第7次エネルギー基本計画から「核融合」の文字が消えた

第7次エネルギー基本計画は、その原案が昨年(2024年) 12月に一般公開されていたが、パブリックコメント期間を経て、今年2月に閣議決定されて正式に承認された。

この基本計画の原案とパブリックコメントを経た後の正式バージョンにはほとんど違いはないようであるが、一点、気になった点がある。それは、原案にはあった「核融合」という文字が正式版では事実上なくなってしまっていたことである。

原案では、 「核融合」という文字は3か所出てくる。
最初はⅤ章「2 0 4 0年に向けた政策の方向性」の中の原子力発電の項の中である。原案では「高速炉、高温ガス炉、核融合といった他の次世代革新炉についても…」としているところ、正式版では「高速炉、高温ガス炉、フュージョンエネルギーといった他の次世代革新炉についても…」と核融合がフュージョンエネルギーに書き換えられていた。

もう一か所はⅥ章「カーボンニュートラル実現に向けたイノべ-ション」の中の、やはり原子力の項で、「フュージョン(核融合)については、フュージョンエネルギー・イノべーション戦略を踏まえ…」となっていたものが、正式版では「フュージョンについては、 …」と(核融合)の部分が削除されているのである。

3か所目は、 2か所目と同じ章にある「国際核融合実験炉ITER」の部分であるが、正式版でも「核融合」という言葉がそのまま残されている。しかし、これは固有名詞だから変更しようがなかったのだろう。

つまり、正式版では核融合という用語が丁寧にフュージョンもしくはフュージョンエネルギーという用語に置き換えられているのである。

なぜ、正式版では核融合という言葉を事実上削除したのだろうか。もちろん、核融合を英語で言えばフュージョン(nuclear fusion)であるが、日本として一般になじみのある言葉ではない。というより、フュージョンと聞いて思い浮かぶのは、音楽のジャンルのひとつであろう。

ちなみにネットで “フュージョン” を検索すると、音楽のジャンルのひとつという説明が表示される。そのほかにはオートバイやスポーツ用品、ジュエリーなどがヒットするが、核融合の意味だという説明は見当たらない。

核融合は地上の太陽などと言われて、世間一般の期待が大きいが、恐らくフュージョンと言われて核融合のことだと理解できる人はそう多くはないであろう。

ではなぜ、エネルギー基本計画では核融合をわざわざ、ほとんど一般には使われないフュージョンという言葉に置き換えたのだろうか。

想像するに、核融合の「核」という漢字が嫌われたのではないだろうか。核融合を原子力発電と同様に危険だと誤解されないように、フュージョンという言葉を使うべきだというパブリックコメントがあったのかもしれないし、核融合推進派の国会議員あたりから要請があったのかもしれない。

エネ庁が「核」という言葉に神経質になっているのかもしれない。としても単に言葉の中から核という部分を取り除いても、実情が変わるわけではないのだが。

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