EUは2035年以降もエンジン車の販売を認めた?
昨年12月、 EUは2035年以降も乗用車と小型バンについてe-fuelとバイオ燃料の使用を認めると発表して話題になっている。EUは域内で販売される乗用車と小型バンから排出されるCO2の量を段階的に下げていき、2035年にはゼロとすることを決定している。この結果、2035年以降は現在のガソリンや軽油を使ったエンジン車の販売が事実上できなくなる。
これを日本のマスコミは、EUは2035年以降、エンジン車の販売を禁止し、EV以外は認めないなどと報道しているが、ちょっと違う。実際はCO2の排出量規制であり、エンジン車の販売を禁止するということでも、EV以外認めないということでもない。
といってもCO2の排出をゼロにするのだから、EV以外はないじゃないかとおっしゃる方もいるかもしれない。しかし、トヨタが開発している水素エンジン車も、豊田自動織機やデンヨーなどが開発しているアンモニアエンジン車もいずれもエンジン車だがCO2を出さないからOKである。
マツダはガソリンを燃やして出てくるCO2を回収して外に出さない機構を開発中であり、これもCO2を出さないからOKということになる。ただし、これらはまだ開発段階であり、市販されているわけではない。
ところが、昨年12月にe-fuelやバイオ燃料を使用した場合に限り、車両からのCO2排出を認めるということをEUが発表した。ただしこれは、エンジン車だから認めたということではない。e-fuelやバイオ燃料はその製造過程でCO2を吸収しており、その吸収量と車両から排出されるCO2の量が一致するため、実質的にCO2を排出していないと考えられるからである。
断っておくが、e-fuelやバイオ燃料の使用を認めたからといって、ガソリンや軽油を使う従来型のエンジン車の販売が認められたという話ではない。EUが規制しているのはCO2であって、エンジン車はダメとかEVしか認めないと言っているわけではなく、CO2を排出する車はe-fuelとバイオ燃料を使う車以外は販売禁止である。
とはいえ、e-fuelとバイオ燃料を使った場合はエンジン車でも販売可能という選択肢が出てきたことになる。ということで、2035年以降、なくなるといわれていたエンジン車も生き残る可能性がでてきた。
EUが認めたe-fuelとバイオ燃料、この二つの燃料の共通点はどちらも原料がCO2と水ということである。CO2は空気に含まれているから、水と空気から作られた燃料ともいえる。
しかし、実はこの二つの燃料には根本的な違いがある。それはe-fuelのエネルギー源が電力であるのに対して、バイオ燃料の場合は太陽光であるという違いである。そして、それが今後の普及に大きく関係してくる可能性がある。
これは筆者の予想であるが、現在のEUの規制がこのまま継続されるとすれば2035年以降はやはりEVが主流となり、e-fuelとバイオ燃料を使うエンジン車はわずかな割合を占めるに過ぎないだろう。その中でもバイオ燃料が一定の割合を占め、e-fuelの普及は難しいと考える。
e-fuelの可能性
e-fuelは既に述べたようにCO2と水から作る燃料で、合成燃料の一種である。e-fuelを作るには、まず水を電気分解して水素を作り出す。水素はそれだけでも燃料として使うことができるが、気体だから使いづらい。だから空気から回収したCO2と反応させて常温で液体の燃料とする。
水素もCO2も気体であるが、これを液体にするにはフィッシャー・トロプシュ反応を使う方法と、一旦メタノールを作っておいてからMTG法という方法で液体燃料に転換する方法がある。
できた液体燃料はガソリンや軽油と同じものだから、そのまま自動車の燃料として使えるだけでなく、ガソリンや軽油の流通システムがそのまま使え、全国にあるガソリンスタンドで販売することができる。この点がe-fuelの売りだ。
e-fuelは世界中で開発が進められていて、例えばドイツのポルシェなどが支援しているHIFグローバルという企業は2022年からすでにe-fuelの出荷を開始している。
水と空気から燃料ができるというと驚かれるかもしれない。そんなうまい話があるのならなんで今までやらなかったのかと。しかし、実はそれほどうまい話ではない。
なぜなら原料となるCO2や水はエネルギーがゼロの物質だからだ。つまりCO2も水も燃えない。燃えないものからエネルギーを取り出すことはできない。だからCO2と水から燃料を作り出すためには、何らかの形でエネルギーをCO2と水に与えなければならない。
e-fuelの場合、そのエネルギーは電力である。e-fuelを作るときには、水を電気分解することを思い出してほしい。電気分解によって、水というエネルギーゼロのものから水素という高いエネルギーを持つものを作りだす。このとき大量の電力エネルギーが使われるのである。
その高いエネルギーを持つ水素を水と同じくエネルギーゼロのCO2と反応させて、その中間のエネルギーを持つe-fuelが作り出されるわけである。e-fuelを燃やせば、またもとのCO2と水に戻るわけだから、e-fuelを製造するときに使ったCO2と水は電気エネルギーを蓄えるための媒体に過ぎない。
ちなみにe-fuelの「e-」はelectricつまり電気のこと。そしてe-fuelとは電気燃料という意味である。
しかし、電気を使ってe-fuelを作り、そのe-fuelを使って車を走らせるくらいなら、電気をそのまま使ってEVを走らせる方が簡単であるし、水を電気分解するときや、水素とCO2を使ってe-fuelを作るときに、エネルギーはどんどん逃げていく。
結局、e-fuelが蓄えた電気エネルギーは投入した電気エネルギーの何分の1にしかならないから、エネルギーを蓄える方法としては非常に効率の悪いやり方なのだ。
最近のように、バッテリーの改良が進んでEVの性能が向上してきていることを考えると、乗用車や小型バンのような用途にはバッテリーを使うべきで、e-fuelを使うのはもったいない。電気ではどうしても都合の悪いような用途、例えば航空機や船舶用などにe-fuelに使うべきである。
ということで、2035年以降もe-fuelを使った車の販売が認められるとしても、その台数は限定的になるだろう。
では、バイオ燃料の方はどうなのか。これは次の記事で。
2026年2月23日


