2月5日正午ごろ、愛媛県の松山空港に米軍の戦闘機2機が緊急着陸。着陸の原因は燃料切れということで、松山空港で燃料を補給して午後4時ころ飛び立ったという。
この戦闘機は最新のF35C。わが国の航空自衛隊で運用しているのはF35Aという空軍型だが、松山空港に降り立ったのは海軍仕様のC型だ。空母ジョージワシントンの艦載機で、岩国基地に所属しているという。岩国と松山はつい鼻の先だから、燃料不足で緊急着陸したというより、岩国で何かのトラブルがあり、上空で待機している間に燃料がなくなったのではないだろうか。
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ここで疑問なのは、燃料として何を補給したのかということである。米国は空軍と海軍とでは燃料が異なり、海軍はJP-5という規格のジェット燃料を使っているはずである。(空軍はJP-8)これに対して、わが国の民間航空機はJet A-1という規格の燃料だ。
松山空港は民間空港であるからJP-5を持っているとは思えないし、F35が駐機していた4時間ほどの間にわざわざJP-5を取り寄せることもできないだろうから、民間航空機用のJet A-1を給油したのだろう。そしてそのまま何事もなかったようにF35は飛び立っていった。
JP-5もJet A-1もベースは灯油である。主な違いはJet A-1の方が引火点が低いことと、添加剤が多少異なるかもしれない(添加剤はメーカーによって異なる)というくらいである。そもそも、JP-5もJet A-1も中身は灯油なのだから、実は街のガソリンスタンドで売っている灯油でもジェット戦闘機を飛ばすことは十分可能なのだ。だからJP-5の代わりにJet A-1を給油しても大きな問題もなくF35は飛び立つことができたということだ。
このことは、例えば有事の際に空軍基地が攻撃を受けて使用できなくなったとき、戦闘機が民間空港に降り立ち、民間航空機用の燃料を補給して、また飛び立つということが可能だということを示している。
ちなみに、わが国は各都道府県にそれぞれ1か所以上の空港があるが、これほど空港密度の高い国は他にないだろう。今回のF35が所属する岩国基地に隣接した空港は松山だけではない。広島、石見、大分、宇部、北九州と100㎞以内にある空港だけで6か所もある。これはパイロットにとっては大変心強いことだろう。
以前、中曽根総理大臣が米国を訪問して、日本は不沈空母だと発言して議論を呼んだことがあるが、今回の事件は、まさにわが国が不沈空母だという一例であろう。今たまたま、石破総理大臣が米国を訪問してトランプ大統領と会っているが、このことは米国が日本と同盟関係を保つ大きな要因となるだろう。なにせ、中国やロシア、北朝鮮といった米国に敵対する国々の鼻面に日本という不沈空母が横たわっているのだから。
2025年2月8日
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