メタネーションは本当にカーボンニュートラルなのか CCUのパラドックス

2020年10月に菅総理が行ったカーボンニュートラル宣言以降、様々な技術開発が進められている。これは大変よいことだと思う。 
例えば自動車ガソリンの代わりに電気や水素が使われる。再生可能エネルギーを使って作ればという前提ではあるが、電気も水素もカーボンニュートラルと言っていいだろう。
では都市ガスはどうするのか。現在都市ガスは天然ガスを使っているからカーボンニュートラルではない。それで近年注目を浴びているのが、メタネーションという技術である。資源エネルギー庁のホームページでもガスのカーボンニュートラルを実現する「メタネーション技術」として紹介されている。しかし、このメタネーション、本当にカーボンニュートラルなのだろうか。

メタネーションとは、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を反応させて天然ガスの成分であるメタン(CH4)を合成して都市ガスとして利用する技術である。この合成メタンを燃やせばCO2が排出されるが、このCO2はもともとメタネーションの原料として使われているから、差し引きゼロとなって大気中のCO2を増やさないという理屈である。これはわかる。(このようにCO2を回収して、燃料やその他の用途に使うことをCCUという)

発電所などから回収したCO2を利用してメタネーションをおこなう工程を図であらわしています。
メタネーションによるCO2排出量削減(資源エネルギーHP「ガスのカーボンニュートラル化を実現する「メタネーション」技術より)


しかし、資源エネルギー庁の記事によると、このCO2は火力発電所や工場から排出されるものを使うという。排出されるCO2を再び使うのだからカーボンニュートラルだという。ん?本当にそうか?
火力発電で化石燃料を燃やして排出されるCO2はカーボンニュートラルではない。しかし、このCO2を回収して合成メタンを作るとカーボンニュートラルだという。これは納得がいかない。

汚れたお金をいろいろ金融機関を回していくと汚れたお金ではないように見えるという技法をマネーロンダリングというが、それに似ている。火力発電で出てきたCO2はカーボンニュートラルではないが、これを回収して再び燃料にして使えばカーボンニュートラルだという。これではマネーロンダリングならぬカーボンロンダリングではないか。

火力発電で出てくるCO2ではなく、大気中のCO2を回収して行うメタネーションなら確かにカーボンニュートラルである。この技術をDACというが、実は大変難しい。だから手っ取り早く火力発電から出てくるCO2を使うということになる。
火力発電のCO2はどうせ大気に放出されるから、大気に放出される前に回収すると考えればDACと同じだという考え方もあるだろう。う~ん、頭の中が混乱してきた。

しかし、要は大気中のCO2を増やさないというのがカーボンニュートラルのはず。火力発電で化石燃料を燃やしてCO2が出てくる以上、これをメタネーションで使おうがどうしようが大気中のCO2は増える。だから全体でみればカーボンニュートラルではない。その責任は火力発電にあり、メタネーションに責任はないというのだろうか。どっちも同罪だと思うが。

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