エントロピーがすべてかもしれない
光の速度とタイムマシンが関係していることはすでに話しました。では永久機関とタイムマシンの関係はどうでしょうか。
例えば、自動車が走っているとします。当然ガソリンを消費し、ガソリンが無くなったら走ることができません。100㎞走ったところで、走る前の過去に戻ることができたとします。ここで走る前の自動車からガソリンを抜き取り、また現在に戻って自動車につぎ足します。それを繰り返せば自動車は無限に走り続けることができます。つまり、過去に戻るタイムマシンがあれば永久機関が作れるということです。
このように、永久機関、超光速移動、過去に戻るタイムマシンという3つの不可能は互いに関係しあっているようです。もし、この3つの不可能のうち、ひとつでも可能になれば、他の二つも可能になるのではないでしょうか
私は、この3つの不可能は「エントロピーは必ず増加する」ということで説明がつくのではないではないかと思っています。
以下に3つの仮説を置いてみます。
仮説1:エントロピーは必ず増加する(この仮説は熱力学によって確立されています)
仮説2:時間とはエントロピーの増加のことである(この仮説は確立されているわけでありませんが、こう考える人もいます)
仮説3:速度が増えるとエントロピーの増加が緩和される(これは筆者独自の仮説です)
3つの不可能はこの仮説で説明すると、以下のようになります。
永久機関:永久機関はエントロピーが減少する現象ですから、仮説1に反する。だから不可能。
超光速移動:物体を加速すると仮説3によりエントロピーの増加が小さくなり、光速に達するとゼロになる。これ以上加速しようとしてもエントロピーが増加しなくなるので、光速より加速することができない。
過去に戻るタイムマシン:仮説2によりエントロピーの増加が時間であるから、過去に戻るとエントロピーが減少する。これは仮説1により不可能。
世の中は常にエントロピーが増加する方向に動いています。エントロピーを増加させる要因が原因え、エントロピーが増加された状況が結果。つまり因果関係といわれるものです。
この因果関係が保たれている限り、永久機関も、超光速移動も、過去に戻るタイムマシンも不可能というわけで、その因果関係を作っているのがエントロピーということではないでしょうか。
なお、以上の部分はあくまでも筆者の考えであり、一般に認められているわけではありません。
科学では「不可能なこと」が役立っている
物事には必ず原因があって結果があります。何かの結果についてその原因が何かを調べるのが科学です。だから、因果関係を否定することは科学そのものを否定することになります。つまり、因果関係のない事象は科学の対象にならないということです。
以上挙げた3つの不可能以外にも科学は不可能なことを見つけてきました。例えば、電子の位置と運動量を同時に測定することは不可能であるとか、物体の温度を-273℃以下まで下げることは不可能であるとか。
今まで、科学は不可能を可能にしてきたように見えますが、実はその根底には「不可能を知る」ということがあったのです。例えば、エアコンは室内の温度を下げることができるけれど、必ず室外機という装置があって、室内から奪った熱量以上の熱量が外に排出されなければならない。これは永久機関が不可能であることから導かれる現象です。
人工衛星を使ったGPSは非常に正確ですが、これは人工衛星の高速による(あるいは地球の重力による)時間の遅れを補正することによって、正確な位置を示すことができています。
科学では不可能を知ることによって、その不可能をうまく利用して、われわれは様々なことを可能にしてきました。だから、今後どんなに科学が進歩しても不可能なことはあるし、逆に不可能を知ることによって科学は進歩していくのだと思います。
2021年9月12日