トヨタのHV販売好調、EVは不調 だからといってEVはダメとはならない理由

最近、トヨタのHV(ハイブリッド車)の売れ行きが好調で、その一方でEVの売上が振るわないというニュースが広がっている。

REUTERの記事によると昨年(2023年)1月から11月までの米新車登録台数に占めるHVの割合は9.3%で、EVを1.8ポイント上回ったという(S&Pグローバル・モビリティのデータ)。

EVの大手メーカーであるテスラ社は売上不振を受けて米国、中国を含む主要市場で昨年から大幅な値下げを実施したが、その結果、利幅が縮小しているという。

これを受けて、日本のマスコミやネット上ではそれみたことかEVなんて普及するわけがないとか、やはりトヨタは正しかったとかの論調がみられる。YouTubeなんか「EVはオワコン認定」とか、「EV失速」とか、「EV産業の末路」とか、そんな過激な記事であふれている。

しかしながら、このHVの好調は一時的なものでしかなく、長い目でみればとEV化は確実に進んでいくだろう。

EUは一昨年(2022年)、2035年までにCO2を排出する新車の販売を禁止すると発表している。これを受けて日本のマスコミは、EUがエンジン車を全て廃止するとか、EV以外は認めないとか報道をしている。

そして、EUがe-fuelの使用を容認すると、EUがエンジンを認めたとか、EUが方針を撤回したとか、やはりEUはEV化は無理だと気づいたかとか、の報道が見られた。しかし、そもそもEUはエンジン車を認めないと言っていたわけではないから、この報道は間違っている。

まず、EUが発表した内容を確認してみよう。この発表の内容は要約すると以下のとおりだ。

  • 2035年までにCO2を排出する乗用車および小型商用車の新車販売を禁止する
  • 2030年までに2021年比で乗用車で55% 、小型商用車で50%のCO2排出量を削減する

つまり、EUは地球温暖化の原因となるCO2の排出量を規制しているのであって、エンジン車を禁止するとか、EVでなければならないとは一言も言っていない。そして、2030年に乗用車で55%のCO2排出量を削減するという中間目標を立てている。

つまりEUは一気にEVにしなさいとか、エンジン車は廃止だとか言っているわけではなく、あくまでも目的はCO2排出量の削減であり、そのための方法はカーメーカーが考えなさいということ。そして2030年の中間目標は55%の削減ですよ、それに向かって努力してくださいといっているわけである。

これは日本でも同様で、第6次エネルギー基本計画では2030年に運輸部門全体でCO2排出量を35%減らすという中間目標が掲げられている。

つまり、将来的には自動車からのCO2排出はゼロにする。そのための手段としてEVやe-fuelがある。ただし、現在は中間目標に向かってCO2の排出量を削減していく段階にある。

中間目標はCO2の削減であってゼロではないのだから、EVにこだわる必要はない。といっても純ガソリン車や欧州で普及率の高いディーゼル乗用車では中間目標を達成することは難しい。だからHVという選択になる。ということだ。

今のところ、EVは値段が高く、充電にかかる時間が長い割には航続距離が短いという欠点がある。それなら、今のところEVでなくてもHVの方がいい。しかし、2035年のCO2排出量をゼロにするにはやはりHVでも目標達成はできない。そのころにはEVの性能も上がってHV並みになっている可能性もある。

ということでHVの好調はこれからずっと続くわけではなく、いつかはEVに置き換わっていくことにならざるを得ないだろう。

渚に佇んで、寄せては返す波を見ていても潮が満ちているのか引いているのかはわからない。と同じように、一時的なHVの販売好調をみて、EVはだめだということにはならないということだ。

それにしても、トヨタの新型プリウスはかっこいい。これなら売れると思う。しかし、この好調に甘んじず、トヨタは次のEV化に向けて走り出してほしい。当然、考えていることだろうけど。

2024年2月12日