設備更新を考えている経営者さん必見 総額7,000億円のGX省エネ補助金が決定

設備更新を考えている経営者さん必見

そろそろ工場の設備も古くなって新しい機器に買い替えたい
うちの病院の空調機もガタが来ているので新しい設備に更新したいのだが
そんな古い設備を最新の省エネ型危機に取り換えるなら、その1/2から1/3を国が負担してくれることをご存知だろうか。場合によってはこの補助率が2/3になることも。

つまり1億円の設備投資であれば、企業が負担する金額は中小企業で半額の5,000万円、大企業なら7,500万円ほどに。場合によっては3,300万円ほどで済むということになる。

しかもこの補助金は年利何%などという融資ではなく、返さなくていいお金なのだ。こんな美味しい話を利用しない手はない。もちろん、審査もあるし、手続きも少し厄介だが、申請してみる価値はあるだろう。

政府はその資金として今後3年間で総額7,000億円に達する予算を確保して、どうぞ使ってくださいと企業からの申請を待っているのだ。

なぜ政府は支援するのか

わが国はエネルギー資源に乏しい。石油や石炭、それに天然ガスといったエネルギー資源のほとんどは輸入に頼っている。このような国にとっては、資源の確保や開発も大切だが、そもそもエネルギーを節約して輸入量を減らすことこそ最も優先すべきことではないだろうか。

政府も従来から企業の省エネについては様々な施策を行ってきた。そして、さらに昨年2月に閣議決定されたGXが拍車をかけることになった。GXつまりグリーントランスフォーメーションであるが、これは気候変動対策として化石燃料の使用を抑えたクリーンエネルギーを活用した社会を構築しようという取り組みとのことだ。

このGX、単に化石燃料の使用を削減しようというやや後ろ向きの活動ではない。むしろ気候変動対策として開発された様々な技術を社会に普及させることによって新たな産業を起こし、国の経済を活性化させようという積極的な活動なのだ。

そのGXの活動のなかでも、特に日本の得意とする省エネ技術が筆頭に取り上げられているのは妥当なことだろう。そして、これを実現するための具体的な政策として大規模な省エネ補助金が確保されたという経緯である。

省エネ支援には三つの類型がある

この補助金は省エネ支援パッケージとして組まれており、事業者向けと家庭向けがあるが、今回はその中から事業者向けの支援、2024年度予算額1,160億円分について紹介したい。

この支援は以下の3つの類型に分けられているので、支援を受けたい方は、どの類型が最も適合するのかを選ぶことになる。

  • Ⅰ型 工場・事業場型 … 工場事業場単位での大規模な省エネとなるもの
  • Ⅱ型 電化・脱炭素燃転型 … 従来の化石燃料から電気や低炭素な燃料へ転換するもの
  • Ⅲ型 設備単位型 … 予め決められた型設備の中から選択した機器を導入するもの

このうち、Ⅰ型とⅢ型は従来から行われていた補助金であるが、今回はⅡ型が新設された。
それぞれについて支援の内容を紹介しよう。

Ⅰ型
生産ラインの入れ替えなど工場や事業場全体に係る大幅な省エネを図るもの。補助率は中小企業で1/2、大企業では1/3。補助の対象には設備そのものの購入費用のほか、設計費や導入工事費も含まれる。さらに導入する設備が先進的なものであれば補助率は中小企業で2/3、大企業で1/2と一層手厚くなる。

次に今回新設されたⅡ型は後回しにして、Ⅲ型について先に説明しよう。

Ⅲ型
あらかじめ決められた省エネ型設備を導入する場合に受け取れる補助金である。ここでいう省エネ型設備とは、資源エネルギー庁が予め選定した省エネ性に優れるとされる機器のことだ。例えば空調機やボイラー、レーザー加工機、印刷機械などのメーカー名や型番がリストとなって示されている。この特定の機器を導入する場合に受け取れる補助金だ。

補助率は一律1/3。例えば事務所の古いエアコンを省エネ性に優れたヒートポンプに取り換えた場合、その導入機器が1,000万円だったとすれば、その1/3、すなわち333万円が補助金として受け取れることになる。

ただし、対象となるのは機器の購入費用だけで、工事費その他は含まれない。また、設備の更新だけが対象であり、新規に導入する場合は補助の対象外となる。このようにⅢ型は、補助金の対象となる範囲が狭く、補助率も低い。しかし手続きが簡便だし、Ⅰ型と違って採択のハードルも低い。

Ⅱ型
今回から取り入れられたⅡ型だが、これはⅢ型でリストアップされた省エネ機器のうち、産業用ヒートポンプ、業務用ヒートポンプ、低炭素工業炉、コージェネレーション、ボイラーの5種類を導入する場合で、さらに温室効果ガス排出量削減につながる燃料転換を含むものが補助対象となる。

このⅡ型の補助率は1/2。Ⅲ型であれば補助率が1/3であるが、燃料転換を含むものであれば、Ⅱ型に申請することができ、その場合、補助率が1/2まで引き上げられるということである。

Ⅱ型については、3つのケースが例示されている。

  • 温水ボイラーの例:従来は熱源として石炭やA重油が使われていたものをヒートポンプに更新する(化石燃料→電気)
  • 蒸気ボイラーの例:従来は熱源として石炭やA重油が使われて蒸気を発生させていたボイラーについて、熱源を都市ガスやLPGのような低炭素燃料に転換する(化石燃料→低炭素燃料)
  • キュポラの例:従来、熱源としてコークスが使われていたものを、電気を使った誘導加熱式に変更する(化石燃料→電気)

事業者の義務

このような政府の補助金を使って設備の更新を行った場合、従来から事業者にはいくつかの義務が課せられている。例えば、設備の善良管理義務や会計監査の受け入れ、省エネ成果の報告などである。これは国の金を使う限りについては当然のことであろう。

しかし、今回からはⅠ型とⅡ型についてはGX移行債が使われることから、以下のような制約が新たに課される予定となっている。

  • CO2排出を削減する目標を設定し、その実績について第三者検証を実施し、報告する
  • 目標を達成できないときは温室効果ガス排出クレジットを購入すること
  • その他、企業の成長方針の策定、人材確保に向けた取り組み

今回は、クレジットという新たな考え方が示されている。クレジットについては、いろいろ批判もあるが、政府はこのような方法で導入を図っていこうと考えているようである。

補助金申請者が気を付けなければならないのは、補助金をもらってもCO2削減目標が達成できないときは、クレジットという費用が発生することになることだ。これについては、確実に目標を達成できるよう、無理のない省エネ計画を立てておくことが肝要であろう。

詳しい説明と申請方法はここから
令和5年度補正予算における省エネ支援策パッケージ(資源エネルギー庁)
特設サイト(環境共創イニシアチブ)

2024年3月23日

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