潮の満ち引き、月の引力に引かれる方が満潮になる という説明図は間違いです

潮の満ち引きの説明は間違っている

潮の満ち引きはなぜがおこるのでしょうか。誰でも知っていますよね。海の水が月の引力によって引っ張られるからです。月に引かれた方が満潮。その反対側も月と地球の間の遠心力でバランスをとっているので満潮。月から90°の角度の場所が干潮。図に書くとこんな具合です。

ちなみに、「潮の満ち引き」「なぜ起こる」をキーワードにグーグル検索(2019年8月18日時点)してみると、ヒットした最初の10件のうち8件までが、この図を示していました。残りの2件も図にはしていませんが、同じ内容のことが文章で書かれていました。だれも、この図―1を疑わないようですね。

でも図―1は違うんです。実は図―2が正しいのです。

実際に検証してみた

では実際に調べてみましょう。図―1が正しければ、月の方向が満潮になるわけですから、月が一番上に来た時(南中といいます)に満潮になるはずです。ですから、南中になる時間と満潮になる時間を比べてみればいい。簡単なことです。

その結果が、下の表です。東京における南中時間と東京湾の満潮時間を比べました。なお、南中の12時間25分後に月が地球の真裏にくるので、これを裏南中時間とし、南中時間あるいは裏南中時間との誤差が小さい方を、時間の差として表示しています。
※南中時間は国立天文台の「各地のこよみ」から、満潮時間は気象庁の「潮位表」から取りました。

「あれっ。こんなに違うの!」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。南中時間と満潮時間は必ずしも一致しないのです。誤差の範囲でしょうか。いいえ、誤差とはとても思えません。だって大体6時間も違うんですよ。

干満は1日2回ずつ起こります。つまり約6時間ごとに満潮と干潮が繰り返されるわけですが、南中時間と満潮時間が大体6時間前後も違うわけですから、誤差どころか、干潮と満潮が全く逆になってしまうのです。

つまり、この検証結果を図に書くと、むしろ図―2になってしまうということです。

これは東京だけの現象かもしれないので北海道(小樽)と沖縄(那覇)についても調べてみました。やはり、南中の時が満潮ではなく、逆に干潮に近いのです。沖縄(那覇)の調査結果を示します。

沖縄のデータでも、やはり南中時間と満潮時間には6時間程度の差があることが分かります。

さすがに、国土交通省のHPでは、潮の満ち引きは地形によって変わるから必ずしも月のある方向が満潮になるわけではないと書いてあります。つまり、湾の奥や閉ざされた海域では、潮が流れ込んだり、引いたりしたときに潮の流れが生じるので時間的な遅れが生じるということでしょう。

でもそれでも6時間もの誤差が生じるものでしょうか。沖縄や小樽のように湾の内部だったり、内海になったりしていない地形でもやはり6時間前後の違いが生じているのです。いったい、どうしてこんなことが起こるのでしょうか。いろいろ調べてみましたが、その答えは見つかりませんでした。

ですが、少なくとも図―1はそのまま信じちゃだめですよ、間違ってますよってことです。

地球の自転も考える必要がある

以下は私の推論です。

まず、月の出、月の入りというように、我々はまるで、月が昇ったり沈んだりして,地球の周りをまわっているように表現していますが、月が地球の周りを1週するには27.3日間かかります。(地球も太陽の周りをまわっているので、月の満ち欠けは約29.5日周期になる)

一方、地球は24時間で1回自転していますので、地球の自転に比べれば月の公転は止まっているようなものです。ですから、月が動いているように見えますが、本当は月は止まっていて、地球が自転しているのです。(みんな知っていることですがね。)

しかし、図―1はまるで月が地球の周りをまわっているように書いてあり、それでだれもが疑いを持っていないのです。

では、自転しているのは地球の地面だけなのでしょうか。大気や海水は自転していないのでしょうか。そんなことはありません。大気や海水も地面に、くっ付いて自転しているのです。地球の円周はほぼ4万㎞ぴったりです。これが24時間で1周するわけですから、4万㎞÷24時間=1667km/h。つまり私たちの地球は時速1600㎞以上(音速の1.36倍)の超高速で回転しているわけです。

もし、地球の大気が地面と一緒に動かずに地面だけが自転しているとしたら、大気は地面に対して時速1600㎞で動いていることになります。つまり、時速1600㎞の暴風が常に吹き荒れていなければならないということです。

海水についても同じです。海水も地球の自転とともに動いているのです。そうでなければ、海の水は東から西へ川のように(いやジェット機の排気噴流のようにと言った方がよい)流れていなければならなくなります。

実際は、海水は地球の自転とともに動いているのです。月は事実上、停止していますから、月から地球を見た場合、地球の海水は東向きに動いています。一方で月の引力によって海水は持ち上げられます。ということで、海水には月の引力によって持ち上げられる力と、地球の自転によって引っ張られる慣性力が働くことになります。このため、海水は月の方向に引っ張られているだけでなく、東側にも引っ張られているはずなのです。

このため、満潮は月のある方向ではなく、東にずれる。そのずれがなんと6時間もあるということになります。

図―3 海水は月の引力だけでなく地球の自転の力も受けている

図―1による潮の干満の説明は、いずれも地球が自転せず、月が回っているように書かれています。これが間違い。実際には月は事実上停止していて、地球の方が自転しているわけですから、海水は単純に月の方向だけに引っ張られているわけではなく、地球の自転方向への力も働いているのです。

だから、満潮は月の方向を向いているわけではなく、それより東にずれることになります。

思考実験

例えば、円筒に潤滑油のような粘性の高い液体を塗ると、図―4左のように、地球の重力の影響を受けて液体は下側は厚く、上側は薄くなります。この状態で円筒を回転させたらどうなるでしょう。

液体は重力による下向きに力を受けるとともに、円筒の回転力の影響を受けるので、液体の厚い部分は真下ではなく、円筒の回転方向にずれることになりますね。

図―4 円筒に液体を塗って回転させる

地球の海水についてもこれと同様のことが起こっていると考えるべきだと思います。それが、満潮は月の方向ではなくて、ずれる(90°も!)原因と考えられます。

南中時間と満潮時間がずれる原因は、海水に対して月の引力だけでなく、地球の自転による慣性力が関与しているというアイデアは天文学が専門でない私が考えたものですから、正しいかどうかわかりません。あるいはもうだれかが、同じ考えを報告しているかもしれません。

できれば、どなたか月の引力と地球の自転の慣性力を計算して南中時間と満潮時間がどれだけずれるか、計算していただけませんでしょうか。

おまけ

「熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな」

これは額田王(ぬかたのおおきみ)が詠んだ和歌で、私の大好きなもののひとつです。
額田王が熟田津(にきたつ)という名前の港で、船に乗ろうとしていた。船は月を待っていたところ、潮流もちょうどいい具合になってきた。さあ、これから漕ぎ出そうという意味です。

きっと月は満月に近いのでしょう。月あかりに明るく照らされた水面を、船が滑るように沖に向かって船出していく。まるで絵のような情景とこれから船出をするというワクワクするような感情がわずか31文字に美しく表現されています。

ところで、この和歌では、「月待てば」と言っているのですからちょうど月の出の時刻だったのでしょう。ここで、もし図―1が正しければ、月が出るころは干潮ですから、これから潮が満ちてきて約6時間後に満潮を迎えることになります。つまり満ち潮です。

一方で当時の船は引き潮でなければ、外洋に出ることはできません。和歌では「潮もかなひぬ」「今は漕ぎいでな」というのですから、引き潮だったと言っていることになります。

額田王はウソをついたのでしょうか。いいえ、そうではないのです。図―2であれば、月の出のころはむしろ満潮であり、これから引き潮になるのです。そうすれば辻褄が合います。

多分、満月に近いのでしょう。満月ということは大潮ですから、大きく潮が引いていきます。ですから、船出には絶好の機会です。まさに「潮もかないぬ」なのです。満月に照らされた水面を、船が滑るように港を出ていく情景にぴったりということになります。

図―1を信じていると、事実を見誤ることになります。額田王はウソをついたわけではなく、実際に見た情景と感動を素直に詠んだのです。ウソをついて、こんなすばらしい歌が詠めるとは思えませんしね。

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