ガソリンの品質はガソリンスタンドによって違う?

ガソリンの品質はガソリンスタンドによって違うの?どこでガソリンを入れたらいちばんいいの?値段の安いスタンドがあるけどガソリンの品質はどうなの?

自動車を運転する身になってみると関心がありますよね。Yahoo知恵袋の質問の中にはこんな感想がありました。

「レギュラー指定車で一番調子がいいのはエネオス、ハイオク指定車で一番調子がいいのはシェルの気がします。

「エネオスのガソリンってサラサラしているイメージで、出光のガソリンはドロドロしているイメージ」

「出光のガソリンはバイクやトラックに入れるとトルクが出ます。」

「エネオスのガソリンをバイクに入れるとスカスカ感を感じます。」

(いずれも、個人の感想です)

本当にスタンドによってガソリンの品質に違いがあるのでしょうか。

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結論から言いますと、

  • 厳密にいえばガソリンの品質は、それが作られた製油所や作られた時期によって違います。しかし、一般の人が車を運転していてもその違いはほとんど感じられない
  • 石油会社はレギュラーガソリンを互いに交換して販売する商習慣があるので、ポールサインが違っても中身は同じということも多い
  • ハイオク(プレミアム)の場合はメーカーによって多少の違いがあったが、現在はレギュラー同様に輸送時に混ざってしまう可能性がある

ガソリンの製造方法

ガソリンは、原油から作られますが、その作り方は製油所によってそれぞれ違います。

まず原油を蒸留してガソリン留分を取り出します。このガソリン留分中の硫黄分を取り除いただけのガソリンを直留ガソリンといい、直留ガソリンのオクタン価を上げたものを改質ガソリンといいます。

また、直留ガソリンや改質ガソリンだけでは不足するので、重油を分解して作られるガソリンもあり、これを分解ガソリンといいます。さらに、軽質な留分を重合させて作られる重合ガソリンや、LPGとアルコールを化合させたMTBEやETBEもあります。

製油所では、これらのガソリンを適切な割合でブレンドして、さらにLPGや着色剤、清浄剤などを混ぜて最終的にガソリンという製品を作って、出荷しています。

ガソリンは様々な種類のガソリンをブレンドして作られる

ガソリンをどのようにブレンドするかについては、決まりはありません。製油所がそれぞれ自前のレシピを持っていて、それに基づいて混合しています。

例えば、分解装置や重合装置を持たない製油所では分解ガソリンや重合ガソリンは作れませんので、これらを含まないガソリンを作ることになります。

また、季節によっても品質が変わります。冬場は寒くてもエンジンが始動しやすいように、夏場は暑さでベーパ―ロックを起こさないようにと、微妙な調整が行われます。

製造装置の一部が故障や点検のために止まっているときは、同じ製油所でも違ったブレンドの仕方をします。

ではやっぱり、メーカーによって品質は違うし、したがってガソリンスタンドによっても品質は違うよねということになりそうですが、そうではありません。

ガソリンの規格について

もし、メーカーによってガソリンの品質が違っていたら、自動車メーカーは大変ですよね。なぜなら、それぞれの石油メーカーの品質に合わせて自動車を設計しなければならなくなります。

それで、ガソリンにはどのメーカーにも適用される品質規格が定められていて、この規格に合うように、製油所ではブレンドのレシピを工夫しているのです。

つまり、製油所によってガソリンの作り方は違っていますが、最終的なブレンドの仕方によって、作られるガソリンは品質が同じになるということです。

厳密にいえば製油所によってガソリンの品質は全く同じではありませんが、自動車を運転しても、一般ドライバーがその違いが感じられない程度の同じ品質のガソリンをどの製油所でも作っているということです。

なお、ガソリン規格には品質確保法による強制規格とJISによる規格があります。品質確保法による規格については、これを満たさないとガソリンスタンドで販売することができません。JIS規格は必ずしも守らなければならないというものではありませんが、日本の場合、どの石油会社でもJIS規格を守って作っています。

ガソリンのバーター取引

もうひとつ、石油業界の特徴として、製品バーターという慣行があります。これは、石油会社が互いにガソリンを融通し合うことです。例えば、A社の製油所が北海道にある場合、B社が北海道の製油所からガソリンを引き取ってB社の看板(ポールサイン)を掲げたガソリンスタンドで売る。

一方、九州では、A社がB社の製油所から引き取って、A社の看板を掲げたガソリンスタンドで売るというような取引を行います。この取引をバーター取引と呼んでいます。

もし、バーターをしなければ、A社は九州でガソリンを売るために、わざわざ北海道から運ばなければならず、逆にB社は九州から北海道に運ばなければならなくなります。

バーターをすれば、お互いにガソリンを運搬する必要がなくなり、費用の削減になり、引いては消費者もそれだけ安い製品を買うことができるというわけです。

このようなバーター取引は石油業界では一般によく行われており、例えばA社の製油所にはA社だけでなく、B社、C社、D社・・・といろいろな石油会社がガソリンを引き取りに来ているということも珍しくありません。

その結果、ある地域では、各石油会社の看板を掲げていても、そのガソリンスタンドで販売するガソリンはすべてA社の製油所で作られたものだということもあるのです。

ということで、A社のガソリンスタンドで買ったガソリンでは、車がよく走ったが、B社のガソリンは走りが悪いという評判が立ったとしても、実はA社もB社も同じ製油所で作られた同じ品質のガソリンだったということもよくあることなのです。

車の走りは運転の仕方によって変わる

では、よくA社とB社を比較して、A社の方がガソリンの減りが早いとか、B社のガソリンは加速が効きにくいとかいう評判が出るのはなぜなのでしょうか。

それは思い込みの問題だと思います。例えば、自動車の燃費はまったく同じ条件で走らなければ比較ができません。冬と夏では違いますし、晴れと雨によっても違ってきます。

自動車の燃費を測定するときは、温度を一定にした部屋に車を入れ、発進、停止、速度、加速、減速などの条件を一定にして、測定しています。

一般道路を走ったときには、例えば渋滞につかまって発進、停止を繰り返したときと、信号にも捕まらずにすいすいと走るときがあります。その両方を比較すれば、当然燃費も走りの具合も変わってきます。これはガソリン品質のせいではありません。

ハイオクガソリン

ガソリンにはハイオクガソリン(プレミアムガソリン)とレギュラーガソリンがあります。レギュラーについては、今まで述べてきたように、ガソリンスタンドによる品質の差はほとんどありません。

ハイオクガソリンについては、以前は各石油メーカーが、特殊な添加剤(主に清浄剤)を添加したり、ブレンドする成分を調整したりすることによって、レギュラーとは違った高性能なガソリンとしていました。

しかし、石油元売り会社の統合によって、ハイオクガソリンの差別化の意義が薄れ、また製油所からのガソリンスタンドまでの配送過程で、他社のハイオクと混ざってしまうため、これもガソリンスタンドによって違いがあるとは言えない状況となっています。

レギュラーとハイオクを比較すれば性能的に明らかに違いがありますが、ハイオク同士で比較した場合、石油会社の違いによる走りの違いはほとんどないと思われます。
なぜ石油会社はハイオクガソリンのオクタン価を公表しなくなったのか 

簡易オクタン価計による調査について

なお、いくつかのガソリンスタンドのハイオクガソリンを抜き取って、簡易オクタン価計で調べたら、スタンドによってオクタン価の違いがあり、中にはハイオクの規準に適合しないようなガソリンも売られていたというブログ記事があります。

しかし、ここで使われた簡易オクタン価計はJISに規定されたオクタン価とはまったく関係のない測り方をしており、オクタン価を測定しているとは言えません。このような測定結果はまったく当てにはならないと考えてください。
詳細は→ガソリンスタンドによってハイオクガソリンのオクタン価が違うというネット記事への反論

ガイアックス・粗悪ガソリン

最近はずいぶん減りましたが、以前は粗悪ガソリンというものも売られていました。ガソリンスタンドが石油会社に無断で怪しげな業者からガソリンを仕入れてスタンドで売ると、中には品質の悪いガソリンも含まれていて、お客さん迷惑をかけてしまうというような例です。

かなり前ですが、ガイアックスという燃料が売りに出されたことがありました。これも粗悪ガソリンの一例です。もともと九州の業者が韓国から仕入れていたアルコール入り粗悪ガソリンで、九州一円で様々なトラブルを起こしていました。

それを関東でも売りだしたのがガイアックスです。ただ、それを粗悪ガソリンとは言わず、ガソリンに代わる低公害の新燃料だという触れ込みで販売したのです。それをどういうわけか、あるテレビ局が妙に肩入れして、まるで画期的な新燃料であるかのように報道したため、話がややこしくなってしまいました。

案の定、ガイアックスを入れた消費者の車が壊れたというトラブルが頻発し、火災まで発生したため、自動車メーカーが、ガイアックスを使わないよう注意喚起をする事態にもなりました。

また、低公害という触れ込みなのに、実際は排ガス中の窒素酸化物がガソリンの5倍も出ていたという測定結果も出てきました。

このガイアックスについては、揮発油等の品質の確保等に関する法律(品質確保法)が制定された結果、規格を満足しない燃料とされ、ガソリンスタンドでの販売が禁止されました。

また、品質確保法では、ガソリンスタンドに対して定期的な品質検査が義務付けられており、ガイアックスに限らず、粗悪ガソリンが売られている場合は、販売が禁止されます。

その結果、現在では粗悪ガソリンが売られることはほとんどなくなっています。

(2019年7月5日)

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