世界燃費の悪い車をランキングしたら驚きの結果が…あの名車がつぎつぎと

世の中、燃費の良い車ランキングというのはよくありますが、悪い車ランキングというのはあまり見かけませんね。みんな燃費の良い車に関心があるけれど、悪い車なんて知ってどうするの。その情報って必要?というのが理由かもしれません。

でもここで、ちょっと燃費の悪い車というのをランキングしてみました。すると意外。驚きの結果が。

もちろん世界の自動車業界は如何に燃費を良くするかに全力を上げて取り組んでいるように見えます。ハイブリッドだ、車両の軽量化だ、アイドリングストップだ、CVTだと技術開発のオンパレード。

じゃあ燃費の悪い車ってどうなのと言われると、その反対で、技術開発に遅れたしょぼい車というイメージがあるのではないでしょうか。ところが、燃費の悪い車をランキングしてみると、なんとあの一度は乗ってみたい憧れの名車がずらりとならぶことになったのです。

ではそのランキング結果を発表するその前に、ランキングのもととなったデータを紹介しましょう。

フュエルエコノミーガイドブック

今回の燃費の悪い車ランキングの基となったデータはフュエルエコノミーガイドブック2020年版から採りました。このガイドブックはアメリカエネルギー省(DOE)と環境保護局(EPA)が共同で出版しているものです。アメリカ政府お墨付きのガイドブックということができるでしょう。

日本でいえばDOEは資源エネルギー庁、EPAは環境省に相当するでしょうか。このお堅い役所が、自動車の燃費一覧表を発表する。いかにもアメリカらしいですね。しかも、一般に公開されていてネット上で、無料で入手することが可能なのです。(https://www.fueleconomy.gov/feg/pdfs/guides/FEG2020.pdf

このガイドブックにはアメリカで生産されている車はもちろん、アメリカに輸入されている車も含めて、アメリカで売られているほとんどすべての車が網羅されています。アメリカは世界一の自動車市場ですから、世界中の主要自動車メーカーがこぞってアメリカに輸出しています。ですから、このガイドブックに記載されている車は、ほとんど世界中の主なメーカーの車両を含んでいるということができるでしょう。

注)ただし、ルノー、シトロエン、プジョーのようなフランス車は、現在はアメリカで正規販売が行われていないため、このガイドブックには記載されていません。
注)軽自動車は我が国独自の規格であるため、このガイドブックには含まれていません。日本の軽自動車が「燃費の悪い車ランキング」に入るとは思えませんが

燃費の考え方

このガイドブックには、ここに記載されたすべての車両について、その燃費が示されています。この燃費はガソリン1ガロン当たりで走行できる距離がマイルで示されている(MPG)のはもちろんですが、おもしろいのは、アメリカの一般家庭が1年間、その車を保有したときに支出されるガソリン代(年間ガス代)がドルで示されていることです。

具体的に言うと、一般家庭での年間走行距離を15,000マイル=約2万4,000㎞(市街地55%、ハイウェイ45%)とし、1ガロンのガソリン価格をレギュラーガソリンの場合は2.18ドル(60.5円/ℓ)、ミッドレベルガソリンは2.60ドル(72.1円/ℓ)、ハイオクは2.85ドル(79.1円/ℓ)として計算されています。
(ちなみに、軽油の場合は2.42ドル(67.1円/ℓ))

この条件は、日本の一般家庭よりも走行距離が長い反面、ガソリン代が随分安いですよね。(ガソリン価格の違いは主に税金の違いです。「この原油安でガソリン価格は100円まで下がるか?」参照)ですから、このガイドブックに示された年間ガス代がそのまま日本の一般家庭に当てはまるわけではありません。しかし、車種と車種の間の燃費の比較をすることは十分可能です。

また、このガイドブックには各々の車から排気ガスとして排出される温室効果ガス(GHG)の量が1(最悪)から10(最良)にランクして示されています

そのほか、それぞれの車の排気量、気筒数、トランスミッションの型、使用する燃料の種類、ハイブリッドやアイドリングストップ機構の採用などが特記事項として示されています。

では、いよいよ燃費最悪の車ランキングの発表です。

ツーシータークラス

ツーシータークラスとは、とにかく座席が2座の車をすべて含みます。このクラスには66モデルがリストアップされており、フェラーリやジャガー、ポルシェなど名だたるスポーツカーメーカーが含まれています。

順位                      1位
メーカー              ブガッティ(伊*)
モデル                  Divo
年間燃料代         $4,300(45万1,500円)
エンジン       16気筒8000㏄

順位                      2位
メーカー              ブガッティ(伊*)
モデル                  Chiron
年間燃料代         $3,900(40万9,500円)
エンジン       16気筒8000㏄

順位                      2位
メーカー              ランボルギーニ(伊)
モデル                  Aventador Coupe
年間燃料代         $3,900(40万9,500円)
エンジン       12気筒6500㏄

順位                      2位
メーカー              ランボルギーニ(伊)
モデル                  Aventador Roadstar
年間燃料代         $3,900(40万9,500円)
エンジン       12気筒6500㏄

順位                      5位
メーカー              パガーニ(伊)
モデル                  Huayra Roadster BC
年間燃料代         $3,550(37万2,750円)
エンジン       12気筒6000㏄

1位はブガッティのDivo。続いて同じくブガッティのChironとランボルギーニの2モデルが同率2位に、5位にパガーニが入りました。それ以降は、6位フェラーリ(伊)の812Superfast($3,300)、7位フォード(米)のGT($3,050)の順です。
*ブガッティは現在、ドイツのVWのブランド名となっておりフランスで製造されていますが、ここではVWが買収する前の国籍であるイタリア車としました。

なんと上位1位から6位までをイタリア勢が独占しました。

ところで気になるポルシェ(独)ですが、ガイドブックには8モデルがリストアップされています。しかし、年間ガス代はいずれも$2,000前後。イタリア勢に比べればかなり優等生です。

ミニ・サブコンパクトカークラス

セダンのうち、ミニコンパクトカーは客室と貨物室の合計容積が85立方フィート以下のもの、サブコンパクトカーは85から99立方フィートの間のものをいいます。

ガイドブックには、このクラスとして約130種類のモデルがリストアップされています。ミニコンパクトカーとしてはミニクーパー、サブコンパクトカーとしてはレクサスのRCやメルセデスのAMGあたりを想定すればいいと思います。

実は、このクラスでは燃費のすごく良いものもすごく悪いものもあまりありません。年間ガス代も大体1,500から2,500ドルの範囲に収まっている感じです。

しかし、その中でも、特に燃費の悪い車を見つけ出しました。それが以下のとおりです。

順位                      1位
メーカー              フェラーリ(伊)
モデル                  GTC4Lusso
年間燃料代         $3,300(34万6,500円)
エンジン       12気筒6300㏄

順位                      2位
メーカー              フォード(米)
モデル                  Shelby GT500 Mustang
年間燃料代         $3,050(32万250円)
エンジン       8気筒5200㏄

順位                      2位
メーカー              ラウシュ・パフォーマンス(米)
モデル                  Stage3 Mustang
年間燃料代         $3,050(32万250円)
エンジン       8気筒5000㏄

このクラスでも、ツーシータークラスと同様にやはりイタリア勢のフェラーリが1位に入りましたが、2位は同率でふたつのアメリカ車が入りました。このフォードとラウシュのモデルはどちらもMustangという名前がついていますが、これはフォードMustangのチューニングモデルということです。

以上の3モデルが年間ガス代3,000ドルを超えるモデルで、それ以外は特に燃費のよいものも、悪いものも見当たらないというのが、このクラスです。

コンパクトカークラス

コンパクトカーはセダンのうち、客室と貨物室の合計容積が100から109立方フィートのものを言います。このクラスには約130モデルがリストアップされています。

このクラスはトヨタやホンダ、日産などの日本車が多いせいか、全体に燃費が良く、年間ガス代が1,000ドルから2,000ドルのあいだに入っているモデルが多数です。ここはいわば燃費競争激戦クラスですが、その中でただひとつ、年間ガス代が3,000ドルを超えるモデルがありました。それがこれ。

順位                      1位
メーカー              ロールス・ロイス(英)
モデル                  Dawn
年間燃料代         $3,050(32万250円)
エンジン       12気筒6600㏄

ちなみに、このクラスで最も燃費が良いのはトヨタのCorolla Hybridで、年間ガス代が650ドルとロールス・ロイスDawnの4分の1以下。ずいぶんお得ですよね。

ミッドサイズカークラス

ミッドサイズカーはセダンのうち、客室と貨物室の合計容積が110から119立方フィートのものを言います。日本車でいえば、ホンダのCivicやトヨタのPriusあたりが含まれます。

ガイドブックにはこのクラスに180のモデルがリストアップされていますが、このクラスも全体的に燃費が良く、あまり燃費の悪い車は見当たりませんでした。しかしありました。孤高の名車が。

順位                      1位
メーカー              ベントレー(英)
モデル                  Mulsanne
年間燃料代         $3,550(37万2,750円)
エンジン       8気筒6800㏄

順位                      2位
メーカー              ロールス・ロイス(英)
モデル                  Wraith
年間燃料代         $3,050(32万250円)
エンジン       12気筒6600㏄

一方、このクラスで最も燃費の良い車はトヨタのPrius Ecoで年間ガス代が600ドル。ベントレーMulsanneの約6分の1です。

ラージサイズカークラス

ラージサイズカーはセダンのうち、客室と貨物室の合計容積が120立方フィート以上のものを言います。ブランド名でいえばキャディラックやメルセデス・ベンツ、リンカーンなどいわゆる高級車がこれに含まれます。ガイドブックには約110モデルがリストアップされています。

この中で、燃費の悪い車のリストはこれ。

順位                      1位
メーカー              ロールス・ロイス(英)
モデル                  Ghost
年間燃料代         $3,050(32万250円)
エンジン       12気筒6600㏄

順位                      1位
メーカー              ロールス・ロイス(英)
モデル                  Ghost EWB
年間燃料代         $3,050(32万250円)
エンジン       12気筒6600㏄

順位                      1位
メーカー              ロールス・ロイス(英)
モデル                  Phantom
年間燃料代         $3,050(32万250円)
エンジン       12気筒6700㏄

順位                      1位
メーカー              ロールス・ロイス(英)
モデル                  Phantom EWB
年間燃料代         $3,050(32万250円)
エンジン       12気筒6700㏄

つまり、このクラスではガイドブックにリストアップされたロールス・ロイスの4つのモデルが同率1位でずらりと並んだと言うわけです。

ステーションワゴンクラス

ガイドブックではステーションワゴンとしてスモール(30モデル)とミッドサイズ(12モデル)に分類していますが、両クラスを通じて年間ガス代が3,000ドルを超えるのは、ここでもロールス・ロイスだけでした。

順位                      1位
メーカー              ロールス・ロイス(英)
モデル                  Cullinan
年間燃料代         $3,050(32万250円)
エンジン       12気筒6700㏄

順位                      1位
メーカー              ロールス・ロイス(英)
モデル                  Cullinan Black Badge
年間燃料代         $3,050(32万250円)
エンジン       12気筒6700㏄

ピックアップトラッククラス

ガイドブックでは、ピックアップトラックをスモールとスタンダードに分け、さらにそれぞれ2WDと4WDに分類しています。スモールの2WDは9モデル、スモールの4WDは12モデル、スタンダードの2WDは43モデル、スタンダードの4WDは56モデルがリストアップされています。

このうち、年間ガス代が3,000ドルを超えるのは、次の2モデルだけでした。

順位                      1位
メーカー              ラウシュ・パフォーマンス(米)
モデル                  F150 Pickup 2WD
年間燃料代         $3,300(34万6,500円)
エンジン       8気筒5000㏄

順位                      1位
メーカー              ラウシュ・パフォーマンス(米)
モデル                  F150 Pickup 4WD
年間燃料代         $3,300(34万6,500円)
エンジン       8気筒5000㏄

いずれも、フォードのF150Pickup FFVというピックアップトラックをラウシュがチューンアップしたモデルです。チューンアップ前の年間ガス代が2WDで1,700ドル、4WDで1,800ドルでしたから、相当やんちゃなチューンアップをしたようです。

スポーツユーティリティクラス

いわゆるSUVです。ガイドブックでは、これをスモール2WD(83モデル)、スモール4WD(161モデル)、スタンダード2WD(39モデル)、スタンダード4WD(121モデル)に分けてリストアップしていますが、この中で燃費の極端に悪いモデルはすべてスタンダード4WDに集中しています。

そのランキングは以下のとおりです。

順位                      1位
メーカー              ジープ(米)
モデル                  Grand Cherokee Trackhawk 4WD
年間燃料代         $3,300(34万6,500円)
エンジン       8気筒6200㏄

順位                      2位
メーカー              ベントレー(英)
モデル                  Bentayga
年間燃料代         $3,050(32万250円)
エンジン       12気筒6000㏄

順位                      2位
メーカー              ランボルギーニ(伊)
モデル                  Urus
年間燃料代         $3,050(32万250円)
エンジン       8気筒4000㏄

順位                      2位
メーカー              レクサス(日)
モデル                  LX570
年間燃料代         $3,050(32万250円)
エンジン       8気筒5700㏄

順位                      2位
メーカー              メルセデス・ベンツ(独)
モデル                  AMG G63
年間燃料代         $3,050(32万250円)
エンジン       8気筒4000㏄

順位                      2位
メーカー              メルセデス・ベンツ(独)
モデル                  G550
年間燃料代         $3,050(32万250円)
エンジン       8気筒4000㏄

このクラスで特徴的なのは、まずSUVの元祖ともいうべきジープがランクに入っていること。ジープはこのクラスに5モデルがリストアップされているのですが、そのうち最上位のモデルがこれでした。

あと、低燃費が売りの日本車とドイツ車がランクインしたこと。優等生も少し羽目を外したくなったのでしょうか。ちなみにトヨタのLand Cruiser Wagon 4WDはランクに入っていませんが、ガソリン1ガロン当たりの走行距離はレクサスLX570と変わりません。

にもかかわらず、年間ガス代は2,350ドルで、3,000ドルに達していませんが、これは レクサスがプレミアムガソリン仕様となっているのに対してランクルの方はレギュラーガソリン仕様になっているため、ガソリンの価格差で年間ガス代に違いが出たようです。( 「(オクタン価の誤解4)ハイオクとレギュラーは混ぜてはいけない?、日本のオクタン価が低いのは燃費を悪くするため? 」参照)

総合順位

いままでは、クラス別に燃費の悪い車ランキングを示してきましたが、総合順位は以下のとおりです。

順位 メーカー モデル 年間ガス代 ($) クラス
1 ブガッティ(伊) Divo 4,300 ツーシーター
2 ブガッティ(伊) Ciron 3,900 ツーシーター
2 ランボルギーニ(伊) Aventador Coupe 3,900 ツーシーター
2 ランボルギーニ(伊) Aventador Roadster 3,900 ツーシーター
5 パガーニ(伊) Huayra Roadster BC 3,550 ツーシーター
5 ベントレー(英) Mulsanne 3,550 ミッドサイズ
7 フェラーリ(伊) 812 Superfast 3,300 ツーシーター
7 フェラーリ(伊) GTC4 Lusso 3,300 ツーシーター
7 ラウシュ・パフォーマンス(米) F150 Pickup 2WD 3,300 ピックアップ
7 ラウシュ・パフォーマンス(米) F150 Pickup 4WD 3,300 ピックアップ
7 ジープ(米) Grand Cherokee Trackhawk 4WD 3,300 SUV

ツーシーターカーにはイタ車が入り、ワイルドなピックアップやSUVにアメ車、高級車には英国のベントレーが入りました。

結局、このリストに入った車は、燃費なんか全然考えていないということでしょう(温室効果ガス排出量については、すべてのモデルで10段階評価の1(最悪)でした)。

性能のいい車を作ろうとすれば当然エンジンは、でかくなるわけだし、そりゃあ燃費なんか考えて車なんか作れるかい!と言うことかもしれません。

ちなみに第1位に入ったブガッティDivoは40台の限定発売で、お値段は6億5,000万円(40台の合計じゃなくて、1台の値段ですよ。言うまでもないと思いますが)。このお値段にもかかわらず、一般に公開されたときには既に売り切れていたといいます。

2位のランボルギーニAventadorはぐっとお安くなっていて、4,000万円台から、5位のパガーニHuayra Roadsterは、これも40台限定発売で3億8,000万円といいます。

そもそも、こんな高価な車を買う人は石油王かなんかの大金持ち(「 石油王になるための3つの方法 」 参照)。そんな人が燃費なんてけち臭いことは考えないのでしょう。

燃費の悪い車ってどんな車?と興味本位で始めた調査でしたが、結果は「一度は乗ってみたい。あの憧れの名車集」になってしまいました。

どうせ、こんな車はそれほど数が出ないんだから、温室効果ガスの排出量も合計すればたかが知れている。だったら地球環境の敵だなどと目くじら立てなることもない。こんな車があってもいいかなと思います。(環境保護主義者から怒られるかもしれないけど)

2020年10月19日

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