1.オーランチオキトリウムの発見
藻類の中には油分を生産するものがあります。これを大量培養すれば、日本は産油国になれる。この話はもともと2011年5月に放送された、あるテレビ番組によって広まりました。この番組は私も見ました。
その番組は、ある大学の先生がオーランチオキトリウムとよばれる画期的な藻類を発見したことから始まります。この藻類は体内に油分(スクワレン)を蓄える性質があり、この油分は自動車の燃料として使えることから、オーランチオキトリウムを大量に培養して油分を抽出すれば、日本の石油需要を賄い、輸出までできるという話でした。
テレビの力は大きいですね。この話は瞬く間に広がり、多くの企業がその先生のもとを訪れて共同研究を持ちかけたり、資金提供を申し出たりしました。また、オーランチオキトリウムの研究開発は、東日本大震災の復興事業として国からも多大の研修費が支給されるまでになりました。
しかしながら、この番組の放送から10年がたちますが、まだ生産が開始されたとか、あるいはテストプラントが建設されたとか、そういう実用化に向けた動きは見えません。それどころか、実用化断念とか、失敗だとかの声が聞こえてくるようになりました。
どうなっているのでしょうか。オーランチオキトリウムについて、一部は推定になりますが、「藻類で日本が産油国になる」という話が本当なのかウソなのか、考察してみたいと思います。
2.「日本が産油国になる」という根拠
藻類からバイオ燃料を作る試みは実は、オーランチオキトリウムが初めてではありません。藻類をある特定の生育条件に置くと、油分を蓄積することはずいぶん前から知られていて、藻類から燃料油を取り出す試みは、石油ショックが起こった1970年代にアメリカで盛んにおこなわれました。
その後、原油の価格が安定してきたことから、研究は一時中断されていました。しかし、2001年に起こった同時多発テロを受けて、アメリカで石油の中東依存度を下げようという機運が高まり、研究が再開され、非常に大規模な藻類の栽培プラントが建設されました。しかしながら、これも商業的に大規模な生産がかいしされたという話はききません。
今回の話題になったオーランチオキトリウムも藻類の一種ですが、主にアメリカで研究されてきたボトリオコッカスという藻類とは異なり、光合成を行わないという特徴があります。
藻類には光合成を行う独立栄養生物と光合成を行わない従属栄養生物があり、ボトリオコッカスは前者、オーランチオキトリウムは後者に属します。
実はオーランチオキトリウムが油分を生産する能力はそれほど大きくはないのですが、繁殖力が非常に大きいという特徴があるため、全体としてみれば油分の生産量がボトリオコッカスなどほかの藻類に比べて格段に大きくなるということだそうです。
このあたりの話は、オーランチオキトリウムを発見した先生へのインタビューという形でyoutubeで公開されています。
このインタビューによると、オーランチオキトリウムを1haの面積で栽培すると1,000トンの油分(スクワレン)を生産することができる。その量はオーランチオキトリウムの増殖に伴って、4時間ごとに倍となるので、年間1万トンが生産できるという計算になるそうです。※
日本の石油消費量は2億トンですから、これを賄うために培養施設は2万haが必要となりますが、日本には休耕田や耕作放棄地が40万haあるので、このうちのわずか5%を使えばいいということになります。
一方、生産コストですが、ボトリオコッカスの油生産コストはA重油(約65円)の3~10倍と言われています。オーランチオキトリウムの生産性はボトリオコッカスの10倍あるので、その生産コストは100円/ℓから50円/ℓとなり、石油に十分対抗できるという計算になります。
※倍加時間は10℃で11.96時間、20℃で4.2時間、30℃だと2.1時間。4日ごとに収穫していくとすると、年間約1,000tのオイルが取れることになるが、倍加時間を4時間として4時間ごとに67%を収穫し、同量の新鮮培養液を継ぎ足すという連続生産システムにすれば年間1万トン以上のオイルがとれることになるという計算になります。
このように測定データと綿密に計算された数字で示されると、いやいやこれはもう日本は石油の輸入をする必要はない、むしろ石油を輸出できるぞと考えられた方も多かったのではないでしょうか。しかし、私はそうは思いませんでした。そもそも、この計算には大きな落とし穴があるからです。
3.「日本が産油国になる」への反論
ちょっと話がずれますが、「石油って人工的に作れないのですか」と質問されることがあります。石油が枯渇するとか(実際に枯渇することはありません。「石油はあと40年で枯渇する?」を参照してください)、足りないとかいうのなら人工的に作ればいいというわけです。
そんなとき、私はできますよと答えます。実際にサソール社は南アフリカで、シェル石油はマレーシアで、それぞれ人工的に石油を作っていますと。そう聞くとみなさんびっくりして、じゃあなぜ人造石油が普及していないのですかと質問してきます。それは簡単なことです。人造石油を作るためには、原料が必要だからです。
考えてみればあたりまえのことです。何もないところから、突然、人造石油が出てくることはありません。どんなものを作るにも、必ず原料が必要となります。
人造石油の場合、その原料として使われているのは、石炭か天然ガスです。南アフリカは石炭が、マレーシアは天然ガスが大量に安価に産出するから人造石油が作れます。無から有が生じることはあり得ないのです。
ではオーランチオキトリウムの原料は何なのでしょうか。この原料のことはオーランチオキトリウムを発見した先生のインタビューでも少しだけ触れられています。原料は「有機物」だというのです。
先生はそのインタビューの中で「その有機物をどう確保するかというのが、問題として出てくることは出てくる」とかなり曖昧に答えられていますが、この返答には二つの問題点があります。つまり、その有機物をどのように調達するかということと、もうひとつは、有機物ならなんでもいいのかということです。
実は、実験室ではオーランチオキトリウムの栽培にブドウ糖(グルコース)が使われています。オーランチオキトリウムを使って石油代替燃料を作るということは、つまり、ブドウ糖を原料として石油を作るということなのです。
質量保存の法則という法則があります。どんな化学反応が起こっても、原料の重量と出来上がった製品(副製品を含めて)の重量は必ず同じになるという法則です。もし、オーランチオキトリウムを使って、日本の石油消費量である年間2億トンの人造石油を作ろうとすると、少なくとも2億トンの原料、つまり2億トンのブドウ糖が必要となるということです。
実際には、2億トンのブドウ糖すべてが油分に変わるわけではなく、オーランチオキトリウム自体が生きていくために消費される量もありますから、その数倍のブドウ糖が必要ということになってしまいます。
そもそもブドウ糖の価格自体が石油の価格よりも高いですから、これではどんなに製造方法を改良しても、永久に採算が取れないということになります。さらにブドウ糖の原料はデンプンつまりコメやイモなどの穀物ですから、そんなに大量の穀物が作れるかという資源確保の問題もあります。
先ほども申し上げたとおり、無から有は生じない。2億トンの石油を作ろうとすれば、少なくとも2億トンの原料が必要なのです。当たり前のことなのですが、さきほどの「日本が産油国になる」という計算の根拠では、その原料のことがそっくり抜け落ちているのです。
なお、ボトリオコッカスなど一般の藻類は空気中の炭酸ガスを取り入れて成長、繁殖しますので、原料は二酸化炭素ということになります。そのため特に原料を考える必要はありませんでした。藻類が勝手に培養液に溶け込んだ二酸化炭素を吸収してくれるからです。
一方、オーランチオキトリウムは原料を与えなければ成長しません。オーランチオキトリウムの生産性がボトリオコッカスの10倍あるから、生産コストは10分の1になるという計算は大きな誤りです。オーランチキトリウムの培養コストの中から原料となるブドウ糖の価格がすっかり抜け落ちているからです。
4.ブドウ糖を使わないのなら計算をやり直すべき
もちろん、オーランチオキトリウムに原料が必要だということには、先生も気付いていて、ブドウ糖を使わずに、下水など有機廃棄物、有機排水に含まれる養分を原料にすればいいとおっしゃっています。先生が、ブドウ糖とは言わずに有機物が原料だと主張されるのは、そのことのようです。
なるほど、ブドウ糖ではなくて、下水などを養分にすればいい。それなら、下水処理をしながら、石油も作れる。一石二鳥。それができれば万々歳です。でもね、それって可能なのでしょうか。
例えば、人間はいろいろな食物を食べて生きてます。そのほとんどは有機物です。では、有機物なら何でもいいというのでしょうか。石油や石炭も有機物ですが、石油や石炭で生きられませんよね。下水で人間は生きていけないでしょう。
オーランチオキトリウムは下水を食べて生きていけるのでしょうか。いや、それが今後の研究だと、先生はおっしゃるでしょう。でも、「藻類で日本は産油国になる」と詳細な計算をした時には、まだそのデータがなかったはずですから、計算はブドウ糖を使ったときにデータを用いたのではないでしょうか。
でも実際は、下水を使ってオーランチオキトリウムを栽培するという。それなら、下水を使ったときのデータ(下水で培養できたとしても、ずっと効率が悪いはず)を使って、本当に日本が産油国になるかどうかの計算をすべきでしょう。
藻類で産油国になるという主張をするときには、ブドウ糖を使ったチャンピオンデータを使い、実際にはできるかできないかも分からない下水有機物を使うというのは、まったくのご都合主義のように私には思えます。
5.下水有機物が使えるか
例えば、下水汚泥に含まれるセルロースのような多糖類に酸を使って分解すれば、ブドウ糖になりますので、これをオーランチオキトリウムに与えるという方法もあります。
ただし、下水汚泥の中には藻類に害のあるバクテリアや細菌類も混じっているはず。あるいはほかの藻類によって、オーランチオキトリウムが駆逐されてしまう可能性もあります。ですからオーランチオキトリウムを下水によって育てるというのは、ブドウ糖を使った純粋培養に比べて格段にリスクが大きいし、成長率も油分の生成量も同じになるとは限りません。
例え、オーランチオキトリウムを下水中で育てることができたとしても、すでに述べたように、そのときのデータで採算がとれるかどうか、日本が産油国になれるかどうかを計算しなおさなければなりません。
恐らく、成長速度や油分の含有率が実験室での培養に比べて落ちるでしょうし、下水中で育ったオーランチオキトリウムからどうやって油分を取り出すのかという工業的な難題もあります。
単に下水中でオーランチオキトリウムが成長できたからといって、日本が産油国になるとは言えないでしょう。
6.最後に提案
私に提案があります。ブドウ糖は一般にはデンプンから作られていますが、特殊な酵素を使って廃木材や農業廃棄物から作る技術がすでにアメリカで開発されています。この技術を使えば、ブドウ糖を大量に安価につくることができます。つまり、デンプンや下水ではなく廃木材や農業廃棄物(藁など)を原料としてブドウ糖を作り、これをオーランチオキトリウムの餌にしてバイオ燃料を作るというのはどうでしょうか。
ただし、ブドウ糖はオーランチオキトリウムではなく、エタノール燃料の原料とすることもできます。ブドウ糖を酵母に与えてエタノールを作るのがいいか、オーランチオキトリウムに与えてスクワレンを作るのがよいのかという競争になるでしょう。
いろいろ否定的な事ばかり書いてきましたが、いろいろな可能性を考えて技術開発は行うべきだと思います。ただし、すぐに日本は産油国になるだの、いくらもうかるだのと利点ばかり宣伝するのではなく、こんな問題点もあるんだということを、きちんと公表して、みんなで知恵を出し合ってそれを解決しながら実用化に進んでいくべきではないでしょうか。
2019年7月27日
2022年4月13日改訂
関連記事
バイオ燃料は弱者の食料を奪っているのか? 「食料か燃料か」ではなく「食料も燃料も」
2050年に温室効果ガス排出実質ゼロ…あなたが次に買う未来の自動車はこうなる
石油はあと40年で枯渇する?」
バイオジェットの解説―ユーグレナ社のASTM規格取得―
自動車用バイオ燃料は終わった? そういえばバイオエタノールはどうなった
バイオ燃料は人類最古のエネルギー源
うんこでジェット機が空を飛ぶ-しかも地球に優しい
バイオディーゼルはなぜ成功したのか-作り方が石鹸と同じだったから
【人材募集情報】
「A8.net」を開発運用するアフィリエイトソリューションプロバイダーの
株式会社ファンコミュニケーションズが業務拡大につき技術者を募集中。
こういった話題にド素人の私でもサクサク読み進めることができるとてもわかりやすく興味深いレポートでした。
わかりやすい文章を書ける人って賢さと他人への愛を兼ね備えていると思います。
コメントありがとうございます。
今春、長年勤めた会社を退職して自由になる時間ができましたので、今まで考えていたことを書き連ねています。
わかりやすいと評価いただき、望外の喜びです。
今後も、できるだけわかりやすく記事を書いていきますので、ときどきアクセスしてみて下さい。
コメントもいただければ幸いです。
産油国はともかく、ある程度採算の取れる結果が出ればめっけものではないでしょうか。
例のTV番組では悪条件でも生育できる芋の話もしていたと記憶してます。
>特殊な酵素を使って廃木材や農業廃棄物から作る
日本では雑草の処理にかなり手を焼いてますから、雑草をブドウ糖に転換できるようになればとか思います。
確かホンダがそんな研究をしてました。
特に近年はクズが繁殖しすぎて困っているところが多いとか。
クズは地下の塊根にかなりの養分をため、また繁殖力もすごいですね。
ちょもらんまさん。記事を読んでいただいてありがとうございます。
草や木からブドウ糖を作る研究は、アメリカが国家プロジェクトで行っており、一昨年、商業プラントが稼働を開始しました。(日本でもかなり大々的に国家プロジェクトとして開発したのですが、いつの間にか消えてしまいましたね)
おっしゃるとおり、雑草の処理がこれでできれば一石二鳥になるかもしれません。
アメリカでは、このブドウ糖は酵母に食べさせてバイオエタノールにしてガソリン代替燃料としています。
オーランチオキトリウムにこのブドウ糖を食べさせて油分を取り出し、軽油かユーグレナ社が目指しているようにバイオジェット燃料にすることができればいいですね。
ちなみに、バイオジェット燃料の解説は以下に書いています。
https://note.com/takagichi/n/n7c672ec99077
※すみません。有料記事(100円)にしましたので、気が向いたら読んでみてください。
理論的な説明で納得する内容でした。ありがとうございます。
一方で、腑に落ちない点もあります。
>農業廃棄物(藁など)を原料としてブドウ糖を作り、これをオーランチオキトリウムの餌にしてバイオ燃料を作るのです。
とありますが、ご自身でもご指摘のように、
>そもそもブドウ糖の価格自体が石油の価格よりも高い
のですから、生産者側は作ったブドウ糖をそのまま売る方が利益が出てしまうことになり、
現状ではブドウ糖→(生物)→燃料は無理筋な気がするのですが、いかがでしょうか?
ブドウ糖価格<バイオ燃料価格にならなければ、事業として成り立たないように思います。
ところでアメリカではバイオ燃料に国が付加価値を付けることでバイオ燃料事業を成立させていると聞きます。
無意味にも思えましたが、実際に生産しているので生産技術の向上やノウハウの蓄積には役立つのかと思い始めました。
原油価格が上昇してバイオ燃料を生産しなければならなくなった場合に対するリスクヘッジになっているのかもしれません。
産油国ではない日本でも原油価格上昇のリスクはあるので、リスクヘッジの一環として、
オーランチオキトリウムによるブドウ糖→燃料の変換技術の開発が必要な可能性もあるのかなと感じたのですが、いかがでしょうか?
(日本がそこにお金をかけるかどうかは別問題ですが。。。)
ご意見いただければ幸いです。
Satoさんご質問と貴重なご意見ありがとうございます。
>そもそもブドウ糖の価格自体が石油の価格よりも高いのですから、生産者側は作ったブドウ糖をそのまま売る方が利益が出てしまう
→申し訳ありません。分かりにくい表現をしてしまいました。アメリカでは農業廃棄物からブドウ糖を作る技術が最近完成して安く作れるようになりました。ただブドウ糖の市場はあまり大きくないので、発酵させてバイオエタノールにしています。私の提案は、そのアメリカの技術を導入してエタノールではなくオーランチオキトリウムに食べさせたらどうかということです。
>アメリカではバイオ燃料に国が付加価値を付けることでバイオ燃料事業を成立させていると聞きます。
→おっしゃる通りアメリカではバイオ燃料には優遇税制が適用され、先進型バイオ燃料は使用が義務化されていますが、これは国産エネルギー源として考えているからです。
→本日、菅総理大臣が2050年に温室効果ガスを実質ゼロとする方針を固めたという報道が入りました。自動車燃料については、温室効果ガスをゼロにする方法としてバイオ燃料という選択肢もあり、その中でオーランチオキトリウムによるブドウ糖→燃料も考えられるかもしれません。(温室効果ガスゼロ時代の自動車燃料についての記事を今書いていますので、よかったら読んでください)
ご意見いただき、誠にありがとうございます。
>ブドウ糖の市場はあまり大きくないので、発酵させてバイオエタノールにしています
市場規模の概念が抜け落ちておりました。確かに、ブドウ糖の市場規模を考えればオーランチオキトリウムへの投資の可能性も十分納得できます。非常に勉強になりました。
>菅総理大臣が2050年に温室効果ガスを実質ゼロとする方針を固めた
温室効果ガス実質ゼロは(真面目に取り組むなら)つまるところ持続可能エネルギーの開発ですから、藻類含め植物資源の活用技術の輸入や開発がカギになってくる感じでしょうか。アメリカの技術が日本でも採用可能となれば、記事でご提案のようなプランも実現性が高まり、バイオ燃料開発の在り方も変わってきそうです。(実現可能かどうかはともかく)具体的な数字が設定されたことにより、研究業界の動向がどのように変わるのかが気になるところです。
大変参考になりました。ご紹介いただきました記事もぜひ読ませていただきたいと思います。
確かに政府が温室効果ゼロの方針を固めたことによって、この分野の研究動向が大きく変わってくると思います。今後も、なにかご質問やご批判、コメントありましたら、お気軽にご連絡ください。
ケチをつけるだけなら誰でも出来るわ
たしかにケチをつけるだけならだれでも出来るかもしれません。
でも、「藻類で日本は産油国になる」というマスコミの報道を信じて、期待していた人たちも多くいると思います。
企業の中には、この言葉を信じてお金や人を出したり、国のお金もつぎ込まれたりしているようです。
でも、ちっとも日本が産油国になる兆しは見えません。どうしてかなと考えている人たちはたくさんいると思います。
そういう人たちには期待を裏切る記事だったかもしれませんがね。
非常に良い記事だと思いました。
日本が産油国になる為には多くの課題があるのですね。
何か壁にぶつかった時、そこで諦めずに壁を乗り越える方法を考える事が大切だと思います。
執筆者の言われるとおり、ブドウ糖の課題をいかにクリアーするのかが勝負どころのように思えます。
廃材のアイディア、前に進めてほしい・・・。
茨木沖のガス田・石油はどうなるのか、新潟・秋田・北海道・山形の油田は現在の技術で活用できないのか、産油国周辺にオーランチオキトリウムに変わる生物がいる可能性はないのか。
日本が産油国になる為、幅広く検討してほしいです。
コメントに対し非常に丁寧に回答されている事から執筆されている方の
誠実さが伝わってきます。今後も記事の更新を楽しみにしております。
n e k oさん 興味を持って記事を読んでいただきありがとうございます。
日本は最近元気がないと感じています。おっしゃるとおり簡単にあきらめずに壁を乗り越える方法を考えてほしいと思います。
ただ、オーランチオキトリウムはマスコミが騒ぎ過ぎ。「産油国になる」という言葉のインパクトが強すぎたのではないでしょうか。
ブドウ糖の話については、もともとアメリカでバイオエタノールを作るために開発された技術です。この話につきましても、また記事にまとめて公開したいと思っていますので、是非読んでみてください。
「ブドウ糖は、一般にはデンプンから作られていますが、特殊な酵素を使って廃木材や農業廃棄物から作る技術がすでにアメリカで開発されています。この技術を使えば、ブドウ糖を大量に安価につくることができます。」
というところをもっと詳しく解説して欲しいです。
また、この箇所について詳しく書かれたウェブサイトなどのリンクを貼ってくれると助かります。
「ブドウ糖は、一般にはデンプンから作られていますが、特殊な酵素を使って廃木材や農業廃棄物から作る技術がすでにアメリカで開発されています。この技術を使えば、ブドウ糖を大量に安価につくることができます。」
というところの詳しい解説をお願いします。。。
また、情報源やウェブサイトのリンクを貼っていただけると助かります。
Syun.Kawaさん、MOSSさん ご質問ありがとうございます。
アメリカではトウモロコシからブドウ糖を作って、これを酵母で醗酵させてバイオエタノールを作り、これをガソリンに10%混合して使っています。10年ほど前からバイオエタノールの生産量を増やしていくために、トウモロコシではなくてトウモロコシの芯や廃木材、雑草類などからブドウ糖を作って、これをバイオエタノールの原料とする研究を国家事業として行ってきました。
その結果、いくつかの商業プラントも完成しています。わたしの提案は、このようにして作られたブドウ糖を、酵母の代わりにオーランチオキトリウムに使ったらどうかというものです。バイオエタノールならガソリン代替ですが、オーランチオキトリウムなら軽油代替になる可能性があります。
文献については、“second generation bioethanol production”で検索すればたくさんヒットします。
例えば、
https://www.researchgate.net/publication/316924052_Second-generation_bioethanol_production_A_review_of_strategies_for_waste_valorisation
以下の文献は私が書いたものです。参考までに。
https://www.eneos.co.jp/company/rd/technical_review/pdf/vol52_no03_08.pdf
全くの素人でも理解できる、非常に分かり易い記事でした。
素人ながら素朴な疑問ですが、廃棄食料をブドウ糖に変換して材料として用いる、というのは現実的に可能でしょうか?
日本では1日500万トン規模(真偽不明)の食料廃棄があると聞きます。
そのうちでんぷん(糖)がどれくらい含まれているのかはわかりませんが、セルロースが多く含まれる材料より効率的に、穀物より安価にブドウ糖を取り出せるのではないかと思いました。
RJさん記事を読んでいただいてありがとうございます。
廃棄食品は1日ではなくて、年間で570万トンですね。だとしてもかなりの量です。
確かにセルロースよりもデンプンの方が糖にしやすいですが、廃棄食品を集めるのが大変ですし、デンプン以外にも様々な成分が含まれているので、藻類や酵母の餌にしたときにいろいろ問題が起きそうです。例えば醤油とか油脂類とか腐敗菌とか。うどんを作るときに捨てられている純粋にデンプンだけの食品廃棄物などがあれば可能かもしれません。
また、食品廃棄物はメタン発酵させて都市ガスとして使うという方法もあるかと思います。
オーランチオキトリウムの代謝経路について書かれた論文やデータなどについて教えて欲しいです。
匿名さん 記事を読んでいただいてありがとうございます。
申し訳ありません。私は生物学が本職ではないので、ご希望に沿うことはできません。
MOSSさんからツイッターで以下のような質問を受けましたので、この欄でお答えします。
「スクアレンとトリアシルグリセロールを比較した際の「魅力」は何だと思いますか?
また生物学的にどちらが優れているとかありますか?」
MOSSさんご質問ありがとうございます。
自動車用燃料として使った場合についてお答えします。
どちらも「魅力」というのは特に思い浮かびません。スクアレンは分子量が大きいので粘度が高く、そのまま燃料として使えないわけではないでしょうが、不完全燃焼を起こしやすく、有害排ガスも多くなるでしょう。また、酸化されやすく、貯蔵中に変質する可能性があります。
トリアシルグリセロールの場合は、そのままでは使用できず、エステル化して使うことになりますが、これも酸化されやすく、変質する可能性があります。
どちらも水素化処理すれば、石油系の燃料とそん色なく使えますが、スクアレンは水素消費が多くなって精製コストが高くなると思いますが、低温流動性はトリシアルグリセロールよりも良好でしょう。
生物学的な問題は専門ではないので、お答えできません。