ガソリンのオクタン価は100以上にならない?
ときどき、
「ガソリンのオクタン価とは、そのガソリンに含まれるイソオクタンという成分の割合のことだ」
とか
「イソオクタンが100%のときオクタン価が100になるのだから、ガソリンのオクタン価は最大100で、それ以上にはならない」
とか聞くことがあります。
確かにオクタン価のオクタンとはイソオクタンというガソリン成分の名前が由来になっているけど、それはガソリンのオクタン価を測るときの目安にしているだけ。
だからガソリンスタンドで車に入れるガソリンがオクタン価100だとしても、イソオクタンが100%だというわけではないよ。
オクタン価はどうやって測るか
ちょっと遠回りになるけど、オクタン価って、どうやって測るのかってことから説明するね。
オクタン価の測定方法は、実はとっても原始的で、しかし最も確実な方法なんだけど、実際にエンジンでガソリン燃やしてノッキングが起こるかどうかを測定するんだ。
といってもエンジンが変わると測定値も変わってしまうので、オクタン価を測定するときは、世界的に決められた同じ型のエンジンを使って測定することになっているんです。
このエンジンは圧縮比を変更することができるように設計されているから、測定しようとするガソリンを使ってエンジンを動かし、少しずつ圧縮比を上げていく。やがてノッキングが発生するので、その時の圧縮比を測定する。
一方、イソオクタンとノルマルヘプタンという物質をいろいろな割合で混合した標準燃料というものを前もって作っておいて、これを燃料として同じエンジンを運転し、測定しようとする同じ圧縮比でノッキングを起こす標準燃料を見つけ出して、その標準燃料のイソオクタンの割合をオクタン価とするんだ。
わかりにくいね。説明がへただね。分かりやすく例をあげれば、あるガソリンのオクタン価が90だとしたら、それはイソオクタン90%とノルマルヘプタン10%を混ぜた標準燃料と同じ圧縮比でノッキングを起こすということだ。イソオクタンが含まれる割合を指標とするからオクタン価というわけだ。
誤解2 オクタン価はガソリンに含まれるイソオクタンの割合で決まる
これは、ある新聞の解説記事に載っていたウソ。ガソリンのオクタン価を測定するときにその指標となる標準燃料として、イソオクタンとノルマルヘプタンを使っているだけで、市販されているガソリン自体がイソオクタンとノルマルヘプタンでできているわけではない。
多分、記者が理解不足でそんな記事を書いたのだろうね。
実際のガソリンは何種類もの分子でできていて、イソオクタンとノルマルヘプタンだけでできているわけじゃない。そのガソリンの成分にはオクタン価の高いものもあれば低いものもある。
そのガソリンに含まれる成分のそれぞれのオクタン価のだいたいの平均値でガソリンのオクタン価が決まるんだ。ただし、完全な平均値にはならなくて、少しずれるけどね。
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誤解3 ガソリンのオクタン価は100以上にならない
オクタン価はイソオクタンが100%のときのアンチノッキング性能を100と定義している。だからオクタン価は100以上にならないという誤解が生まれたんだと思う。
上に述べた新聞記事のように、ガソリン成分がイソオクタンとノルマルヘプタンの二つからできているなら、オクタン価は100以上にはならないけど、実際にはさまざまな成分が含まれている。その成分の中には、オクタン価が100以上の成分も存在するんだ。
たまたま、オクタン価という考え方を提唱した人が、手に入る試料の中でオクタン価の高いイソオクタンをオクタン価100と定義しただけであって、これよりもオクタン価の高いガソリン成分も実際には珍しくはない。
例えば、トルエンやキシレンのような芳香族成分は、ほとんどオクタン価100以上を示すし、そのほかイソパラフィンやオレフィンにも100を超えるものがある。日本でも地球温暖化対策として加えられるエタノールやETBEはなんと110を超えている。
こういうオクタン価100を超える成分をガソリンに配合すれば、当然ガソリンのオクタン価は100を超えることができる。
また、アルキル鉛のようなオクタン価向上剤と呼ばれる物質を入れれば、オクタン価を100以上に上げることができる。ただし、日本の市販ガソリンにはアルキル鉛は添加されていないけどね。
なお、航空機用燃料(ジェット燃料じゃなくてプロペラ機用)やレース用自動車燃料にはアルキル鉛が添加されたオクタン価の高いガソリンが使われることがあるそうだよ。
2020年6月14日
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航空機燃料ではオクタン価が100を超えた物はオクタン価ではなく、出力比率として扱われパフォーマンスナンバーとなります。鉛添加の100/130(緑色)とかありますけどね。
匿名さん
コメントありがとうございます。勉強になります。