先日(2025年4月22日)、日経モビリティに「割高のバイオ燃料車「誰が買うのか」」という記事が載った。スズキの鈴木俊宏社長が中期経営計画を発表する場で、バイオ燃料車は消費者や事業者の負担が高まる。「誰が買うのか」と発言したという。
バイオ燃料車が消費者の負担を増やすという話は、バイオ燃料車のことなのか、バイオ燃料自体のことなのかはよく分からないが、誰も買えないほどバイオ燃料は高価な買い物になるのだろうか。
まず、バイオ燃料を使用する車両であるが、日本でもすでにE10(バイオエタノールを10%添加したガソリン)を燃料として使用できるものが販売されている。給油口に貼ってあるステッカーを見て、初めて自分の愛車がE10に対応していることを知ったという人も多いだろう。このように、すでにE10対応車は一般に普及しているので、いまさらバイオ燃料を使用する車両が消費者の負担になるとは思えない。
では、燃料の方はどうなのか。米国穀物協会のホームページによるとバイオエタノールの価格は先週平均で1.79ドル/ガロンであった。(Gulf FOB)これを1ドル=140円、1ガロン=3.785リットルで換算すると、66.2円/リットルとなる。

バイオエタノールはガソリンに比べて発熱量が60%くらいしかないから、この単価を0.6で割り返すと、110.3円/リットル。これに揮発油税53.8円/リットルを加えると、164.1円/リットルとなる。
一方、現在の日本のガソリンの市販価格は180円/リットルであるから、バイオエタノールはかなり安い。実際には米国からの輸送コストやガソリンスタンドでの販売経費などが加算されるわけであるが、それを加味してもバイオエタノールがそれほど高価になるとは思えない。
ガソリン価格は原油価格で、バイオエタノールはトウモロコシ価格でそれぞれ変動するのでどちらが安い、高いとは一概には言えないが、ほぼトントンというところだろう。
バイオ燃料は高いというイメージを持っている人もいるようだが、石油系の燃料に比べて意外に高いということはない。少なくとも高くて「誰が買うか」という話ではないだろう。
2025年4月23日