いまさら聞けない石油ストーブの使い方…灯油の保管方法から安全性、暖房費用、お湯を沸かせるかなど

室内の暖房に使われる石油ストーブ。昔はどの家庭にもあるなじみの深い暖房器具でした。でも、最近はエアコンに押されて石油ストーブのない家庭も増えているようです。

でも、何かの理由で石油ストーブを使うことになったという人もいらっしゃると思います。あるいは、これから石油ストーブを使ってみたいとお思いの方もいらっしゃるでしょう。
初めて石油ストーブを使うのだけれど、そうすればいいの。

火を使うし、有害なガスも出てきそうだし、いろいろ危険もあるのじゃないの。そう不安に思っている人もいらっしゃると思います。昔のように、フツーに石油ストーブがある時代には常識だったことなのに、今はだれも教えてもくれない。

この記事は、石油ストーブ(芯式ストーブとファンヒーター)の初歩的な知識や安全な使いかたについてまとめています。これから石油ストーブを使いたいと思っている人、石油ストーブを既に買って使っているけど、使い方に不安があるという人は、ぜひ参考にしてください。

目次

Q1.芯式ストーブとファンヒーターの違いはなんですか?
Q2.石油ストーブの燃料はなんですか?
Q3.灯油はどこで買えますか?
Q4.もし燃料を間違えたらどうなりますか?
Q5.灯油はどのように保管すればいいですか?
Q6.古くなった灯油は使えますか?
Q7.地震が起こったときの対策はどうなっていますか?
Q8.排気ガスによる中毒が心配です?
Q9.火傷が心配です
Q10.やかんや鍋を石油ストーブの上に置いてもいいですか?
Q11.停電になっても使えますか?
Q12.暖房費用はエアコンとどっちが得ですか?
Q13.その他にどんな特徴がありますか?

Q1 芯式ストーブとファンヒーターの違いはなんですか?

A 燃料の燃焼方式が違います。

ここでは、芯をつかって燃料を燃やすストーブを芯式ストーブと呼ぶことにします。芯式ストーブには反射式と対流式があります。
芯式ストーブはストーブの下部に燃料をためる容器があり、その容器に付けた円筒形の芯が毛細現象によって燃料を吸い上げ、これに点火することによって燃料が燃焼して部屋を暖めます。

ファンヒーターは燃料をストーブ内で噴霧して霧状にして、点火します。燃焼によって発生した暖かいガスをファンで送り出して部屋を暖めます。

芯式の場合は、ダイヤルを右いっぱいに回してから、円筒形の燃焼筒を少し持ち上げ、中にある円筒形の芯にライターやマッチで火を着けます。自動着火式の芯式ストーブもありますが、すぐに電池が切れてしまうので、私は使っていません。

ファンヒーターは電源コードをコンセントにつないでから、スイッチを入れます。少し時間がかかりますが、やがてボッという音がして自動的に灯油に火がつき、ファンが動いて暖かい空気が送り出されて部屋が温まります。

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Q2 石油ストーブの燃料はなんですか?

A 灯油です。

石油ストーブという名前がついていますから、燃料は石油と思ってしいる方もいらっしゃるようですが、お店で「石油ください」といっても通じません。

製油所では原油を輸入してきて、それを加工してガソリンや灯油、軽油、重油のような燃料にしたり、潤滑油や道路舗装用のアスファルトにしたりしています。このような原油を使って作られた製品とその原料となる原油、そのすべてを総称して石油といいます。だから石油といわれてもいろいろな種類があります。
石油ストーブの燃料を買うときには、はっきりと「灯油」と言ってください。

【余談】本当は石油ストーブというより灯油ストーブといった方が分かりやすいのですが、昔から石油ストーブと言っています。これは石油ストーブが普及する前には石炭ストーブがあり、石炭との対比で石油ストーブというようになったのだと思います。

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Q3 灯油はどこで買えますか

A ガソリンスタンドやホームセンターで買えます。

小型トラックに灯油を積んで、巡回しながら売っている業者もありますからこの業者から買うこともできます。電話で注文すると配達してくれる販売店もあります。

普通、スーパーやホームセンターで灯油用の20リットル入りポリタンクを買ってきて、ガソリンスタンドやホームセンターに行って係の人に入れてもらいます。セルフ式のガソリンスタンドでは、灯油専用の計量販売機があるので、自分で操作してポリタンクに入れます。

【余談】
ポリタンクの色には赤と青と白があります。関東では赤、関西では青が多いようですがどちらでもかまいません。ただ、白は日光を遮りにくく、灯油の劣化を早めるので避けた方がいいでしょう。

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Q4 もし燃料を間違えたらどうなりますか?

A 大変危険ですから、間違えたと思ったら使用しないでください。

ガソリンや軽油が灯油と間違って販売されることがあります。また、家庭内で保管していたガソリンや軽油を間違ってストーブに給油してしまうこともあります。

ガソリンを間違って使った場合は火災になる可能性があります。軽油を間違えて使った場合は、煙やにおいが発生したり、有毒なガスが発生したりすることがあります。いずれも危険です。

ガソリンは灯油と間違えないように、薄いオレンジ色(ピンクに見えることもあります)に着色してあります。また、軽油は薄い黄色をしています。一方、灯油は水のように透明ですから見分けることができます。

【余談】
マッチで火が着く最低温度を引火点と言います。灯油の引火点は40℃以上と決められています。つまり40℃以上にならなければ灯油にそのままマッチで火を着けても着火しないということです。(芯があれば着火します)

一方、ガソリンの引火点はマイナス40℃くらい。つまり私たちが普通に暮らしている温度では、マッチで簡単に火が着いてしまうということです。ですから、ガソリンを灯油と間違えて使うと、ちょっとした火気で簡単に燃え上がるということになります。
ガソリンにマッチの火を近づけても火はつかない?ウソ  参照)

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Q5 灯油はどのように保管すればいいですか?

A 直射日光の当たらない涼しい屋根のある場所で、蓋を閉めて保管します。

一般にどんな物質でも温度が上がるほど変質が早くなります。また、日光が当たっても変質しやすくなりますし、ポリタンク自体が劣化して、油漏れが起こることがあります。雨や雪にふられないように屋根の下に保管してください。

ポリタンクの蓋を開けたまま保管する人がいますが、雨水や異物が混入することがありますし、地震などでポリタンクが倒れた時に中の灯油が流れ出して危険です。必ず蓋を閉めて保管します。

【余談】
灯油は原油から精製するときに、水素化脱硫という操作を行います。これは、有毒な亜硫酸ガスの原因となる硫黄分を除去することが目的ですが、この操作によって変質しにくく、煙も出にくくなります。なお、日本の灯油の品質は世界でも指折りで、日本の石油ストーブに外国で作られた品質の悪い灯油を入れると故障することがあります。

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Q6 古くなった灯油は使えますか?

A 保管状態が良ければ、1年くらいたった灯油でも使えます。

灯油は石油製品の中でも比較的安定した、変質しにくい物質ですから、日光が当たらない涼しい場所で保管していれば、1年くらいは問題ありません。私は暖房シーズンが終わると、残った灯油を倉庫の中にポリタンクに入れたまま放置していますが、また冬になって再びストーブに使っても問題が起こったことはありません。

もし、灯油に色がついていたり、タンクの底に水や沈殿物が溜まっていたりした場合は使用しないようにしましょう。ストーブを痛めたり、煙やにおいが発生したりすることがあります。変質した灯油は、購入したガソリンスタンドなどに持っていけば引き取ってもらえます。

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Q7 地震が起こったときの対策はどうなっていますか?

A 地震の揺れを感知すると自動的に消化する装置が付いています。地震でなくても石油ストーブにぶつかって倒した時も自動的に消火されるので安全です。ちなみに石油ストーブ付けたまま動かすと、自動的に消火してしまうことがありますので、ストーブを移動するときは消火してからにしましょう。

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Q8 排気ガスによる中毒が心配です

A 石油(灯油)を室内で燃やしているわけですから、当然排気ガスが出ますが、完全燃焼していれば、有害な排気ガスはほとんど出ません。 ただし「完全燃焼していれば」という条件がつきます。

現在の石油ストーブは機種ごとに第三者機関(日本燃焼機器検査協会)が安全試験を行って有害ガスが出ないことを確認しています。安全が確認された石油ストーブには認証マークが付けられていますので、石油ストーブを買うときはこのマークがついているかどうか確認してください。

日本燃焼機器検査協会の認証マーク



ただし、不完全燃焼すると一酸化炭素が発生し、過剰に燃焼すると窒素酸化物が発生します。どちらも有害な排気ガスです。

そのため、芯式のストーブでは炎の大きさを適正な範囲に調整しておくことが必要です。(ファンヒーターでは自動的に調整されます)寒いので炎を大きくしたり、温かいので炎を小さくしたりするのではなく、基本的に点けるか消すかで室温を調整しましょう。

また、石油ストーブを使っている部屋では、1時間に1回、数分間窓を開けて換気することが推奨されています。ただ、私の経験では換気を忘れたからといって、すぐに一酸化炭素中毒になったということはありませんので、それほど神経質にならなくてもと思いますが、換気はした方がよいでしょう。
不安なら一酸化炭素濃度が高くなると警報を出してくれる一酸化炭素警報器(COチェッカー)を付けるという方法もあります。

☆注意【一酸化炭素中毒の例】

2021年1月18日、カモ猟に出かけた3人の男性がテントの中で死亡するとい事故が起こりました。テントの中には石油ストーブがあったということですから、一酸化炭素中毒の可能性があります。

テントは意外と機密性が高く、しかも住宅よりも極端に狭い空間ですから、その中でストーブを炊くと急速に酸素濃度が低下します。酸素濃度が下がると不完全燃焼をしやすくなりますから、大変危険です。

キャンプなど、テント内で石油ストーブや木炭コンロ、ガスコンロなどを使うときは十分換気をすること。寝るときは必ず消火することが必要です。

また、芯式のストーブで極端に炎を小さくして長時間運転していた場合に一酸化炭素中毒になったという事例がyoutubeにありましたので、ご紹介します。
一酸化炭素中毒の事例 参照)
これは、炎の大きさを適性範囲に調整していなかった例です。 室内の温度調節を する場合、石油ストーブは原則として点けるか消すかで行ってください。

そのほかの事例については、私がネットで調べた限りでは、 家庭に置かれた石油ストーブで一酸化炭素中毒になったという最近の事例はほとんど把握できませんでした。 家庭での一酸化炭素中毒の多くは炭や練炭およびガスで発生しているようです。
例えば東京消防庁の資料参照

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Q9 火傷が心配です

A 芯式ストーブは燃焼筒や天板には触らないように。ファンヒーターは低温火傷に注意

小さなお子さんがいる家庭では、芯式ストーブの炎の中に手を入れたり、天板に触れたりして火傷する可能性があります。小さなお子さんがいる家庭では芯式の石油ストーブは適さないかもしれません。

ファンヒーターの場合は、温風吹き出し口付近に長くいると低温火傷をすることがあります。特に赤ちゃんをファンヒーターの前に置かないように気を付けてください。

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Q10 やかんや鍋を石油ストーブの上に置いてもいいですか?

A 芯式ストーブの場合は置いてもいいですが注意が必要です。ファンヒーターはだめです。

芯式ストーブの魅力のひとつにやかんや鍋を置いて湯沸かしや煮炊きに使えることがあります。ただ、吹きこぼれたり、煮こぼれすると、火傷をしたり、ストーブの故障の原因になったりしますので気を付ける必要があります。

ファンヒーターの場合は、上にやかんや鍋を乗せることができないことはないでしょうが、乗せても温まりません。やかんや鍋に限らず、ファンヒーターの上には物を乗せないでください。

【余談】
我が家では、キッチンとダイニングの暖房用に1台ずつ芯式石油ストーブを置いています。(書斎と子供部屋はファンヒーター1台ずつ。リビングは暖房器具がありませんが、キッチンとダイニングのストーブの熱で温まります)

キッチンとダイニングにストーブを置くのは、その上にやかんおいておけば、いつでもお湯が使えて便利だからです。鍋を置いておけば、家族が遅く帰ってきたときにもすぐに温かい料理を出すことができます。煮込み料理にも使えます。

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Q11 停電になっても使えますか?

A ファンヒーターは使えませんが、芯式ストーブは使えます

ファンヒーターは燃料ポンプやファン、表示装置などに電気を使いますので、停電になると使えません。しかし、芯式ストーブは電気を一切使いませんので、停電時も使うことができます。これは災害などで停電が起こった時には非常に役に立つと思います。

【余談】
我が家では、20リットル入りのポリタンクを4缶持っていて、1週間でだいたい2缶が空になるので、買い足しています。そうすると常に最低でもポリタンク2缶分の灯油が備蓄されていることになり、もし電気やガスが止まっても計算上、1週間は暖房と煮炊きができることになります。

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Q12 暖房費用はエアコンとどっちが安いですか?

A あまり変わらない

暖房費用は、昔はエアコンよりも石油ストーブの方が断然安かったのですが、エアコンもインバータの採用などによって年々運転コストが下がってきており、1時間あたりの暖房費ではエアコンの方が安くなっています。

ただ、前提となる灯油代、電気代によっても違ってきますし、外気温度が低い場合など、エアコンの方が高くなる場合もあります。

また、本体価格はエアコンが数万円(工事費が別にかかる)するのに対し、石油ストーブは数千円で購入できます。そのことから考えると、エアコンと石油ストーブの経済性はどのような使い方をするかで変わってきます。それほど違わないと考えていいのじゃないでしょうか。

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Q13 その他にどんな特徴がありますか?

A 石油ストーブのいいところは、上に挙げた以外に、移動が容易、値段が安い、室内の空気が乾燥しにくい、風が来ないので体感温度が高く感じる(芯式のみ)、炎が見えるので暖かく感じる(芯式のみ)などがあります。

一方で、給油に手間がかかる、着火消火時に臭いがする などの問題点もあります。

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石油ストーブはエアコンに比べて手間がかかります。臭いがいや。火事や中毒が心配という方もいらっしゃると思いますが、正しく使えばあまり問題はありません。
すべての部屋をエアコンで暖房するのではなく、キッチンなど一部の部屋の暖房に芯式のストーブを使っていれば、災害などによって電気やガスが止まった時には大変役に立つと思います。

2020年12月20日

 

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