そこの体重多めの人。あなた、あなたです。カロリーの摂取に気を付けていますよね。カロリー制限。でも甘いものは食べたい。このケーキ、甘さ控えめだから食べても太らないよね。少なくとも、砂糖がべたべた乗った甘~いお菓子よりカロリーが少なそう。そう思っていませんか。
甘さ控えめって本当にカロリーが低いのでしょうか。
ここで質問。ミスタードーナツで売っているドーナツのうち、フレンチクルーラーとオールドファッションとどっちのカロリーが高いでしょうか。
フレンチの方はシロップがべたべた塗られて、それが中まで浸み込んでいる甘い甘いやつ。それに比べればオールドはそんなべたべたとは甘くはない。見た目いかにもフレンチの方がカロリーが高そうですが…。
実はフレンチクルーラーは154kcal、オールドファッション293kcal。オールドの方がフレンチよりも2倍近くカロリーが高いのです。実は意外かもしれませんがミスドのドーナツのなかで最もカロリーが低いのがフレンチクルーラーなんです。ちなみに、一番カロリーの高いのがヘーゼル&ココナツファッションというドーナツ。424kcalもあるそうです。
なぜフレンチのカロリーが低いのか。それは中がスカスカだから。それに対してオールドの方はなかまでぎっしり詰まっているからカロリーが高い。じゃあカロリーは甘さじゃなくて重さで決まるの?まあ、そんなところです。
世の中、糖質オフとか、糖類ゼロパーセントとかノンカロリーとか、そんな言葉があふれています。これって何か体によさそう。でも実は、ごはんやパンも糖質だと聞いたことはありませんか。糖質とか糖類とか何のこと?
そのあたりの疑問にお答えします。ちょっと詳しく、少し化学の知識も加えて。
糖類ってなに
糖類って何でしょう。砂糖のこと?化学的にいうと、ホルミル基※(-CHO)またはケトン基(>C=O)を含み、二つ以上のヒドロキシル基(-OH)を持つ有機化合物と定義されています。ちょっと難しい。
※ホルミル基はアルデヒド基ともいいます
つまり、有機化合物の中で、
・化学式の中に -CHO または >C=O という部分があって、
・それ以外に -OH が二つ以上あれば 糖類ということ
・それに、有機化合物だから当然、炭素Cが含まれます。
単糖類
例えば一番簡単な糖類は、ホルミル基1つと、ヒドロキシル基を二つ持ったもの。これをグリセルアルデヒドと言います。
図では一部の炭素や水素が省略されていますが、線の折れ曲がったところに炭素があることを示しています。つまり炭素の数は3個。一番右のところにケトン基>C=Oがあって、そのほかにヒドロキシル基-OHが2か所ある。だから糖類。
炭素の数が増えると、もっと分子が長くなり、-OHの数も増えて複雑な糖類になります。(ただ、炭素が増えてもホルミル基(-CHO)またはケトン基(>C=O)はだいたい1個のままが多いようです)炭素の数が3個の糖類を三炭糖、4個の糖類を四炭糖、5個の糖類を五炭糖と…と糖類は炭素の数で分類されます。
例えば、炭素が4個の四炭糖では、こんな感じ。
炭素が5個の五炭糖では、こんな感じ。
ちなみに、L-アラビノースは甘いけれど小腸で吸収されにくいので、ダイエット効果があるとされています。といっても全然吸収されないというわけではなく、吸収されるのが遅いということですがね。
糖類は炭素の数が増えるほど、化学構造が鎖のように長くなっていきますが、面白いことに、炭素の数が五個以上に増えると、>C=OのOのところで頭としっぽがつながって、ちょうどヘビが自分のしっぽをくわえたように環状の化学構造になることがあります。
例えば、キシロース。炭素が5個ですから五炭糖ですが、>C=OのOのところで他の炭素とつながって>C-O-Cの形になって環状となっています。
ちなみにキシロースは、甘いけれど虫歯になりにくいキシリトールの原料です。
炭素が6個ある六炭糖の代表的な糖類は、なんといってもグルコースでしょう。炭素の数が6個、OHが5個ついて、やはり環状をしています。グルコースはブドウ糖とも言われ、点滴液の中にも含まれています。これはグルコースがすぐに体内に吸収され、エネルギー源として消費されて、水になるため、水分補給のために加えられているそうです。
そのほかに、六炭糖にはフルクトース(果糖)やガラクトースなどがあります。
二糖類
では次の化学構造の物質はなんでしょう?
六角形の形をしたグルコースと五角形の形をしたフルクトースが酸素-O-で仲良くお手てをつないだ形をしています。これがダイエットの天敵、砂糖(ショ糖)の化学構造です。砂糖は化学的にはスクロースと呼ばれています。
スクロースのように、ふたつの糖類が酸素-O-を仲介として結びつきあった化学構造をしている物質を二糖類といい、この酸素を仲立ちとした結合をグリコシド結合といいます。
二糖類にはスクロース(ショ糖)のほかに、ラクトース(乳糖)やトレハロース、マルトース(麦芽糖)のようなお馴染みの糖類があります。ちなみにトレハロースは甘味がさっぱりとした上品な味なので、例の「甘さ控えめ」お菓子などに添加されていることがあります。ただし、カロリーは砂糖と同じですよ。
以上、糖類の化学構造が二つくっついた二糖類と、ひとつだけのもの(単糖類)を併せて、糖類といいます。
私たちは糖類というと砂糖を思い浮かべますが、糖類には砂糖以外にもフルクトースやグルコース、マルトース、キシリトースなどいろいろあるということです。糖類はだいたいどれでも食べると甘味があります。ただゲンチオビオースのような苦みを持った変わり種もいます。
オリゴ糖、デキストリン
単糖が二個つながったものを二糖類といいました。では三個以上つながったものはないのでしょうか。単糖が3個以上、10個程度つながったものをオリゴ糖といいます。そして、オリゴ糖よりもう少したくさんつながったものがデキストリンと呼ばれます。どちらも健康食品としてよく聞く名前ですよね。
オリゴ糖はビフィズス菌のような腸内の善玉菌の栄養源となるので、腸内の善玉菌の割合が増え、腸の働きを整える作用があると言われます。また、デキストリンの仲間の難消化性デキストリンは、食後の血糖値の上昇を抑え、また整腸作用があると言われます。
でんぷん
代表的な単糖類はグルコース(ブドウ糖)と言いましたが、このグルコースが数百から数万個連なったもの(分子量数万から数百万)はデンプンと言われます。そう、ご飯やパンに含まれるあのデンプンは砂糖と同じ糖類からできているのです。デンプンは甘くはありませんが、実は糖がたくさん集まったものなのです。
デンプンを化学構造で書くとはこんな形。
グルコースがいくつもグルコシド結合でつながっている形をしています。だから、デンプンは糖類やオリゴ糖と同じ仲間ですが、ただ分子が長いだけ。
ということで、糖類だけでなく、糖類がいくつも繋がったオリゴ糖やデキストリンやデンプンをまとめて糖質といいます。
糖類と糖質。同じような言葉なので間違いやすいですが、糖類は単糖類と二糖類のこと。糖質は単糖類がいくつも鎖のように連なった、デンプンやオリゴ糖、デキストリンも含むということ。
一般に糖類は甘いですが、デンプンやデキストリンは同じ糖類からできているけれど、甘くないので糖類というのは気が引ける。というので、「糖質」というのではないでしょうか。
私たちがご飯やパンを食べると、これに含まれるデンプンが胃のなかで酵素の働きによって分解されて、デキストリンになり、オリゴ糖になり、最終的にはグルコースまで分解されます。そしてグルコースは腸壁から体内に吸収されてエネルギー源となります。
炭水化物
では下の化学構造で示される物質は何でしょう。デンプンじゃないの?と思われた方、よく見てくださいね。デンプンの化学構造とちょっとだけ違います。これじゃあまるで間違い探しですよね。
これはセルロースまたは繊維質と言われるものです。デンプンと同じようにグルコースが何百個もグルコシド結合でつながっているのは同じですが、グルコースの向きが1個おきに逆向きに結合しているのがデンプンと違います。
デンプンは体内で酵素の働きによって分解されてグルコースになりますが、セルロースは分解されません。なぜなら人間の持つ分解酵素はデンプン専用で、セルロースは分解しないのです。
セルロースもデンプンとほとんど化学構造は同じじゃないかと思われるかもしれませんが、人間の消化酵素はセルロースを受け付けません。とても頑固なんです。だからセルロースは分解されず、体内に吸収されないので、エネルギ―源にはなりません。
セルロースもデンプンと同じようにグルコースという糖類からできていますが、栄養源とならないので、デンプンのような糖質とは言いません。しかし、糖質、糖類に、このセルロースを加えて、まとめて炭化水素といいます。
よく、低糖質のクッキーなんてのがありますが、これはデンプンを減らして、その代わり食物繊維、つまりセルロースを多く含むようにしたものが多いようです。セルロースは炭水化物ですが、糖質ではないから低糖質というわけです。
まとめると
こういう関係にあります。
糖質が肥満の原因になりやすいことから、糖質の摂取を制限した食事をローカーボダイエット、略してロカボダイエットといいます。ローカーボのカーボとは炭水化物のことですが、炭水化物にはカロリー源にならないセルロースも含まれますから、ロカボダイエットは低炭水化物ではなく、低糖質と訳した方がいいでしょう。
甘さ控えめは太らないのか
ご飯やパンなどデンプンを含むもの、あるいは砂糖などの糖類を食べると、私たちの身体の中でデンプンが消化されて最後にはグルコースのような単糖になり、体内に吸収されて私たちが活動するのに必要なエネルギー源となります。
しかし、必要以上の量のデンプンを摂ると、グルコースが余剰となり、余ったグルコースは脂肪になって体内に蓄えられます。これが肥満です。
甘い糖類だけではなく、甘くないデンプンでも食べれば体内で分解されて糖類に変わってしまいますから同じことです。甘くないから太らないということはなく、私たちが活動に必要なエネルギー以上に食べれば太ります。
ここで、ちょっとご飯と砂糖を比較してみましょう。
角砂糖1個(5g)が19kcal。白米1膳(150g)で250kcalです。
250÷19=13個
つまり、カロリーで比較するとご飯1膳分は角砂糖13個分になります。
甘い糖類は高カロリーだというイメージがありますが、意外にご飯もかなりの高カロリー。それは当然のことで、ご飯は砂糖と同じ糖質だからです。
角砂糖13個なんてとても食べられませんが、ご飯1膳くらいは平気で食べられますよね。これは恐ろしいことです。だから、甘さ控えめでもカロリーは同じなので安心してはいけないということです。
どんなに甘くても太らないのか
ではどんなに甘くても太らないかというと、実はそうではありません。
それはデンプンは消化されるのに時間がかかるのに対して、糖類は、デンプンに比べてカロリーは同じでも、吸収されやすく血糖値が急激に上がるからです。血糖値が上がるとインスリンというホルモンが分泌されて、血液中の糖分を中性脂肪に変えて蓄積する。その結果、デンプンに比べて同じカロリーでも肥満しやすくなります。
つまり、甘さ控えめだからといって、甘くないでんぷん質とカロリーは同じなので安心してはいけません。ただし、どんなに甘くても問題ないかというと、糖類の多い物は身体に吸収されやすいので血糖値が上昇しやすく太りやすいので注意が必要ということです。
2022年6月11日
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