マーガリンは食べられるプラスチックであると言われることがあります。食べられるプラスチックとはなんと衝撃的な言葉でしょう。そして、そのあとには、だからマーガリンは危険だよ。食べると病気になるよ。食べてはいけません。 と続きます。


本当にマーガリンは食べられるプラスチックなのでしょうか。ネットで調べてみると、そのマーガリンがプラスチックだと言う根拠としていろいろな例を挙げる人がいます。例えば以下のように。

  • マーガリンを顕微鏡で見たらプラスチックとそっくりだった
  • マーガリンの化学構造はプラスチックと同じ
  • マーガリンの作り方はプラスチックと同じ
  • 製造業者はマーガリンを作ることをプラスチック化すると言う
  • マーガリンは腐敗しないし蟻もたからないからプラスチックだ

まあ、こんな具合です。でも少しばかり化学をかじった者としては、どれも納得いかないことばかりです。ということで、ひとつずつ反論していきたいと思います。
その前に、基礎知識として、マーガリンとは何か、どうやって作るのかを解説します。

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まずはシミュレーション↓

1.マーガリンの基礎知識

1.1 マーガリンとはなにか

マーガリンは基本的に、植物油に水と乳化剤を加えて攪拌し、練り合わせたものです。材料としては、そのほかに食塩や着色料、香料、発酵乳などが加えられます。

写真は実物のマーガリンの成分表です。原材料名は植物油脂、食用精製加工油脂、粉乳、食塩/乳化剤、香料、着色料とあります。あれ?「食用精製加工油脂」って何?実はこれが曲者。あとで説明します。

図ー1 マーガリンの原材料

おおざっぱに行って、マーガリンは油脂と水でできています。油脂(例の食用精製加工油脂を含む)が80%以上を占め、あとは水。その他の成分は微量に過ぎません。



1.2 油脂とは

ではマーガリンの成分の80%を占める油脂とは何でしょう。油脂というのは、皆さんご存知の食用油のことです。てんぷらなどの揚げ物に使うあれですね。マーガリンに使われる油脂は主に大豆油、なたね油、コーン油、パーム油、ヤシ油、綿実油、ひまわり油などの植物油です。ただし、魚油や豚脂、牛脂などの動物性油脂が使われることもあります。

油脂はいろいろな植物や動物から油分を取り出したもので、元となる植物油や動物によって名前は違いますが、その基本的な化学構造はどれも同じで、以下のような化学構造を持っています。

図ー2 油脂の分子構造

油脂は、グリセリンに3つの脂肪酸が結合した構造をしています。私たちが油脂を食べると、油脂は身体の中でグリセリンと脂肪酸に分解され、それぞれ別々に体に吸収されることになります。

1.3 脂肪酸

油脂の化学構造のうち、グリセリン部分はどの油脂でも同じですが、脂肪酸の部分は油脂の種類によって少しずつ違っています。

図ー3 脂肪酸の分子構造

どこが違うかというと、炭素Cがいくつつながっているかということと、二重結合がいくつあるかということです。(端っこのCOOHという部分はどんな脂肪酸でも同じです。)例えば大豆油やナタネ油は炭素の数が18で、二重結合が1つの脂肪酸(オレイン酸といいます)や炭素の数が18で二重結合が2つの脂肪酸(リノール酸といいます)が多く含まれています。

図ー4 不飽和脂肪酸(オレイン酸とリノール酸)の化学構造

一方、牛脂や乳脂肪のような動物性の油脂に含まれる脂肪酸には、オレイン酸のほかに炭素の数が16で二重結合がゼロのパルミチン酸や、炭素数が18で二重結合がゼロのステアリン酸も含まれています。

図-5 飽和脂肪酸(パルミチン酸とステアリン酸)の化学構造

二重結合がゼロの脂肪酸を飽和脂肪酸、二重結合がひとつでも含まれる脂肪酸を不飽和脂肪酸といいます。飽和脂肪酸は動物性油脂に多く含まれ、植物油に多く含まれる脂肪酸は不飽和脂肪酸が多いという特徴があります。

余談ですが、健康食品としてDHAやEPAというものがありますが、いずれも脂肪酸の一種です。DHAはドコサヘキサエン酸の略で、ドコサが22を、ヘキサが6を、エンは二重結合を示しています。つまり、DHAというのは炭素数22で二重結合が6つある脂肪酸を示します。

同様にEPAはエイコサペンタエン酸の略で、エイコサは20、ペンタは5のことですので、EPAは炭素数が20で5個の二重結合を含む脂肪酸ということになります。



1.4 トランス脂肪酸の問題

さて、ここから宿題となっていた食用精製加工油脂の話をしましょう。
油脂に含まれる脂肪酸には二重結合がゼロのものや、いくつかあるものがあるという話をしました。一般に二重結合が少ないと常温で固形になりやすく、二重結合が多い油脂は常温液体になりやすくなります。

例えば牛脂や乳脂肪、パーム油は二重結合が少ないので固形ですが、二重結合の多いナタネ油や大豆油などは液体です。ですから、液体の植物油を使って固体のマーガリンを作るには、二重結合をなくしてやればいいのです。

19世紀後半に水素を結合させて二重結合を単結合にする方法が発明されました。これを水素化といいます。液体の植物油に水素を添加して二重結合を単結合に変えることによって、固体にすることができます。つまり、植物油に含まれる不飽和脂肪酸を乳脂肪のような動物油に多い飽和脂肪酸に変えることによって、バターのような固体にすることができるのです。

このように水素化のような方法によって化学構造を一部変化させた油脂を食用精製加工油脂と言っています。(水素化だけでなく分別やエステル交換によるものも含まれます)この水素化した油脂を通常の植物油に適量混合することによって、マーガリンの硬さや滑らかさを調整することができ、食べやすい、滑らかな食感にすることができるわけです。

ところがここでひとつ問題がでてきました。
実は二重結合にはシス型とトランス型という二つのタイプがあります。水素化を行うと一部の二重結合がシス型からトランス型に変化してしまうという副反応が起こるのです。このようなトランス型の二重結合をもつ脂肪酸がトランス脂肪酸と呼ばれるものです。

図-6 シス型とトランス型

実は不思議なことに、多くの天然油脂では二重結合はほとんどシス型でトランス型はあまりありません。例えばステアリン酸はシス型ですが、トランス型になるとフマル酸と呼ばれます。水素化前の油脂にはほとんどフマル酸は含まれていません。

このようなトランス脂肪酸は、自然界にはあまりないものですので、人体に入ったときに代謝されにくく、血管に溜まって動脈硬化を起こしたり、心臓疾患の原因となったりします。

では飽和脂肪酸が多く含まれるバターならいいかといえば、飽和脂肪酸は肥満の原因になるといわれており、マーガリンがだめならバターに変えればいいかといえば、そうとも言えません。

という基礎知識の上でマーガリンはプラスチックだという根拠について考えてみたいと思います。



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2.マーガリンがプラスチックだという根拠への反論

2.1 マーガリンを顕微鏡で見たらプラスチックそっくりだった?

マーガリンは油脂と水を混合させて練り上げたもので,油脂の中に水の粒が分散した形になっています(油中水滴型のエマルジョンといいます)。ですからマーガリンを顕微鏡で見ると油の中に水の小さな粒が分散している様子が見えます。

図ー7 マーガリンの顕微鏡写真  日本マーガリン工業会

一方、プラスチックは何かと何かを混ぜ合わせたというものではないので、顕微鏡でみても何も見えません。ただ表面に傷などがあれば、その傷が見えます。あるいはプラスチックを繊維状にしたり、発泡剤を入れて発泡スチロールにしたりすると、繊維の形や泡が見えます。

つまり、プラスチックを顕微鏡でみてもこれがプラスチックだという形はなく、その加工方法によっていろいろな形が見えるということです。

ですから、マーガリンを顕微鏡で見たらプラスチックとそっくりだといわれても、どのプラスチックのことを言っているのでしょうか。同じプラスチックでも加工方法によって顕微鏡でみた姿はぜんぜん違います。

一方、バターを顕微鏡で見てみたらどうでしょう。バターもマーガリンと同じく油中水滴型のエマルジョンなので、油の中に水の小さな粒が見えます。図のように見えるはずです。つまり、顕微鏡でみてもマーガリンがプラスチックと同じということはなく、むしろバターに近い。というか、プラスチックとは似ても似つかないのに対し、バターとはほぼ同じに見えるのです。

図ー8 バターを顕微鏡で見たところ

マーガリンを顕微鏡で見てみたら、プラスチックとそっくりだったという人は、自分で顕微鏡を見たわけではなく、単なる想像か、人の言葉を受け売りしているだけだということでしょう。

2.2 マーガリンの化学構造はプラスチックと同じ?

マーガリンは油脂と水の混合物ですから、マーガリンという物質の化学構造はありません。しかし、マーガリンの80%以上が油脂ですから、油脂の化学構造がマーガリンの化学構造を代表していると考えていいでしょう。

油脂の化学構造は1.2章で示したようにグリセリンに3個の脂肪酸がくっついた形をしています。これがプラスチックと同じだと言うのでしょうか。

図ー9 油脂の化学構造

プラスチックにはいろいろな種類がありますので、どのプラスチックと同じだと言うのかよくわかりません。代表的なプラスチックとしてレジ袋などにも使われるポリエチレンの化学構造は以下のとおりです。

図ー10 ポリエチレンの分子構造

ポリエチレンはCH2という単位が延々と続いている構造をしています。これは確かに油脂の化学構造のうちの脂肪酸の部分に似ています。ただ、脂肪酸の炭素数が18個前後なのに対して、ポリエチレンの場合は炭素の数が1000個から数万個連なっている構造ですし、油脂のように酸素原子(O)も二重結合もありませんから、化学構造は全然違います。

では、PETボトルとしてよく使われるPET樹脂はどうでしょうか。PET樹脂の化学構造は以下のとおりです。

図ー11 PET樹脂の分子構造

確かに、油脂のように酸素(O)を含んでいるところは同じですが、化学構造は、もう全然違いますね。

一方、バターの化学構造と比較してみましょう。バターも乳脂肪と水の混合物ですからバターの化学構造式はありません。だから主成分の乳脂肪の化学構造を比較してみます。

図ー12 乳脂肪の化学構造

おやおや、これは、マーガリンの場合とほとんど同じですね。

これは当たり前のことで、マーガリンは植物油と水の混合物、バターは乳脂肪と水の混合物。植物油と乳脂肪が違うだけですが、植物油も乳脂肪もいずれも油脂です。したがって、結局マーガリンとバターはほとんど同じ化学構造を持つということになります。

違うのは1.3章で述べたように脂肪酸部分の炭素の数と二重結合の数だけ。したがって、マーガリンの化学構造がプラスチックと同じだということは全然なくて、むしろバターとほとんど同じということです。

ちなみにネット上では
「マーガリンに含まれる「トランス脂肪酸」の水素添加によって硬化された脂肪分子が、プラスチックの構造に酷似している」とか、
「マーガリンにはプラスチックと似た構造を持つ「トランス脂肪酸」という物質が大量に発生する。」
という記事も見られました。

トランス脂肪酸というのは、1.4章で述べたように、脂肪酸の二重結合の前後の炭素の向きが変わるだけで、全体の化学構造はほとんど変わりません。トランス脂肪酸がプラスチックに似た構造だなんてありえない話なのです。

2020年2月2日

この記事を書いた後で、水素添加油無添加でトランス脂肪酸を大幅に減らしたマーガリンが販売されていることを知りました。その例を参考までに下に掲げておきます。(なお、トランス脂肪酸の量については製品に表示の義務がないので、メーカー公表値を記載しています。)

【雪印ネオソフト べに花】トランス脂肪酸 0.03g、飽和脂肪酸 0.5g、コレステロール 0㎎(いずれも10gあたりの含有量)、水素添加油脂 無添加

【雪印ネオソフトハーフ】トランス脂肪酸 0.06g、飽和脂肪酸 0.5g、コレステロール 0㎎(いずれも10gあたりの含有量)、水素添加油脂 無添加

 

【小岩井 醗酵バター入り】トランス脂肪酸 0.027g、飽和脂肪酸 2.46g、コレステロール 1.2㎎(いずれも10gあたりの含有量)、水素添加油脂無添加

小岩井マーガリン 醗酵バター入り

つづきはこちら
マーガリンはプラスチックだから食べてはいけない?(ゴキブリも食べない?)

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マーガリンはプラスチックだから食べてはいけない?(後半)






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