私の記事「ホルムズ危機でナフサがガソリンより深刻な理由」がYahooニュースでも取り上げられ、様々なコメントが寄せられた。その中で気になるのがナフサとガソリンの違いに関するコメントだ。そのコメントによると
- ナフサとガソリンは違うもののように書かれているが、成分的に同じものだ
- ナフサに添加剤を加えたりオクタン価や蒸気圧を調整したりしたものがガソリンになる
このコメントではナフサとガソリンは同じものだという。また、あるマスコミにはナフサは粗製ガソリンともいわれると書かれていることがある。これもナフサとガソリンを混同させることになる。
つまり、ナフサとガソリンは同じものでナフサを精製したものがガソリンだ。というのである。この説、一部は正しいが、一部は間違っている。この記事ではナフサとガソリンはどう違うのか解説したい。
日本に送られてきた原油はまず350℃程度に加熱され、蒸発するものと蒸発しないものとに分けられ、蒸発したものは沸点の差によっていくつかの成分に分けられる。この操作を常圧蒸留という。この操作によって原油は沸点の低いものから順にLPG、軽質ナフサ、重質ナフサ、粗灯油、粗軽油、重質軽油に分けられ、蒸発しないものは塔底油あるいは常圧残油といわれる。
なお、この名称は石油会社によって、あるいは製油所によって違う場合がある。例えばENEOSの水島製油所では軽質ナフサ、重質ナフサの代わりに軽質ガソリン、重質ガソリンという。出光の北海道製油所では軽質ナフサと重質ナフサを分けずに脱硫装置で脱硫したあと、ナフサ用とガソリン用に分けている。
このような違いはあるが、一般に軽質ナフサと呼ばれるものが日本ではナフサとよばれ、一方、重質ナフサがガソリンの原料になるという使い分けをしている。粗製ガソリンといわれるのは重質ナフサの方だ。
だから、ナフサとガソリンは同じものでガソリンはナフサを精製して作っているというわけではない。ではナフサとガソリンは厳密に別のものかというとそうでもないところがややこしい。このあたりを説明しよう。

まず、ナフサとガソリンの作り方の違いから。
日本の場合、石油化学工場に送るナフサは常圧蒸留装置で出てきた軽質ナフサをそのまま送っている。これは石化用ナフサといわれる。すこぶる簡単な製造方法である。
一方、重質ナフサは主に石化用ではなくガソリンの原料となる。重質ナフサは硫黄分を取り除く脱硫操作を行ってから、オクタン価を上げる改質という操作が行われる。こうやってオクタン価の上がった重質ナフサを改質ガソリンといってガソリンの主原料のひとつだ。
しかし、話はもっと複雑で、改質ナフサだけでは日本の旺盛なガソリン需要を賄えないから、重油を分解してつくられる分解ガソリンや重油を分解したときに出てくるLPG分を原料にして作られるアルキレート、石油コークスを作るときに出てくるコーカーガソリン、あるいは製油所によってはトルエンやブタンもガソリンにブレンドしている。
ガソリンはこれらさまざまな種類のガソリン原料をブレンドして最終的に自動車燃料として適切な品質に調整して出荷し、市中のガソリンスタンドで売られることになる。
では石化工場に送られる軽質ナフサはまったくガソリンにならないのかというとそうでもない。ガソリンは最終的に様々なガソリン原料をブレンドして作られるが、このとき軽質ナフサもブレンド材料の一つとすることができるのだ。
ただし、軽質ナフサはオクタン価が低いし、沸点温度も低いから大量にガソリンに添加するとガソリン規格に合わなくなる。だからナフサからガソリンができるとしても、ブレンド材のひとつとして数%を混合するだけである。
一方、逆に重質ナフサを石化用ナフサに混ぜて石化工場に送ることもできる。この場合、ナフサの品質規格はガソリンほど厳しくないため、かなりの量の重質ナフサを石化用ナフサとして使うこともできる。
話が込み入ってきたのでまとめよう。
日本の製油所では原油を蒸留して軽質ナフサと重質ナフサに分け、一般に軽質ナフサをナフサといい、重質ナフサがガソリンの元となる。
ただし、軽質ナフサもガソリンに混合して使用することができるし、重質ナフサも石化用ナフサとして使用することは可能であるが、軽質ナフサはガソリンとしての品質が好ましくないのでガソリンとして添加できる割合は限られる。一方、重質ナフサも軽質ナフサと混ぜて石化用ナフサとすることができる。
つまり、ナフサとガソリンの組成は似ているが、同じものではない。互いに製品規格の範囲内でやりくりすることは可能であるが、石化用ナフサ(軽質ナフサ)を精製したり、添加剤を加えたりしてガソリンが作られているわけではない。というのが結論である。


