どんないいことがあるのか
では、DHAやEPAを食べるとどんないいことがあるのでしょうか。
日本の厚生労働省の資料によると、シーフードに多く含まれるDHAやEPAは血栓を防ぐとともに血中のLDL(悪玉)コレステロール値を低下させ、脳梗塞、心筋梗塞などの血管障害を予防するほか、アレルギー反応を抑制する作用などがあるとされています。
ネットで調べると、血液がサラサラになるとか、中性脂肪を抑えるとか、心臓病の予防になる、動脈硬化を防ぐ、血管を若返らせるなど、少し違った表現となっています。でも循環器系の病気を抑える効果があるという点では同じことです。
先に述べた米国の食事ガイドラインでも、心臓病の予防に役立つと書かれています。
一方、注目したいのは特にDHAの方です。DHAは、脳や神経に高濃度に含まれている物質で、情報の伝達をスムーズにするほか、脳の発育や視力の向上に関与していると言われています。
特に、胎児期から乳児期にかけては神経細胞のネットワークの形成時期であり、DHAはこのネットワークの形成、つまり、脳や神経の育成を助ける働きをすると考えられているわけです。
米国の食事ガイドラインで妊娠時期や授乳期には週に8オンス以上のシーフードを食べるよう、推奨しているのはこういうわけです。
どんなシーフードがお勧めなのか
ではどんなシーフードにDHAやEPAがふくまれているのでしょうか。米国の食事ガイドラインでは、DHAやEPAが多く含まれているシーフードの表を載せていますので、日本語に翻訳して示しました。
表1 シーフードに含まれるDHA、EPA
シーフードの種類 |
EPA+DHA (㎎/4oz) |
水銀 (μg/4oz) |
アンチョビ(小いわし) | 2300-2400 | 5-10 |
さば | 1350-2100 | 8-13 |
さけ(マスノスケ、シロザケ) | 1200-2400 | 2 |
クロマグロ、ビンナガマグロ※ | 1700 | 54-58 |
いわし | 1100-1600 | 2 |
かき | 1550 | 2 |
ます | 1000-1100 | 11 |
ビンナガマグロ(缶詰) | 1000 | 40 |
ムール貝 | 900 | NA |
カラフトマス、ベニマス | 700-900 | 2 |
イカ | 750 | 11 |
スケトウダラ | 600 | 6 |
エビ | 200-550 | 9 |
※マグロ類は水銀を多く含むので妊婦は注意が必要です(後述)
日本とは食生活が違うので、シーフードの採り方もちょっと違うかもしれませんが、やはりアンチョビ(小いわし)やサバのような青魚が上位に位置付けられています。サケやマグロも高いようです。
魚類のほか、カキやムール貝、イカ、エビなどもDHAやEPAが含まれています。ただし、DHAやEPAをたくさん含むシーフードなら何でもいいかとうとそうではありません。妊婦が食べてはいけない魚介類もあるのです。次の章は必ず読んでください。
水銀が多く含まれるシーフードは避ける
米国の食事ガイドラインには妊娠や授乳期に食べてはいけないシーフードもあると警告しています。これは、ある種のシーフードには水銀が含まれ、特に胎児(授乳中の幼児は対象外)への悪影響が大きいと考えられているからです。
日本の厚生労働省は「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」を発表して、注意を呼び掛けています。
この注意事項で示された注意すべき魚介類とその摂取量の目安を転記しました。
表2 妊婦が注意すべき魚介類の種類とその摂取量(筋肉)の目安>
マグロの中でも、キハダ、ビンナガ、メジマグロ(クロマグロの幼魚)、ツナ缶は通常の摂食で差し支えありませんので、バランス良く摂食してください。
バンドウイルカやコビレゴンドウのようにあまりなじみのない魚も混じっていますが、キンメダイやメカジキ、クロマグロなどは目にする機会も多いので要注意ですね。
ただ、絶対食べてはいけないというのではなく、摂取量の目安を守ればいいということです。(胎児に障害があるといっても、音を聞いた時の反応が1/1000秒遅れるという程度の問題ということのようです。)
といっても、この表に挙げられた種類のシーフードは、妊娠中はできるだけ避けた方がいいでしょう。
なお、厚生労働省は妊婦が魚介類を食べるときの注意事項をまとめて公表していますので、参考にしてください。
→「これからママになるあなたへ」
シーフードが嫌い、食べる機会が少ないという人は
ところで、サプリメントとしてDHAやEPAと銘打った商品が市販されています。このサプリメント、DHAやEPAという品名が書かれていますが、実はDHAやEPAそのものではなく、DHAやEPAを多く含む魚の油をカプセルに詰めた物なのです。
例えば、あるサプリメント(サントリー DHA&EPA+セサミンEX)の場合、以下のように表記されています。
名称…DHA・EPA含有油脂加工食品
原材料…DHA・EPA含有精製魚油(国内製造)、ビタミンE含有植物油、米胚芽油、セサミン/ゼラチン、グリセリン、ビタミンD
つまり、このサプリメントはDHA、EPAそのものではなく、DHAやEPAを含んだ魚の油が主成分なのです。といっても、体内で分解されてDHA、EPAとなるわけですから、効果があればそれでよいわけです。
DHAやEPAはシーフードを食べれば摂取できますが、シーフードは好きではない、特に青魚が嫌いという人は意外と多いのもの。あるいは、魚介類を食べる機会があまりない、たくさんは食べられないという人。そんな人にはサプリメントでDHAやEPAを含んだ魚油を摂取するのもいいのじゃないでしょうか。
2020年11月19日
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