ホルムズ海峡危機 日本は脱石油に進むのか

原油輸入量の約9割が通過するホルムズ海峡が封鎖され、我が国の産業や国民生活に大きな影響を与えることが懸念される。同海峡が封鎖される可能性については以前から指摘されてきたが、その恐れていたことが実際に起こってしまった。

とりあえずため込んだ備蓄を取り崩しているが、備蓄をすべて使ってしまったらお手上げである。このホルムズ危機ができるだけ早く収まることを祈りたい。

しかし、今回の危機が納まったとしても、また再びこのような危機が訪れないとも限らない。その危機を回避するためには備蓄だけに頼るのではなく、今後は、原油入手先を多様化するか、石油そのものの消費を減らす、つまり脱石油政策が進められることになるだろう。

この記事では、石油の消費を減らすことが可能なのか。石油を使わないことでわれわれの生活にどんな影響があるのかについて検討してみたい。

日本の石油の主な用途は自動車燃料と石油化学

この下の図は昨年(2025年)1年間に日本で消費された石油製品の割合を示している。

この図で分かるように、石油の主な用途は、ガソリン、軽油およびナフサで、この3種類だけで石油製品全体の約8割を占める。

一方、発電や工場の動力源として使われるB・C重油はわずか3%しかない。これは1970年代に起こった石油ショックを教訓として石油火力を極力減らそうとしてきたからである。かつて、日本の総発電量の約6割が石油火力だったが、現在では7%ほどしかない。だから、今日の日本では石油がなくても電力供給が途絶えることはない。

しかし、原油の主な用途であるガソリン、軽油、ナフサについては原油の輸入が止まると供給が途絶える可能性がある。これらは、われわれの生活に密接にかかわっている石油製品であるから影響は大きい。

今後は、これらの石油製品については、もっと供給が安定した製品に少しずつ転換していく必要があるだろう。では、どのような代替手段があるのか紹介したい。

ガソリン

ガソリンは主に乗用車や軽トラック、小型バンなどの燃料として使われている。これについては、既に述べたように、石油がなくても電力供給が止まることはないから、おそらく電気自動車(EV)が有力な代替手段となるだろう。

EVが増えた分、日本の発電量が増えることになるが、すべてのガソリン車がEVに変わったとしても、発電量の増加は現在の発電量の15%程度だから計画的に発電量を増やしていけば対応可能だろう。

そのほか、バイオエタノールやe-fuelのようないわゆる次世代燃料の使用が考えられる。e-fuelはCO2と水素から作られるガソリンである。CO2は空気中や工場排ガスから回収することができ、水素は水を電気分解して作ることができるから、輸入資源に頼らない燃料である。ただし、製造時に多量の電力が使われるから、それならその電力でEVを走らせた方がよい。だからe-fuelは自動車用ではなく電気では都合の悪い用途に限って使用するべきだろう。

バイオエタノールについては、既に世界中でガソリンに混合して使用されており、我が国でも10%のバイオエタノールを含むガソリン(E10ガソリン)を販売する準備が行われている。今後、バイオエタノールの混合割合を増やしていく必要があるだろう。

燃料用バイオエタノールは国内では作られていないので、米国やブラジルから輸入することになるだろうが、代替輸送ルートがいくつかあるからホルムズ海峡のような輸入途絶という事態は起こりにくい。

結局、ガソリンの代替としては、今後はEVかバイオエタノールの導入を進めていくということになるだろう。

軽油

軽油はトラック、バス、建機などの重車両や船舶などに使用される燃料である。ちなみに小型ボイラーや漁船などの燃料として使われるA重油は、ほぼ軽油と同じもので、主な違いは軽油に比べて残留炭素分がやや多いだけである。だからA重油の代わりに軽油を使用することが可能である。

実は軽油の代わりになる方法を探すのはやや難しい。乗用車のようにEV化するのはバッテリーが重くなるという問題があり、また輸送用トラックのように長距離走行にEVは向いていない。しかし、バッテリー技術が進歩してくれば、トラックやバスなども一部はEV化されるだろう。

軽油代替として期待されているのが、HVO (水素化植物油)である。HVOは菜種油や大豆油、パーム油のような植物油を水素化精製したもので、この製造技術は石油精製とほぼ同じであるから、製油所の装置を少し改造することで製造することができる。

また、出来上がったHVOは石油から作られる軽油とほぼ同じ性能を持つから、現在のトラックやバスなどがそのまま使用することができるというメリットがある。さらにHVOを作るときに、ジェット燃料やバイオナフサが併産されるのも利点である。

実際に欧州では、HVOが軽油に混ぜて使用されているが、軽油に混ぜなくてもそのままでディーゼルエンジンの燃料として使用することは十分可能である。わが国でも伊藤忠商事などがHVOを輸入して一部のユーザーに販売しているほか、コスモ石油が国内での製造を開始しており、ENEOSや出光興産も製造準備に取り掛かっている。

原料となる植物油は輸入する必要があるが、輸出余力のある国はインドネシア、マレーシア(以上パーム油)、アルゼンチン、ブラジル、アメリカ(以上大豆油)、カナダ(菜種油)のように世界に分散しているので、輸入途絶という事態は起こりにくい。

ナフサ

次にナフサだが、これは化学工場(エチレンセンター)に送られて分解されてエチレンやプロピレン、ベンゼンなどの基礎化学品になり、これらの基礎化学品を原料としてプラスチックや合成繊維、合成ゴム、溶剤などおなじみの製品が作られている。

こういったプラスチックのような石油化学品は実はナフサでなければできないというものではない。もともと合成繊維などは石炭を乾留して作られるコールタールを原料として作られていたし、米国や中東では天然ガスが原料として使われている。だから石油がなくても石炭や天然ガスでこれらに製品を作ることは可能である。

また、植物油からHVOを製造するときにバイオナフサが副生することは既に述べた。バイオナフサは原油から作られるナフサとほぼ同じものなので、エチレンセンターへ送って基礎化学品を作れば、その後の工程はそのまま現在と同じ方法でプラスチックなどの石化製品を作ることができる。

さらに、バイオエタノールからエチレンを作る技術もすでに開発されており、実際にブラジルで製造されている。このエチレンもナフサを分解して作られるエチレンと同じ品質なので、石化工場で従来と同様に石化製品を作ることができる。

まとめ

今日の日本は石油という便利な鉱物資源を使うことによって豊かな生活を築いてきた。しかし、今回その石油は実はホルムズ海峡という細い糸に頼っていたことに気づかされることになった。その糸が切れれば、日本の産業や国民生活は壊滅的な打撃を受ける。まさに油断である。

今後、ホルムズ危機の影響を軽減するためには、我が国は石油の使用を少しずつ減らして、代替手段に切り替えていく必要がある。原油輸入が止まっても、幸い発電への影響は軽微であるから、電気に替えられるものは電気に替えていく。また、電動化が難しいものはバイオ燃料やe-fuelが有力な代替手段になるだろう。

2026年3月20日

ホルムズ海峡封鎖によって日本では何が起こるのか 恐れていたことが起こってしまった

<本記事はオルタナ誌およびYahooニュースで紹介されました>

2月28日、イランとの交渉の最中に米国とイスラエルが突如イランを攻撃。イランの最高指導者ハメネイ師を殺害したうえ、イランの軍事施設を空爆し始めた。これに対してイランはイスラエルや湾岸諸国の米軍基地などをミサイルやドローンによって攻撃するとともに、反撃の一環としてホルムズ海峡を事実上封鎖してしまった。

1973年に発生した石油ショック以来、日本の石油供給の脆弱性が指摘されてきたが、その最大の懸案がこのホルムズ海峡封鎖である。この海峡には日本向けの原油の約90%、LNGの6%が通っている。

石油ショック当時は、実際に石油輸入が途絶えたわけではない。にもかかわらずわが国は大パニックとなった。銀座のネオンが消え、深夜のテレビ番組は放送中止となり、スーパーの棚からトイレットぺーパーが消えた。

それに比べると、今回のホルムズ海峡閉鎖では、実際に石油の流れが止まった。にも拘らずわが国は意外と平穏である。これは石油ショック当時の状況を知る筆者としては、拍子抜けするほどである。

もちろん、当時と今は状況が違っている。日本政府は石油ショック以来、石油火力発電所の新設を禁止し、石油備蓄を充実させ、原油輸入先を多様化するという対策を取ってきたからだ。このうち最初のふたつの対策は成功していると言えるだろう。

石油ショック当初、石油火力は日本の発電量の約6割を占めていた。しかし現在、石油火力が発電量に占める割合はわずか7%ほどまで下がっている。だから石油の輸入が止まったとしても、石炭やLNG火力発電が少し増えるだけで、電気が止まることはない。

次に石油の備蓄であるが、これは国家備蓄と民間備蓄を合わせて現在、約8か月分が積み上がっている。つまり、ホルムズ海峡が封鎖されて原油が日本に入ってこなくなっても電気が止まることはないし、8か月分の備蓄もある。これが今のところ国内が比較的平穏な理由だろう。

しかし、原油輸入先の多様化という対策は残念ながらうまくいかなかった。石油ショック以降、日本は中東以外の輸入先を模索してきた。例えば、東南アジアや南米、アフリカ、ロシアなどである。しかしながら、どれも輸入量を増やすことができず、結局、現在の日本の中東依存率はなんと93%に達しているのである。

原油が入らなくなったらどうなるのか

では原油の輸入が止まったら、あるいは大幅に減少したら、我が国はどうなるのだろうか。このグラフは昨年(2025年)の日本の石油製品の販売実績、つまり需要である。


原油の用途として、かつては発電用の重油がかなりの割合を占めていたが、すでに述べたように、今は石油火力発電向けC重油の需要はほとんどない。現在の主な原油の用途はガソリン、軽油および化学産業用の原料として使われるナフサで、これで国内石油製品需要の約8割を占める。

原油の輸入が止まれば、これらの石油製品は国内の製油所ではほとんど生産されなくなるから、8か月分の備蓄使い果たすと本当にガソリンスタンドからガソリンや軽油が消えてしまうことになる。特に軽油がなくなるとトラック輸送や船舶輸送ができなくなる。

石油がなくても電力は止まらないから、工場は稼働できるかもしれない。しかし、物流が止まると原料が手に入らなくなり、製品の出荷もできなくなる。つまり日本の製造業は壊滅的な打撃を受ける。

また、ナフサも大幅に不足することになる。実は、日本の製油所で生産されるナフサは国内需要の3割程度しかなく、残りの7割はUAE、クウェート、カタール、韓国などからの輸入である。国内生産分については備蓄原油を使って生産できるが、UAEやクウェートなどの中東諸国からの輸入分はホルムズ海峡が封鎖されると輸入できなくなる。また韓国は日本と同様に大量の原油をホルムズ海峡経由で輸入しているから、ここもやがては輸出できなくなる。

したがって、ナフサはガソリンや軽油のように8か月備蓄の猶予はない。実際、日本の石油化学コンビナートの中には既に減産を開始したり、操業停止可能性を取引先に通知したりしているところがでてきた。

ナフサはエチレンセンターで分解されて、様々なプラスチックや合成ゴム、合成繊維などの原料となるから、ナフサがなくなるとこれらの化学製品も生産できなくなる。プラスチックや合成ゴムは様々な機械製品の材料となっているから、わが国製造業全体に大きな影響を及ぼすことになる。

代替手段も効果は小さい

ホルムズ海峡が封鎖された場合の代替手段としてアラビア半島を通り抜けて紅海に達するパイプラインがあるが、輸送能力が限られるから、ホルムズ海峡の完全な代替とはならないし、ミサイルやドローンで破壊される可能性がある。また、紅海からインド洋に抜ける海峡はホルムズ海峡より狭く、さらにこの海峡の東岸のイエメンはイランの友好国であることも不安材料である。

米国やロシアからの輸入という方法も検討されているが、これらの国々から世界でも有数の原油輸入国である日本輸入量の90%に匹敵する量を新たに輸入するのは不可能だろう。米国の輸出港はメキシコ湾岸に集中しており、ここから狭いパナマ運河を通らなければならないから、大型タンカーでの輸入はできない。

ロシアについてもシベリアの油田から運ぶパイプラインには輸送量の制約がある。これらの国々から輸入できたとしても、日本の原油輸入量は大幅に減少することになるだろう。

中東依存度がこれだけ高いのは世界中で日本だけ

ホルムズ海峡が封鎖されると、日本の石油の約9割が止まることになるが、では日本以外の国々ではどうだろうか。

米国は世界最大の原油生産国であり、輸入石油は全原油処理量の15%程度しかない。それも主な輸入先はお隣のカナダやメキシコだからホルムズ海峡の封鎖は石油需給に対してほとんど何の関係もない。つまり米国はイランに戦争を仕掛け、その結果ホルムズ海峡が封鎖されても原油の入手にはまったく困らないという国なのだ。

欧州はどうかというと、域内の北海で原油が採れる。さらに地中海を挟んだアフリカ北部からの輸入もある。だから中東依存度それほど大きくはなく数%から20%程度(統計の取り方によって違いがある)に過ぎない。
つまりG7のうち、これだけ中東依存度が高いのは日本だけだということである。

ホルムズ海峡を通って輸送される原油の主な向け先は中国、インド、韓国および日本で、この4か国で約7割を占める。

このうち、中国の中東原油依存度は40~50%。パイプラインがつながっているロシアからも輸入することができるし、従来から石油途絶を懸念して太陽光発電や電気自動車(EV)の普及に力を入れている。だから中東から原油を輸入できなくなっても日本のように自動車が走れないという事態にはなりにくい。

インドの中東原油依存度は45~60%である。この国も、近年はロシアからの輸入を増やしていて、中東依存度は下がっている。

ということで、ホルムズ海峡封鎖で最も影響を受けるのは日本と韓国ということになるが、韓国の中東石油依存度も高いとはいえ70%程度。90%以上を中東原油に頼っている日本は世界的にもほんとうに特殊といえるだろう。

今後は石油に頼らないEVや次世代燃料を普及させるべき

3月11日高市首相はホルムズ海峡封鎖対応として備蓄原油の取り崩しを発表した。8か月分ある備蓄原油がこれから取り崩されていくことになるが、8か月経ってもホルムズ危機が解消しなかったら日本はどうなるのだろう。
トイレットぺーパーを買い占める必要はないが、政府も国民もメディアももう少し危機感を持った方がいい。

また、石油が入ってこなくなっても電力は確保できる。問題となるのはガソリン車やディーゼル車、船舶なのだから、今回のホルムズ海峡危機には対応できないが、今後は電気自動車(EV)やバイオ燃料のような次世代燃料の普及に政府は力を入れるべきだろう。

EVや次世代燃料は気候変動対策としての効果ばかりが強調されているが、実はエネルギー安全保障上も効用のひとつである。現在、主要国の中で石油に対して最も脆弱な日本が、もっともEV比率が低く、石油を必要とするガソリン車やディーゼル車に頼り切っているという不思議な状況なのである。

2026年3月15日

NHK大河ドラマ、墨俣城の炎上に異議あり

先日、 NHKの大河ドラマ「豊臣兄弟」で墨俣一夜城の回が放送された。信長の命を受けた藤吉郎、小一郎兄弟が3日ほどで城を築くという話である。ドラマでは敵の軍勢を引き付けたあと、城の上から溝にそって油を流し、それに火矢を使って火を着けると瞬く間に伸びていって、大火災になるというシーンとなっていた。しかし、これはあり得ない。

当時、油といえば菜種油や椿油あるいは魚油であろうが、このような動植物油は引火点が200℃から300℃ほどもあるから、火矢を打ち込んだとしても簡単には着火しない。たとえ着火してもドラマに描かれたほどの大火災になるわけではない。

「引火点」について説明しよう。油は温度が高くなるほど火が着きやすくなる。油のサンプルを容器に入れ、これをバーナーで熱しながら少しずつ温度を上げる。そして温度が0.5℃上がるたびに小さな炎を近づけて火が着くかどうかを確認していき、火が着いたときのサンプルの温度を引火点という。

まったくもって原始的な試験方法だが、実際に火をつけてみて着火するかどうかを調べるわけだから、これが一番確実な方法だ。

ガソリンの引火点は―40℃ほどであるから、常温でもマッチの火を近づければ燃える。灯油の引火点は40℃以上とJIS規格で定められているから、夏場の暑い時、例えば35℃の酷暑でもマッチで灯油に火を着けることはできない。

反射式石油ストーブの場合は灯油を芯にしみこませてから火を着ける。ファンヒーターの場合は灯油を気化器で気化させてから火を着ける。そんな工夫をしなければ灯油に着火することはできないのだ。ましてや引火点が200℃から300℃もある植物油や魚油を使ったのでは、そのまま火矢で着火させることは無理な話だ。

同じような話は、ドラマや映画ではよく出てくる。
例えば映画ダイハード2では、テロリストたちが乗る貨物機(ボーイング747)の燃料バルブを主人公のマクレーンが開いたため、貨物機は燃料を垂れ流しながら離陸。流れ出たジェット燃料にマクレーンがライターで火をつける。すると流れ出る燃料を炎が伝わっていき、貨物機はドカンと爆発するのだが、これもあり得ない。

民間ジェット機の燃料はJetAもしくはJetA-1が使われるが、中身はほぼ灯油である。だから、これも引火点は40℃程度。 (規格上は38℃以上)これも常温ではライターで火を着けることはできない。しかもこの映画では雪の積もる空港というから真冬の設定であった。

逆に、あるドラマでは悪漢が部屋の中にガソリンを撒き、マッチで火を着けて、部屋が燃えるのを見届けて逃げるというシーンもある。ガソリンの引火点は―40℃という超低い値を持つから部屋の中に撒けばガソリンが蒸発して部屋の中が爆発混合気で満たされる。

この状態で火を着けると床がぼーぼーと燃えるわけではなく、部屋の空気全体が一気に爆発的に燃焼する。部屋の窓やドアは吹き飛び、悪漢も大やけどを負って、吹き飛ばされることになる。

そもそも、墨俣の一夜城は有名な話だが、実は後世に作られたフィクションだという。そこにNHKがさらにフィクションを付け加えたということだ。大河ドラマは事実に基づいて忠実に再現したものではない。歴史を自由に脚色して作られたエンターテインメントだと思ってみなければならないのだろう。

2026年3月5日

厄介者のCO2からプラスチックができる? 三菱商事がCO2を原料としたプラスチックの供給を開始

先日、三菱商事が米国の新興企業とともに商品化した二酸化炭素(CO2)を原料とするプラスチックを自動車部品として独フォルクスワーゲン(VW)に供給したと報じられた。

この話を聞いて驚かれた方もおられるだろう。CO2は地球温暖化の元凶となる厄介者である。この厄介者から私たちの生活になくてはならないプラスチックが作られる。こんなことが可能なのかと。

もし、可能だとすると、なぜ今まで誰も気づかなかったのか。こんな疑問を持つ人もいるかもしれない。しかし、実はCO2からプラスチックが作れることは昔から分かっていたことだ。

プラスチックは炭素と水素からできているから、炭素と水素さえどこからか持ってくれば作ることができる。ちょうどレゴブロックを組み立てるように、炭素と水素を組み立てていけば、いろいろな種類のプラスチックを作り出すことができる。

現在は石油からプラスチックが作られていることは多くの人が知っているだろう。石油も炭素と水素からできている。だから石油に含まれる炭素と水素の組み合わせを変えてプラスチックが作られている。しかし、石油でなくても炭素と水素があればプラスチックを作ることは可能だ。

ただ、石油は大量に安定的に得られるし、値段も比較的安い。だからプラスチックの原料として使われているわけだが、プラスチックは石油でなければ作れないというものではない。炭素と水素を含むものは原則的に何でも原料とすることができる。

今回の三菱商事がCO2を原料にして作られたプラスチックをVWに供給した話であるが、これはCO2を炭素(C)源として使ったという話である。では水素はどこから持ってきたかというと、水を電気分解して作っている。

ご存じのとおり水はH2Oつまり水素(H)と酸素(O)の化合物だから、電気分解という方法によって水素を取り出すことができる。一方CO2は空気に含まれているから、今回のプラスチックは空気と水から作られたプラスチックということができる。

水と空気からプラスチックを作る?それが本当なら、ではなぜ今までだれもこれをやろうとしなったのか。それはこれをやるためには大きなエネルギーが必要だからだ。CO2も水(H2O)もどちらも酸素(O)が含まれていることに注目してほしい。この酸素と炭素(C)あるいは酸素と水素(H)のつながりはとても強力で、一旦、酸素がくっついてしまうとなかなか引きはがせない。

だから、 CO2から、あるいはH2Oから酸素を取り除くには大きなエネルギーが必要となる。そうやって酸素を引き離したあとの炭素と水素がプラスチックの原料となる。

つまり、 CO2からプラスチックを作り出すことは可能だが、それには多大のエネルギーが必要ということになる。その消費するエネルギーをどうするか。石油のような化石燃料を燃やしてそのエネルギーを賄うのなら、かえってCO2は増えてしまうことになる。そんなことをするくらいなら、プラスチックは石油から直接作ればいいのだ。

では、今回のCO2からプラスチックを作るという話は、その問題をどうやって解決しているのか。それは、太陽光発電や風力発電のようなCO2を排出しない電力が活用できるようになったというのが大きいだろう。しかもこのような再生可能電力は、最近どんどん安価になっているのだ。

三菱商事が組んだ米国の新興企業はインフィニウムという企業だ。この企業は米国テキサス州にプラントを持つ。三菱商事だけでなく、JOGMECや三菱重工、三井物産も出資している注目の会社なのだ。

インフィニウム社の製造プロセス(三菱商事のニュースリリースより)

この図は、インフォニウムがCO2を使って様々な製品を作り出す過程を示している。インフィニウム社ではまず、CO2に含まれる酸素2個のうち、1個をはぎ取って一酸化炭素COにする。また、再生可能電力を使って水を水素と酸素に分ける。そのあと、一酸化炭素と水素と混合してフィッシャー・トロプシュ(FT)反応によって炭素と水素を結合させる。

これによって、石油と同じようなものができてくるから、あとは石油精製と同じ方法でガソリンや軽油やジェット燃料などを作ることができる。プラスチックも石油から作るのと同じ方法で作ればいい。こういう仕組みでCO2からプラスチックが作られる。

ただし、このプロセスでも大きなエネルギーが必要なことは同じである。結局、これはコストとなって製品価格を上昇させることになる。

多少価格が高くても環境のためなら良しとして、このプラスチックを使ってくれるユーザーがどれくらいあるのだろか。また、CO2を原料としたプラスチックにはバイオプラスチックという競争相手がある。空気と水からプラスチックを作るというと、正に理想的な技術のようだが、まだこれから越えなければならない壁がある。

2026年1月24日

EUのエンジン車容認を揶揄する記事に欠けている重大な視点

EUは乗用車とバンについては、2035年以降、CO2を排出しないもの以外は販売を認めないとしていたが、昨年12月、これを一部修正し、e-fuelおよびバイオ燃料を使用する車両に限り、CO2を排出する車両の販売を認めると発表した。

これを受けて日本のマスコミは、EUがEVしか認めない方針を転換し、エンジン車の販売を認めたと報じた。さらに、そもそもEVだけにすることは無理があった。あるいはトヨタ自動車のHVを追い落とす計画が頓挫した。中国のEV導入を阻止しよう画策している。などという、いわゆる陰謀論をまことしやかに論説する記事も見受けられる。

しかし、これらの記事に共通して、ひとつの重要な視点が抜けている。それは地球温暖化、気候変動対策という視点である。

そもそも、EUはエンジン車廃止とか、EVしか認めないとはひとことも言っていない。EUの規制は2035年以降、「CO2を排出する車両」の販売を禁止するというものである。なぜそのような規制を行うのか。

それは、EU加盟国を含めて多くの国々で2050年までにカーボンニュートラルを実現すると宣言しているからである。カーボンニュートラルを実現するためには、CO2の排出量を実質的にゼロにしなければならない。これはつまり石油や石炭、天然ガスといった化石燃料が原則使用できないということであり、2050年以降はガソリン車やディーゼル車は走れないということを意味している。

それにスムースに移行するためには、車両の寿命を15年とすると、2050年の15年前つまり2035年までにCO2を排出する車両の販売を終了しなければならないことになる。だから、EUは車両から排出されるCO2の量を段階的に削減していき、2035年までにゼロにしてしまおうとしているのである。

わが国や米国なども同じカーボンニュートラル宣言をしているのだから、これを達成しようとすれば、EUと同じような対策を取る必要があるのだが、まだそこまではっきりと計画していないという状況だ。

昨年12月のEUの発表が、単にエンジン車を認めた、つまりガソリンや軽油を使う車両の販売を認めたというのならば、これは2050年のカーボンニュートラル達成をあきらめたということである。

今は冬だから、もう忘れてしまっているのかもしれないが、わが国では昨年、一昨年の夏は記録的な猛暑だった。この原因は単に地球温暖化だけとは言えないものの、地球温暖化がなければここまでの猛暑にはならなかったと言われている。今、地球は確実に温暖化に向かっており、このまま放置すれば夏場はさらに猛暑となる。

それだけではない、大雨による洪水や海面上昇による水害、大規模火災の発生など様々な災害を人間社会にもたらすだろう。

つまり、EUがCO2対策をあきらめて、今までどおり化石燃料を使うエンジン車を2035年以降も販売してよいという方向に方針転換したのなら、これは我々人類にとって大きな禍をもたらすのである。それは非常に残念なことなのだ。

EUもようやくEVではだめだとわかったか。とか、トヨタつぶしに失敗した。とか、悪い言葉で言えばザマアミロ的な記事には、地球温暖化対策という視点が抜けている。

幸いなことに、今回のEUの一部修正についてのプレスリリースを詳しく読んでみると、EUはカーボンニュートラルというゴールをあきらめたわけではないことが分かる。その内容はCO2を排出する車両の販売を一部認めるものの、その燃料についてはe-fuelおよびバイオ燃料を使用するものに限るとしているのだ。

e-fuelはその製造工程において、またバイオ燃料は原料作物の栽培工程で空気中のCO2を取り込んでいる。だからこれらの燃料を使えば、車両からCO2は出るものの、製造や栽培時に取り入れたCO2と相殺されるので、実質的にCO2を排出していないのと同じという理屈が成り立つ。

EUは今まで車両のエグゾーストノズルから出る排気ガスだけに注目して、その中のCO2をゼロにするという規制だった。今回の修正は、燃料製造時のCO2吸収も考慮して排出されるCO2を相殺するものであれば、販売を認めるということである。それは車両から排出されるCO2を2035年以降ゼロにするという方針は変えていないということになる。

もともとEUはエンジンはだめモーターにしなさいと言っているわけではない。要は地球温暖化の原因となるCO2を車両から排出さないようにしなさいと言っているのだから、ゴールを変えたわけではない。

もし、今後EUがe-fuelやバイオ燃料だけでなく、ガソリンや軽油を使ってもいいというふうに方針転換するならば、それは大問題である。ようやくEUもEVでは無理だと気付いたかとか、トヨタ潰しに失敗したとか、そんな他人事のように言っている場合ではない。地球温暖化はさまざまな災害を、わが国を含めて全地球的に起こし始めることになるだろう。

2026年1月3日

豊田自動織機が開発しているアンモニアエンジンにいちゃもんをつける

12月17日、豊田自動織機がガソリンやLPG (液化石油ガス)に代わり、燃焼時にCO2を排出しないアンモニアを単一燃料とするエンジンを開発したと発表した。今後、デンヨー株式会社製発電機への搭載に向けて両社で共同開発に着手し、 2027年度中の実証開始をめざすとしている。

アンモニアはガソリンやLPGと比べて燃えにくいという性質があるため、これを燃料としてエンジンを動かすのは難しい。そこで豊田自動織機はアンモニアの一部から水素を取り出し、これを助燃材とすることによって問題を解決したという。これは素晴らしい成果であり、開発した技術者達の努力に敬意を表したい。

アンモニアエンジンと燃焼機構の概要((株)豊田自動織機プレスリリースより)

ただ、ひとついちゃもんを付けさせてもらいたいことがある。それはアンモニアを製造するときに大量のCO2が発生することがちゃんと述べられていないことである。

豊田自動織機のプレスリリースによると、

  • アンモニアは肥料や化成品の原料としてすでに広く使われており、生産・運搬・貯蔵などの技術やサプライチェーンが確立されているため、入手・利用しやすい
  • 炭素を含まないので、燃焼時にCO2を排出しない比較的コストの安い脱炭素燃料である

これが本当なら、アンモニアはまさに脱炭素化の切り札になるだろう。しかし、そのアンモニアはグレーアンモニアとよばれるもので、製造時に大量のCO2を排出することが忘れられている。

アンモニアを燃料として使用すれば、エンジンではCO2を出さないが、アンモニア製造時に大量にCO2が出てしまうため、全体的に考えるとかえってCO2排出量が増えてしまう。

もちろん、化石燃料を一切使わないグリーンアンモニアや製造時に発生したCO2を地下に隔離するブルーアンモニアならCO2排出量を削減することができる。しかし、グリーンやブルーのアンモニアは世界的に見てもほとんど製造されていないし、コストもかかるから、プレスリリースがいうように、広く使われているわけでも入手・使用がしやすいわけではないし、コストが安い燃料というわけでもない(現状、非常に高価)。そこは間違ってはいけない点だ。

このエンジンの開発技術者がグレーアンモニアが製造時に大量のCO2を排出することを知らず、単に燃焼時にCO2を排出しないことだけでカーボンニュートラルに貢献すると考えているのなら、明らかな間違いである。

将来、グリーンやブルーのアンモニアが安価に大量に製造できるようになれば、この技術も生きてくるだろう。それを期待したいが、現状大量に製造されているグレーアンモニアを使うのなら、かえってCO2が増えてしまう。このことは忘れてもらっては困る。

2025年12月28日

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EUは「エンジン車禁止方針」を撤回などしていない

■EUがエンジン車販売禁止を撤回すると報道されているが…

12月16日、EUは「CO2規準の改正と法人車両の提案」という文書を公表した。これには自動車から排出されるCO2の削減目標を従来の100%から90%に引き下げることや、2035年以降も内燃機関が販売できることなどが記されている。

これを受けて日本のマスコミ各社は「EU、ガソリン車禁止方針を撤回」などとこぞって報じた。なかには、中国メーカーの低価格EVが台頭する中で、EU域内の競争力を確保する狙いだと断定的に報じる報道機関もあった。

これを受けて、「やはりEVでは無理ということにEUもようやく気が付いたか」「エンジン車を廃止することなどできるわけがない」「苦境にあえぐドイツ自動車業界の一撃でEUが方針を転換した」などと、EUを揶揄するような意見がネット上を飛び交っている。

しかし、EUが16日に発表した公表文を改めて読んでみると、確かに従来の規制案から修正はしているものの、日本の報道とはかなりニュアンスが違っていることに気付く。決してEUがEVを断念したわけでも、内燃機関に逆戻りするものでもないことがわかる。

まず、このEUが公表した文書では「柔軟性を保ちながら2035年まで進路を維持する」というスローガンが記されている。つまり2035年までの(ゼロエミッションという)進路は変えないが、その達成方法に柔軟性を持たせるというのがこの文書の趣旨だ。

ではどんな柔軟性を持たせるのかといえば、「2035年までに排気ガス排出量を90%削減する目標を設定し、残りの10%は補償メカニズムを通じて達成」するというものだ。

そもそも従来からEUは2035年以降、エンジン車の販売を禁止するとはひとことも言っていない。にもかかわらず、「するとも言っていないエンジン車禁止」を「撤回する」という日本のマスコミの言い方は変である。

EUの規制は、2035年以降に販売される車(乗用車とバン)はCO2の排出量をゼロ、すなわちゼロエミッションにしなければならない、というものである。エンジンか、モーターか、という手段の話ではなく、CO2の排出量という結果を規制しているわけだ。

ただ、CO2排出量がゼロの車両といえばEVが思い浮かぶので、エンジン車販売禁止とかEVだけしか認めないと報道する機関が多かったというわけだが、たとえエンジン車でもCO2排出量がゼロなら規制されないわけだから、正確にいうとこの報道の仕方は間違っている。

■条件付きでエンジン車でも規制に対応できるようにしたということ

今回のEUの発表で規制がどう変わるかというと、まず従来はCO2の排出量を100%削減するとしていたものを90%削減に緩和している。ただし残りの10%についてもガソリンや軽油を使ってもいいというのではなく、e-fuelやバイオ燃料を使うものだけを認めるとしている。

e-fuelやバイオ燃料は、いわゆるカーボンニュートラル燃料と呼ばれるものだ。燃料として燃やせばCO2を排出するが、その原料としてCO2が使われているから、排出されるCO2と原料として消費されたCO2が相殺されて、大気中のCO2濃度を増やさない。だからCO2を排出しないのと同じことだというのが、ここでいう補償メカニズムだ。

(このほか、EU域内で製造された低炭素製造方法で製造された鋼を使う車両も補償メカニズムとして挙げられているが、このような鋼はまだ一般的ではないから説明は省く)

実はこれ、ドイツのポルシェ社などが従前から主張していたことで、すでにEUは大筋でこれを認めていた。つまり規制緩和は織り込み済みなのだ。今回の提案でEUはこの主張を10%という制限を付けて正式に認めたということに過ぎない。

2035年以降に販売される車両は「CO2を出さないものしか一切認めない」という規制から、「CO2を出しても原料としてCO2を回収しているなら、排出しないのと同じことなので、販売を認めますよ」というのが今回のEU文書なのだ。結果的に2035年までにゼロエミッションを目指すという進路は変わってない。

ただ、従来のように削減率を100%にすると、基本的にEVかFCV(燃料電池自動車)しか選択肢がなくなる。しかし、今回の修正案のようにカーボンニュートラル燃料使用という条件が付くものの、エグゾーストノズル(排気ノズル)からCO2を出してもよいとなれば、プラグインハイブリッド車(PHEV)、レンジエクステンダー、マイルドハイブリッド車、内燃機関車でも販売が認められることになり、2035年のカーボンニューラル目標に向けてカーメーカーとしては選択肢が広がることになる(ただし、10%以内だが)。

つまり、EU文書がスローガンに掲げた「進路を維持しながら(その進路達成に向けての)柔軟性」が広がったというわけだ。

■この新提案が採択されてもエンジン車に逆戻りすることはない

欧州が採用している「CAFE(Corporate Average Fuel Efficiency)規制」では、車1台ごとの規制ではなく、カーメーカーごとの達成度が基準となる。つまりカーメーカーが販売した車全体の平均値で規制される。だからCO2排出量を90%削減しなさいという規制なら、販売する車の90%はCO2を排出しない車、多分EVにしなければならないことになるだろう。

そして残りの10%の販売台数に限ってe-fuelやバイオ燃料を使うことを条件としてエンジン車を販売してもよいということになる。

だから、今回の見直し案が認められてもe-fuelやバイオ燃料対応車に限って1割程度のエンジン車の販売が認められるということであり、2035年度以降に販売される車の大半はEVということになるだろう。

EUが今後更にe-fuelやバイオ燃料使用車の販売割合を増やす修正を行う可能性はある。そうすれば、エンジン車の割合が増えてくることになる。

ただ、e-fuelはコストが高いということと生産量が少ないという問題がある。また、バイオ燃料は現状では、その多くがガソリンや軽油に混ぜて使われているが、EU規制に対応するためにはバイオ燃料の濃度を100%にしなければならない。しかし、100%バイオ燃料では現状の車両では対応できないものが出てくるという問題がある。

少なくとも今回のEUの規制の修正では、2035年以降に大量のエンジン車が販売されるということは起こりそうにない。

2025年12月22日

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全固体電池に関する私の記事が朝日新聞SDGs ACTION!に掲載されました

全固体電池は現在の液体電解質を使ったリチウムイオン電池と違い、固体電解質を使います。これよって全固体電池は安全性が高い(発火しにくい)、急速充電が可能、充電量を増やせる可能性がある、低温でも使用できる、寿命が長いといった優れた特性が得られます。
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この記事では、全固体電池の概要と、種類と特徴、仕組み、メリットとデメリット、私たちの生活への影響、全固体電池の開発を進める企業の事例などについてわかりやすく解説しました。

記事はこちら→全固体電池とは?従来の電池との違いやメリット、実用化の現状を解説

2025年12月6日

台湾有事によって石油は途絶えるのか

高市首相が国会答弁で、台湾有事を安全保障関連法の「存立危機事態」になりうると発言して議論を呼んでいる。しかし、台湾有事がなぜ日本の存立危機事態になりうるのかについての具体的な議論はされていないようである。中国の台湾侵攻によって台湾海峡が閉鎖され、それによって日本への石油の輸送が途切れ、これが存立の危機になるとかなりの数の人たちが考えているようだ。

そこで、石油の輸送経路、つまりシーレーンについて復習したい。

上の図が石油のシーレーンだ。

日本の石油の約95%が中東から輸入される。アラビア湾で原油を積み込んだ石油タンカーはホルムズ海峡を出てインド洋を通ってマラッカ海峡を経て、台湾とフィリピンの間にあるバシー海峡を抜けて日本に到達する。

マラッカ海峡が通れない大型のタンカーの場合は、マラッカに代わってロンボク海峡を通って太平洋に抜けて日本に至ることになる。しかし、いずれにしても、わざわざ台湾海峡を通るタンカーはない。単に遠回りになるだけだからだ。だから中国が台湾に侵攻するために台湾海峡を通行禁止にしても、石油が途絶えることはない。

さらに、中国がバシー海峡を封鎖したとしてもロンボク海峡ルートのように少し遠回りになるが、代わりの航路はいくつか存在する。少なくとも台湾有事によって石油が途絶することは考えづらい。

台湾有事によって、石油以外の何か別の案件が存立危機につながるということがあるのかもしれないが、少なくとも石油途絶による日本の存立危機という事態は考えづらい。首相は何が原因で存立危機になると考えておられるのだろうか。