気候変動対策は人間に我慢を強いるものではない

この写真。北朝鮮の部分にまったく明かりがないですよね。日本も気候変動対策を続けると、やがて北朝鮮のようになるのではないか。つまり、エネルギーが不足して明かりもつけられない。そんなことになるのではないか。そんな意見をネットで見かけました。わたしは、そうはならない。それは誤解だと思います。

気候変動対策というと我慢を強いるものだと思われているかもしれません。自動車に乗るのはダメ、ガンガン冷房を効かせるのダメ、旅行をしてもダメ、あれもだめ、これもだめ。しかし、そうではなく気候変動対策は人間に我慢を強いらないでやることが前提だと思います。我慢しないで気候変動対策?そんなことができるのか? 

地球に降り注ぐ太陽エネルギーは地球全体で合計すると、人間が消費するエネルギーの2万倍あります。この太陽エネルギーを全部利用することができれば、わずか30分で全人類が消費する1年分のエネルギーを賄うことが可能だという計算になります。

太陽エネルギーは太陽電池を使って電力に転換できるだけではありません。風力発電も、水力発電も元は太陽エネルギーです。また、植物は太陽光によって光合成を行い、空気中のCO2と水を原料として自分の体を作ります。その植物は従来から薪や炭の原料になり、近年ではバイオマス発電用の燃料や自動車や船の燃料ともなります。

太陽光に依らないエネルギーもあります。地熱や潮汐力、原子力は太陽光に依らないエネルギー源です。このような多様なエネルギー源があるなかで、気候変動対策は化石燃料を使うことだけはやめようと言っているにすぎません。

いやいや、化石燃料を使ったとしても、排出されたCO2を地下に貯留するCCSという手もあります。

一方でエネルギーをできるだけ使わない方法も開発されています。例えばエアコンの消費電力は、この30年間で約半分になっていますし、LED照明の消費電力は電球の7分の1に。自動車については従来(30年前)の普通乗用車に比べて、ハイブリッド車で約70%、軽自動車は50%の省エネとなっています。そのほかさまざまな省エネ機器が開発されています。

化石燃料でなければできないと思われていたものが、今まではほかのエネルギーでもできる。むしろ化石燃料でない方が安い、便利がいいというものもあります。(例えば太陽光発電は現在最も安価な発電方法です)

気候変動対策は、基本的に化石燃料を使わなければいいだけのことです。北朝鮮のように電気を使うな、我慢しろというのなら、気候変動対策は簡単なことです。そうではなく、いろいろな工夫を重ねることによって我慢せずに気候変動対策を行うことが可能ですし、むしろその方が便利で安いということにならなければならない。私は技術士ですが、それが技術者の仕事だと考えています。

地球温暖化は単に気温が上がるだけではなく、不快指数を上げてしまう現象なのかもしれない

「体を包むような異常な暑さを感じるのですが、私だけでしょうか?昔と比べて日差しに爽やかな感じが無くなった感じがします。地球温暖化とは少し違う現象のように感じますが…」 

ネットを見ていたらここ数年の夏の暑さについて、こんな感想を書いている人を見かけた。このねっとりした暑さは、単に地球温暖化だけではないのじゃないかという感想である。

そこでハタと気づいたのだが、むしろ、この不快さも地球温暖化の特徴ではないかと思えてきた。つまり、地球温暖化はただ気温が上がるだけではなく、このような不快感を伴う現象なのではないかと。 

地球温暖化はよく、地球上空にCO2の層のようなものができて、それが熱線(赤外線)を反射して地球が温かくなるようなイメージ図が掲載されていることがあるが、実はこれは間違いである。 

地球温暖化はこのようなCO2の層に熱が反射し起こっているわけではなく、我々の周りの空気中のCO2が増えて、それが熱の発散つまり赤外線を遮ってしまうことで起きている。 

わかりやすく言えば、私たちの身の回りの空気中のCO2が増えて、それが断熱材のような働きをして、地球から出ていく熱を遮っているから気温が上昇している。つまり温室効果というのは上空何万mというような遠い世界の出来事ではなく、私たちの身の回りで起こっている現象なのだ。

温室効果は、その理屈から考えて、単に地球という物だけで起こることではない。地球上のあらゆる熱源が温室効果の影響を受けて、冷えにくくなっているはずである。

ひるがえって、私たち人間も約36℃の体温を持つ熱源である。私たちの体からも当然、赤外線が出ている。その赤外線が出ることによって体は冷やされているから、空気中のCO2が増えて、私たちの体から出る赤外線が遮蔽されてしまうと私たちの体は冷えにくくなっているはずである。

赤外線画像を見れば、人間も赤外線を出していることが分かる


同じような現象に湿度の影響がある。湿度が低いと爽やかに感じるが、これは私たちの体から出ている汗が蒸発しやすくなって、体が冷やされるからで、逆に湿度が高いとなかなか体温が下がらず、まとわりつくような不快な暑さを感じる。

これと同じように空気中のCO2が増えれば、私たちの体は温室効果によって冷えにくくなるから、ちょうど湿度が高くなったときのような不快感を覚えることになるだろう。

人間の体温に対する温室効果がどのくらいなのか、人間が感じることができるのかは分からないが、人間の体温は地球の平均気温よりも高いから、赤外線の量も多く、したがって温室効果も大きいはずである。

空気中のCO2は地球の気温を上げるだけではなく、人体への不快感も増加させているのではないだろうか。

2025年9月2日

地球温暖化の原因が理解されにくいのは、逆転の発想が必要だからだ

ここ数年、今まで経験したことのない暑い夏が続いている。これには複数の原因が挙げられているが、どの原因を取ったとしても地球温暖化という気温の底上げがなければ、あり得ないと言われている。この酷暑に限らず、地球が温暖化していることは、さまざまなデータから明らかである。

その地球温暖化はCO2のような空気中の温室効果ガス濃度が上昇していることが原因であることは、既に疑う余地がないこととされている。しかしながら、そうではないと反論する人たち、あるいは納得できないと主張する人たちを見かけることがある。

これは恐らく、地球温暖化の原因は常識とは逆の発想をしなければならないからであろう。つまり、地球は加熱されて温暖化しているわけではなく、冷えにくくなったから温暖化しているのである。

一般的な常識として、物の温度を上げるには加熱しなければならない。お湯を沸かそうとすれば、水をやかんに入れてガスや電気で加熱しなければならない。地球温暖化もこの常識で言えば何らかの原因で加熱されているはずだと考える。その結果、太陽活動の活発化が原因だとか、原子力発電所の排熱が原因だとか。あるいは、空気中にわずか0.04%しかないCO2が原因だとは考えられないと主張する人たちがいる。

しかし、科学者たちが主張する温暖化の原因は、地球が加熱されているわけではなく、冷えにくくなっているということ。つまり加熱しなければ熱くならないという常識とは違った、いわば逆転の発想なのだ。これを理解しないとわずか0.04%しかない温室効果ガスの増加が地球温暖化の原因だという理屈が腑に落ちないということになる。

地球は太陽光で温められ、暖められた地球は赤外線を出して冷えていく。そのバランスで地球の平均温度は決まる。地球が温暖化する原因は地球が受ける太陽光エネルギーが強くなったか、赤外線が出にくくなって冷えなくなったかであるが、前者については大きく変化がないことが観測によって分かっている。

では冷えにくくなったのか。そのとおり、空気中のCO2濃度が増加しているから、地球は冷えにくくなったのである。CO2濃度が増加していることは、これも観測によって明らかになっているし、CO2が赤外線を吸収して再び熱に変えることも実験によって明らかになっている。

一方、先に例に挙げた原子力発電所などから排出される熱については、人間が発生させているその他の全ての熱を加えても、太陽光の1万分の1にしかならない。確かに人工的な熱でも気温は上昇するが、温室効果ガス量が一定であれば、すぐに冷えて地球の気温は一定になってしまう。

また、CO2の空気中濃度はわずか0.04%であるが、赤外線を遮って地球の冷却を防ぐという機能にはそれで充分な濃度なのである。

科学者たちは、地球温暖化について様々な原因を調べ、観測してきたが、結局この単純な理論に行きついてしまったということである。ただ、温度は加熱しなければ上昇しないと常識にとらわれていると、この理論は理解し難い。地球は加熱されて温暖化しているのではなく、冷えにくくなって温暖化しているのだと。

2025年8月24日

富士石油の石油石炭税の不正還付事件

6月25日、石油精製大手の「富士石油」が、国内で製造した石油製品のナフサに外国産を混ぜて国産として申請し、約4億5000万円の不適切な税金還付を受けたと報道された。これについて少し解説したい。

この事件、おそらく故意ではなく単純な事務処理ミスだろう。中小企業なら社長が「今年は儲けが少ない。おい、ちょっと誤魔化しとけ」といった具合で不正が行われることがあるかもしれないが、富士石油は大企業であるから社長がそんな現場の税務手続きまで関与することはない。

現場の管理職クラスが誤魔化そうとしても、金は会社に入るだけで自分には何のメリットもない。税務担当の事務をやっている人も同じで、金が自分の懐にはいるわけでもないし、むしろ今回のように税務署に指摘されれば会社から叱責を受ける可能性もある。わざとやったわけではなく、単純なミスだろう。

日本の法律では、製油所が輸入した原油を処理する時には石油石炭税が課される。製油所はその原油からナフサをはじめとして様々な石油製品を作っているわけであるが、このうちナフサを石油化学原料として出荷すれば、払った石油石炭税が還付される仕組みになっている。

そうしなければ日本で生産されるプラスチックなどの国際競争力がなくなってしまうからだ。一方、輸入したナフサにはもともと石油石炭税がかかってないから、これを石化用として出荷しても税金は還付されない。

ということで税務上は輸入ナフサと国産ナフサは厳密に分けて取り扱わなければならないことになるが、輸入ナフサも国産ナフサも品質は同じだから、現場では同じタンクに貯蔵され、混ざった状態で石化用として出荷される。石油会社の税務担当者は、出荷されたナフサを、帳簿の上で輸入ナフサと国産ナフサを分けて、税務署には国産ナフサ分だけを申請して還付を受けるという手続きをする。

今回の事件では、税務担当者が石化向けに出荷したナフサに輸入ナフサが混ざっていたにも係わらずすべてが国産ナフサだと勘違いして還付申請してしまったということだろう。

それにしても、 4億5000万円は大きいと思うかもしれないが、それは取扱量が大きいことが原因だ。石油石炭税は1キロリットルあたり2,800円。例えば1回のナフサ出荷量が10万キロリットルだとすると、それだけで2億8,000万円が還付されることになる。

一方で石油にかかる税金は非常に複雑だ。石油には石油石炭税のほかに、関税、石油ガス税、ガソリン税、軽油引取税、航空機燃料税といった様々な税金が課される。それぞれについて課税対象や課税額が異なり、さらに条件によって免除されたり、減額されたり、還付されたりする。だから石油会社の税務担当者は細心の注意を払う必要があるのだが、残念ながら今回のようなミスが発生することもあるということだ。

2025年6月28日

「自動車用バイオエタノールの未来」シンポジウムに出席しました

先週、アメリカ穀物協会が主催する「自動車用バイオエタノールの未来」シンポジウムに出席しました。今後、日本でも導入が予定されているE10およびE20ガソリンについて、様々な講演が行われました。
写真はアメリカ穀物協会のキャラクター、デン君とコニーちゃんです。着ぐるみは初公開とのことで、協会の意気込みが感じられます。

バイオエタノールはガソリンに比べて高いのか

先日(2025年4月22日)、日経モビリティに「割高のバイオ燃料車「誰が買うのか」」という記事が載った。スズキの鈴木俊宏社長が中期経営計画を発表する場で、バイオ燃料車は消費者や事業者の負担が高まる。「誰が買うのか」と発言したという。

バイオ燃料車が消費者の負担を増やすという話は、バイオ燃料車のことなのか、バイオ燃料自体のことなのかはよく分からないが、誰も買えないほどバイオ燃料は高価な買い物になるのだろうか。

まず、バイオ燃料を使用する車両であるが、日本でもすでにE10(バイオエタノールを10%添加したガソリン)を燃料として使用できるものが販売されている。給油口に貼ってあるステッカーを見て、初めて自分の愛車がE10に対応していることを知ったという人も多いだろう。このように、すでにE10対応車は一般に普及しているので、いまさらバイオ燃料を使用する車両が消費者の負担になるとは思えない。

では、燃料の方はどうなのか。米国穀物協会のホームページによるとバイオエタノールの価格は先週平均で1.79ドル/ガロンであった。(Gulf FOB)これを1ドル=140円、1ガロン=3.785リットルで換算すると、66.2円/リットルとなる。

海外ではE10はむしろ安価で売られている

バイオエタノールはガソリンに比べて発熱量が60%くらいしかないから、この単価を0.6で割り返すと、110.3円/リットル。これに揮発油税53.8円/リットルを加えると、164.1円/リットルとなる。

一方、現在の日本のガソリンの市販価格は180円/リットルであるから、バイオエタノールはかなり安い。実際には米国からの輸送コストやガソリンスタンドでの販売経費などが加算されるわけであるが、それを加味してもバイオエタノールがそれほど高価になるとは思えない。

ガソリン価格は原油価格で、バイオエタノールはトウモロコシ価格でそれぞれ変動するのでどちらが安い、高いとは一概には言えないが、ほぼトントンというところだろう。

バイオ燃料は高いというイメージを持っている人もいるようだが、石油系の燃料に比べて意外に高いということはない。少なくとも高くて「誰が買うか」という話ではないだろう。

2025年4月23日

地球表面をすべて太陽電池パネルで覆ったら、どれだけ発電できるか計算してみたらすごいことになった

この4月1日から東京都と川崎市では新築の建物に太陽光パネルの設置を義務づける制度が始まった。東京と川崎は温室効果ガスの排出量が、それぞれ全国1位と2位の都市だ。

しかし、太陽光発電をしようとしてもメガソーラーのような大規模な太陽電池パネルを設置する場所がない。そこで住宅の屋根に太陽光パネルを設置して温室効果ガスをできるだけ削減しようというアイデアだ。

この話題とは直接関係はないのだが、都内の住宅の屋根のようなみみっちいことを言わずに、地球全体を太陽電池パネルで覆ったら、どれくらい発電できるものなのだろうか。ちょっと計算してみた。

地球が太陽から受ける光のエネルギーは太陽乗数といわれ、 1m2あたり1,370Wと測定されている。これに地球の断面積をかければ、地球が太陽から得られる光のエネルギーを求めることができる。これに太陽電池パネルのエネルギー効率(だいたい20%)をかけてやれば発電量を求めることができるという寸法だ。

太陽乗数 = 1,370W/m2 = 1.370×1016W/km2
地球の断面積 = 127,400,000km2 =  l.274×108km2
太陽電池のエネルギー効率 = 20% = 0.2

として計算すると地球表面を覆う太陽電池の発電量は

1.370×1016W/km2 × 1.274×108km2 × 0.2 = 3.491×1016W

これは原子力発電所(出力100万kW=109W)の3,500万基分 ! に相当する。
1W(ワット)は1 J(ジュール)/sである。つまり、 1秒間に1 Jのエネルギーを発生することであるから、地球を覆う太陽電池の年間発電エネルギーは3.491×1016W に1年間の秒数(3.154×107秒)をかけてやればよい。

3.491 × 1016W × 3.154×107秒 = 1.098×1024 J

一方、2023年の世界の総エネルギー需要量は約6.20×1020 Jであった。これと地球を覆う太陽光発電パネルの1年間の発電量を比較すると次のようになる。

1.098 × 1024 J÷6.20×1020 J ≒ 1,800

つまり、地球全体を太陽光発電パネルで覆ったときの発電量は、人間が1年間に使うエネルギーの1800倍 ! ということになる。つまり、地球をすべて太陽光発電パネルで覆うと、たった5時間程度 ! の発電量で、人間が1年間に使うすべてのエネルギーを賄えるということを示している。

※ただし、雲による太陽光の反射や大気による吸収を計算に入れていないので、実際にはこの半分くらいになりそうですが。

2025年4月17日

ガソリン車は廃止すべきと思う、もう一つの理由

近年、EV(電気自動車)が正義、ガソリン車は悪であるという風潮があると嘆く方がおられます。私は、そんな善か悪かという単純な割り切りには賛成できません。が、いややっぱりガソリン車は悪です。その理由はガソリン車が地球温暖化の原因になっているという話のほかに、特に日本にとっては、つぎのような問題があるからです。

ガソリン車は当然、ガソリンで動きます。ガソリンは原油を精製して作ります。原油は日本では採れないので、そのほとんど、なんと96%が中東からの輸入です。ということで中東の王様が儲かってウハウハで、世界でも有数の大富豪になっています。単に自分の国でたまたま石油が取れるというだけで、世界でも比類のない大富豪になっているのです。そんな不公平でいいんでしょうか。

それと、中東は不安定で、いつ戦争が起こっても不思議じゃない。ホルムズ海峡に機雷でも仕掛けられたら、日本は石油の輸入ができなくなって、もうガソリン車は走れません。日本の石油のほとんどはホルムズ海峡を通っているわけですから。

といってもEVも結局は、発電時に化石燃料を使うじゃないかとおっしゃいますか?でも、日本の火力発電は石炭とLNGです。石油は使っていません。石炭の輸入先はオーストラリア、インドネシア、ロシアなど、LNGはオーストラリア、マレーシア、アメリカなど。石油のように中東に依存しておらず、世界中に分散しています。

ロシアにはオリガルヒという大富豪がいますが、それ以外は、石炭やLNGで富を独り占めしているような人はいません。何万人におよぶ従業員や株主や株主に雇われた経営者が少しずつ分け合っているわけです。石油よりずっと民主的でしょ?

しかも、日本では電力の約7割が石炭やLNGを使う火力ですが、これから日本は火力の割合を減らして太陽光や風力のような再生可能エネルギーの割合を増やしていこうとしています。政府の予想だと2040年で再エネが40~50%、原子力が20%まで増えます。

2040年度におけるエネルギー需給の見通し(資源エネルギー庁)

一方、化石燃料は30~40%まで減り、当然、 CO2排出量も減りますが、それだけじゃない。化石燃料を輸入する必要がなくなり、太陽光や風力という国産のエネルギー源に代わります。エネルギー自給率は現在の13%から30~40%まで増えます。当然、化石燃料代金を払わなくていいことになって、それだけ日本は豊かになります。

ガソリン車にはそんな先の望みはありません。ガソリンを使う限りは相変わらず中東に依存して、いつ石油が止められるかびくびくしながら、しかもあなたがガソリン代として支払ったお金は中東の石油王に吸い上げられていくのです。ガソリン車は悪だという話。お判りになりましたでしょうか。

(この文は、ナレッジコミュニティ・Q&AサイトQuoraの質問に私が回答したものを再掲しました)

【付録】
これはサルバトール・ムンディと名付けられた絵画で、あのモナリザを描いたレオナルド・ダ・ビンチの作品ではないかと言われています。(真偽ははっきりない)

レオナルド・ダ・ヴィンチ – Getty Images, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=64103353による

1958年にわずか45ポンドで売買された絵ですが、オークション毎に値段が高騰していき、2017年のクリスティーズでなんと500億円で落札されました。

この作品を買ったのが、アラブの大富豪。売ったのがロシアのオリガルヒです。本物かどうかもはっきりしない一枚の古びた絵に500億円!かれらの金銭感覚はどうなっているのでしょうか。

こんな大金があれば、何千人もの貧しい人たちに職を与え、あるいは学校へ行けない子供たちに教育を施すことができるでしょう。しかも、アラブの大富豪がポンと出した500億円、元はと言えばあなたが高い高いと不平を言いながら買ったガソリン代金なのです。

サルバトール・ムンディはいまどこにあるのか分かりません。アラブの大富豪の豪華なヨットのキャビンに飾られているのを見たという人がいるようですが。

第7次エネルギー基本計画から「核融合」の文字が消えた

第7次エネルギー基本計画は、その原案が昨年(2024年) 12月に一般公開されていたが、パブリックコメント期間を経て、今年2月に閣議決定されて正式に承認された。

この基本計画の原案とパブリックコメントを経た後の正式バージョンにはほとんど違いはないようであるが、一点、気になった点がある。それは、原案にはあった「核融合」という文字が正式版では事実上なくなってしまっていたことである。

原案では、 「核融合」という文字は3か所出てくる。
最初はⅤ章「2 0 4 0年に向けた政策の方向性」の中の原子力発電の項の中である。原案では「高速炉、高温ガス炉、核融合といった他の次世代革新炉についても…」としているところ、正式版では「高速炉、高温ガス炉、フュージョンエネルギーといった他の次世代革新炉についても…」と核融合がフュージョンエネルギーに書き換えられていた。

もう一か所はⅥ章「カーボンニュートラル実現に向けたイノべ-ション」の中の、やはり原子力の項で、「フュージョン(核融合)については、フュージョンエネルギー・イノべーション戦略を踏まえ…」となっていたものが、正式版では「フュージョンについては、 …」と(核融合)の部分が削除されているのである。

3か所目は、 2か所目と同じ章にある「国際核融合実験炉ITER」の部分であるが、正式版でも「核融合」という言葉がそのまま残されている。しかし、これは固有名詞だから変更しようがなかったのだろう。

つまり、正式版では核融合という用語が丁寧にフュージョンもしくはフュージョンエネルギーという用語に置き換えられているのである。

なぜ、正式版では核融合という言葉を事実上削除したのだろうか。もちろん、核融合を英語で言えばフュージョン(nuclear fusion)であるが、日本として一般になじみのある言葉ではない。というより、フュージョンと聞いて思い浮かぶのは、音楽のジャンルのひとつであろう。

ちなみにネットで “フュージョン” を検索すると、音楽のジャンルのひとつという説明が表示される。そのほかにはオートバイやスポーツ用品、ジュエリーなどがヒットするが、核融合の意味だという説明は見当たらない。

核融合は地上の太陽などと言われて、世間一般の期待が大きいが、恐らくフュージョンと言われて核融合のことだと理解できる人はそう多くはないであろう。

ではなぜ、エネルギー基本計画では核融合をわざわざ、ほとんど一般には使われないフュージョンという言葉に置き換えたのだろうか。

想像するに、核融合の「核」という漢字が嫌われたのではないだろうか。核融合を原子力発電と同様に危険だと誤解されないように、フュージョンという言葉を使うべきだというパブリックコメントがあったのかもしれないし、核融合推進派の国会議員あたりから要請があったのかもしれない。

エネ庁が「核」という言葉に神経質になっているのかもしれない。としても単に言葉の中から核という部分を取り除いても、実情が変わるわけではないのだが。

松山空港に米軍のF35が燃料切れで飛来 日本は不沈空母であることを実証?

2月5日正午ごろ、愛媛県の松山空港に米軍の戦闘機2機が緊急着陸。着陸の原因は燃料切れということで、松山空港で燃料を補給して午後4時ころ飛び立ったという。

この戦闘機は最新のF35C。わが国の航空自衛隊で運用しているのはF35Aという空軍型だが、松山空港に降り立ったのは海軍仕様のC型だ。空母ジョージワシントンの艦載機で、岩国基地に所属しているという。岩国と松山はつい鼻の先だから、燃料不足で緊急着陸したというより、岩国で何かのトラブルがあり、上空で待機している間に燃料がなくなったのではないだろうか。

F35戦闘機(今回緊急着陸した機体ではありません)

ここで疑問なのは、燃料として何を補給したのかということである。米国は空軍と海軍とでは燃料が異なり、海軍はJP-5という規格のジェット燃料を使っているはずである。(空軍はJP-8)これに対して、わが国の民間航空機はJet A-1という規格の燃料だ。

松山空港は民間空港であるからJP-5を持っているとは思えないし、F35が駐機していた4時間ほどの間にわざわざJP-5を取り寄せることもできないだろうから、民間航空機用のJet A-1を給油したのだろう。そしてそのまま何事もなかったようにF35は飛び立っていった。

JP-5もJet A-1もベースは灯油である。主な違いはJet A-1の方が引火点が低いことと、添加剤が多少異なるかもしれない(添加剤はメーカーによって異なる)というくらいである。そもそも、JP-5もJet A-1も中身は灯油なのだから、実は街のガソリンスタンドで売っている灯油でもジェット戦闘機を飛ばすことは十分可能なのだ。だからJP-5の代わりにJet A-1を給油しても大きな問題もなくF35は飛び立つことができたということだ。

このことは、例えば有事の際に空軍基地が攻撃を受けて使用できなくなったとき、戦闘機が民間空港に降り立ち、民間航空機用の燃料を補給して、また飛び立つということが可能だということを示している。

ちなみに、わが国は各都道府県にそれぞれ1か所以上の空港があるが、これほど空港密度の高い国は他にないだろう。今回のF35が所属する岩国基地に隣接した空港は松山だけではない。広島、石見、大分、宇部、北九州と100㎞以内にある空港だけで6か所もある。これはパイロットにとっては大変心強いことだろう。

以前、中曽根総理大臣が米国を訪問して、日本は不沈空母だと発言して議論を呼んだことがあるが、今回の事件は、まさにわが国が不沈空母だという一例であろう。今たまたま、石破総理大臣が米国を訪問してトランプ大統領と会っているが、このことは米国が日本と同盟関係を保つ大きな要因となるだろう。なにせ、中国やロシア、北朝鮮といった米国に敵対する国々の鼻面に日本という不沈空母が横たわっているのだから。

2025年2月8日

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