文化とは何だろうか。いや、初っ端から難しい話をして恐縮である。ある辞書によると文化とは「人類がみずからの手で築き上げてきた有形・無形の成果の総体」と書かれているが、あまりにも漠然とし過ぎていないだろうか。これでは人間が作ったものはすべて文化ということになってしまう。原子爆弾も交通事故も文化だろうか。

ウィキペディアによると、「人間が社会の成員として獲得する振る舞いの複合された総体」と書かれている。なるほど、なるほどそういうことなのかと感心するが、ひとこと言わせてもらおう。さっぱり意味がわからん。だいいち、同じ言葉の定義が辞書によって、こうも違うものだろうか。

私は、文化とは「人生を楽しくするための技術」と単純に定義したい。異論もあるだろうが、どう?わかりやすくない?人生のうち「遊び」の部分がすなわち文化。つまり、オンが仕事、オフが文化。わかりやすいでしょう。

ベトナムは、過去に中国の支配を受けたことがある。植民地時代はフランスの支配を受けた。第二次大戦中後にはアメリカが入ってきた。アメリカは南半分だけだけど。

他民族の支配を受けることは、その民族にとって苦痛ではあるけれど、人生を楽しくする方法、すなわち文化が多様になるという利点もあった。だから、ベトナムは中国式、フランス式、アメリカ式の文化と独自の文化が混じり合って、文化すなわち人生を楽しくする方法をいろいろ知っている国なのである。

二日目。私は博士と一緒にカウンターパートのベトナム企業を訪ねた。昼休みにそのベトナム企業の担当者のTさんから一緒にコーヒーでも飲まないかと誘われて、博士と私は近くの喫茶店に入った。喫茶店は池(ホテルの近くの池とは別の池)に面したオープンカフェになっていて、なかなかしゃれている。

しかし、運ばれてきたコーヒーを見て驚いた。コーヒーカップの上にそのカップと同じくらいの大きさのブリキのカップが乗っかっているのである。ブリキのカップにはふたが付いていて中は見えない。いったいどうやって飲むのでしょう。

① 上のカップと下のカップの両方にコーヒーが入っている。
② 上のカップにはミルクと砂糖が入っている。
③ 上のカップは単なる飾りで、特に意味がない。

ベトナム式コーヒー

取り敢えず、ブリキのカップのふたを取ってみればわるだろうと、ふたをとろうとすると「アチッ」。やけどした。ブリキのカップが中の熱湯で熱くなっていたのだ。Tさんと博士が「がははは」と笑っている。

「もう少し待ってください。」とTさん。ブリキのカップが何か分からず、待つこと暫し。もういいですよと言われて、カップのふたを開けたら、コーヒーの粉が入っていた。つまり、こういうことだ、

① 上のブリキのカップにコーヒーの粉を入れる。
② この上から熱湯を注ぐ。
③ ブリキのカップの中でコーヒーが抽出される。
④ ブリキカップの底にはたくさんの穴が開いていて、抽出されたコーヒーが濾過される。
⑤ 下のカップに流れ込む。 
⑥ 下のカップにたまったコーヒーを飲む。
⑦ おいしい。

つまり、ブリキのカップはコーヒーフィルターになっていて1杯分のコーヒーが1個のブリキカップで抽出される。だったら、厨房でコーヒーを抽出してから、テーブルに持ってきてくれればよさそうだけれど、(私もやけどをしなくてすむし)そこがそれ、文化である。コーヒーが抽出されるまで、お話でもしながらゆっくり待てばよいのである。

多分、コーヒーはフランスからもたらされた文化であろう。ベトナムにはお茶を飲む習慣もあるが、これは中国から持ち込まれたもの。ちなみにベトナムはコーヒーの輸出量では世界第2位だそうである。しかも最大の輸出先は日本であるから、皆さんもベトナム産のコーヒーを飲まれた方がいらっしゃるだろう。

話は変わるが後日、ベトナムのホーチミンを訪れたときのことである。このときはカウンターパート企業のDさんに市内のレストランに連れて行ってもらった。ここもしゃれたレストランである。このとき、テーブルにボールに入れられた水があったので、飲もうとすると、「だめだめ、飲んじゃだめですよ。」とDさんと博士にまた「がははは」と笑われた。

このボールはフィンガーボール。つまり指を洗うための水が入れてある。私はこれを飲もうとしたわけである。だから笑われた。知ってますよ、フィンガーボールくらい。と心の中で憤慨したが、知識としては知っていても、実際に食卓にフィンガーボールが乗るような優雅な食事は今までしたことがない。フィンガーボールも、多分フランスの影響であろう。

私はベトナムのコーヒーがとっても好きになり、ベトナムに行くたびにコーヒーを買って帰るようになった。お気に入りはグエン社のナンバー4※という銘柄で、バターでローストしてあるので甘い香りがする。もちろんブリキのコーヒーフィルターもお土産に買ってきて、家で使っている。

※ナンバー4は最近、ベトナムでも見かけないので廃版になっているのかもしれません。

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