普段気が付かないけど意外に速いもの 地球の自転、空気分子、津波

私たちの身の回りで、速度が速い物って何があるでしょう。自動車、新幹線、飛行機。自然現象でいえば、音や光なども早いですよね。でも気が付かないけど実はとっても速いものが身の回りにあるのです。

地球の自転、空気、地震や津波。これって実はジェット機並みかそれ以上に速いのです。知ってました?今回はちょっとトリビアな無駄知識。あまり気がつかないけど以外に超速いものを3つ紹介します。

地球の自転は音速越え

地球はもちろん自転しています。昔の人は、地球はじっとして動かない。太陽や月やその他の星々が動いていると思っていました。でもコペルニクスがいいやちがうよ。動いているのは地球の方なのだと言い出しました。いわゆるコペルニクス的転換と言われるものです。

でも最初は誰も信じませんでした。ガリレオも同じことを言いましたが、宗教裁判にかけられて、終身刑を言い渡されました。これはマゼラン一行が地球を一周してから実に100年以上もあとのことでした。当時の人は地球が丸いことは知っていても、地球が回転していることは納得できなかったわけです。

では、地球はどのくらいの速度で回転していると思いますか。時速10㎞?、100㎞?、1000㎞?
地球の自転速度は簡単に計算することができます。地球の外周は40,000㎞ちょうど。地球は24時間で1周するわけですから、40,000㎞を24時間で割ればいいのです。 

40000km÷24時間=1667km/時間

つまり、地球の回転速度は時速1,667㎞ということになります。音の速さ、つまり音速が時速1,225㎞ですから、地球は音速の1.36倍の速さで回っているということになります。ジェット旅客機が時速1,000㎞で飛んでいますので、これよりずっと速いことになります。

もちろん超音速ジェット戦闘機なら音速の2~3倍くらいの速度は出せますが、燃料を大量消費してしまうので、長くは飛べません。いつもは音速より遅い速度で飛んでいます。

ということで、地球の自転はジェット機より速いのです。気が付かないけれど。だからガリレオの時代の人は、そんなに早く地球が回っているのなら、どうして我々は飛ばされていなかいのか。ガリレオ君、間違っているよということになったわけです。

ただし、時速1,667㎞というのは地球の赤道上の速度です。北極や南極では地球の自転速度はゼロです。しいて言えば北極や南極にずっと立っていれば、24時間で体が1回転する。このくらいの緩い速度です。

では、赤道でも北極や南極でもない日本ではどうか。日本は北緯20度から46度に位置しますが、例えば東京なら北緯36度です。地球の半径は6,370㎞ですから、東京付近の地球の円周はつぎのように計算できます。

6370km×cos36°=6370km×0.809=5135㎞

従って東京付近での地球の外周は

5153km×2×3.14=32,360km

あとはこの距離を24時間で割ってやればいい

32360km÷24時間=1348㎞/時間

つまりわれわれの住む日本付近では、いつも時速1,348㎞、つまり音速の1.1倍の速度で動いていることになります。この速度は赤道での地球の自転速度より遅いですが、ジェット旅客機よりもずっと速い速度です。

結論:日本人は1年365日、24時間 常に音速の1.1倍の速度で動いている。

ちなみに、地球自体が太陽の周りをまわっています。つまり公転です。この速度はどのくらいでしょうか。地球から太陽までの距離が1億4,960万kmだから地球の軌道円周は 939,488,000㎞。これを1年の長さ365日と5時間49分(8765.82時間)で割ってやればいいのです。結果は時速10万7,176㎞ 秒速にすると約29㎞/sの速度になります。これはなんと音速の87.5倍という猛烈な速度ということになります。

さらに地球や太陽を含む太陽系自体が銀河系宇宙をまわっていますが、その速度は230㎞/s。さらに銀河系宇宙自体が動いているので、その速度は一説によると600㎞/s。しかし、ここまで行くと、我々にとって遠い話になってしまって、あまり意外性がありませんね。

空気の速度も音速越え

私たちはもちろん空気の中で暮らしています。普段、あまり気が付きませんが。空気がなければ生きていくことができません。その空気ですが、実はものすごいスピードで動いていると言ったら驚かれるでしょうか。

大風が吹いている時、例えば猛烈な台風の最大風速は50m/sくらいあります。これは時速180㎞になります。もちろん、これも速いですが、ここで言っている空気の速度というのは台風の話ではありません。

例えば、部屋の中で空気の動きがなく、「よどんでいるね」というときでさえ、空気は実は大変な高速で動いているのです。

空気はその78%が窒素分子、残りの21%が酸素分子からできています。そのほかにもいろいろな分子が空気には含まれていますが、それは全部合わせても1%以下。ですから、空気の大半は窒素分子と酸素分子です。この窒素分子や酸素分子。目には見えませんが実はかなりの高速で動いているのです。

ただし空気に含まれる分子の速度がすべて同じというわけではありません。空気に含まれる分子の数は1モル、つまり22.4ℓ(縦、横、高さが30㎝ずつの立方体より少し小さな箱の中に入る量)の中に6.0×1023個もあります。この大量の分子が勝手にあっちに飛んだり、こっちに飛んだりしています。そして、その速度も速いものもあればほとんど動かないものもあります。

しかも、それらの分子が壁や空気中のチリにぶつかったり、分子同士が互いにぶつかりあったりすると、その速度が変わり、一定ではありません。このように分子1個1個でみれば、速いものも、遅いものもあるという状態なのですが、そのそれぞれの分子の速度を平均すると、あら不思議、同じ温度なら常に同じ速度になるのです。

つまり、分子1個1個の速度や進む方向は分からないけれど、平均速度は一定。そして、その平均の速度は計算で求めることができます。これが、その計算式です。

根二乗平均速度という聞きなれない値が出てきますが、平均速度と考えていいと思います。例えば空気中の窒素の分子量は28、酸素の分子量は32ですから、窒素78%、酸素21%、その他の成分は無視したときの空気の平均分子量は28.8。

これを上の式に当てはめて計算すると、温度が25℃(298K)の時の空気の分子の平均速度508m/sとなります。これは時速に直すと約1,830㎞/h。つまり音速(1,225㎞/h)の約1.5倍になります。

つまり、われわれをとりまく空気の分子は平均で音速の1.5倍というジェット戦闘機並みの高速で飛び回っているのです。

松田七美男「気体分子運動論の基礎」J. Vac. Soc. Jpn. Vol. 56, No. 6, 2013より

いろいろな気体分子の速度分布を計算したグラフを載せておきます。温度が同じなら、分子量が小さい分子ほど速度は大きくなります。例えば空気の分子量より重いCO2は速度が小さく、逆に分子量が小さい水素は速度は大きくなります。

結論:我々を取り巻く空気の分子は速いものも遅いものもあるが、平均すると音速の1.5倍の高速で動いている。

ちなみに、温度が上がると分子の速度も大きくなり、温度が下がると小さくなります。そして温度がゼロ(-273℃)になると分子の速度は計算上ゼロ。つまり止まってしまいます。そのため、温度はこれより下げることができないということになります。これを熱力学第三法則と言ったりします。

津波の速度は弾丸並み

地震国日本では津波が大きな被害を及ぼすことがあります。この津波の速度も結構高速です。津波の速度は次のような簡単な式で計算することができます。

興味深いのは、津波の速さが波の高さだけでなく海の深さにも関係するということです。特に海の深さは深いところではとんでもなく深いから、津波の速度はとっても大きくなります。

海の最も深いころはマリアナ海溝のチャレンジャー海淵で、10,920mの深さがあります。波の高さhをゼロとして計算しても、津波の速さは327m/s。時速に直すと1,178㎞/h。つまりほぼ音速、計算上拳銃の弾丸並みの速度で進むことになります。

もちろん海はそんなに深いところでばかりではないので、世界の海の平均的な深さ3,800mで計算しても、津波の速さは193m/s。時速に直すと700㎞/hと、これもジェット機並みの速さとなります。

もちろん、津波が海岸線近くの海が浅くなったところに達すると、速度も小さくなります。津波を飛行機で上空から撮影した映像が公開されていますが、これは大分水深が浅くなって速度も小さくなった場面でしょう。

しかし、津波の速度が小さくなると、今度は波が圧縮されることになり(つまり速度が小さくなると、津波の後の海面が前の海面に追いつく)、波の高さが大きくなります。

東日本大震災時の津波に最大高さは40mに達したといいます。この数字で計算すると、例え津波が海岸線に達して海の深さがゼロになっても津波の速さは計算上20m/秒。時速70㎞に達することになります。これは一般国道の最高制限速度よりも大きいのです。だから、津波が来てから逃げるのでは間に合わない。早めの避難が必要となるわけです。

結論:津波の速さは海の深いところでは音速近くまでなり、海岸に達しても国道の制限速度以上の高速度で進むことがある

ちなみに地面を伝わる地震の速さは縦波のP波と横波のS波があることはご存知のとおりです。この地震波の伝わり方も非常に早くP波で5,000~7,000m/秒(18,000~25,200㎞/h)、S波で3,000~4,000m/秒(10,800~14,400㎞/h)といいますから、これは弾道ミサイル並みの速さです。

今回、地球の自転、空気分子の速度、津波の速さを取り上げました。ふつう、あまり高速だと感じませんが、数字で示すといずれもジェット機かそれ以上の高速です。意外に思われたでしょうか。

2021年10月25日

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