
この写真。北朝鮮の部分にまったく明かりがないですよね。日本も気候変動対策を続けると、やがて北朝鮮のようになるのではないか。つまり、エネルギーが不足して明かりもつけられない。そんなことになるのではないか。そんな意見をネットで見かけました。わたしは、そうはならない。それは誤解だと思います。
気候変動対策というと我慢を強いるものだと思われているかもしれません。自動車に乗るのはダメ、ガンガン冷房を効かせるのダメ、旅行をしてもダメ、あれもだめ、これもだめ。しかし、そうではなく気候変動対策は人間に我慢を強いらないでやることが前提だと思います。我慢しないで気候変動対策?そんなことができるのか?
地球に降り注ぐ太陽エネルギーは地球全体で合計すると、人間が消費するエネルギーの2万倍あります。この太陽エネルギーを全部利用することができれば、わずか30分で全人類が消費する1年分のエネルギーを賄うことが可能だという計算になります。
太陽エネルギーは太陽電池を使って電力に転換できるだけではありません。風力発電も、水力発電も元は太陽エネルギーです。また、植物は太陽光によって光合成を行い、空気中のCO2と水を原料として自分の体を作ります。その植物は従来から薪や炭の原料になり、近年ではバイオマス発電用の燃料や自動車や船の燃料ともなります。
太陽光に依らないエネルギーもあります。地熱や潮汐力、原子力は太陽光に依らないエネルギー源です。このような多様なエネルギー源があるなかで、気候変動対策は化石燃料を使うことだけはやめようと言っているにすぎません。
いやいや、化石燃料を使ったとしても、排出されたCO2を地下に貯留するCCSという手もあります。
一方でエネルギーをできるだけ使わない方法も開発されています。例えばエアコンの消費電力は、この30年間で約半分になっていますし、LED照明の消費電力は電球の7分の1に。自動車については従来(30年前)の普通乗用車に比べて、ハイブリッド車で約70%、軽自動車は50%の省エネとなっています。そのほかさまざまな省エネ機器が開発されています。
化石燃料でなければできないと思われていたものが、今まではほかのエネルギーでもできる。むしろ化石燃料でない方が安い、便利がいいというものもあります。(例えば太陽光発電は現在最も安価な発電方法です)
気候変動対策は、基本的に化石燃料を使わなければいいだけのことです。北朝鮮のように電気を使うな、我慢しろというのなら、気候変動対策は簡単なことです。そうではなく、いろいろな工夫を重ねることによって我慢せずに気候変動対策を行うことが可能ですし、むしろその方が便利で安いということにならなければならない。私は技術士ですが、それが技術者の仕事だと考えています。