世界では自動車販売の4台に1台がEVに 日本にいると分からない世界のEV

今年もまた暑い夏がやってきた。筆者が子供のころは、夏は暑くてもせいぜい30℃。「今日は暑いと思ったら真夏日だぜ」という感覚だった。

ところが、近年ではなんと5月から真夏日を記録するようになり、7月になると35℃を超えるのが当たり前。40℃を超えるところも出てきて、気象庁は今年から「酷暑日」なる用語を使い始めたくらい暑くなってきている。

地球温暖化の原因はCO2などの温室効果ガスをまき散らしてきた我々人間自身にある。IPCC第6次報告書には、これはもう議論の余地がないと記されている。自分に責任があるといわれるといい気持ちはしないものだが、この期に至っての悪あがきは事態をもっと悪化させるだけのことだ。

温暖化対策としては、発電の脱炭素化と電気自動車(EV)の導入が有力な手段と考えらえている。どちらか一方だけではだめだ。電力も再生可能エネルギーや原子力に切り替えながら、そのCO2を排出しない電力を使ってEVを走らせる。発電とEVの両方をセットにして進める必要がある。

ではEVの普及はどれだけ進んでいるのだろうか。一時期EVの売上が増えたことがあったが、今は停滞していてEVブームは終わったなどと日本の一部のマスコミでは伝えているが、単なるブームの話をしているのではない。われわれ人類の将来がかかっている問題なのだ。

今年春、IEA(国際エネルギー機関)は恒例のEVに関する年次報告書「Global EV Outlook 2026」を発表した。ここではこの報告書の中から世界のEV販売状況について紹介したい。

■世界の自動車販売台数の4台に1台はEV

IEAの報告によると、世界のEV販売台数は2020年以来、毎年350万台ずつ増えつつけている。昨年(2025年)は一昨年に比べて約2割増加して、2000万台を突破。また、新車販売台数全体に対するEVの割合(以降「EV販売比率」ということにする)は25%、つまり新車の4台に1台がEVであったという。これにより、2025年には石油需要が1日当たり約120万バレル削減されたと推計されている。これはCO2削減にはいいことだ。

ただし、IEAのいうEVにはバッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)および航続距離延長型電気自動車(EREV)が含まれている。過去2年間EREVが増加する傾向があったが、2025年にはそのシェアが7%未満まで低下し、BEVが再び市場拡大を主導してEV販売全体の約65%を占め、市場の中心はBEVであることが示されている。

EVの販売台数やEV販売比率は国や地域によって違いがある。最も販売台数が多いのは中国で、世界のEV販売台数の6割以上を占めている。次に多いのが欧州、その次に米国であり、日本はIEAの統計上「その他」扱い。EVの世界で日本はすっかり影が薄くなってしまった。

図1 世界の電気自動車(EV)販売台数および主要地域のEV販売比率

また、EV販売比率についても中国の伸びが大きく、昨年中国で売られた自動車の半分以上がEVであった。というと、なんだ自動車販売量の4分の1がEVだといっても、それは中国が異常に大きなEV販売をやっているから数字上そうなっただけじゃないのか。と突っ込まれそうだ。

たしかに中国のEV販売台数の割合は大きいが、中国は国内だけではない。その価格競争力を武器に世界中に輸出攻勢をかけ始めている。その結果、東南アジアをはじめとして多くの国々で中国製EVがガソリン車を駆逐し始めているのだ。

ちなみに、EV販売比率が最も大きいのはノルウェーで97%に達している。そのほかの国については、アジアでの伸長が著しい。2020年に比べるとネパールが10%から68%へ、中国が6%から53%へ、ベトナムが0%から41%へ、シンガポールが2%から40%へ、それぞれ増加するなど、急激にEV販売比率を伸ばしている国がある。

欧州ではEV販売比率が2022年には20%に達していたが、そのあと横ばいとなっていた。しかし、2025年には再び増加に転じている。一方、米国では2023年に約10%に達したあとは伸び悩んでいる。この理由はトランプ大統領だ。これはまたあとで述べる。

図2 EV販売比率が10%を超える主要国・地域における販売シェアの推移

このように、世界のEV市場は全体としては販売台数もEV販売比率も伸びているが、その状況は一様ではない。国によって様々な事情があるのだ。以下に各市場の状況を見ていこう。

■中国市場

中国は圧倒的な世界最大のEV市場である。2025年の販売台数は1,300万台を超え、世界で販売されたEVの約6割を占めており、EV販売比率も55%に達する。また、中国国内を走るEVの台数は2025年末時点で約4,400万台。これは中国国内を走る全自動車の約13%がEVということになる。

2020年から2024年にかけて中国ではEV販売台数が毎年75%ずつ増加するという驚異的な急成長を続けていたが、2025年の伸びは鈍化して、20%未満となっている。その理由のひとつは、市場が成熟してきたことがある。そもそも販売台数が75%も増加してくること自体が異常だったのだ。

さらに「ゼロ・マイレージ車」の問題が指摘されている。ゼロ・マイレージ車というのは、新車購入後すぐ中古車として転売することで、政府の補助金を不正に受け取る行為である。これが問題となり、政府の買い替え支援策が一部地域で一時停止され、このことがEV車の販売台数の伸びを抑えることになった。

それでも中国のEV市場は依然として世界最大であり、生産能力と価格競争力によって世界市場をリードしていることは間違いない。

■欧州市場

欧州のEV販売台数は2022年から2024年にかけて伸びが停滞していたが、2025年には前年比30%以上の増加を記録し、販売台数は年間約420万台となった。EV販売比率は約28%である。

販売回復の一番大きな要因は、2025年からEUが新たなCO2排出規制を適用したことである。この規制は各メーカーに対して全販売車両平均のCO2排出量を2021年比で15%の削減しなさいというものである。これが達成できなければ罰金である。そのため、自動車メーカーはCO2排出量がゼロとカウントできるEVの販売台数を大幅に増やさざるを得なくなった。

この規制は、2030年からさらに強化(乗用車55%削減、商用車40%削減)される予定であるから、今後も欧州のEV販売台数は増えていくことになるだろう。この規制はもちろん輸入車にも義務付けられるから、日本車の欧州への輸出も影響を受けることになる。つまり、日本車もCO2の削減が義務付けられるということである。

国別にみると、ドイツではEV販売台数が約50%増加して85万台に達した。これは企業向け税制優遇や低価格モデルの市場投入によって販売価格が約6%低下したことも影響している。イギリスでもEV販売台数が25%以上増加し、新車販売の3台に1台以上がEVとなっている。イタリア、スペイン、ポーランドでも補助金制度の再導入によりEV販売が急成長している。

一方、ノルウェーでは現在、新車のほとんど(約97%)がEVとなってしまっている。このため、政府は2026年以降、EV優遇措置を縮小することにしている。つまり、EV優遇の目的が達成されたと判断されているわけである。

■米国市場

中国や欧州とは逆に動きをしているのが米国である。米国ではトランプ大統領が2025年7月に署名して成立した「大きく美しい1つの法案(OBBBA)」によってEVに対する政策が大きく変更された。

この法律によってバイデン政権時代に成立したインフレ削減法(IRA)で定められたクリーンビークル(BEV、PHEV、燃料電池車)に対する税額控除が撤廃され、燃費規制も緩和されることになった。

これによって、2025年第4四半期の販売は前年同期比で45%という大幅な減少。年間販売台数でも約150万台となり前年を下回ることになった。また、EV販売比率も約10%で横ばいとなり、欧州や中国との差がさらに広がることとなった。

■その他の市場

中国・欧州・米国以外の市場では2025年のEV販売台数が約200万台となった。これは前年比約50%の急拡大ということになる。特に新興国・発展途上国で販売台数が約80%も増加している。その理由は中国メーカーがこれらの国々に対して、低価格EVを供給し始めたことが大きい。新興国市場ではEV販売台数の約60%が中国製となっている。

特に東南アジアについては2020年頃まで、EV販売比率はほとんどゼロだったのだが、2025年には16%にまで拡大。特にベトナムでは国内にEVメーカーVinFast社が生まれ、低価格車を投入しこともあって、EV販売比率が約40%となっている。

タイではEVに対する補助金や税制優遇に加え、現地生産を促す政策をとっているため、2025年にはEV販売台数が約70%増加し、EV販売比率は約25%となった。また、インドネシアではEV販売台数が2倍になり、EV販売比率は15%となった。インドネシアで販売されるEVの多くが中国からの輸入であるが、今後は現地生産への移行が進む見込みである。さらに、マレーシアやフィリピンでも中国製EVを中心にEVの販売台数が急拡大している。

■日本・韓国

IEAの報告書では日本は韓国とひとくくりにしてひとつの項目に入れている。それくらい日本の影は薄いということだ。

2025年の日本のEV販売台数は補助金による支援があるにもかかわらず、EVの販売は2024年と同水準(10万台強)に留まり、EV販売比率は3%未満であった。

日本でEVが伸びない原因として、IEAでは日本メーカーが長年HEVを中心に技術開発を進めてきたことを挙げている。事実、日本ではハイブリッド車(HEV)が自動車販売台数の約3分の1を占めている。

さらに、専用の駐車スペースを確保しにくい集合住宅に住む人の割合が高いことや、充電インフラの制約も、販売の伸びを鈍化させる要因になっているとIEAでは分析している。ただし、日本では戸建て住宅に住む人の割合が欧州などに比べるとむしろ高いくらいなので、これは理由にならないだろう。

日本とは対照的に韓国ではEV販売台数が昨年に比べて約65%増加し、EV販売比率は初めて二桁(11%)に達した。政府は2030年までにEVと燃料電池車を新車販売の50%まで拡大するという目標を掲げている。

■アメとムチがEV販売台数に影響する

2025年の世界EV市場には三つの特徴がある。
第一に、EVの販売台数が新車販売の25%を占めるまで成長したことだ。IEAの報告書ではこれをもって、EVが世界の自動車市場における本格的な普及段階へ入ったとしている。また、これによって石油需要削減、つまり脱石油に大きく貢献していると評価している。

第二に、中国メーカーの影響力が急速に強まっていることである。中国製EVは国内で急速に販売台数を増やしているが、それだけでなく近年は輸出も拡大している。特に新興国市場では、その価格競争力を武器に多くの地域で市場シェアの過半を占めるようになっている。さらに、中国メーカーは輸出だけでなく現地生産も進めており、世界の自動車産業の構造を大きく変化させつつある。

第三に、各国の政策がEV市場を大きく左右しているということだ。欧州では厳しいCO2規制が販売拡大を促進した。その一方で、米国では補助金廃止によって市場が減速している。中国でも補助金制度の見直しが販売動向に影響を及ぼした。

政策は補助金というアメだけでなく、CO2規制のようなムチが併せて実施されている。日本でも補助金というアメはあるが、欧州や米国のようなCO2規制(米国では規制が緩和されているが)がないことが、EV普及が遅れている大きな原因であろう。

2026年8月11日