富士石油の石油石炭税の不正還付事件

6月25日、石油精製大手の「富士石油」が、国内で製造した石油製品のナフサに外国産を混ぜて国産として申請し、約4億5000万円の不適切な税金還付を受けたと報道された。これについて少し解説したい。

この事件、おそらく故意ではなく単純な事務処理ミスだろう。中小企業なら社長が「今年は儲けが少ない。おい、ちょっと誤魔化しとけ」といった具合で不正が行われることがあるかもしれないが、富士石油は大企業であるから社長がそんな現場の税務手続きまで関与することはない。

現場の管理職クラスが誤魔化そうとしても、金は会社に入るだけで自分には何のメリットもない。税務担当の事務をやっている人も同じで、金が自分の懐にはいるわけでもないし、むしろ今回のように税務署に指摘されれば会社から叱責を受ける可能性もある。わざとやったわけではなく、単純なミスだろう。

日本の法律では、製油所が輸入した原油を処理する時には石油石炭税が課される。製油所はその原油からナフサをはじめとして様々な石油製品を作っているわけであるが、このうちナフサを石油化学原料として出荷すれば、払った石油石炭税が還付される仕組みになっている。

そうしなければ日本で生産されるプラスチックなどの国際競争力がなくなってしまうからだ。一方、輸入したナフサにはもともと石油石炭税がかかってないから、これを石化用として出荷しても税金は還付されない。

ということで税務上は輸入ナフサと国産ナフサは厳密に分けて取り扱わなければならないことになるが、輸入ナフサも国産ナフサも品質は同じだから、現場では同じタンクに貯蔵され、混ざった状態で石化用として出荷される。石油会社の税務担当者は、出荷されたナフサを、帳簿の上で輸入ナフサと国産ナフサを分けて、税務署には国産ナフサ分だけを申請して還付を受けるという手続きをする。

今回の事件では、税務担当者が石化向けに出荷したナフサに輸入ナフサが混ざっていたにも係わらずすべてが国産ナフサだと勘違いして還付申請してしまったということだろう。

それにしても、 4億5000万円は大きいと思うかもしれないが、それは取扱量が大きいことが原因だ。石油石炭税は1キロリットルあたり2,800円。例えば1回のナフサ出荷量が10万キロリットルだとすると、それだけで2億8,000万円が還付されることになる。

一方で石油にかかる税金は非常に複雑だ。石油には石油石炭税のほかに、関税、石油ガス税、ガソリン税、軽油引取税、航空機燃料税といった様々な税金が課される。それぞれについて課税対象や課税額が異なり、さらに条件によって免除されたり、減額されたり、還付されたりする。だから石油会社の税務担当者は細心の注意を払う必要があるのだが、残念ながら今回のようなミスが発生することもあるということだ。

2025年6月28日