アンモニアを燃料として発電所で燃やそうという話題を聞くようになってきた。例えば、記事「二酸化炭素の排出量減らす 新たな発電技術を公開 JERA 碧南火力発電所」は石炭の一部をアンモニアに置き換えることによってCO2発生量を2割減らすとしている。
アンモニア(NH3)は炭素Cを含まないので、燃やしてもCO2は出てこない。だから、アンモニアを輸入してCO2の出ない燃料として石炭火力発電所などで使おうという話になっている。
しかしながら、アンモニアは燃やすときにはCO2が出ないが、作るときに大量のCO2が発生していることを忘れてはいけない。アンモニアの窒素分Nは空気から取り出せるが、水素分Hはアンモニア製造工場では天然ガスや石炭から作っている。このとき大量のCO2が発生する。
さらに、窒素と水素を化合させてアンモニアを作るときに大量の熱を消費するが、この熱を得るために天然ガスや石炭が燃やされるので、この時にもCO2が発生する。
アンモニアを燃料として使用した場合、製造工程でのCO2排出量を考慮すると、天然ガスをそのまま燃やした場合に比べて2.3倍のCO2が排出されることになる。
また、アンモニアは窒素分を含むので、燃やせば当然ながら窒素酸化物が出てくる。窒素酸化物はCO2よりも強力な温室効果ガスであったり、猛毒であったりする。火力発電所で直接アンモニアを燃やすなら、この窒素酸化物を如何に出さないようにするか常に課題となる。アンモニアを石炭に混合して使ったときうまくいっても、100%で使って大丈夫だとは言えないだろう。
さらにもうひとつ、アンモニアに含まれる窒素分は空気から採られる。ということは海外のアンモニアを日本に運ぶというのは、その大半は空気を運んでいるということになる(アンモニアの重量の82%が窒素分)。だからアンモニアの発熱量は非常に低い。これで採算が取れるのだろうか。
CO2を発生させないアンモニア製造方法に切り替えればいいのだが、アンモニア発電だけが先行している。このままいけば、確かに日本のCO2排出量は削減されるかもしれないが、その削減量以上にアンモニア輸出国のCO2排出量を増やすことになる。
このようにアンモニア発電は、世間ではまるで脱炭素の救世主のような扱いであるが、まだ解決すべきいろいろな問題があるのだが
2021年10月19日