COP26 岸田演説なぜ化石賞か アンモニア、水素で世界は騙されない

COP26で岸田総理が演説。これに対して11月2日、気候行動ネットワーク(CAN)が名誉ある化石賞を与えると発表した。岸田総理の演説。いったい何が問題だったのだろうか。
総理の演説は1300字程度の非常に短いものであるが、その中で問題なのは次の部分だろう。
(全文はhttps://www.kantei.go.jp/jp/100_kishida/statement/2021/1102cop26.html

「アジアにおける再エネ導入は、太陽光が主体となることが多く、周波数の安定管理のため、既存の火力発電をゼロエミッション化し、活用することも必要です。日本は、・・・アンモニア、水素などのゼロエミ火力に転換するため、1億ドル規模の先導的な事業を展開します。」

まず気が付いたのは「再エネ導入に伴って発生する周波数変動を抑えるための支援」という点である。えらく狭いところを突いて来たなという感じである。次に、その周波数変動を抑えるために既存の火力発電所で、アンモニア・水素を使うという。周波数変動を抑えるのなら蓄電池でもいいじゃないかと思うが、なぜアンモニア・水素なのか。
それは、日本はアンモニア・水素という世界でも画期的な対策を取るんだということを強調したいのだろう。そのためにわざわざアジアの周波数という隅っこの話題を突っついてきた。つまりアンモニア・水素という我田に引水するためにアジアをダシに使ったということだ。

それはいい。アジアも1億ドルは欲しいだろう。しかし、もっと問題なのは、アンモニア・水素ではまったく温室効果ガス削減にならないということである。
今のところ水素もアンモニアも化石燃料から作られているから、そのまま使えば製造過程で大量のCO2が発生する。それなら、原料の化石燃料をそのまま発電に使った方がまだCO2の発生量は少ないのだ。

もちろん、まず、CO2を発生させないアンモニアや水素の製造技術を確立し、その上で既存の火力発電所を改造してアンモニアや水素だけで発電するというのならいい。アジアの周波数変動などを持ち出す必要もない。
しかし、実際には現在CO2を発生させない水素はほとんどないし、アンモニアは製造の目途も立っていない。CANは岸田総理が「アンモニアや水素を『ゼロエミッション火力』だと妄信している」と批判している。つまり、アンモニアや水素と言っても、どうせ石炭から作るんだろうと言っているわけだ。

一方、日本は600億ドル規模の支援に加え、新たに最大100億ドルの追加支援を行う用意があることも表明している。これはアンモニア・水素支援の1億ドルより、はるかに大きい。むしろこっちの方を強調すべきだっただろう。

日本ではアンモニアや水素を使いさえすれば脱炭素になるというような安易な議論が目立つ。COPでもアンモニア・水素をぶち上げれば、それで世界が感心するとでも思ったのだろうか。日本国内ならともかく、世界はそんなことでは騙されない。

2021年11月4日

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