最もカロリーの高い食べ物は何か デュロンの式で計算してみた

最近太り気味、体重が気になる。ダイエットしなければ。でもカロリーの高いものにどうしても手が行ってしまう。そんな人も多いのではないでしょうか。だから、低カロリー食品がもてはやされる。でも、この記事では逆に最もカロリーの高い食べ物は何かということを考えてみたいと思います。高カロリーの物を知れば、それに手を出さなければいいわけですから。

ネット上でも、どんな食品がカロリーが高いのかという議論を見かけました。チョコレート、ナッツ類、羊羹とか、バター、マヨネーズなどなど。カロリーの高そうな食品が並びます。その中でもちょっと気になったのが、バターフライとか、エルビスサンドなんてもの。

バターフライというのは、バターの角切り(場合によっては1本まるごと)に小麦粉の衣を付けて油で揚げたもの。これに砂糖やハチミツをかけていただきます。いやーこれって美味しいんでしょうか?

エルビスサンドは、かのエルビス・プレスリーが大好きだったサンドイッチ。パンにピーナッツバターをたっぷり塗り、これに表面を焼いたバナナを乗せて、ハチミツをかけてサンドイッチにしたもの。その上にオプションで粉砂糖を振りかけたら出来上がり。そういえば中年になったプレスリーはよく太ってましたな。42歳で早死にしましたが、多分、肥満と関係があったのでしょう。

いずれも、カロリー高そうですが、もっとも高カロリー食品は何なのでしょうか。結論からいうと、カロリーが最も高い食品はラードや牛脂のような動物性の油脂。100gあたりのカロリーは940kcalあります。(以下、kcalというときは100g当たりということにします)

意外かもしれませんが、これが最高。バターフライやエルビスサンドよりもカロリーが高いのです。いやいやもっとカロリーの高い食べ物があるんじゃないの?1000kcalとか2000kcalとか。もうこれを食べたらいちころで肥満間違いないっての。と思われるかもしれませんが、いやいやラードや牛脂が一番なんです。

なぜ、これが1番といえるのか説明しましょう。
食品は5大栄養素から成り立っています。炭水化物、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラルの5種類。それに水と例外的ですがお酒とお酢。

世の中には何万種類の食品があるかしれませんが、すべて、これらの混合物です。このうち、ミネラルと水はカロリーゼロ。ビタミン類は食品に極くわずかしか含まれませんから、これは無視しましょう。そして、お酒の成分であるエチルアルコールは純粋のもので710kcal、お酢の成分である酢酸は350kcalほど。実際にはお酒やお酢は水で薄めた状態で提供されますから、焼酎やウイスキーで200kcal、食用酢は25kcalほどです。ラードなどに比べても低いですよね。

ということで、食品のカロリーは炭水化物、脂肪、タンパク質がどれだけの割合で含まれているかで計算することができます。具体的には炭水化物が400kcal、脂肪が900kcal、タンパク質は400kcalとして計算します。ということであれば、この中でもっともカロリーの高い脂肪100%の食品がカロリーが最高ということになり、そのほかの食品はどんなにがんばっても、これを超えることができないというわけです。

ただし、脂肪には植物性と動物性があります。植物性というのは大豆油やナタネ油、ごま油、オリーブ油などで、どれもほぼ同じで920kcal。動物性はラードや牛脂など。これはすでに述べたように940kcal。植物性よりわずかですがカロリーが高い。ということで五大栄養素の中で最もカロリーが高い脂肪の中でも、ラードや牛脂のような動物性脂肪が特にカロリーが高い食べ物ということになるわけです。

では、なぜ動物性の脂肪が植物性よりカロリーが高いのでしょうか。おそらく、動物性は飽和脂肪酸の割合が多く、植物性は不飽和脂肪酸が多いからではないでしょうか。と難しい話になってすみません。ここからちょっと化学のお話になります。

脂肪というのは化学的には以下のような化学構造を持っています。つまり、グリセリン部分と脂肪酸部分からなっている。

脂肪の化学構造

グリセリンの部分は動物性でも植物性でも同じ。違うのは脂肪酸の部分です。脂肪酸の炭素の数と二重結合の数が違います。二重結合がゼロのものを飽和脂肪酸、1個でもあるものを不飽和脂肪酸といいます。そしてよく言われるように、植物性は不飽和が多く、動物性は飽和の物が多いという違いがあります。

では飽和脂肪酸が多いと本当にカロリーが高いのでしょうか。
燃料の熱量(つまりカロリー)を推定する方法としてデュロン(Dulong)の式というのがあります。この式を使って植物性脂肪と動物性脂肪のカロリーの違いを計算してみましょう。

「ちょっと待ってくださいよ、デュロンの式てのは石油や石炭の発熱量を計算するための式です。これを食品のカロリーに使うなんて乱暴すぎやしませんか」という意見も聞こえてきそうです。でも実は食品のカロリーも実際にその食品を燃やして発生する熱量を測っているのです。だからデュロンの式を使ってもいいのではないでしょうか。

デュロンの式は次のとおりです。

H=8100×C+29000(H―O/8)+2220×S―600(W-9×O/8)

ここで C=炭素、H=水素、O=酸素、S=硫黄、W=水分 のそれぞれの重量比率

つまり、カロリーはその食品に含まれる炭素、水素、酸素、硫黄および水分の重量比率から計算することができるという式なのです。ただし、脂肪の場合には、硫黄や水分は含まれませんので、炭素、水素、酸素の重量比で計算することができます。

では牛脂と大豆油のカロリーを計算してみましょう。
まず、牛脂と大豆油に含まれる脂肪酸の比率は以下のとおりです。

牛脂と大豆油に含まれる脂肪酸の割合(重量%)

これを平均すると牛脂の場合、炭素数が17.27個で二重結合が0.54か所、大豆油の場合、炭素数が17.85個、二重結合が1.51か所となりました。牛脂と大豆油は炭素数ではほぼ同じですが二重結合の数が違うことがわかります。

つぎに、これにグリセリン部分の炭素と水素の数を加えて計算すると、牛脂の炭素、水素、酸素の重量はそれぞれ77%、12%、11%。大豆油の場合は78%、11%、11%になりました。この数値をデュロンの式に代入した結果は以下のとおり。

牛脂  930kcal
大豆油 920kcal

牛脂は実測値よりやや低く、大豆油は実測値と同じという違いがありますが、デュロンの式を使って計算しても、やはり牛脂が大豆油よりもややカロリーが高いという結果となりました。

デュロンの式を見るとわかることですが、カロリーは炭素と水素の割合が多いほど、また、酸素の割合が少ないほど大きくなります。植物油のように不飽和脂肪酸が多い物は二重結合があるため、その分水素が少なくなり、カロリーも減ってしまうというわけです。

では、もし完全に飽和脂肪酸だけからできた脂肪があったらカロリーはどうなるのでしょうか。例えば炭素数22の飽和脂肪酸であるベヘン酸(炭素数22、二重結合ゼロ)だけでできた脂肪Xがあったらカロリーはどうなるか、やはりデュロンの式で計算してみました。

脂肪Xの炭素数は69、水素数は134、酸素数は6。この場合、デュロンの式で計算するとカロリーは970kcalとなりました。もし、こんな脂肪があったら、これが最もカロリーの高い食品ということになるでしょう。まだだれも食べた人はいないでしょうけどね。

2023年3月28日

【関連記事】
甘さ控えめだから太らないは本当? 糖類、糖質、炭水化物の違いを整理してみた
健康食品やサプリメントは 効く? 効かない? どうやって選べばいいのか?
妊婦はシーフードを食べなさい|オメガ3、DHA、EPAって何?
無添加石鹸は本当に無添加? 石鹸の化学
味の素(化学調味料)は石油から作られているから危険?
コーヒーフレッシュは石油から作られている? いろいろ悪評があるが
マーガリンはプラスチックだから食べてはいけない?(顕微鏡で見たらそっくり?)
マーガリンはプラスチックだから食べてはいけない?(ゴキブリも食べない?)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。