カスタマーサービスへ行け

私はダレス空港に着くと、急いで航空会社のカウンターに行って荷物を預け、そのあと保安検査場に並んだ。検査場は高島屋のバーゲン会場のように混雑していたが、なんとか30分ほどで通過することができた。これなら、飛行機の出発時間に間に合だろう。私は急いで出発ゲートに向かった。

ところが、出発ゲートに到着して驚いた。ゲートが閉じているのだ。しまった、もう出発時間を過ぎてしまったのかと、一瞬思ったが、そうではない。待合い室は乗客でごった返している。ゲート上の電光掲示板にはDelay(遅延)の文字。そうか、飛行機は出発が遅れているのか。そんなら急ぐこともなかった。やれやれ。良かった、良かった。

ではない!私はデンバーでカルガリー行きに乗り換えるのだ。この飛行機が遅れると、今度はデンバーでカルガリー行きに間に合わない。いったいこの飛行機は何時間遅れるのだ。

ゲートで聞くと、3時間ほど遅れるという。これじゃあカルガリー行きの乗り換え便に間に合わない。そう係員に伝えると、「それでは、カスタマーサービスセンターで相談してください」という。私はカスタマーサービスの場所を聞いて、そこへ向かった。

しかしカスタマーサービスへ行って、また驚いた。ここも伊勢丹のバーゲン会場ほども混んでいたのだ。(伊勢丹のバーゲン会場へは行ったことはないのだが、だいたいこんな感じだろう。)

しかもけしからんことに、サービス窓口は4か所あるのにも拘わらず、開いているのは2か所だけ。これだけ混雑しているのだから、あとの2か所も開けてくれたらいいのにと思うのだけれど。航空会社にはそんな気遣いなどさらさらないようだ。仕方ないので、行列の最後尾に並ぶが、列は遅々として進まない。窓口にたどり着くまで一体何時間かかるんだ。

あんたは中国人かい?

「あんたは中国人かい?」

30分ほど並んでいると、不意に列の後ろから声をかけられた。振り向くと、初老のご夫婦がにこにこしながら立っておられる。私に話しかけたのはご主人の方。ご夫婦ともラフな格好をしているので、どこか観光旅行にでも行かれるのだろう。

「いや日本人です」と答えると、奥さんが、「ほら、私の言った通り、日本人でしょう」と言う。

ご夫婦の間で、私が日本人か中国人か議論になったらしい。

「で、どこに行くんだい」とご主人。
「私たちはフロリダから来たのよ」と奥さん。

「カナダです。カナダのカルガリー」と私。
「カナダにはでかい白クマがいるから気を付けた方がいいよ」とご主人。
「あまり怖がらせちゃだめよ」と奥さん。

「それは怖いですね。でもフロリダにはクロコダイル(わに)がいるじゃありませんか」と私。
「いやいやフロリダにいるのはクロコダイルじゃなくてアリゲーター(わに)だよ」とご主人。
「どっちも同じようなものよ」と奥さん。

それから、そのご夫婦とは、いろいろと話がはずんだ。「東京はニューヨークみたいに高層ビルが立ち並んでいるんだよね」とか、私が石油の仕事でカナダに行くと聞くと「最近のガソリンは高すぎる。なんとかならんのかね」とか。(私にそう言われてもね)

私たちが話をしていると、やがて前後に並んでいる人たちが話に加わってきた。みんな退屈していたのだろう。私の前に並んでいた若い背の高い金髪のお兄さんは、フィンランド人で、パイロットになるためにアメリカにやってきたという。

「私も、子供のころはパイロットになりたかったんだよ」と私が言うと、
「子供のころはみんなそうなんだ」とお兄さん。

初老のご夫婦の後ろのハンサムな男性は、やはりデンバーで乗り換えてどこか別の場所に行くという。
「なかなか、列が進みませんね」と私がいうと、
「アメリカではよくあることさ」と、そのハンサムな男性が肩をすくめる。

私たちのおしゃべりはだんだん広がっていき、やがて行列のあちこちで見知らぬ人たちが会話を始めるようになっていった。

「あんたはどこへ行くの」「あそこは、とっても良い所だ。」「最近の景気はどうだい」「○○市はとっても景気がいいみたいだよ」なんて言う会話がね。

でも、こんなに待たされているのに、あまり怒りだす人がいないのは日本人の感覚からすれば少しばかり不思議に見える。どちらかといえば和気あいあいという感じなのだ。だから航空会社ものんびりしているのだろうか。

とにかくデンバーへ

やがて、やっと窓口にたどり着いた。カルガリーに行きたいのだけれど、デンバーでの乗り換えに間にあうだろうかと聞くと、間に合わない。ロサンゼルス経由の便があるけれど、荷物を預けてしまっているので、便を変えることはできないね。との返事。「それより、あなたの乗るデンバー行きがそろそろ出発するから、ゲートに戻った方がいい」

そうなのだ、カスタマーサービスの行列に2時間以上も待たされていたので、結局、遅延していたデンバー行きの出発時刻になっていたのだ。仕方がない。デンバー行きに乗ろう。カルガリー行きには間に合わないが、行ける所まで行ってみよう。というか、そうするしかないのだから。

本日は早朝にワシントンのホテルを出発したのだが、結局ワシントンを飛び立ったのは夕方になっていた。そのあともカルガリーで計算外のことが起こったけど、その話はまたあとで。

2020年5月21日


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