ガソリンにマッチの火を近づけても火はつかない?ウソ

1.ガソリンに火をつけたらどうなるか

コップやバケツに入れたガソリンにマッチの火を近づけるとどうなるでしょう。火はつかないで消えてしまう。あるいは火がついても、そんなには激しく燃えないだろう。と意外に多くの人たちがそう思っているようです。そんなことはありませんから十分気を付けてください。

学生時代、液体のガソリンにマッチの火を近づけると火がつくのかどうか、ということで、ほかの学生たちと論争になったことがあります。
液体のガソリンにマッチの火を近づけると火がつくという者と、液体のガソリンに蝋燭の芯のようなものが刺してあれば、その芯が燃えることはあっても、ガソリンの液面がボーボーと燃えることはないという者に分かれました。

ではやってみようということで、ビーカーに少量のガソリンを入れ、ドラフトチャンバーという排気設備のある容器の中でマッチの炎を近づけてみました。するとあっという間にガソリンに火がつき、真っ赤な炎を立ててボーボーと燃え続け、結局ガソリンが燃え尽きるまで燃え続きました。

やはり学生時代、ある先輩が廃材を燃やそうと、ガソリンを撒き、火のついたマッチを持って行ったところ、廃材から1mくらい離れた位置で、でいきなり着火して先輩が火に包まれてしまうのを私は見たことがあります。幸い炎は一瞬で消えたので事なきを得ましたが、もう少しで大変な火傷を負うところでした。

このようにガソリンはマッチやライターの着火源があれば簡単に火がつきます。いや着火源をガソリンまで持っていかなくても、かなり離れたところでも火がついてしまうので注意が必要です。

ガソリンに火がつかないと思っている人は灯油と間違えているのかもしれません。灯油はマッチやライターの火では簡単に火がつきませんが、ガソリンは簡単に火がついてしまします。ガソリンと灯油は違います。

2.なぜガソリンには火がつきやすいか

一般に、火がつくには、燃える物(この場合はガソリン)と空気(中の酸素)と着火源の3つが必要です。灯油に火がつかないのは、灯油が蒸発しにくく、空気と混ざる灯油蒸気が少ないからです。つまり、燃える物と酸素の接触が少ない。(ただし、灯油も温度が上がると着火しやすくなる)

ガソリンの場合は蒸発しやすいため、この蒸気が空気と混ざってしまいます。つまり、ガソリン蒸気と酸素の接触が多いわけです。

蒸気の濃度が一定の範囲に入っているときにマッチやライターのような着火源があれば着火することになります。この火がつく蒸気の濃度を爆発限界といい、ガソリンの場合は1~7%といわれています。また、爆発限界に入っている空気の状態を爆発混合気といいます。

実はガソリンが燃えるのは、液体のガソリンが燃えているわけではなく、ガソリン表面から蒸発した蒸気が空気と混ざって爆発混合気を作り、これが燃えているのです。

先の例で先輩が火に包まれたのは、火のついたマッチを持ったまま、ガソリン蒸気が空気と混ざっている領域(つまり爆発混合気)に入っため、その領域全体が燃えだして炎に包まれたというわけです。そのあとすぐに炎が消えたのは、ガソリンが燃え尽きて燃える物がなくなったからでしょう。

以前にも、名古屋の運送会社で、男が事務所の中にガソリンを撒いて火をつけるぞと脅したことがありました。結局、事務所は爆発して人質と容疑者および警察官の3名が亡くなるという悲惨な事故がありました。

犯人はガソリンに火をつけてもぼーと燃えるくらいで、爆発するとは思ってなかったのかもしれません。

しかし、ガソリンを撒いてしばらくするとガソリンが蒸発して空気と混ざり、部屋の中全体が爆発混合気になってしまいます。この状態で火をつけると、部屋全体が一斉に燃えだし、爆発的な燃焼を起こします。これが爆燃と言われる現象です。

京都アニメーションの放火事件でも、容疑者が大量のガソリンを撒いたということですから、夏場で気温が高かったこともあり、ガソリン蒸気が部屋の中に充満して広い範囲で爆発混合気を形成していたと思われます。

これに火をつけると爆発混合気になった部分が一気に火に包まれることになります。つまり爆燃です。爆燃が起こってもガソリン蒸気はすぐに燃え尽きてしまいますが、あとに炭素の粒子(黒煙)と猛毒の一酸化炭素が残ります。

その炭素の粒子と一酸化炭素はガソリンの燃焼熱によって温められて軽くなり、らせん階段を一気に登って2階、3階で大きな被害を出したと思われます。

3.タバコの火による誤解

ところで、容器に入ったガソリンに火のついたタバコを投げ入れても火はつかないという実験結果があるそうです。

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こういう情報が、ガソリンは火がつきにくいという誤解を生んでいるのかもしれません。
なぜ、火のついたタバコをガソリンに投げ入れても火がつかないのかは、浅学にして知りませんが、タバコに火をつけるためのライターやマッチの炎なら簡単に火がついてしまいます。

タバコの火で着火しないとしても、これでガソリンには火がつきにくいということにはなりません。ガソリンの近くでは喫煙も含めて火気厳禁です。

追記:京都市長の発言について

京都アニメーション放火事件のあった日の夜、京都市の門川大作市長は参院選候補者の応援演説で「火事は3分、10分が大事。選挙は最後の1日、2日で逆転できる」と述べたそうです。(京都新聞 7/19(金) 7:00配信)

この悲惨な事件を応援演説に利用するという無神経さは取り敢えず置くとして、火事は3分、10分が大事と言っても、それは通常火災の場合です。この市長はガソリンを撒いて火をつけても、ぼーぼーと燃えるだけなので、初期消火をすればよいとでも思ったのでしょうか。
ガソリンの爆発混合気に着火した場合は、爆発的な燃焼を起こすので、3分の余裕などとてもなかったはずです。京アニが初期消火を怠ったとも取れるような市長の発言は、怒りしかありません。

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