2月28日に米・イスラエルがイランを攻撃したことから始まったホルムズ湾封鎖は、50日が経ったいまも続けられている。 4月18日にはトランプ大統領がイランは封鎖を解除すると発表したものの、イランの革命防衛隊は更に封鎖を続けると宣言しており、いまだ封鎖解除の目途は立たない。
このホルムズ海峡閉鎖によって最も影響を受けるのが中東に原油の93%を依存する日本と70%を依存する韓国である。原油はガソリンや軽油など、燃料として使われるほか、ナフサや潤滑油、アスファルトのように材料としての用途もある。
4月2日に公開した記事「ホルムズ危機でナフサがガソリンより深刻な理由」ではガソリンや軽油の不足より、ナフサ不足の方がずっと早く訪れると書いたが、それが現実となっている。
一部のマスコミはナフサ不足で日本は6月頃に危機的状況を迎えると報道し、政府はそれをあわてて否定する。どちらが正しいのか混乱がみられるが、原油とナフサでは事情が違うので分けて考える必要があるのだ。
■原油は備蓄で今年いっぱいなんとかなる
まず、原油については海峡封鎖時点で、日本には8か月分の備蓄があった。高市s首相は来年の年明けまで原油を確保できる目途がついたと言っているが、3月から備蓄原油の放出を開始しており、そして8か月分の備蓄があるのだから、11月までは備蓄を食いつぶしていけば問題ない。
さらに、ホルムズ海峡を通らない輸入も1割程度あるし、海峡封鎖前に日本に向かったタンカーが20日ほどかけて日本にやってくるわけだから、目途が立ったもなにも、何もしなくても備蓄だけで計算上、年を越せる計算になる。さらに、石油会社は中東以外の国々からも輸入手配をしているから、これも備蓄の延命に役だつだろう。

海峡閉鎖がいつまで続くかわからないが、ある日突然、米国とイランの話し合いがつき、海峡閉鎖が解かれる可能性もある。原油の備蓄がまだある段階で、今からあまり騒ぎ立てるべきではない。
しかしながら、トラック用の軽油や銭湯用の重油あるいは潤滑油が手に入らないという話を聞くが、これはおかしい。なぜなら備蓄は今年いっぱいあるわけで、その間、製油所は操業して軽油、重油、潤滑油も通常通り生産、出荷しているはずだからである。赤澤経済産業大臣がいうように、どこかで「目詰まり」を起こしているのだろう。
■ナフサは不足する
しかし、ナフサについては話が別である。ナフサは原油を蒸留して作られるから備蓄原油があるうち、つまり今年いっぱいナフサは国内で生産することができる。しかし、問題は日本のナフサ需要は非常に大きいため、原油を蒸留して作られるナフサでは日本の需要の3分の1しか満たせないということである。
従来、不足する分は海外から輸入してきたが、これも輸入先の多くは中東の湾岸諸国であるからホルムズ海峡封鎖によってその輸入も止まっているのである。この結果、国内で生産されるナフサはあるが、それでは国内需要に全く足らない。ナフサは生産され続けているが、一方で品不足がおこってもおかしくない。それがガソリンや軽油、重油とは違うところだ。
政府はナフサを原料として作られる石油化学製品について、在庫はあと4か月分を確保していると言うが、これは流通在庫であって備蓄ではない。製品によっては直ぐに在庫切れするものもあるだろうし、そうでないものもあるだろう。
実際に、医療用の注射器や手袋、溶剤類、建材などの不足が顕在化している。経済産業大臣は、品切れの原因は燃料と同様に「目詰まり」だと断言し、その目詰まりの例を挙げているが、これだけが原因ではなく、実際に在庫切れのものがあってもおかしくない。
ガソリンや軽油など燃料は備蓄原油がある限りは通常通り生産販売が可能であるが、ナフサは備蓄原油がなくなるまでは一応、国内需要の3分の1は生産できるが、輸入が止まった分だけ今すぐにでも品不足となる石油化学製品がでてきてもおかしくない。
ただし、原油と違うところは、ナフサは国際商品であり、湾岸以外からも買い付けることができるということである。ただし、世界的にナフサ不足が起こっているから、価格が高騰することになる。
原油を原料として作られるガソリンや軽油、重油などの燃料が不足するのは「目詰まり」かもしれないが、ナフサを原料として造られる石油化学製品については、「目詰まり」だけでなく、実際に品不足が起こっている可能性がある。
政府は石油化学製品の品不足が国民生活に深刻な影響を特定し、その分野にナフサを優先的に供給するなどの対策がそろそろ必要となってくるのではないだろうか。
2026年4月22日


