バイオエタノールのふるさと アメリカ・コーンベルトのトウモロコシ収穫風景視察記

先月19日から24日にかけて、アメリカ穀物バイオプロダクツ協会の招待により、グローバルエタノールサミットに出席し、そのあとアメリカのトウモロコシ栽培からバイオエタノールの製造およびエタノール入りガソリンに至る状況の視察を行った。

この記事では、その中で、トウモロコシの収穫風景について報告したい。

アメリカでは収穫されたトウモロコシの約4割がバイオエタノールの原料となっており、製造されたバイオエタノールはガソリンに10%混合して使用することが義務付けられている。

アメリカは世界最大のガソリン消費国であるから、添加率10%とはいえ、その量は莫大である。つまり、アメリカではガソリンの10%が油田ではなく畑で産出しているというわけである。そしてそのバイオエタノールの原料となるトウモロコシの大半がアメリカ中西部のコーンベルトと呼ばれる地帯で栽培されている。

コーンベルトの分布

10月24日早朝、私たち日本人視察団18名はイリノイ州ペオリアというシカゴから150kmほど離れた小都市のホテルからバスで出発した。

出発時、外はまだほの暗かったが、次第に明るくなっていき、車窓の風景が次第にはっきりと見え始めた。

<写真>コーンベルトの風景

外の風景はこんな感じ。地平線まで続く畑作地帯で、遠くにぼつりぼつりと農家と、収穫されたトウモロコシを貯蔵するサイロが見える。こんな風景が延々とつづいていく。といってもわれわれが走った距離はアメリカのコーンベルトのごく一部に過ぎないのだが。

大平原を1時間ほど走って、バスはやがて一軒の農場にたどり着いた。そこはマーク・ウィルソンさんが経営するDMB Ltd. Grain and Hog農場である。面積は1, 100エーカー。メートル法に直すと445ヘクタール(4.45平方キロメートル)になる。日本の農家の平均耕地面積3.1ヘクタールと比べると驚くほど広いが、これでもアメリカでは小規模な方だという

<写真>トウモロコシ畑

早速、トウモロコシ畑に連れて行ってもらうと、こんな感じ。トウモロコシ畑の1区画の長さは1/2マイルというから、約800m。この時期、トウモロコシはすでに枯れて、大半はすでに収穫が終わっている。

ウィルソンさんがわざわざ、トウモロコシの一部を視察団のために残しておいてくれたのでの、その収穫風景を見学することができた。

<写真>コンバインによるトウモロコシの収穫

これはコンバインによるトウモロコシの収穫風景。巨大なコンバインがトウモロコシを根本から刈り取っていく。切り取られたトウモロコシはコンバインの中で脱穀されて穀粒が分離され、残りの茎や葉、穂の部分は畑にまき散らされていく。

<写真>コンバインによるトウモロコシの収穫

コンバインの中にトウモロコシの実が貯まってくると、並走するトラクターに移送され、さらに刈り取りが進められていく。

<写真>倉庫に貯蔵されたトウモロコシ

通常、トウモロコシはサイロに保管されるが、今年は収穫量が多くてサイロに入りきらないので、一部は倉庫に保管されているという。おかげで、収穫されたトウモロコシの実を手に取って見ることができた。

コーンベルトで栽培されるトウモロコシのほとんどはデントコーンとよばれる実の硬い品種だ。生食用のスイートコーンやトルティーヤの原料となるフリントコーンとは別の品種である。バイオエタノールの原料となるほか、豚や鶏などの飼料となる。粒を食べてみたが、かなり固い。

<グラフ>アメリカのトウモロコシ生産量の推移

このグラフはアメリカのトウモロコシ収量と作付け面積の推移を示したものであるが、トウモロコシ収量は1926年に比べて約7倍となっている。これに対して、この間のトウモロコシ作付面積はほとんど変わっていない。アメリカの面積当たりの収穫量は世界最高水準であるという。

世界の多くの国々で、アメリカの10分の1以下の収穫量しかないので技術指導を行って単収を高めているという。これを世界中でやれば、同じ耕地面積でも世界のトウモロコシ収穫量は数倍に増えていくことになるだろう。

広大なコーンベルトでこのようにして収穫された膨大な量のトウモロコシは製造プラントに送られてバイオエタノールに変身し、ガソリンと混ぜられてE10ガソリンとしてガソリンスタンドで販売されることになる。

E10ガソリンの販売状況については、また別の記事で紹介したい。

2025年11月6日

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