COP26が閉幕。気温上昇を1.5℃以内に抑えるという目標が設定され、これから気候変動対策がさらに進められることになるだろう。
我が国の第6次エネルギー基本計画でも、2035年以降発売される乗用車は全て電動車に代わる計画だ。日本の場合、バイブリッド車やプラグインハイブリッド車の販売は認められるが、純ガソリン車の新規販売は禁止になるだろう。
2035年以降、当然、ガソリンの販売量はどんどん少なくなっていくはずである。需要がなくなったガソリンはどうなるのだろうか。こんな質問がQuoraやYahoo知恵袋でよく見かけるようになった。「原油を精製すると灯油や軽油のほかにガソリンが必ず一定量できてしまい、調整が効かない。だからそのガソリンの需要がなくなったら、どうするのか」という質問である。
この質問にはふたつの誤解がある。
まず、石油を精製して灯軽油を作ろうとすると必ずガソリンが一定量できてしまい、ガソリンだけを減らすことができないという誤解である。実際は石油を精製するとできてくる重油の需要がガソリンや灯軽油に比べてはるかに小さいので、その余剰の重油からガソリンや灯軽油を作っている。つまり、石油製品の割合は一定ではなくて、需要に合わせて調整されているのだ。特に市販のガソリンには、その半分くらいは重油から作られたものがブレンドされている。だから、ガソリン車が少なくなってガソリン需要が減少すれば、重油から作るガソリンの量を減らして、その分、灯軽油の量を増やせばいいことになる。
もうひとつの誤解は、気候変動対策で需要が減るのはガソリンだけだというものである。
2050年に温室効果ガス排出量ゼロを目指すのなら、ガソリンだけを減らしても仕方がない。灯油も軽油も重油も減らさなければならないことになる。部屋の暖房は灯油ではなくてエアコンで、トラックやバス、船舶の燃料は水素やバイオ燃料、合成燃料に替わるだろう。
その結果、今後、原油から作られるのはプラスチックなどの石油化学製品や潤滑油、アスファルトのような燃料として燃やすもの以外のものとなっていく。ちなみに石油化学の原料には現在はナフサやガソリンが使われているが、軽油や重油も分解してナフサやガソリンすれば、石油化学の原料にしていくことができる。
これから石油精製はこのような流れになるので、ガソリン車が販売禁止になってもガソリンの需要だけが下がるわけではなく、日本で使われる石油が全体的に減って行くことになる。それに合わせて製油所も分解装置の増強などが必要だけれど、少しずつ変わっていくだろう。
2021年11月18日