レジ袋などのプラスチックは石油の余り物で作られている?

「プラスチックは石油の余り物でつくられている。」これもちょくちょく聞く話です。プラスチックはナフサという石油の余り物で作られている。だからレジ袋などプラスチック製品を節約しても意味がない。なぜならレジ袋を節約するとナフサが余り、余ったナフサは廃棄されてしまうから、かえって環境を汚すことになる。プラスチックは究極のリサイクル製品である云々。

これも真っ赤なウソです。どうもどっかの大学の先生がマスコミで言いふらして回ったようですが、まったく根拠のない話です。

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1.日本はナフサの大量輸入国

その証拠に、次のデータを見ていただきたい。

ナフサ国内生産量 16,935,105㎘ (「経済産業省生産動態統計」2018年度実績)
ナフサ輸入量      25,291,680㎘ (経済産業省「資源・エネルギー統計」2018年度実績)

日本はナフサを2,530万㎘輸入しており、これは国内で生産されるナフサ1,690万㎘の1.5倍にあたる。つまり、日本は国内で生産されるナフサではぜんぜん足りず、国内生産量を1.5倍も上回る大量のナフサを輸入しているのです。

これでもナフサは余り物といえるでしょうか。

いやいや、日本では余りものではないかもしれないが、日本にナフサを輸出する国があるのだから、世界的には余っているのじゃないのという反論があるかもしれません。

しかしそうではありません。世界的にみてもプラスチックはナフサだけから作られているわけではなく、天然ガスからも作られており、国内で生産されるナフサでは足りなくて、灯油や軽油まで使ってプラスチックを作っている国もあるのです。

海外でもナフサが余剰だから、その対策としてプラスチックを作っているわけではなく、プラスチックが欲しいから作ってる。むしろナフサだけでは足りなくて、天然ガスや灯油や軽油まで使って作られているというのが世界の実態なのです。(だから逆に問題なのですが)

ましてや、プラスチックを節約するとナフサが余り、余ったナフサは廃棄されてしまうなどという乱暴なことは、まったくあり得ない話なのです。

私も石油会社に長年勤めてきましたが、毎月、巨大なナフサ専用タンカーが製油所に来て、大量のナフサを外国から受け入れていました。

もちろんナフサが余って捨ててしまったなどといことは一度もありません。第一、大量のナフサを廃棄しろと言われても、廃棄すること自体が不可能です。(製油所で燃えている炎は余った石油を燃やしているんでしょうといわれることがありますが、これは誤解です。)

2.レジ袋を節約すれば原油の節約になる

レジ袋を有料化しようという話が、最近話題になっています。レジ袋が有料化されるとどうなるのでしょうか。当然、消費者はレジ袋をもらわないようになり、原料のナフサの消費量が減ってくるはずです。もし、レジ袋のようなプラスチック原料のナフサが石油の余りものなら、ナフサが余ってどうしようもなくなるということになります。

もし、ナフサが余れば輸入しなければいい

しかし、すでに述べたように、日本ではナフサが足りなくて外国から買っているのですから、ナフサが余れば輸入しなければ済むということです。なんとなれば、ナフサのオクタン価を上げてガソリンとして使う技術もすでに開発されていますし、ナフサをガス化してタービン燃料にして発電することも可能なのです。

エコバックはエコじゃない?

しかし、レジ袋を使わなくなったら、エコバッグが売れる。エコバッグはレジ袋より高級な材料が使われているので、かえってエコじゃないという人もいます。

エコバッグ1枚とレジ袋1枚を比べれば、確かにそうかもしれませんが、エコバッグを使い捨てにする人はいないでしょう。レジ袋は使い捨てにされるから問題なのです。

エコバッグを使って、レジ袋を何十枚も節約できるのなら、エコバッグの方がエコです。ちなみに私は同じエコバッグをもう20年以上使っていて、節約したレジ袋は何千枚に及ぶでしょう。

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石油は連産品なのでナフサだけ節約しても意味がない?

石油は連産品なので原油を精製するとナフサだけでなく、ガソリンや軽油や重油なども同時に出来てしまう。ナフサだけを節約しても、その他の油種も同時に節約しなければ何にもならないという人もいます。これも大間違い。

確かに石油は連産品ですが、製油所には分解装置や重合装置という二次装置と呼ばれる装置群がありますので、これらの装置を稼働させてガソリンや軽油、重油などの油種の量は需要に合わせて自由に調整することができますし、実際そうしています。
(「原油から作られる石油製品の割合は決まっている? 連産品という誤解」参照)

だってそうですよね。ガソリンや軽油や重油などが一定の割合でしか製品にならないというのなら、需要に合わせて製品を作ることはできませんし、そんな産業は成り立ちません。
ですから、石油は連産品だからみんな一斉に節約しなければ意味がないということはありません。

日本のナフサ輸入量が減って、もし世界的に原料のナフサが余るのなら、他の用途に使えばいいだけのことですし、もっと余るのなら原料となる原油の採掘量を減らすことになるでしょう(それが理想ですが)。

世界的にはプラスチックの需要は伸びている

実際には世界的にプラスチックの需要は伸びていますので、プラスチック用のナフサが余るということは当面は、ないでしょう。

さらに、我が国においては、燃料油の需要がこれから下がってくることが考えられますから、ナフサだけでなく、ガソリンや灯油、重油などからプラスチックを作っていかなければならないという可能性まであるのです。(Crude to Chemicalsといいます)

このあたりの話は「石油が枯渇するとプラスチックは作れないというウソ」に書いていますので、ご参照ください。

3.なぜこんなウソが生まれたか

冒頭述べたように、レジ袋のようなプラスチックは石油の余りもので作られているというのは、まったく根拠のないウソです。

なぜ、こんなばかばかしいウソがまかり通っているのでしょうか。想像ですが、ナフサはガソリンを作るときにあまりよい材料ではないということから来ているのかもしれません。

ガソリンは原油を蒸留して作られますが、このときナフサも同時に出てきます。ナフサの一部はガソリンに混合して使われますが、オクタン価が高くないのであまりガソリンに入れられないのです。それでナフサは余りものという話が出たのです。(ナフサのオクタン価は70くらい。レギュラーガソリンのオクタン価は90以上)

しかし、実はプラスチックの原料としてはむしろオクタン価が低い方が好ましいのです。確かにナフサはオクタン価が低いのでガソリンとしては不向きですが、プラスチック原料としては優れた原料なのです。その点が誤解されているのでしょう。

ちなみに、原油を蒸留するとナフサやガソリンのほかに灯油や軽油、重油などが出てきますが、どれが品質が良くてどれが品質が悪いということはありません。

ナフサはプラスチック原料として優れていますし、ガソリンはガソリンエンジン用として、灯油はススが出にくく室内で燃やしても清潔ですし、軽油はディーゼルエンジン用燃料として優れています。余りものと思われがちな重油も、ガソリンや灯油のように火災の心配が少なく安全に取り扱えるという利点がありますし、燃やしたときに大きなエネルギーが得られます。

このように、石油製品に余り物はなく、その特性に合わせて適材適所で使われているのです。

ちょっと余談ですが、これは会社の人事についても同じことが言えることではないでしょうか。会社で評価の低い人を追い出し部屋に押し込めたり、研修と称して「お前は腐ったミカンだ」反省しろなどと迫ったりするパワハラが問題になっています。

評価が低いのは、その人の特性にあった仕事を与えていない会社側の問題ではないでしょうか。ナフサがガソリンに不適ならプラスチックの原料にすれば利用価値があります。それと同じで、その人の特性にあった仕事の与え方をすれば、思わぬ能力を発揮することがあります。そうなれば会社にとっても、その人にとっても幸せなことだと思います。

ナフサが余りものでないように、人間にも余りものはないのです。みんな違ってみんないい。

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