読むだけでスラスラわかる高校化学基礎(1) 化学ってなに?/元素

化学ってなに?

今から高校で習う「化学基礎」という科目を勉強していきます。化学基礎というのは、当たり前だけど、化学の中の基礎の部分ってことだよね。では化学ってなんでしょう。

化学とは「物」を対象とした自然科学のことを言います。つまり、これから「物」について学んでいきましょうということなんだ。

えっ?「物」? と思われるかもしれないけど、ええ「物」です。
私たちの周りは「物」であふれています。例えば、ちょっと見まわしてみて。机や、ボールペンや、ノートや、スマホや、衣服や、靴や‥‥み~んな「物」。いやいや、それだけじゃない。目に見えないけれど空気も、水も、君の体自身も、地球だって、太陽だって、ぜ~んぶ「物」なのです。

このように「物」はとっても身近なので、昔から多くの人たちが「物」について研究して、人間は「物」についての膨大な知識を身に着けてきたんだ。

そんな雑多な「物」に関する知識をまとめ上げ、体系付けたもの、それが化学という学問なのだ。つまり、化学を学ぶってことは私たちを取り巻くすべての「物」を学ぶってこと。だから化学はとっても身近だし、私たちの身の回りのことはだいたい化学で説明することができるのだ。

化学は物質を対象とする

世界中に様々な種類の「物」があふれているよね。私たちの周りは物だらけ。その「物」の形に着目したとき、それを「物体」といいます。そして、その材料に着目したときは「物質」というんだ。

例えば、はさみ。はさみは紙や布などを切るという目的の道具です。その形に着目した場合は、これを物体といいます。つまりはさみという物体だね。そして、はさみって、ふつう鉄で作られているいるよね。セラミックスで作られたばさみもあるようだけど。

カット, はさみ, ツール


鉄でできたはさみの場合、材質は鉄だ。セラミックスでできたはさみの場合は、材質はセラミックスだ。このように材質に着目した場合、つまり、鉄やセラミックスに着目した場合、これを物質といいます。「はさみという物体は鉄という物質でできている」というような言い方をするよ。

ほかに鉄でできた物はいろいろある。例えば自転車のフレームとか自動車のボディなど。これも、ものとしてとらえると物体だけど、材質である鉄でみれば、鉄という物質です。

化学は「物」についての科学だけど、「物」には物体と物質という見方がある。そして化学が対象にするのは物体ではなく物質の方だということなんだ。

全ての物質は元素の組み合わせでできている

ではここで問題です。世界中に物質って何種類くらいあるのでしょう。

こんな問題をだされても、だれにも答えられない。あえて言えば、いくつあるかわからないくらい多いというのが答えだ。たとえば、周りを見回しただけでも、木、鉄、紙、布、プラスチック、繊維、ガラス、水、空気、塩 などなど。とにかくいろんな種類の物質があるよね。

でも、物質ってこんなにたくさんの種類があるけど、実は基本的な物質の元となるいくつかの物質が組み合わさってできていると昔の人は考えた。この物質の元となる物質を元素と言い、このような考え方を元素説というんだ。

特に古代ギリシャのエンペドクレスの元素説が有名なんだけど、かれは元素はたった4種類しかないと考えた。それは、水、土、火、風(空気)の4つ。世界中の物質はこの、たった4種類の元素を組み合わせて作られているというのだ。

例えば、海の水を汲んできて鍋に入れて火で温めれば、水は蒸発して空気となり、鍋の底に土(塩)が残る。つまり、水、火、空気、土は互いに関係してすべての物質を作り上げていると考えたわけ。

このように、世の中にある物質の種類は数えきれないほど多いけど、でもすべての物質は、その元となる基本的ないくつかの物質、つまり元素の組み合わせでできているという考え方は、とっても面白いよね。

無限大にある物資ひとつひとつを研究しなくても、たった4つしかない元素を研究すれば、世界中の物資のことが分かるというわけ。この基本的な考えは今でも正しいと考えられているんだ。

エンペドクレスは紀元前400年くらい(日本では弥生時代)の人だけど、そんな進んだ考えをもっていた。エンペドクレスさん、あんたは偉い。ちなみにエンペドクレスはオリンピックの競馬種目で優勝したことがあると言われている。

ファイル:Empedokles.jpeg
エンペドクレス

ただ、すべての物質がいくつかの元素の組み合わせでできているという考え方は正しいのだけど、いろいろと研究が進むうちに、実際の元素は、この水、土、火、空気の4種類ではないということがだんだん分かってきた。

例えば、水は電気分解という方法を使うと水素と酸素に分解することができる。つまり水は酸素と水素というほかの物質からできているので、元素ではない。そのほか、空気は窒素と酸素という二つの物質が混ざっている。土はいろいろな物質が混ざっていることは見ればわかる。火はそもそも物質ではない。そんなことがだんだんわかってきたんだ。

結局、いろいろな実験をやって物質の元となる物質、つまり元素を探していくとどんどん見つかっていって、現在では90種類くらいの元素があることが分かっている。(人工的に作られた元素も加えると120種類くらいになっています)

でも、世界中の物質が何兆種類、何千兆種類あるかわかわからないけど、その物質のすべてが、このたった90種類の元素でできているということはすごいことだと思いませんか。

実際にはこの90種類の元素のうち、ほとんど私たちの目に触れないものもある。というか一生かかわりを持たないような元素だってあるので、私たちが生活するうえでよく目にする物質だけを考えれば、元素の数は30種類くらいしかない。

この主要な30種類の元素については、表1にまとめておいたので、どんなものがあるかざっと見ておいてくれ。すぐには覚えられないと思うけど、化学基礎の勉強をしながら、元素にはこんなものがあるんだと、少しずつ覚えていこう。

元素には記号が付けられている

元素にはそれぞれアルファベット1文字か2文字の記号が付けられる。いちいち、マグネシウムとか、ストロンチウムとか書いていたら大変なので、記号で書くことにしたわけ。この記号を元素記号という。

元素は人工的に作られた物も含めて120種類くらいあるので、元素記号も同じ数だけあるわけだけど、そのすべてを覚える必要はもちろんない。ただ、先ほど覚えておくべきといった30種類くらいの元素については、この元素記号も一緒に覚えておこう。

表1 元素の種類と特徴

元素名 元素
記号
特 徴(単体)
水素
(hydrogen)
H 無色透明の気体。元素の中で一番軽い。水の成分の一つ。石油精製やロケットの燃料など様々な用途に使われる
ヘリウム He 元素の中で二番軽い無色透明の気体。風船に入れる
リチウム Li 銀白色の固体。リチウムイオン蓄電池に使われる。水と反応して水素を出す
ベリリウム Be 銀白色の固体。あまり生活には関係ない。成り行き上、元素記号を覚えておけばよい
ホウ素
(Boron)
B 固くてもろい黒色の固体。ガラスの成分のひとつ
炭素
(Carbon)
C 黒色あるいは透明な固体。有機物には必ず含まれる。炭の成分であることから炭素という。ダイヤモンドも炭素100%
窒素
(Nitrogen)
N 無色透明の気体 空気の80%くらいが窒素。空気から酸素を取り除くと窒息することから窒素という。
酸素
(Oxygen)
O 無色透明の気体 空気の20%くらいが酸素。水の成分。最初、酸の成分と誤解されたので酸素と名付けられた
フッ素 F 淡黄色の気体。歯の表面処理に有効で、歯磨き粉に入っていたりする
ネオン Ne 無色透明の気体。ほとんど化学反応しない。ネオンサインのガラスのチューブに入っていて、電流が流れると赤く色づく
ナトリウム Na 銀白色の柔らかい金属。水に入れると水素を発生して火が着く。食塩の成分のひとつ
マグネシウム Mg 銀白色の金属。水蒸気を当てると水素を出す
アルミニウム Al アルミともいう。銀白色の金属。鉄より軽い金属。窓枠に使われる。1円玉もアルミ
ケイ素
(Silicon)
Si シリコンともいう。暗白色の固体。陶磁器やガラスの原料とする珪土からケイ素と名付けられた。土の主成分
リン Phosphorus P 固体。外観色は白色、黄色、真紅色、赤色、紫色、黒色がある。肥料や農薬として大量に使われている
硫黄
(Sulfur)
S 黄色の固体。火山や温泉の噴出ガスに含まれる。硫酸や様々な化学製品の原料となる
塩素
(Chlorine)
Cl 独特の臭気を持つ淡黄色の気体。毒性がある。水道水の消毒に使われる。食塩の成分の一つ。
アルゴン Ar 無色透明の気体。空気の中で3番目に多く含まれる。ほとんど化学反応を起こさない。水銀灯や蛍光灯に封入される
カリウム K 銀白色の柔らかい固体。水に入れると激しく反応して水素を出す。肥料に使われる
カルシウム Ca 銀白色の柔らかい固体。水に入れると激しく反応して水素を出す。石灰石に含まれ、セメントの原料となる
クロム Cr 硬い銀白色の固体。クロムメッキとして使われる
マンガン Mn 銀白色の固体でもろい。乾電池の正極に使われる
Fe 硬い銀白色の固体。元素記号のFeはラテン語のFerrumから。入手しやすい安価な金属として様々な用途に使われる
ニッケル Ni 硬い銀白色の固体。銅と混ぜて白銅として、50円硬貨や100円硬貨に使用される

(Copper)
Cu 赤銅色の光沢のある固体。元素記号はラテン語のCuprumから。電気をよく通すので、電線として使われる
亜鉛
(Zinc)
Zn 青みを帯びた銀白色の固体。乾電池の負極や亜鉛メッキに使われる
臭素
(Bromine)
Br 赤褐色をした液体。うがい薬(イソジン)に使われる。有機物の二重結合と反応するため、二重結合の定量に使われる
Ag 銀白色の固体。元素記号のAgはラテン語のargentumから。電気やをよく通し、光の反射率が高いので鏡に使われる
スズ Sn 比較的柔らかい銀白色の固体。元素記号のSnはラテン語のStannumから。ハンダやブリキに使われる
ヨウ素
(Iodine)
I ヨードともいう。黒色の固体。消毒剤(ヨードチンキ)やデンプンの検出に使われる(ヨウ素デンプン反応)
Au 比較的柔らかい黄色で光沢のある固体。元素記号のAuはラテン語のaurumから。さびにくいため宝飾に用いられる
水銀 Hg 銀白色の液体。元素記号のHgはラテン語のhydrargyrumから。体温計に使われる
Pb 銀白色の固体。元素記号のPbはラテン語のplumbumから。表面が錆びると鉛色となる。ハンダや蓄電池に用いられる。

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