三井化学がCO2排出量を削減できるバイオマスプラスチックを開発:アドマーEFシリーズ

近年、バイオマスプラスチックが話題に上ることが多くなってきている。最近日経XTechでも大手総合化学メーカー三井化学が開発したバイオマスプラスチック、接着性樹脂アドマーEFシリーズが紹介されている

三井化学のプレスリリースによると
「当社が世界に先駆けて開発し、多層ボトルやチューブ、フィルム・シートなどに使用される接着性ポリオレフィン樹脂アドマーにおいて、社会や顧客からのニーズが高く循環経済の実現に貢献する環境対応ラインナップ「アドマーEFシリーズ」を追加し、バイオマス化度50%以上を実現したバイオマスアドマーを開発しました。」
とのことだが、ちょっと分かりにくい。

プラスチックにはポリオレフィン(ポリエチレンやポリプロピレン)のような非極性材料と、ポリアミドやEVOHのような極性材料がある。三井化学のアドマーはこの二種の材料を接着させる接着剤の役割をする樹脂である。従来製品は他のプラスチックと同様に石油から作られているが、今回発表されたEFシリーズは、その原料の50%以上をさとうきびのようなバイオマスに求めた。つまり、バイオマスプラスチックの一種だという。

バイオマスアドマーで成型した多層ボトル(三井化学プレスリリースより)

このプラスチック、石油を使わずにどうやって作るのか。推定ではあるが、まずサトウキビを絞って糖を抽出し、この糖を発酵させてエタノールにする。このエタノールを分解してエチレンとしたあと、重合させてポリエチレンとし、このポリエチレンに官能基と呼ばれる極性部分を付加して作る。この場合、エチレン部分は植物が原料だが、官能基部分は石油が原料となる。
バイオマスプラスチックには生分解性のある物とないものがある。生分解性プラスチックは廃棄されると自然に分解されるが、アドマーEFシリーズは生分解性ではない。しかし、燃焼させても大気中の温室効果ガスであるCO2の増加を従来品より抑えるという特徴がある。

現在のプラスチックのほとんどは石油から作られている。使い終わったあとはゴミとして回収されるが、回収プラスチックの7割くらいは、実は燃やされている。もちろんこのときCO2が排出されることになる。
アドマーEFシリーズは、原料の一部が植物であるから、その原料植物が成長するときに大気中のCO2を吸収している。だから燃やして出てくるCO2のうち、植物が原料となった部分についてはもともと空気から取り入れたもの。だから、大気中のCO2は増えないという理屈になる。

といっても、今回のアドマーEFシリーズは、そもそも接着剤であるから使用量が少なく、さらにバイオ率は50%程度であるから、それほどCO2削減効果は大きくないだろう。しかし、今後、このようなバイオマスプラスチックが様々な用途で使われる可能性がある。本品はそんな時代の先駆けとなるかもしれない。

2021年11月27日

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