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世界の再生可能エネルギー発電コストは火力発電コストよりはるかに安い

気候変動対策として化石燃料を使わない発電方式の採用が急がれている。しかし、その障害の一つになるのが、コストだ。風力や太陽光発電はCO2を排出しないが、発電コストが高くなる。気候変動対策として、発電コストの上昇は仕方がない。従来まではそう考えられてきた。しかし、近年では再生可能発電は必ずしも高くない。というよりむしろ石炭や天然ガス火力発電より安い。そんなことまで言われるようになってきている。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は世界の再生可能エネルギーのコストを集計したレポートを今年7月に公表している。下の図は再生可能電力の発電コストの推移を示したものだ。

このグラフをみれば、再生可能エネルギーによる発電コストは2010年に比べて大幅に低減しているものが多いことが分かる。太陽光で約10分の1、集中型太陽熱で約4分の1、陸上風力で約3分の1、洋上風力で約半分以下まで低下している。(ただし、バイオマスや地熱はあまり改善が見られなかった。)

現在、発電コストが最も安価なのは陸上風力で0.034$/kWh、次が太陽光で0.043$/kWh、水力0.059$/kWhと続く。円に換算するとkWh当たりの発電コストは陸上風力が4.9円、太陽光が6.2円、水力が8.6円となる。 (1$=145円として換算)

太陽光発電の世界平均の発電コストは火力発電の4割も安いという。ちなみに、我が国の場合、天然ガス火力発電のコストが19.1円であるから、世界の太陽光発電コストは日本の火力に比べて7割近くも安いことになる。

 (日本の場合、陸上風力が16.3円、太陽光が10.9円、水力が13.0円と世界平均に比べてかなり高いが、それでも火力発電よりは安価である)

かつて、再生可能発電はコストが高いというのが常識であったが、最近のデータをみると、「火力発電より安い」から「火力発電とは比べ物にならないほど安い」という話になっている。

もちろん、風力や太陽光は気まぐれな発電方式であるから、安いからといって全面的に頼ることはできないが、主電源は再生可能電力で、需要ピーク時には天然ガス火力で補うという、パターンになりつつあるようだ。

地球温暖化は温室効果ガスの層ができて起こっているわけではない

前から気になっていたのだが、地球温暖化のメカニズムについて、以下のような図で説明されることがある。このような説明図を見たことのある人は多いだろう。(この図はある自治体のホームページに掲げられている)

しかし、この説明図は間違いである。

この図を見ると、地球上空に温室効果ガスの層があり、それに地球から放出される熱(赤外線)がぶつかって反射される。かつては温室効果ガス濃度があまり高くなかったので、反射される熱もそれほど大きくなかったが、現在の地球は温室効果ガスの層の濃度が高くなっているので反射される熱が増えて地球が温暖化される。

そのように文章で説明されているわけではないが、おそらく、この図を見た多くの人たちがそう思うだろう。この図を描いた人もそう思っているのかもしれない。では、熱を反射する温室効果ガスの層はどのくらいの高さにあるのだろうか。1万m?、 10万m?、もっともっと上?

例えばオゾン層の高さは1万mから5万mである。これはネットで調べれば簡単に出てくる。では熱を反射する温室効果ガスの層の高さはどのくらいなのだろうか。これはネットで調べても出てこないし、どんな論文でも出てこない。

実は温室効果ガス層の高さは0mである。というか温暖化の解説図で示されるような温室効果ガスの層など存在しないのである。温室効果ガスの主な成分であるCO2は空気より重いので、理屈から言えば地上付近が最も濃度が高くなるはずであるが、実際には空気は混ざりやすいので、地上からかなり上空までCO2は拡散していて、ある部分では濃いところがあったり、季節によっても変化し、工場地帯では濃く、森林地帯では薄くなったりする。しかし、温室効果ガスの明確な層など存在しないのである。

では、この解説図は間違っているのだろうか。そう、はっきりいって間違いである。温室効果は温室効果ガスの層が地球を覆って熱(赤外線)を反射して起こっているのではなく、大気圏全体で起こっている。つまり、温室効果はわれわれが生活するこの地面のすぐ上、つまりあなたの身の回りで起こっており、決して地上数万mのはるかかなたで起こっている現象ではないということである。

もう一つ図をお見せしよう。

これは、環境省が発行している「こども環境白書」に書かれた地球温暖化の説明図である。この図では、はっきりと温室効果ガスの層があると描かれている。いくら子供向けとはいっても、環境省がこれではいかんだろう。

自動車排ガスからのCO2回収は可能か

先日「出すそばから二酸化炭素を回収できればエンジン車でもよくない?」という記事がYahooニュースなどに掲載された。これはエンジン車から排出されたCO2を、車両に搭載されたCO2吸収剤に吸収させてCO2排出をゼロにしてしまおうという技術である。

この技術が完成すれば、エンジン車でもそのまま気候変動対策ができるので、EVなどCO2を排出しない車に変える必要はなく、今のエンジン車がそのまま使えるという話である。さらに回収したCO2は農業用温室などで使えば、食料増産にもつながることになる。すでにスズキやマツダでも開発が進んでいるという。
しかし、この技術。どう考えても無理だろう。

ここで掲げられたCO2吸収装置は排ガス浄化触媒のようなものをイメージしているのだろう。エンジン車の排ガスに含まれる有害物質は大気汚染の原因となるから、これを除去するために触媒が設置されている。CO2も一種の大気汚染物質と考えれば、公害防止用触媒と同じように、CO2吸収装置を取り付ければ、それでOKということになるのではないか。

しかし排ガス浄化用の触媒は自動車排ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(CH)、窒素酸化物(NOx)という有害物質を無害な物質に変える装置である。COはCO2に、CHはCO2とH2Oに、NOxはN2に、という具合に無害なものに転換して排出している。決して、これらの有害物質を貯め込んでいるわけではない。

CO2回収装置は排ガス中のCO2を分離して、CO2以外のガスを排出する。これによって確かに排ガスからCO2が排出されなくなるのだが、CO2が別のものに変わったわけではなく、単に装置の中に貯蔵されただけなのだ。

ガソリン1ℓを燃やすと2.32kgのCO2が排出される。ガソリン1ℓの重さはだいたい0.75㎏であるから、消費されるガソリンの約3倍の重さのCO2が排出されることになる。一方、CO、CH、NOxの量はppm単位だから、CO2の排出量は汚染物質に比べて半端なく大きい。さらに、2.32㎏のCO2の体積は標準状態で1180ℓになる。

下の図は、マツダ自動車が開発しているCO2吸収装置の模式図である。(マツダ技報 No.41, p98(2025))

この装置の場合、ガソリン車の排ガスはゼオライトを主体とした吸収材を通すことによってCO2が吸収され、CO2を含まない排ガスが排出される。CO2を吸収したゼオライトは真空ポンプで吸引されることによって、CO2が分離される。この吸収と分離を繰り返すことによって、排ガス中のCO2が連続的に分離されていくことになる。では分離されたCO2はどうなるかというと、CO2タンクの中に貯蔵されていくことになる。

この方法を使えば確かにエグゾーストノズルから排出されるCO2はなくなるが、排ガスから分離されたCO2はどんどんCO2タンクに貯まっていくことになる。もし、この自動車がガソリンスタンドで50ℓのガソリンを入れ、それが全て消費されるまで走行したとすると、タンクに貯められるCO2の体積は59,000ℓとなる。これは1辺が3.9mの立方体と同じ大きさで、このような大きなタンクを車両の中に確保しなければならないことになるが、そんなの無理だろう。

たとえ回収されたCO2を車の中に蓄えることができたとしても、結局は回収されたCO2を何らかの方法で処分しなければならない。もちろん、そのまま大気に放出したら何にもならない。

Yahooニュースの記事では、回収したCO2を温室で植物に吸収させれば食料が増産されると書かれているが、この方法はNGだ。植物はCO2を吸収して成長するが、やがては枯れる。枯れると植物は分解されて吸収したのと同じ量のCO2を排出するから、結局CO2は大気に放出されることになる。

野菜として人間が食べた場合も同じだ。野菜は体内で消化されて、吸収され、エネルギー源として消費され、最終的にはCO2となって呼気から大気中に出ていく。

植物は一般にカーボンニュートラルといわれているが、それは成長過程で大気中からCO2を吸収しているからだ。その吸収するCO2がガソリンのような化石燃料から出てくるものの場合はカーボンニュートラルとはみなされない。

回収したCO2に水素を反応させてe-fuelにするという方法も提案されているが、この場合は水素を作るときに電力が必要となるから、そんな電力があるのならEVで使った方がいい。また、この場合も、e-fuelを燃やせばCO2が出てくる。そのCO2ももともとガソリンが燃えて出てきたものだからカーボンニュートラルではない。

ガソリンを燃やしたあと、発生したCO2を回収すれば、確かにエグゾーストノズルからCO2が排出されることはないが、回収したCO2が消えてなくなるわけではない。結局は何らかの方法でCO2を処分しなければならないから、問題を先送りしているに過ぎない。それなら最初からガソリンを燃やさない方法を考えるべきだろう。それがEVであったり、バイオ燃料であったりするということだ。

2025年9月24日

食料危機は起こらない 人口爆発は終わり、代わりに人口崩壊が始まる

人口爆発という言葉がよく使われてきました。人口が爆発的に増加しており、その結果、食料不足が起こる。長年そう言われてきましたが、もうそれはそろそろ終わりにしなければなりません。実は国連も人口爆発とは言わなくなってきました。

あなたの周りを見ても気が付くでしょう。若い人が減って老人ばかりになっていることを。これは日本だけの現象ではありません。欧州諸国も隣の韓国も、中国も多くの国々で人口が停滞あるいは減り始めています。国連の予測では2080年ころ、専門家によっては2050年ころから世界の人口は減少に向かうと予想されています。

図1 世界の人口推移の実績と予想(2024 Revision of World Population Prospectsより)

マルサスの人口論によると、人間は放っておくと増えていこうとしますが、人口が増えすぎると食料が足りなくなり、これがネックとなって人口は抑制されます。このため、食料が増産されてその食料で支えられるだけの人口が増えるということになります。

第二次大戦後、農業技術が急速に発展したため食料が大増産されました。その結果として人口が増えていきました。これが人口爆発です。人口爆発的によって将来は食料危機が訪れるとよく言われますが、これは原因と結果があべこべ。人口が増えたのは、食料が増産されたからなのです。食料がないのに人口だけが増えて、あとから食料不足になるというのは、論理的に矛盾します。だから心配された人口爆発による食料危機は起こらなかったのです。

ところが、そのような議論とは別に、最近、食料はあるのに人口が減少するという不思議な現象が起こっています。現在、世界で人口が爆発的に増えているのはサハラ以南の貧しい地域のみで、ここでも人口増加率は年々下がっています。

図2 地域別特殊出生率の推移

それ以外の地域、特に先進国は食料が不足しているわけではないのに人口が減りつつあります。先進国では途上国より肉の消費量が多いのですが、例えば牛肉を1kg作るためには10kgの穀物が必要です。つまり先進国で人口が減ればそれだけ肉の消費量が減り、減った肉の消費量の何倍もの量の穀物が不必要となるのです。その結果、世界人口がピークに達するよりもっと前に食料の余剰が起こり始めます。

数十万年か前に人類が誕生して以来、ずっとマルサス理論に従い、食料生産量の増加にともなって、少しずつ人口が増えてきました。ところがこの20~30年間という短い時間に「食料があるのに人口が減る」という、いままで人類が経験したことのない事態が世界中でおこっているのです。つまりマルサスの人口論が成り立たなくなっています。原因は不明です。

人口が増える場合は食料生産がネックとなって抑制されますが、人口が減る局面では、それを止める力が働かない、つまり歯止めが効かないため一気に人口が激減する可能性があります。国連では人口爆発に代わって人口崩壊という言葉が使われはじめています。これからは人口爆発ではなく人口崩壊が人類にとって大きな問題となるでしょう。

多くの人たちには人口爆発という言葉が頭にこびりついているので、なかなかこの事態にはなじめないかもしれませんが、今後はむしろ人口崩壊によってさまざまな問題が発生することになります。地球温暖化問題のあとには人口崩壊問題が控えているのかもしれません。

2025年9月20日

気候変動対策は人間に我慢を強いるものではない

この写真。北朝鮮の部分にまったく明かりがないですよね。日本も気候変動対策を続けると、やがて北朝鮮のようになるのではないか。つまり、エネルギーが不足して明かりもつけられない。そんなことになるのではないか。そんな意見をネットで見かけました。わたしは、そうはならない。それは誤解だと思います。

気候変動対策というと我慢を強いるものだと思われているかもしれません。自動車に乗るのはダメ、ガンガン冷房を効かせるのダメ、旅行をしてもダメ、あれもだめ、これもだめ。しかし、そうではなく気候変動対策は人間に我慢を強いらないでやることが前提だと思います。我慢しないで気候変動対策?そんなことができるのか? 

地球に降り注ぐ太陽エネルギーは地球全体で合計すると、人間が消費するエネルギーの2万倍あります。この太陽エネルギーを全部利用することができれば、わずか30分で全人類が消費する1年分のエネルギーを賄うことが可能だという計算になります。

太陽エネルギーは太陽電池を使って電力に転換できるだけではありません。風力発電も、水力発電も元は太陽エネルギーです。また、植物は太陽光によって光合成を行い、空気中のCO2と水を原料として自分の体を作ります。その植物は従来から薪や炭の原料になり、近年ではバイオマス発電用の燃料や自動車や船の燃料ともなります。

太陽光に依らないエネルギーもあります。地熱や潮汐力、原子力は太陽光に依らないエネルギー源です。このような多様なエネルギー源があるなかで、気候変動対策は化石燃料を使うことだけはやめようと言っているにすぎません。

いやいや、化石燃料を使ったとしても、排出されたCO2を地下に貯留するCCSという手もあります。

一方でエネルギーをできるだけ使わない方法も開発されています。例えばエアコンの消費電力は、この30年間で約半分になっていますし、LED照明の消費電力は電球の7分の1に。自動車については従来(30年前)の普通乗用車に比べて、ハイブリッド車で約70%、軽自動車は50%の省エネとなっています。そのほかさまざまな省エネ機器が開発されています。

化石燃料でなければできないと思われていたものが、今まではほかのエネルギーでもできる。むしろ化石燃料でない方が安い、便利がいいというものもあります。(例えば太陽光発電は現在最も安価な発電方法です)

気候変動対策は、基本的に化石燃料を使わなければいいだけのことです。北朝鮮のように電気を使うな、我慢しろというのなら、気候変動対策は簡単なことです。そうではなく、いろいろな工夫を重ねることによって我慢せずに気候変動対策を行うことが可能ですし、むしろその方が便利で安いということにならなければならない。私は技術士ですが、それが技術者の仕事だと考えています。

地球温暖化は単に気温が上がるだけではなく、不快指数を上げてしまう現象なのかもしれない

「体を包むような異常な暑さを感じるのですが、私だけでしょうか?昔と比べて日差しに爽やかな感じが無くなった感じがします。地球温暖化とは少し違う現象のように感じますが…」 

ネットを見ていたらここ数年の夏の暑さについて、こんな感想を書いている人を見かけた。このねっとりした暑さは、単に地球温暖化だけではないのじゃないかという感想である。

そこでハタと気づいたのだが、むしろ、この不快さも地球温暖化の特徴ではないかと思えてきた。つまり、地球温暖化はただ気温が上がるだけではなく、このような不快感を伴う現象なのではないかと。 

地球温暖化はよく、地球上空にCO2の層のようなものができて、それが熱線(赤外線)を反射して地球が温かくなるようなイメージ図が掲載されていることがあるが、実はこれは間違いである。 

地球温暖化はこのようなCO2の層に熱が反射し起こっているわけではなく、我々の周りの空気中のCO2が増えて、それが熱の発散つまり赤外線を遮ってしまうことで起きている。 

わかりやすく言えば、私たちの身の回りの空気中のCO2が増えて、それが断熱材のような働きをして、地球から出ていく熱を遮っているから気温が上昇している。つまり温室効果というのは上空何万mというような遠い世界の出来事ではなく、私たちの身の回りで起こっている現象なのだ。

温室効果は、その理屈から考えて、単に地球という物だけで起こることではない。地球上のあらゆる熱源が温室効果の影響を受けて、冷えにくくなっているはずである。

ひるがえって、私たち人間も約36℃の体温を持つ熱源である。私たちの体からも当然、赤外線が出ている。その赤外線が出ることによって体は冷やされているから、空気中のCO2が増えて、私たちの体から出る赤外線が遮蔽されてしまうと私たちの体は冷えにくくなっているはずである。

赤外線画像を見れば、人間も赤外線を出していることが分かる


同じような現象に湿度の影響がある。湿度が低いと爽やかに感じるが、これは私たちの体から出ている汗が蒸発しやすくなって、体が冷やされるからで、逆に湿度が高いとなかなか体温が下がらず、まとわりつくような不快な暑さを感じる。

これと同じように空気中のCO2が増えれば、私たちの体は温室効果によって冷えにくくなるから、ちょうど湿度が高くなったときのような不快感を覚えることになるだろう。

人間の体温に対する温室効果がどのくらいなのか、人間が感じることができるのかは分からないが、人間の体温は地球の平均気温よりも高いから、赤外線の量も多く、したがって温室効果も大きいはずである。

空気中のCO2は地球の気温を上げるだけではなく、人体への不快感も増加させているのではないだろうか。

2025年9月2日

地球温暖化の原因が理解されにくいのは、逆転の発想が必要だからだ

ここ数年、今まで経験したことのない暑い夏が続いている。これには複数の原因が挙げられているが、どの原因を取ったとしても地球温暖化という気温の底上げがなければ、あり得ないと言われている。この酷暑に限らず、地球が温暖化していることは、さまざまなデータから明らかである。

その地球温暖化はCO2のような空気中の温室効果ガス濃度が上昇していることが原因であることは、既に疑う余地がないこととされている。しかしながら、そうではないと反論する人たち、あるいは納得できないと主張する人たちを見かけることがある。

これは恐らく、地球温暖化の原因は常識とは逆の発想をしなければならないからであろう。つまり、地球は加熱されて温暖化しているわけではなく、冷えにくくなったから温暖化しているのである。

一般的な常識として、物の温度を上げるには加熱しなければならない。お湯を沸かそうとすれば、水をやかんに入れてガスや電気で加熱しなければならない。地球温暖化もこの常識で言えば何らかの原因で加熱されているはずだと考える。その結果、太陽活動の活発化が原因だとか、原子力発電所の排熱が原因だとか。あるいは、空気中にわずか0.04%しかないCO2が原因だとは考えられないと主張する人たちがいる。

しかし、科学者たちが主張する温暖化の原因は、地球が加熱されているわけではなく、冷えにくくなっているということ。つまり加熱しなければ熱くならないという常識とは違った、いわば逆転の発想なのだ。これを理解しないとわずか0.04%しかない温室効果ガスの増加が地球温暖化の原因だという理屈が腑に落ちないということになる。

地球は太陽光で温められ、暖められた地球は赤外線を出して冷えていく。そのバランスで地球の平均温度は決まる。地球が温暖化する原因は地球が受ける太陽光エネルギーが強くなったか、赤外線が出にくくなって冷えなくなったかであるが、前者については大きく変化がないことが観測によって分かっている。

では冷えにくくなったのか。そのとおり、空気中のCO2濃度が増加しているから、地球は冷えにくくなったのである。CO2濃度が増加していることは、これも観測によって明らかになっているし、CO2が赤外線を吸収して再び熱に変えることも実験によって明らかになっている。

一方、先に例に挙げた原子力発電所などから排出される熱については、人間が発生させているその他の全ての熱を加えても、太陽光の1万分の1にしかならない。確かに人工的な熱でも気温は上昇するが、温室効果ガス量が一定であれば、すぐに冷えて地球の気温は一定になってしまう。

また、CO2の空気中濃度はわずか0.04%であるが、赤外線を遮って地球の冷却を防ぐという機能にはそれで充分な濃度なのである。

科学者たちは、地球温暖化について様々な原因を調べ、観測してきたが、結局この単純な理論に行きついてしまったということである。ただ、温度は加熱しなければ上昇しないと常識にとらわれていると、この理論は理解し難い。地球は加熱されて温暖化しているのではなく、冷えにくくなって温暖化しているのだと。

2025年8月24日

富士石油の石油石炭税の不正還付事件

6月25日、石油精製大手の「富士石油」が、国内で製造した石油製品のナフサに外国産を混ぜて国産として申請し、約4億5000万円の不適切な税金還付を受けたと報道された。これについて少し解説したい。

この事件、おそらく故意ではなく単純な事務処理ミスだろう。中小企業なら社長が「今年は儲けが少ない。おい、ちょっと誤魔化しとけ」といった具合で不正が行われることがあるかもしれないが、富士石油は大企業であるから社長がそんな現場の税務手続きまで関与することはない。

現場の管理職クラスが誤魔化そうとしても、金は会社に入るだけで自分には何のメリットもない。税務担当の事務をやっている人も同じで、金が自分の懐にはいるわけでもないし、むしろ今回のように税務署に指摘されれば会社から叱責を受ける可能性もある。わざとやったわけではなく、単純なミスだろう。

日本の法律では、製油所が輸入した原油を処理する時には石油石炭税が課される。製油所はその原油からナフサをはじめとして様々な石油製品を作っているわけであるが、このうちナフサを石油化学原料として出荷すれば、払った石油石炭税が還付される仕組みになっている。

そうしなければ日本で生産されるプラスチックなどの国際競争力がなくなってしまうからだ。一方、輸入したナフサにはもともと石油石炭税がかかってないから、これを石化用として出荷しても税金は還付されない。

ということで税務上は輸入ナフサと国産ナフサは厳密に分けて取り扱わなければならないことになるが、輸入ナフサも国産ナフサも品質は同じだから、現場では同じタンクに貯蔵され、混ざった状態で石化用として出荷される。石油会社の税務担当者は、出荷されたナフサを、帳簿の上で輸入ナフサと国産ナフサを分けて、税務署には国産ナフサ分だけを申請して還付を受けるという手続きをする。

今回の事件では、税務担当者が石化向けに出荷したナフサに輸入ナフサが混ざっていたにも係わらずすべてが国産ナフサだと勘違いして還付申請してしまったということだろう。

それにしても、 4億5000万円は大きいと思うかもしれないが、それは取扱量が大きいことが原因だ。石油石炭税は1キロリットルあたり2,800円。例えば1回のナフサ出荷量が10万キロリットルだとすると、それだけで2億8,000万円が還付されることになる。

一方で石油にかかる税金は非常に複雑だ。石油には石油石炭税のほかに、関税、石油ガス税、ガソリン税、軽油引取税、航空機燃料税といった様々な税金が課される。それぞれについて課税対象や課税額が異なり、さらに条件によって免除されたり、減額されたり、還付されたりする。だから石油会社の税務担当者は細心の注意を払う必要があるのだが、残念ながら今回のようなミスが発生することもあるということだ。

2025年6月28日

「自動車用バイオエタノールの未来」シンポジウムに出席しました

先週、アメリカ穀物協会が主催する「自動車用バイオエタノールの未来」シンポジウムに出席しました。今後、日本でも導入が予定されているE10およびE20ガソリンについて、様々な講演が行われました。
写真はアメリカ穀物協会のキャラクター、デン君とコニーちゃんです。着ぐるみは初公開とのことで、協会の意気込みが感じられます。

バイオエタノールはガソリンに比べて高いのか

先日(2025年4月22日)、日経モビリティに「割高のバイオ燃料車「誰が買うのか」」という記事が載った。スズキの鈴木俊宏社長が中期経営計画を発表する場で、バイオ燃料車は消費者や事業者の負担が高まる。「誰が買うのか」と発言したという。

バイオ燃料車が消費者の負担を増やすという話は、バイオ燃料車のことなのか、バイオ燃料自体のことなのかはよく分からないが、誰も買えないほどバイオ燃料は高価な買い物になるのだろうか。

まず、バイオ燃料を使用する車両であるが、日本でもすでにE10(バイオエタノールを10%添加したガソリン)を燃料として使用できるものが販売されている。給油口に貼ってあるステッカーを見て、初めて自分の愛車がE10に対応していることを知ったという人も多いだろう。このように、すでにE10対応車は一般に普及しているので、いまさらバイオ燃料を使用する車両が消費者の負担になるとは思えない。

では、燃料の方はどうなのか。米国穀物協会のホームページによるとバイオエタノールの価格は先週平均で1.79ドル/ガロンであった。(Gulf FOB)これを1ドル=140円、1ガロン=3.785リットルで換算すると、66.2円/リットルとなる。

海外ではE10はむしろ安価で売られている

バイオエタノールはガソリンに比べて発熱量が60%くらいしかないから、この単価を0.6で割り返すと、110.3円/リットル。これに揮発油税53.8円/リットルを加えると、164.1円/リットルとなる。

一方、現在の日本のガソリンの市販価格は180円/リットルであるから、バイオエタノールはかなり安い。実際には米国からの輸送コストやガソリンスタンドでの販売経費などが加算されるわけであるが、それを加味してもバイオエタノールがそれほど高価になるとは思えない。

ガソリン価格は原油価格で、バイオエタノールはトウモロコシ価格でそれぞれ変動するのでどちらが安い、高いとは一概には言えないが、ほぼトントンというところだろう。

バイオ燃料は高いというイメージを持っている人もいるようだが、石油系の燃料に比べて意外に高いということはない。少なくとも高くて「誰が買うか」という話ではないだろう。

2025年4月23日