ひろゆき氏がユーチューブで“ナフサ不足”でアメリカから供給も「質が…」問題。「誰も断言できてない」と発言したという。
現在、ホルムズ海峡封鎖によって、原油だけでなくナフサの輸入も大幅に減っている。原油は備蓄があるので当面は問題ないが、需要の約6割を輸入に頼っているナフサは戦略的な備蓄がないので、末端では溶剤やプラスチック、潤滑油などの品不足が目立ち始めている。

そこでアメリカからのナフサ輸入が大幅に増えているという話だが、ゆきひろ氏はアメリカ産のナフサはその品質が問題だと指摘しているわけである。
もちろん、氏は専門家ではないのでアメリカ産ナフサは軽質なので重油が作れない。そのため重油が足りなくなる。そのあたりは誰も断言できないなどと、ちょっと意味不明の発言をしているが、確かにアメリカ産ナフサは軽質だという可能性はある。断っておくが、ナフサから重油を作ることはないので、ナフサが軽質になったから重油が足りなくなるということはない。
製油所によって多少の違いはあるが一般に石油精製ではまず原油を蒸留してLPG、軽質ナフサ、重質ナフサ、粗灯油、粗軽油、重質軽油、残油に分ける。このうち軽質ナフサが日本ではナフサとよばれ、重質ナフサが主にガソリンの原料になる。しかし、軽質ナフサと重質ナフサの沸点範囲を調整することによって軽質ナフサと重質ナフサの製造割合は調整することができる。
日本ではガソリン需要が多いので、なるべく重質ナフサをたくさん取りたい。そのため軽質ナフサはより軽質になる傾向がある。一方、重質ナフサをたくさん採ったために軽質ナフサが不足するが、これは輸入すればいいという形になっている。
一方、日本がナフサを輸入している中東の製油所は輸出型製油所とよばれ、自国需要のために石油精製を行っているわけではなく日本などに輸出するために石油を精製している。だから、売れる軽質ナフサをたくさん作りたい。よって中東産ナフサはより重質になる。
一方、アメリカも日本と同じようにガソリン需要が多い国で、しかも天然ガスからも石油化学製品を作っているので、ナフサは日本よりもっと軽質だろう。さらに、アメリカではシェールガスが豊富に採れる。シェールガスに随伴して天然ナフサも産出するが、このナフサも軽質である。ということでアメリカから輸入されるナフサはかなり軽質だろうと想像できる。
では、ナフサが軽質になるとどんな影響がでるのだろうか。ナフサはまずナフサクラッカーとよばれる装置で処理される。この装置でナフサは分解されてエチレンやプロピレン、ブタジエンなどを生成し、あとにエチレンボトムという液体が残る。このエチレンボトムからはBTXなどが抽出される。
これらの生成物の主な用途は、エチレンはポリエチレン、プロピレンはポリプロピレン、ブタジエンは合成ゴムである。また、BTXからはPET樹脂や塗料、溶剤などが製造される。
ナフサが軽質になると、ナフサクラッカーで処理した時に生成するもののうち、エチレンやプロピレンの割合が増え、ブタジエンやBTXの割合が減ってくるということになる。
製品でいうとポリエチレンやポリプロピレンの割合が増え、溶剤や染料、PET樹脂の割合が減るということになる。つまり、ナフサが重質か軽質かという品質の差は生産される製品の割合に影響することになる。
ただし、それがそれほど問題かというと製造割合が少し変わるだけなので、それほど問題になるとは思えない。品質が悪いので、製品の品質も悪いとか、製品を製造できないということではない。
むしろナフサ自体が手に入らない方が問題は大きい。また、PET樹脂などの原料となるBTXについては、ナフサではなくガソリンの方からもかなりの割合で抽出されているから、それほど影響はないだろう。
ホルムズ海峡封鎖から3か月が経とうとしている。政府は頑なに認めようとしないが、輸入が止まっている以上、ナフサの不足は起こるはずであり、実際にナフサクラッカーの稼働率が大幅に低下していることからもそれが分かる。
ただし、ナフサは国際商品であるから、必ず中東から輸入しなければならないというものではなく、そのほかの国々からも輸入は可能であり、その中にアメリカも含まれる。アメリカ産ナフサは軽質といっても、それほど影響が大きいとは思えない。
商社や石油会社、化学会社が世界中からナフサの輸入を手配しているだろうから、来月からはナフサ不足も緩和されると予想したい。輸入ナフサが軽質か重質かよりまず、ナフサの量の確保の方が重要であろう。
2026年5月24日
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