地球温暖化メカニズムの誤解 温暖化はわれわれの身の回りで起こっている

地球温暖化が起こる原理として図ー1のような図で説明されることが多い。

図―1 温室効果により地球温暖化が起こる理由

この図を使って温暖化が起こる原因が次のように説明される。

地球は太陽光によって暖められて気温が上昇する。するとその熱によって赤外線が発生し、それが宇宙に放出されることによって地球は冷却される(放射冷却現象)。ただしどんどん冷やされるわけではなく、空気に含まれる温室効果ガスが赤外線を反射するから、平均気温がだいたい15℃程度でバランスする。しかし、温室効果ガスが増えると反射される赤外線の量が増えるので、地球が温暖化する。

地球温暖化はなぜ起こるのかを説明するときに、よくこのような図が使われるので、多くの人がなるほど、このようにして地球は温暖化するのかと理解するだろう。しかし、この図には大きな間違いが隠されている。

この図の問題は、地球のかなり上空で熱が地球に向かって戻されているように見えるということだ。これを見た人は多分、地球上空、数千mか数万mか知らないが、かなり上空に温室効果ガスの層ができ、そこで赤外線が反射して地球に戻ってくるので温暖化が起こると考えるのではないだろうか。ちょうど、温室のガラスのようなイメージだろう。

しかし、この図は以下の二つの点で間違っている。

・温室効果ガスは上空に層を作るわけではない
・赤外線は温室効果ガスで反射されるわけではない

温室効果ガスは上空に層を作るわけではない

まず、温室効果ガスは上空に層を作るわけではない。代表的な温室効果ガスは言うまでもなくCO2であるが、この濃度を垂直方向に測定した結果は、以下の図―2のようになる。

図―2 CO2の垂直方向の濃度分布 相原敬次(神奈川県環境科学センター)

この濃度分布は、上空の風の強さや風向、季節などによっても違ってくるが、一般に地面に近い方が上空よりも濃くなっている。少なくとも上空にCO2の層ができているわけではない。

これはおそらく工場や自動車などのCO2の発生源が地表にあることや、CO2が空気を構成する主な成分である窒素(約79%)や酸素(約21%)よりも重いからであろう。分子の重さ、つまり分子量で比較すると、窒素が28、酸素が32であるのに対して、CO2は44でかなり重い。

地球温暖化ではないがオゾン層の破壊が地球環境問題のひとつとなっている。この場合はオゾンは地表から10~50㎞の高度に層を作っている。この層が有害な紫外線をブロックして地球に降り注がないようにする役割を果たしているのだが、人間の作ったフロンガスがこのオゾン層を破壊してしまうので問題となっている。

しかし、CO2はオゾンと違って上空に層を作っているわけではなく、むしろ下に行くほど濃くなっている。地球温暖化は図―1で示されるように地球のはるか上空に原因があるわけではなく、われわれが暮らしている地表付近で起こっていると考えるべきなのだ。

ちなみに空気中のCO2濃度が産業革命以来、次第に増加しており、これが地球温暖化の最大の原因とされているが、このCO2濃度はどこで測っているかというと地上20m(ビルの6階付近)で測定している。上空何千m、何万mいうような高高度のCO2濃度を測っているわけではない。

20mというのは、恐らく地表で測定すると、車の排気ガスや植物の吸収といった局所的な影響を受けるためだろう。地上20mというのは地球規模で言えば、ほぼ地表で測っているのと同じと考えていい。

赤外線は反射されるわけではない

図―1では地表から放出された赤外線は温室効果ガスの層に当たって反射されるように描かれている。しかし、赤外線は反射されるわけではない。そもそも赤外線は電磁波であり、それ自体が熱ではない。

赤外線はCO2のような温室効果ガスで反射されるわけではなく、吸収される。吸収された赤外線によってCO2は振動する。赤外線の振動数がCO2の振動を誘発するのにちょうどいいからだ。

このCO2の振動はずっと続くわけではなく、再び赤外線として放出される。ただし、放出方向は下向きとは限らず全方向に放出される。つまり反射ではなく散乱といった方がいいだろう。

また、赤外線を受けたCO2は熱を持つ。というかCO2の振動を熱と呼んでいる。熱とは分子の運動エネルギーのことだ。熱を持ったCO2はその熱を周りの窒素分子や酸素分子に伝えていく。つまり伝熱という現象だが、この伝熱によっても空気が温まることになる。

実施の温室効果を図で示すとどうなるか

実際の温室効果のイメージとして図―3を提案したい。

図―3 地球温暖化のイメージ

この図で言いたいことは、温暖化は地表何千mとか何万mとか遠いところで起こっているわけではく、われわれの身の回りで起こっているということである。われわれを取り巻く空気、手を出せば届くところにある空気、もちろんわれわれが毎日呼吸している空気。この空気に含まれるCO2の濃度が大きく増えていて温暖化を引き起こしているのだが、CO2は目に見えないので気づかないだけなのだ。

1960年代に工場排ガスを原因とした公害問題が表面化したが、これは亜硫酸ガスや窒素酸化物、粒子状物質などが原因だ。このような有害物質を含んだ空気を呼吸することによってぜんそくなどの健康被害が発生した。このような有害物質はわれわれの身の回りに存在するものであり、数千mとか数万mとかの上空の問題でないことは誰でもわかるだろう。

それと同じで、温室効果ガスもわれわれの身の回りの空気の問題なのだ。CO2に毒性はないが、地面から放射される赤外線を吸収して、熱に変え、また放射冷却現象を阻害するから気温が上がる。分かりやすく言えば、われわれの身の回りにある空気の保温性がよくなったということである。これは温室効果というよりも、ブランケット(毛布)効果と言った方がよいのかもしれない。

冬場ならブランケットも歓迎であるが、夏場にブランケットでは暑すぎる。それが、われわれが夏場に経験する酷暑ということだ。そう考えれば地球温暖化も単なる理屈や理論の話ではなく、もっと身近な問題として感じられるのではないだろうか。

2013年12月23日

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