議論されることになるでしょうが、この図が正しいとするなら、ここ100年間における気温の上昇は、地球の自然な温度変化では説明できません。やはり産業革命以降の空気中の温室効果ガス(GHG)濃度の上昇が原因と考えるべきと思われます。

これからどうなるか

では、これから地球の温度はどうなっていくのでしょうか。
下の図は人間が排出したCO2の累積量と地球の温度の関係を示したものです。黒線の部分が過去の実績ですが、CO2排出量が増えるほど、それに比例して気温が上がっていることが分かります。

したがって、今後、地球の気温がどの程度上昇するかは温室効果ガスがどれだけ排出されるかによるでしょう。

地球の気温についてのシミュレーションによると、2100年に予想される地球の気温は、GHG排出量が最も少ないケースで1.4℃、最も多いケースでは4.4℃まで上昇すると予想されています。(上の図の色付きの部分)

2021年にグラスゴーで開かれたCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)では、気温上昇を1.5℃に抑えるよう各国が努力することで合意が得られました。気温上昇を1.5℃以内に抑えるためには、2030年までにGHG排出量を2010年比で45%削減し、2050年までに実質的にゼロにすることが必要と言われています。

地球の気温は毎日、上がったり下がったりしているし、もちろん夏と冬でも違います。また、同じ夏でも気温の高い夏もあれば、低い夏もあります。だから、地球が温暖化しているか寒冷化しているかを見極めるのは非常に難しいことです。

また、地球が温暖化していることが観測によって確実になったとしても、ミランコビッチサイクルのように周期的に高温になったり低温になったりする自然の力があります。そのほかに火山の噴火とか、太陽活動の変化などが原因で気温に変化が起こる可能性があります。

だから、人類活動のせいで温暖化が進んでいるのか、それとも自然現象かの判断は難しいでしょう。しかしながら、IPCCの第6次報告書では、これらの自然現象を考慮しても、ここ100年の間に急激に気温が上昇しているのは、蓄積されたデータから判断して、人間活動が原因であることに疑う余地がないと結論付けています。

八「てーことは、最近暑くなってるってのは自然現象じゃなくて、やっぱ俺たち人間がやり過ぎたってことか。少し反省しろってこったな。」

2022年5月11日

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