東京都台東区のマンションで今年(2024年)2月、不凍液などを飲ませて4歳の少女を殺害した疑いで少女の両親が逮捕された。さらに2018年に父親の妹も急死しているが、これも警視庁は不凍液による殺人とみて2人を再逮捕している。
不凍液の成分はエチレングリコールという化学物質だが、市販されていて、だれでも購入することができる。エチレングリコールとはどんなものなのか、簡単にまとめてみた。
エチレングリコールは無色透明(不凍液として販売されるときは緑色やピンクなどに着色されている)の可燃性のある液体だ。国内では石油を原料として年間50万トン以上が生産される化学業界ではかなりありふれた化合物である。
そのうち、不凍液として使われるのは10%程度で、主な用途はペットボトルとしておなじみのPET樹脂や合成繊維(ポリエステル)の原料である。ペットボトルやポリエステルの原料といっても、樹脂や繊維になってしまえば毒性はまったくなくなるので心配する必要はない。
しかし、エチレングリコール単体では経口毒性があって、致死量は大人の場合で111g(既存化学物質安全性評価シートより)だ。かなり大量に飲まなければ死には至らないものの、甘みがあるので毒性があるとは気づかずに飲んでしまうことがある。
実際に、誤飲や飲料水への混入による多くの死亡例が報告されており、死因は急性の中枢神経系の機能不全および肝臓障害によるとされている。
化学的にはグリコール類という部類に入る。グリコール類とはヒドロキシ基(-OH)という部分が2個以上ある有機化合物で(-OHが1個のものはアルコール類)、その中で最も小さい分子が炭素数が2のエチレングリコールだ。炭素数3のものはプロピレングリコール、エチレングリコールが2個くっついた形をしたものはジエチレングリコールとよばれる。
この3つはいずれも水に溶かして不凍液として使用することができる。
プロピレングリコールは毒性が低いため、医薬品や化粧品にも使われているが、ジエチレングリコールはエチレングリコールと同様に毒性がある。このジエチレングリコールは1985年頃、甘みやまろやかさを出すためワインに添加されて販売されていたことから問題になったことがある。
わが国では不凍液はエチレングリコールが使われているが、このような毒性のあるものが一般に市販されているということは問題だろう。不凍液としては、もっと毒性の低いプロピレングリコールを使うべきだと思う。
2024年3月7日