西部バスが再生可能ディーゼル燃料を導入 EVとは違うもうひとつの道

西部バスが再生可能ディーゼル燃料を導入し、7月14日より営業運行を開始すると発表した。CO2の排出量を約9割削減できるという。今回は、この燃料について解説したい。

西武バスが導入するのはフィンランドのネステ社が開発したNeste MY Renewable Diesel®と呼ばれるバイオ燃料である。伊藤忠商事がネステ社と日本向け輸入契約を締結、伊藤忠エネクスが国内の輸送および給油を担当する。

原料は植物油である。植物は成長過程で空気中からCO2を吸収しているから、この燃料を使っても、発生したCO2は植物が吸収したCO2の範囲内である。よって空気中のCO2濃度を増やさない。ネステ社によれば、石油から作られたディーゼル軽油と比較してCO2の発生量を75%から95%抑えることができるという。

植物油を使ったディーゼル燃料は従来から製造、販売されてきた。その製法は植物油にメタノールを反応させるもので、FAME(脂肪酸メチルエステル)とよばれる。これは第一世代のバイオディーゼルだ。

これに対してネステ社の燃料は水素を使って植物油を分解したものでHVO(水素処理植物油)と呼ばれる。これは第二世代である。

FAMEにしてもHVOにしても従来のディーゼル軽油の代替として使われるわけであるが、一般に代替品というのはもともとの製品に比べて品質が劣るという印象があるだろう。しかしHVOに限ってはそうではない。むしろHVOは本家を凌駕する品質を誇っているのだ。

下の表に、HVO、FAME、一般軽油の品質を比較してまとめてみた。〇は良好、◎優れている、△はやや劣る、×は劣るということを意味している。


現在、使われている一般軽油はもちろんJIS規格には合格しているのだが、硫黄分や芳香族分がやや多く、これが黒煙やPMの原因となる。石油系軽油の欠点のひとつである。

FAMEについては、酸化安定性が低いのが最大の弱点。貯蔵中に変質してしまうのだ。さらに原料として天然ガスから作られたメタノールを使っているので、必ずしも完全な再生可能な燃料とは言えないし、酸素を含むので燃費が悪いという欠点もある。

これに対してHVOはこの表に掲げたすべての品質項目が良好であるうえ、特にディーゼル燃料として重要なセタン価が現行の軽油よりかなり高い。また、硫黄分や芳香族分が少ないから、排ガスの改善も期待される。

試乗会に出席した記者によると、軽油特有のツンとした匂いが軽減され、排ガスも軽油と比べて不快な匂いが少ないと言うが、これは硫黄分や芳香族分が少ないから当然のことであろう。

政府は、2035年までに新規販売される乗用車については全て電動にする方針を打ち出しているが、バスやトラックについては、まだそこまで踏み込んでいない。これは大型車については電動化が難しいからだろう。ではどうするか。バスやトラックの脱炭素化については、EVではなく、HVOのようなクリーンなバイオ燃料が今後の有力な候補になるかもしれない。

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