アスファルトは石油のカスから作っているからカスファルトである?

道路の舗装に使われるアスファルトは原油の残りカスみたいなものですよね。と聞かれることがあります。口の悪い人になると、アスファルトは石油のカスから作るからカスファルトの方がいいんじゃないと。なるほどカスファルトとはよく言ったものだと思います。


1.アスファルトの製造工程

次の図は原油からアスファルトを作る工程を模式的に示したものです。輸入されてきた原油はまず常圧蒸留装置という装置に導入され、ガソリンや灯油や軽油など(の原料)が取り出されます。これらを取り出した残りを常圧残油と言いますが、常圧残油はさらに減圧蒸留装置に送られて、真空蒸留という方法で減圧軽油というものが取り出されます。この減圧軽油を取り出した残りが減圧残油と言われるもので、この一部がアスファルトになります。

アスファルトの製造工程

と言うと、アスファルトは残り物のさらに残り物だから、やっぱり石油のカスだよねということになりそうですが、実はそうではないのです。

2.アスファルト舗装道路の作り方

アスファルトは道路の舗装用に使われますが、実は舗装道路に含まれるアスファルトの割合はわずかに5%に過ぎません。残りは小石(砕石)や砂、それに石粉と呼ばれる細かな石の粉でできています。

アスファルト舗装材を作る装置(アスファルトプラント)では、砕石、砂、石粉それにアスファルトを180℃程度まで加熱した後、所定の割合いで混合してアスファルト合材というものを作ります。
アスファルト合材は舗装工事現場にダンプトラックで運ばれて、舗装する道の路盤に敷きならされ、ローラーで圧迫し、整えます。あとは合材が冷えて温度が下がれば、カチンカチンに固まって、舗装道路ができるというわけです。

アスファルト合材に含まれる砕石、砂、石粉およびアスファルトの割合は規格があって、厳密に決められています。この割合が間違っていると舗装の強度が足りず、すぐに壊れてしまうことになりかねません。

ですから、舗装工事が終わったあと、工事の発注者(多くの場合、国や地方公共団体)は舗装体からサンプルを取って、検査機関に送って、規定通りの配合になっているかを確認してから工事を受領します。アスファルト舗装工事というのは案外デリケートなのです。

で、舗装にわずか5%しか含まれないアスファルトですが、これは砕石や砂、石粉を結び付ける接着剤の役割を担っています。ですからアスファルトがしっかりしていないと、砕石や砂などが結合せず、頑丈な道路道路ができません。

3.アスファルトの品質は原油の種類と運転方法で決まる

そのアスファルトですが、実は先ほど説明した減圧残油のすべてが、優秀な接着剤になるわけではないのです。道路舗装用のアスファルトには厳密な品質規格があり、特に硬さ(針入度といいます)と柔らかくなる温度(軟化点)それに高温粘度(180℃粘度)に厳密な決まりがあります。その理由は次のとおりです。

  • 硬さ:硬すぎると施工後、ひび割れが発生しやすくなる。
  • 柔らかくなる温度:低くすぎると夏場に車の重みでへこんでしまう
  • 高温粘度:砕石や砂と高温で混ぜるときにうまく混ざらないでマダラになる

そのため、アスファルトを製造するときは、特に減圧蒸留装置をうまく運転しないと、これらの品質規格を完全にクリアすることができません。さらに、いくら蒸留装置をうまく運転しても、規格に入らない場合があります。それは原油の種類によって決まります。どんなに慎重に製造を行っても、原油の種類が悪いとアスファルトはできないのです。

つまり、アスファルトを作るときは、それに適した原油を選択した上で、さらに慎重に製造装置を運転しなければならないのです。

原油は産地によっていろいろな種類がありますが、特に製造上の問題がなければ、製油所はできるだけ安いものを選んできます。どんな原油を使っても、製造されるガソリンや灯油や軽油などの石油製品はどれもほぼ同じ品質になるからです。

しかし、アスファルトはそうではありません。アスファルト用の原油でなければアスファルトは作れないのです。そのため、アスファルトを作るために、わざわざ値段の高い原油を輸入せざるを得ない場合もあります。

ということで、アスファルトは決して石油精製で発生したカスではありません。アスファルトという製品を作るために、原油の選定から製造、品質試験まできちんとした管理が必要な、いわば石油製品のエリートなのです。

ちなみに、アスファルトにならない原油の場合はどうするか。その場合、減圧残油は重油にブレンドするか、分解装置で処理してガソリンや灯油、軽油に変えて製品にしています。

よく、石油精製ではガソリンや軽油やアスファルトなどが一定の割合でできてしまう。ガソリンを作ろうとするとアスファルトが必要以上に出来てしまうので、アスファルトを捨てるために道路が作られているなどと言われることがありますが、これは間違いです。

ほとんどの製油所では、減圧残油(アスファルト)が余れば、これを分解して、ガソリンを作っていて、製造するガソリンの半分以上は、この分解ガソリンから作られているのが現状です。

このように、舗装用のアスファルトを作るには厳格な製造管理と品質管理が必要になり、石油精製で出てきた残りカスを使って舗装ができるというものではありませんし、もしアスファルトの需要がなければ、ガソリンなど他の製品の原料としています。 (原油から作られる石油製品の割合は決まっている? 連産品という誤解  参照)

決して、道路をゴミ捨て場にしているわけではありません。

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追記:アスファルトとコールタールは違う

よく、アスファルトはコールタールと間違われます。アスファルトは石油から作り、コールタールは石炭を乾留して作ります。どちらも黒い色をしていますが、違うものです。

MSDSによるとコールタールは発がん性区分1(人に対する発がん性が知られている、あるいはおそらく発がん性がある)に分類されています。アスファルトも人体に害がないわけではありませんが、コールタールほどの発がん性は見つかっておらず、発がん性区分2(人に対する発がん性が疑われる)に分類されています。

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