近年、EV(電気自動車)が正義、ガソリン車は悪であるという風潮があると嘆く方がおられます。私は、そんな善か悪かという単純な割り切りには賛成できません。が、いややっぱりガソリン車は悪です。その理由はガソリン車が地球温暖化の原因になっているという話のほかに、特に日本にとっては、つぎのような問題があるからです。
ガソリン車は当然、ガソリンで動きます。ガソリンは原油を精製して作ります。原油は日本では採れないので、そのほとんど、なんと96%が中東からの輸入です。ということで中東の王様が儲かってウハウハで、世界でも有数の大富豪になっています。単に自分の国でたまたま石油が取れるというだけで、世界でも比類のない大富豪になっているのです。そんな不公平でいいんでしょうか。
それと、中東は不安定で、いつ戦争が起こっても不思議じゃない。ホルムズ海峡に機雷でも仕掛けられたら、日本は石油の輸入ができなくなって、もうガソリン車は走れません。日本の石油のほとんどはホルムズ海峡を通っているわけですから。
といってもEVも結局は、発電時に化石燃料を使うじゃないかとおっしゃいますか?でも、日本の火力発電は石炭とLNGです。石油は使っていません。石炭の輸入先はオーストラリア、インドネシア、ロシアなど、LNGはオーストラリア、マレーシア、アメリカなど。石油のように中東に依存しておらず、世界中に分散しています。
ロシアにはオリガルヒという大富豪がいますが、それ以外は、石炭やLNGで富を独り占めしているような人はいません。何万人におよぶ従業員や株主や株主に雇われた経営者が少しずつ分け合っているわけです。石油よりずっと民主的でしょ?
しかも、日本では電力の約7割が石炭やLNGを使う火力ですが、これから日本は火力の割合を減らして太陽光や風力のような再生可能エネルギーの割合を増やしていこうとしています。政府の予想だと2040年で再エネが40~50%、原子力が20%まで増えます。

一方、化石燃料は30~40%まで減り、当然、 CO2排出量も減りますが、それだけじゃない。化石燃料を輸入する必要がなくなり、太陽光や風力という国産のエネルギー源に代わります。エネルギー自給率は現在の13%から30~40%まで増えます。当然、化石燃料代金を払わなくていいことになって、それだけ日本は豊かになります。
ガソリン車にはそんな先の望みはありません。ガソリンを使う限りは相変わらず中東に依存して、いつ石油が止められるかびくびくしながら、しかもあなたがガソリン代として支払ったお金は中東の石油王に吸い上げられていくのです。ガソリン車は悪だという話。お判りになりましたでしょうか。
(この文は、ナレッジコミュニティ・Q&AサイトQuoraの質問に私が回答したものを再掲しました)
【付録】
これはサルバトール・ムンディと名付けられた絵画で、あのモナリザを描いたレオナルド・ダ・ビンチの作品ではないかと言われています。(真偽ははっきりない)

1958年にわずか45ポンドで売買された絵ですが、オークション毎に値段が高騰していき、2017年のクリスティーズでなんと500億円で落札されました。
この作品を買ったのが、アラブの大富豪。売ったのがロシアのオリガルヒです。本物かどうかもはっきりしない一枚の古びた絵に500億円!かれらの金銭感覚はどうなっているのでしょうか。
こんな大金があれば、何千人もの貧しい人たちに職を与え、あるいは学校へ行けない子供たちに教育を施すことができるでしょう。しかも、アラブの大富豪がポンと出した500億円、元はと言えばあなたが高い高いと不平を言いながら買ったガソリン代金なのです。
サルバトール・ムンディはいまどこにあるのか分かりません。アラブの大富豪の豪華なヨットのキャビンに飾られているのを見たという人がいるようですが。