緊急着陸した米軍F16戦闘機が落とした外部タンクの危険性

30日午後6時頃、三沢基地の米国空軍F-16戦闘機が飛行中に異常を起こし、青森空港に緊急着陸した。この緊急着陸に先立って燃料タンクを空中で投棄したが、そのタンクが青森県深浦町の歩道付近に落ち、一歩間違えば人命にもかかわると問題になっている。
航空機は機体内に燃料タンクを持っているが、このタンクの容量を大きくすると重くなって機敏な行動ができない。逆に小さくすると飛行距離が伸びない。この矛盾を解決する方法が外部に取り付ける燃料タンク、いわゆる増槽という物だ。
長距離飛ぶときは、この増槽を取り付けて燃料の積載量を増やす。空中で会敵した場合は、この増槽を落として身軽になってから戦闘に臨むことになる。
今回は空中戦ではないが、エンジンに異常が起き、緊急に着陸することになった。このときもできるだけ身軽になっておく必要があるため、増槽を落としたのだろう。

F-16戦闘機 主翼下のロケット型のものが外部燃料タンク


この外部タンク、1基で2000リットルの燃料を積めるという。これはドラム缶10本分。このタンクを2基搭載している。このタンクに充填される燃料はJP-8と言われるジェット燃料である。成分はほとんど灯油で、これに少量の酸化防止剤や静電除去剤が加えられている。
ジェット燃料って灯油なの? JP-1からJP-10、ジェットAからジェットB まで 参照)
この燃料、以前使われていたJP-4よりも引火性が低く、マッチやライターでも簡単には火が着かない比較的安全な燃料だ。ただし、高温になったり、噴霧状態になったり、布などにしみ込ませたりすると着火するようになる。燃えだせば大きな火力をもつ。肌に付着すればかぶれるし、飲み込めば当然、毒性がある。
もう一つの危険性は、その重さである。満タンにすればジェット燃料だけで1.6トンほど。これにタンク自体の重さを加えれば2トン程度になるだろう。これが高空から落ちてくる。人や車に当たれば人命にかかわるし、人家に落ちれば屋根を突き破り、燃料をまき散らし、火気があれば火災にもなる。
いつも思うことなのだが、例え空中戦に臨む、あるいは緊急事態だからと言って外部タンクを落下させれば、そのタンクが地上の住民に被害を及ぼすことは十分予想できる。命がけの戦闘、緊急事態とはいえ、地上のことも考えずに空中から2トンもの重さのあるものを落下させて当たり前、それが増槽というものだという考え方はあまりにも無責任ではないか。それは、タンクを設計したエンジニア、そしてそれを運用する軍の責任である。
外部タンクの中の燃料を空中に放出できるような仕組みを作っておけば、緊急事態には、飛行中にタンクを空にすることができる。そうすればタンクを装着したまま着陸しても問題ないのではないだろうか。
人の頭の上を飛ぶ者の責任として、そのくらいの配慮はすべきだろう。

【関連記事】
ジェット燃料って灯油なの? JP-1からJP-10、ジェットAからジェットB まで

メタネーションは本当にカーボンニュートラルなのか CCUのパラドックス

2020年10月に菅総理が行ったカーボンニュートラル宣言以降、様々な技術開発が進められている。これは大変よいことだと思う。 
例えば自動車ガソリンの代わりに電気や水素が使われる。再生可能エネルギーを使って作ればという前提ではあるが、電気も水素もカーボンニュートラルと言っていいだろう。
では都市ガスはどうするのか。現在都市ガスは天然ガスを使っているからカーボンニュートラルではない。それで近年注目を浴びているのが、メタネーションという技術である。資源エネルギー庁のホームページでもガスのカーボンニュートラルを実現する「メタネーション技術」として紹介されている。しかし、このメタネーション、本当にカーボンニュートラルなのだろうか。

メタネーションとは、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を反応させて天然ガスの成分であるメタン(CH4)を合成して都市ガスとして利用する技術である。この合成メタンを燃やせばCO2が排出されるが、このCO2はもともとメタネーションの原料として使われているから、差し引きゼロとなって大気中のCO2を増やさないという理屈である。これはわかる。(このようにCO2を回収して、燃料やその他の用途に使うことをCCUという)

発電所などから回収したCO2を利用してメタネーションをおこなう工程を図であらわしています。
メタネーションによるCO2排出量削減(資源エネルギーHP「ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術より)


しかし、資源エネルギー庁の記事によると、このCO2は火力発電所や工場から排出されるものを使うという。排出されるCO2を再び使うのだからカーボンニュートラルだという。ん?本当にそうか?
火力発電で化石燃料を燃やして排出されるCO2はカーボンニュートラルではない。しかし、このCO2を回収して合成メタンを作るとカーボンニュートラルだという。これは納得がいかない。

汚れたお金をいろいろ金融機関を回していくと汚れたお金ではないように見えるという技法をマネーロンダリングというが、それに似ている。火力発電で出てきたCO2はカーボンニュートラルではないが、これを回収して再び燃料にして使えばカーボンニュートラルだという。これではマネーロンダリングならぬカーボンロンダリングではないか。

火力発電で出てくるCO2ではなく、大気中のCO2を回収して行うメタネーションなら確かにカーボンニュートラルである。この技術をDACというが、実は大変難しい。だから手っ取り早く火力発電から出てくるCO2を使うということになる。
火力発電のCO2はどうせ大気に放出されるから、大気に放出される前に回収すると考えればDACと同じだという考え方もあるだろう。う~ん、頭の中が混乱してきた。

しかし、要は大気中のCO2を増やさないというのがカーボンニュートラルのはず。火力発電で化石燃料を燃やしてCO2が出てくる以上、これをメタネーションで使おうがどうしようが大気中のCO2は増える。だから全体でみればカーボンニュートラルではない。その責任は火力発電にあり、メタネーションに責任はないというのだろうか。どっちも同罪だと思うが。

【関連記事】
政府が進めるカーボンリサイクルのウソ…CCUでCO2は削減できない
CO2と水から石油を作ることは可能?…カーボンリサイクルは温暖化防止策の切り札ではない

三井化学がCO2排出量を削減できるバイオマスプラスチックを開発:アドマーEFシリーズ

近年、バイオマスプラスチックが話題に上ることが多くなってきている。最近日経XTechでも大手総合化学メーカー三井化学が開発したバイオマスプラスチック、接着性樹脂アドマーEFシリーズが紹介されている

三井化学のプレスリリースによると
「当社が世界に先駆けて開発し、多層ボトルやチューブ、フィルム・シートなどに使用される接着性ポリオレフィン樹脂アドマーにおいて、社会や顧客からのニーズが高く循環経済の実現に貢献する環境対応ラインナップ「アドマーEFシリーズ」を追加し、バイオマス化度50%以上を実現したバイオマスアドマーを開発しました。」
とのことだが、ちょっと分かりにくい。

プラスチックにはポリオレフィン(ポリエチレンやポリプロピレン)のような非極性材料と、ポリアミドやEVOHのような極性材料がある。三井化学のアドマーはこの二種の材料を接着させる接着剤の役割をする樹脂である。従来製品は他のプラスチックと同様に石油から作られているが、今回発表されたEFシリーズは、その原料の50%以上をさとうきびのようなバイオマスに求めた。つまり、バイオマスプラスチックの一種だという。

バイオマスアドマーで成型した多層ボトル(三井化学プレスリリースより)

このプラスチック、石油を使わずにどうやって作るのか。推定ではあるが、まずサトウキビを絞って糖を抽出し、この糖を発酵させてエタノールにする。このエタノールを分解してエチレンとしたあと、重合させてポリエチレンとし、このポリエチレンに官能基と呼ばれる極性部分を付加して作る。この場合、エチレン部分は植物が原料だが、官能基部分は石油が原料となる。
バイオマスプラスチックには生分解性のある物とないものがある。生分解性プラスチックは廃棄されると自然に分解されるが、アドマーEFシリーズは生分解性ではない。しかし、燃焼させても大気中の温室効果ガスであるCO2の増加を従来品より抑えるという特徴がある。

現在のプラスチックのほとんどは石油から作られている。使い終わったあとはゴミとして回収されるが、回収プラスチックの7割くらいは、実は燃やされている。もちろんこのときCO2が排出されることになる。
アドマーEFシリーズは、原料の一部が植物であるから、その原料植物が成長するときに大気中のCO2を吸収している。だから燃やして出てくるCO2のうち、植物が原料となった部分についてはもともと空気から取り入れたもの。だから、大気中のCO2は増えないという理屈になる。

といっても、今回のアドマーEFシリーズは、そもそも接着剤であるから使用量が少なく、さらにバイオ率は50%程度であるから、それほどCO2削減効果は大きくないだろう。しかし、今後、このようなバイオマスプラスチックが様々な用途で使われる可能性がある。本品はそんな時代の先駆けとなるかもしれない。

2021年11月27日

ガソリン価格の上昇 例の特例税制はどうなっているのか

最近、ガソリン価格が上がってきて問題になっている。
政府はこの対策として、全国の小売価格がリットルあたり170円以上となったら、石油元売会社に補助金を出して小売価格の低下を促すという。ちょっと待ってよ。それで本当にガソリン価格が下がるのか。

というのは、石油元売会社が小売価格をコントロールしているわけではないからだ。石油元売はガソリンスタンドにガソリンを卸す。その時の卸価格を仕切値という。この仕切値は多分、元売各社が原油価格や為替などを考慮した一定の計算式によって決めているのだろう。政府が例えば1円の補助金を出してくれれば、石油元売は1円下げた仕切値でガソリンを卸すことになる。だから卸し段階では、政府の目論見通りに値段は下がるだろう。

しかし、ガソリンスタンドはこの仕切値に様々な経費や利益を上乗せして小売価格を決めている。小売価格はガソリンスタンドの経営者が決めることだから、仕切値が下がったからと言って小売価格を下げるとは限らない。例えスタンドがエネオスや出光、コスモなどの看板を掲げていたとしても、小売価格まで元売りが口出しすることは許されない。独占禁止法違反となるからだ。だから、仕切値が下がった分だけ、小売価格を下げずにスタンドが自分の儲けにしてしまう可能性もある。

じゃあ、政府の補助金は全く効果がないのかというと、一定の効果はあるだろう。
例えばあるスタンドが171円で売れば、地域の顧客から政府の補助金を受け取りながら値下げしないと非難されることになる。だから、結局170円が上限ということになるだろう。ただし、ガソリンは地域的に高いところも安いところもある。もともと小売価格が安い地域では、本当は169円でもいいところを、170円まで上げても顧客は気が付かない。また、逆に原油価格が下がり出したとき、170円から下げないというガソリンスタンドも出てくるかもしれない。

一番いいのは、1ℓあたり53.8円もかかっている揮発油税を下げることだと思うが如何だろうか。揮発油税が下がれば、その分小売価格も当然下がる。
実は従来、160円を3か月以上にわたって超えた場合、揮発油税は28.7円まで下げることになっていた。記憶されている方もいらっしゃるだろう。ところがこの特例税制は東日本大震災のどさくさに紛れて、別に法律で定める日までフリーズ状態となっているのだ。そして「別に法律で定める日」はまだ決められていない。そうするうちに170円近くまで上がってしまったということだ。これは国会の怠慢ではないのか。

自動車のEV化 余ったガソリンはどうするのか

COP26が閉幕。気温上昇を1.5℃以内に抑えるという目標が設定され、これから気候変動対策がさらに進められることになるだろう。
我が国の第6次エネルギー基本計画でも、2035年までに乗用車は全てEVに替わる計画だ。当然、ガソリン車の新規販売は禁止になるだろう。では、需要がなくなったガソリンはどうなるのか。QuoraやYahoo知恵袋ではときどきそんな質問がでる。

「原油を精製すると灯油や軽油のほかにガソリンが必ず一定量できてしまい、調整が効かない。だからそのガソリンの需要がなくなったら、どうするのか」という質問である。

この質問にはふたつの誤解がある。
まず、石油を精製して灯軽油を作ろうとすると必ずガソリンが一定量できてしまい、ガソリンだけを減らすことができないという誤解である。実際は石油を精製するとできてくる重油の需要がガソリンや灯軽油に比べてはるかに小さいので、その余剰の重油からガソリンや灯軽油を作っている。つまり、石油製品の割合は一定ではなくて、需要に合わせて調整されているのだ。特に市販のガソリンには、その半分くらいは重油から作られたものがブレンドされている。だから、ガソリン車が少なくなってガソリン需要が減少すれば、重油から作るガソリンの量を減らして、その分、灯軽油の量を増やせばいいことになる。

もうひとつの誤解は、気候変動対策で需要が減るのはガソリンだけだというものである。
2050年に温室効果ガス排出量ゼロを目指すのなら、ガソリンだけを減らしても仕方がない。灯油も軽油も重油も減らさなければならないことになる。部屋の暖房は灯油ではなくてエアコンで、トラックやバス、船舶の燃料は水素やバイオ燃料、合成燃料に替わるだろう。

その結果、今後、原油から作られるのはプラスチックなどの石油化学製品や潤滑油、アスファルトのような燃料として燃やすもの以外のものとなっていく。ちなみに石油化学の原料には現在はナフサやガソリンが使われているが、軽油や重油も分解してナフサやガソリンすれば、石油化学の原料にしていくことができる。

これから石油精製はこのような流れになるので、ガソリン車が販売禁止になってもガソリンの需要だけが下がるわけではなく、日本で使われる石油が全体的に減って行くことになる。それに合わせて製油所も分解装置の増強などが必要だけれど、少しずつ変わっていくだろう。

2021年11月18日

韓国で尿素水不足が問題化 尿素を韓国内で作ればCO2削減になるのか

尿素はアンモニアから アンモニアは石炭から作られる

中国から輸入していた尿素水が輸入できなくなったことから、韓国では尿素水の不足が問題になっている。尿素はアンモニアから作られており、中国はこのアンモニアを石炭から作る。世界最大のアンモニア生産国でもある。中国はその石炭をオーストラリアから輸入していたが、これが途絶えたことから、まわりまわって韓国の尿素水が不足となっているわけである。
尿素水はトラックなどディーゼル車の排ガスを浄化するために使われるから、尿素水がなければ韓国のトラックは動かせない。トラックが止まれば物流も止まり、市民生活にも大きな影響を与えることになる。

尿素水の原料のアンモニアはCO2を出さない燃料として日本では盛んに喧伝されているが、この事件からも分かるようにアンモニアは石炭から作られるから、製造過程で大量のCO2を排出する。アンモニアを燃料として使ってもCO2の削減にはならない。むしろかえってCO2排出量は増えてしまうことになる。
今回の韓国の尿素不足は如何にアンモニアが石炭に依存しているかを図らずも示したことになった。

尿素製造はCO2削減になるか

この件に関して、韓国では尿素を国内で作るべきだと議論されている。尿素はアンモニアにCO2を化合させて作られる。

  2NH3    +   CO2    → (NH2)2CO + H2O
アンモニア 二酸化炭素     尿素   水

ここで使うCO2に工場などから回収したものを使えば、CO2の削減になると報道されている。しかし、これは全くのお笑い草である。なぜなら尿素をディーゼル車で使うと、製造した時に使ったのと全く同じ量のCO2が排出されてしまうからである。

ディーゼル排ガスに含まれる有害な窒素酸化物をアンモニアによって還元して、窒素と水という無害なものに変えるのが排ガス浄化装置である。アンモニアは取り扱いが難しいのでCO2と化合させて尿素にしてから水に溶かして尿素水として使う。排ガス浄化装置では尿素が分解して元のアンモニアに戻って還元剤として働くわけだ。
そして尿素がアンモニアに戻るときにCO2を排出する。この量は当然ながらアンモニアから尿素を作るときに使ったCO2と同じになるから、CO2の削減にはならない。

排ガス浄化装置の仕組み

こんなことも分からないのかと韓国を馬鹿にしてはならない。日本だってアンモニアをCO2の出ない燃料だと報道しているが、そのアンモニアを安直に中国などから輸入して使うなら、日本で削減した以上のCO2が輸出国で発生することになる。

2021年11月10日

COP26 岸田演説なぜ化石賞か アンモニア、水素で世界は騙されない

COP26で岸田総理が演説。これに対して11月2日、気候行動ネットワーク(CAN)が名誉ある化石賞を与えると発表した。岸田総理の演説。いったい何が問題だったのだろうか。
総理の演説は1300字程度の非常に短いものであるが、その中で問題なのは次の部分だろう。
(全文はhttps://www.kantei.go.jp/jp/100_kishida/statement/2021/1102cop26.html

「アジアにおける再エネ導入は、太陽光が主体となることが多く、周波数の安定管理のため、既存の火力発電をゼロエミッション化し、活用することも必要です。日本は、・・・アンモニア、水素などのゼロエミ火力に転換するため、1億ドル規模の先導的な事業を展開します。」

まず気が付いたのは「再エネ導入に伴って発生する周波数変動を抑えるための支援」という点である。えらく狭いところを突いて来たなという感じである。次に、その周波数変動を抑えるために既存の火力発電所で、アンモニア・水素を使うという。周波数変動を抑えるのなら蓄電池でもいいじゃないかと思うが、なぜアンモニア・水素なのか。
それは、日本はアンモニア・水素という世界でも画期的な対策を取るんだということを強調したいのだろう。そのためにわざわざアジアの周波数という隅っこの話題を突っついてきた。つまりアンモニア・水素という我田に引水するためにアジアをダシに使ったということだ。

それはいい。アジアも1億ドルは欲しいだろう。しかし、もっと問題なのは、アンモニア・水素ではまったく温室効果ガス削減にならないということである。
今のところ水素もアンモニアも化石燃料から作られているから、そのまま使えば製造過程で大量のCO2が発生する。それなら、原料の化石燃料をそのまま発電に使った方がまだCO2の発生量は少ないのだ。

もちろん、まず、CO2を発生させないアンモニアや水素の製造技術を確立し、その上で既存の火力発電所を改造してアンモニアや水素だけで発電するというのならいい。アジアの周波数変動などを持ち出す必要もない。
しかし、実際には現在CO2を発生させない水素はほとんどないし、アンモニアは製造の目途も立っていない。CANは岸田総理が「アンモニアや水素を『ゼロエミッション火力』だと妄信している」と批判している。つまり、アンモニアや水素と言っても、どうせ石炭から作るんだろうと言っているわけだ。

一方、日本は600億ドル規模の支援に加え、新たに最大100億ドルの追加支援を行う用意があることも表明している。これはアンモニア・水素支援の1億ドルより、はるかに大きい。むしろこっちの方を強調すべきだっただろう。

日本ではアンモニアや水素を使いさえすれば脱炭素になるというような安易な議論が目立つ。COPでもアンモニア・水素をぶち上げれば、それで世界が感心するとでも思ったのだろうか。日本国内ならともかく、世界はそんなことでは騙されない。

2021年11月4日

京王線の刺傷放火事件 ライターオイルはガソリンと同じ

10月31日。京王線の電車内で男がナイフを振り回して乗客にけがを負わせたうえ、電車内にライター用のオイルを撒いて火を着けるという事件が起こりました。これにより16人が負傷。ひとりが意識不明の重体となっています。

ここで思い出されるのが、2019 年7月に起こった京都アニメーション放火事件です。このときは容疑者が事務所の建物内にガソリンを撒いて火を着けたため、35人が死亡するという大惨事となりました。(京アニ放火事件被害拡大のなぞ
今回は火災によって死亡する人が出なかったことは幸いでした。別のブログ記事でも指摘しているようにガソリンは取り扱いを誤ると非常に危険です。(ガソリンにマッチの火を近づけても火はつかない?ウソ)一歩誤ると、京アニ事件以上の惨事になったかもしれません。

犯人が撒いたライター用のオイルですが、例えばZippoの純正オイルとすれば、従来は重質ナフサでしたが、2006年から合成イソパラフィン系炭化水素に切り替わったといいます。他のメーカーのものでも成分に違いはないでしょう。
重質ナフサとはガソリンのことです。合成イソパラフィンというのは石油を原料として合成された炭化水素で、ガソリンの成分の一つでもありますが、ガソリンほどにおいがきつくありません。ただ、引火性であることや燃えた時の熱量はガソリンとほとんど同じです。

今回の事件では、撒いたオイルの量が比較的少なかったこと。気温が低かったこと。オイルを撒いてから犯人が火を着けるまでの時間が短かったことが幸いしたと思われます。
ガソリンの量については、今回はペットボトル1本分と、京アニ事件のようにバケツ2杯分よりもかなり少なかったことが幸いしました。
また、京アニ事件が起こった7月に比べれば、気温が低く、このためオイルの蒸発量が少なかったでしょう。ガソリンは一旦蒸発して空気と混ざりあい、爆発混合気という状態になってから燃焼します。多分、今回は気温が低く、シートなどに一部がしみ込んだりしたこともあり、蒸発量が少なかったでしょう。
また、犯人はオイルを撒いてすぐに火を着けたと思われます。オイルが十分蒸発して、車両内に充満した状態で火を着けたら犯人自体も大火傷を負ったかもしれません。

走行中の電車の中で大火災になっていたら、と思うと背筋が寒くなりますが、京アニ事件を受けてガソリンを容器で買うことが規制されるようになっています。とにかく、ガソリンのような引火性の高い危険物は、大量に入手できないようにすることが大切だと思います。

2021年11月1日

衆議院選挙各政党のエネルギー政策をまとめてみた  自民党公約の不思議

衆議院選挙の投票日が近付いてきた。ということで、主な政党(自民、立憲、公明、維新、共産)の選挙公約からエネルギー関連についてまとめてみた。
なお、自民党には政策パンフレットと政策バンクという二つの政策が掲げられている。政策パンフレットは政策バンクの概要版という位置づけなのだろうが、かなり違いがあるので両方を取り上げている。

カーボンニュートラル

まず政府が公約している2050年のカーボンニュートラル目標について、これに反対している政党はない。違いは2030年の中間目標を46%削減とするか、それ以上とするかの違い。

原発新増設

ほぼ各党が認めないとしており、自民党の詳細版も可能な限り原子力依存度を下げると書いている。それにも拘わらず、概要版では小型モジュール炉の地下立地という聞きなれない話が盛り込まれている。

原発再稼働

ほとんどの政党で原発の再稼働については、安全を確認した上で認めるとしているが、共産党は全く認めないとしている。立憲民主党には原発再稼働についての記述がないが、多分、党内でも意見が分かれているのだろう。ただし、小さな字で再稼働しなくても電力が不足することはありませんと記載されている。

再生可能エネルギー

どの政党も概ね、積極的に導入、将来の主要電源とするとしている。ただし、自民党の概要版には不思議なことに再エネについては、まったく触れられていない。

まとめ

全体的に、2050年のカーボンニュートラル目標は支持。原子力については新増設は認めないが、再稼働については安全が確認されれば認める。再エネについては、将来の主力電源とするということでほぼ一致している。

自民党の公約の不思議

ただ、ここで気になるのが自民党の概要版(政策パンフレット)と詳細版(政策バンク)の内容が違っているということ。詳細版は再エネを最大限導入し、主力電源化する。可能な限り原発依存度を低減する。としている。
これに対して、概要版についてはそもそも再生可能エネルギーという言葉すら出てこないうえ、詳細版にはない小型モジュール炉が取り上げられ、さらには「核融合開発を国を挙げて推進する」などおバカなことが書かれていている。(核融合発電は「クリーンで無尽蔵で安全」ではない  参照)
詳細版は昨日閣議決定されたエネルギー基本計画を踏襲しているのに対し、概要版は、自民党内の誰かが自分の思い入れでこれを修正したのだろう。しかし、これでは自民党はエネルギー政策をどうやっていくのか分からない。筆者は別に反自民というわけではないが、これはいただけない。

2021年10月23日

アンモニア発電の問題点 まだ解決すべき問題も山積

アンモニアを燃料として発電所で燃やそうという話題を聞くようになってきた。例えば、記事「二酸化炭素の排出量減らす 新たな発電技術を公開 JERA 碧南火力発電所」は石炭の一部をアンモニアに置き換えることによってCO2発生量を2割減らすとしている。
アンモニア(NH3)は炭素Cを含まないので、燃やしてもCO2は出てこない。だから、アンモニアを輸入してCO2の出ない燃料として石炭火力発電所などで使おうという話になっている。

しかしながら、アンモニアは燃やすときにはCO2が出ないが、作るときに大量のCO2が発生していることを忘れてはいけない。アンモニアの窒素分Nは空気から取り出せるが、水素分Hはアンモニア製造工場では天然ガスや石炭から作っている。このとき大量のCO2が発生する。
さらに、窒素と水素を化合させてアンモニアを作るときに大量の熱を消費するが、この熱を得るために天然ガスや石炭が燃やされるので、この時にもCO2が発生する。
アンモニアを燃料として使用した場合、製造工程でのCO2排出量を考慮すると、天然ガスをそのまま燃やした場合に比べて2.3倍のCO2が排出されることになる

また、アンモニアは窒素分を含むので、燃やせば当然ながら窒素酸化物が出てくる。窒素酸化物はCO2よりも強力な温室効果ガスであったり、猛毒であったりする。火力発電所で直接アンモニアを燃やすなら、この窒素酸化物を如何に出さないようにするか常に課題となる。アンモニアを石炭に混合して使ったときうまくいっても、100%で使って大丈夫だとは言えないだろう。

さらにもうひとつ、アンモニアに含まれる窒素分は空気から採られる。ということは海外のアンモニアを日本に運ぶというのは、その大半は空気を運んでいるということになる(アンモニアの重量の82%が窒素分)。だからアンモニアの発熱量は非常に低い。これで採算が取れるのだろうか。

CO2を発生させないアンモニア製造方法に切り替えればいいのだが、アンモニア発電だけが先行している。このままいけば、確かに日本のCO2排出量は削減されるかもしれないが、その削減量以上にアンモニア輸出国のCO2排出量を増やすことになる。

このようにアンモニア発電は、世間ではまるで脱炭素の救世主のような扱いであるが、まだ解決すべきいろいろな問題があるのだが

2021年10月19日