食料危機は起こらない 人口爆発は終わり代わりに人口崩壊危機が訪れる

人口爆発という言葉がよく使われてきました。人口が爆発的に増加しており、その結果、食料不足が起こる。長年そう言われてきましたが、もうそれはそろそろ終わりにしなければなりません。実は国連も人口爆発とは言わなくなってきました。

あなたの周りを見ても気が付くでしょう。若い人が減って老人ばかりになっていることを。これは日本だけの現象ではありません。欧州諸国も隣の韓国も、中国も多くの国々で人口が停滞あるいは減り始めています。国連の予測では2080年ころ、専門家によっては2050年ころから世界の人口は減少に向かうと予想されています。

図1 世界の人口推移の実績と予想(2024 Revision of World Population Prospectsより)

マルサスの人口論によると、人間は放っておくと増えていこうとしますが、人口が増えすぎると食料が足りなくなり、これがネックとなって人口は抑制されます。このため、食料が増産されてその食料で支えられるだけの人口が増えるということになります。

第二次大戦後、農業技術が急速に発展したため食料が大増産されました。その結果として人口が増えていきました。これが人口爆発です。人口爆発的によって将来は食料危機が訪れるとよく言われますが、これは原因と結果があべこべ。人口が増えたのは、食料が増産されたからなのです。食料がないのに人口だけが増えて、あとから食料不足になるというのは、論理的に矛盾します。だから心配された人口爆発による食料危機は起こらなかったのです。

ところが、そのような議論とは別に、最近、食料はあるのに人口が減少するという不思議な現象が起こっています。現在、世界で人口が爆発的に増えているのはサハラ以南の貧しい地域のみで、ここでも人口増加率は年々下がっています。

図2 地域別特殊出生率の推移

それ以外の地域、特に先進国は食料が不足しているわけではないのに人口が減りつつあります。先進国では途上国より肉の消費量が多いのですが、例えば牛肉を1kg作るためには10kgの穀物が必要です。つまり先進国で人口が減ればそれだけ肉の消費量が減り、減った肉の消費量の何倍もの量の穀物が不必要となるのです。その結果、世界人口がピークに達するよりもっと前に食料の余剰が起こり始めます。

数十万年か前に人類が誕生して以来、ずっとマルサス理論に従い、食料生産量の増加にともなって、少しずつ人口が増えてきました。ところがこの20~30年間という短い時間に「食料があるのに人口が減る」という、いままで人類が経験したことのない事態が世界中でおこっているのです。つまりマルサスの人口論が成り立たなくなっています。原因は不明です。

人口が増える場合は食料生産がネックとなって抑制されますが、人口が減る局面では、それを止める力が働かない、つまり歯止めが効かないため一気に人口が激減する可能性があります。国連では人口爆発に代わって人口崩壊という言葉が使われはじめています。これからは人口爆発ではなく人口崩壊が人類にとって大きな問題となるでしょう。

多くの人たちには人口爆発という言葉が頭にこびりついているので、なかなかこの事態にはなじめないかもしれませんが、今後はむしろ人口崩壊によってさまざまな問題が発生することになります。地球温暖化問題のあとには人口崩壊問題が控えているのかもしれません。

2025年9月20日

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