なぜレジ袋の原料を輸入しているのか

今年7月からスーパーやコンビニでは、無料で配られていたレジ袋が有料になった。この有料化は賛否両論があり、当初は混乱もあったが、現在は大分落ち着いてきているのではないだろうか。

ところでレジ袋の原料はなにかご存知だろうか。日本では、もちろん石油(海外では天然ガスも使われる)が原料だが、もっと細かく言えば、その石油から石油精製によって取り出されるナフサと呼ばれる石油製品が原料である。

ナフサはナフサクラッカーと呼ばれる装置で分解されてエチレンになり、そのエチレンが重合されてポリエチレンになる。このポリエチレンを袋状にしたものがレジ袋というわけである。

このレジ袋の原料となるナフサは石油精製時に出来てくる余り物で、レジ袋にでも使わなければ廃棄されてしまうなどと言われることがあるが、これは間違いである。日本ではレジ袋などプラスチックの需要が旺盛であるため、国内で生産されるナフサでは全然足りない。足りない分は輸入しているのが実情なのである。

2018年の実績では、国内で生産されるナフサの量が約1,690万㎘ (「経済産業省生産動態統計」)であったのに対し、ナフサの輸入量は2,530㎘(経済産業省「資源・エネルギー統計」)。実に国内で生産される量の約1.5倍のナフサが海外から輸入されているのである。もちろん余剰になったナフサを廃棄するなどはあり得ない話である。

ではどこから輸入しているのか

2019年度の実績では、日本はナフサを世界26か国から輸入しているが、最も大量に輸入している国は「ドーハの悲劇」で有名なカタール。日本が輸入するナフサの約19%がここから。2位はアラブ首長国連邦。UAEと略称される国で、ここから輸入されるナフサも約19%。いずれも自国で大量の原油を産出する中東の産油国である。

そして第3位にはなんと韓国が入っている。日本が韓国から輸入するナフサは全体の13%。この3か国で日本が輸入するナフサの約半分を占める。以下、日本がナフサを輸入している国はインド、アメリカ、クウェート、ロシア、サウジアラビアとつづく。

日本がナフサを輸入している国

これらの上位の国々はいずれも自国で石油を産出する国という点で共通している。(アメリカは意外かもしれないが、現在世界最大の石油産出国である)

しかしながら、ただ一つの例外は3位に入った韓国である。韓国は日本と同様に国内ではほとんど石油を産出しない。にも拘わらず、日本は韓国から大量のナフサを輸入しているのである。

なぜ韓国は日本にナフサを輸出しているのか

まず、韓国の石油精製能力であるが、2016 年現在、日量 319.5 万バレルで、これは世界でも5、6番目にランクされる規模である。日本が日量351.9万バレルであるから、ほぼ日本の石油精製能力に匹敵する。

一方、韓国の人口は5,100万人、GDPは1兆7,200億ドルであるから、人口では日本(1億2,700万人)の約半分、GDPでは日本(4兆9,720億ドル)の4割に届かない。この経済規模で、この韓国の石油精製能力はいかにも大きすぎる。

このような過剰な石油精製能力は、韓国特有の財閥が関係していると言われる。韓国ではいくつかの財閥が、それぞれ化学工業、半導体、コンピューター、造船、建設、食品、小売業からホテル業、ゴルフ場に至るまでそれぞれフルセットで揃えるという経済構造がある。

石油精製についても現代、SK、GS(LGから独立)、双竜の各財閥が、それぞれ1か所ずつ(SKだけ2か所所有)製油所を建設しているが、その多くは精製能力が日本の標準的な製油所より数倍大きい巨大製油所である。これは各財閥が互いに競い合って規模を大きくした結果であろう。(石油精製などの装置産業は計算上、規模が大きいほど採算が向上する)

当然ながら、この大製油所で生産された石油製品は国内で消費しきれない。かといって製油所の稼働率を下げれば、採算が悪化する。(製油所建設投資を回収するために、稼働率は常に上限を目指す必要がある)

その結果、生産された石油製品のうち、国内で消費されないものは必然的に海外へ輸出するということになる。実は韓国は、生産された石油製品の約半分から3分の1を輸出していると言われている。その輸出先はガソリンや軽油は主に東南アジアへ、そしてナフサは日本へと言うわけである。

つまり、韓国は財閥間の競争によって、その経済規模に不釣り合いな巨大な石油精製施設を建設した。その結果、大量に原油を輸入して、石油製品を大量に製造する羽目になり、国内では使いきれないので、大量に輸出するという構造になっているわけで、ご苦労さんと言いたいところである。

が、その結果、現在ではナフサを含め石油製品は韓国にとって重要な輸出品目となり、外貨の稼ぎ頭のひとつとなっている。

ちなみに、カタールやUAEなど中東諸国も海外に輸出することを目的として石油精製を行っており、その一環としてナフサも輸出しているわけで、韓国と同じように、ナフサが余ったから日本に輸出しているというわけではない。

今回、日本ではレジ袋が有料化されたため、レジ袋の需要が減少することになるだろう。その結果、ポリエチレンの生産が減り、その分、理屈の上ではナフサの輸入が減ることになる。

ただし、レジ袋の削減量は日本全体のプラスチック生産量と比較すれば、ごくわずかであるから、ほとんど数量的な影響はない。今後も韓国からのナフサの大量輸入は継続されることになるだろう。

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